- ライブ配信基盤開発エンジニア
- 26卒ビジネス職
- バックエンドエンジニア(Go)
- Other occupations (23)
- Development
- Business
※2023年9月5日当時の記事です。
スマホ1台でゲーム実況ができる配信プラットフォーム「Mirrativ」を運営するミラティブ。同社のCOO栗田氏にご自身のキャリアを深掘りしつつ、ミラティブの重要戦略である「ライブゲーム」の可能性と魅力について聞きました。
取締役COO 栗田 健悟
東京大学文学部国文学科卒業後、グリー株式会社へ入社。スマホVRゲームのディレクター、ライブ配信アプリ『REALITY』の責任者、経営企画室等を経て、ミラティブへ参画。社長室室長や広告事業の責任者を担当したのち、現在は取締役COOとして新規事業のライブゲーム事業を中心に、ミラティブの事業全体の管掌役員を務める。
目次
- エンタメ業界に引き寄せられる人生、数段飛ばしができる環境を求めてたどり着いた選択
- ライブゲーミング領域で一筋の光を狙う
- おもしろさを追求し、今なき価値を生み出す濃厚な経験を
エンタメ業界に引き寄せられる人生、数段飛ばしができる環境を求めてたどり着いた選択
ーー学生時代について教えてください。
栗田:中高一貫校に通っていて、6年間文芸部に所属していました。部員同士で小説を評価し合ったり公募に挑戦したりと部活動を楽しんでいたのですが、ある程度その当時の自分に書けるものの限界を感じて一旦筆を折りました。もうひとつ筆を折るきっかけになったのが、親友の死です。非常にショッキングな出来事で、ここから自分の生活が大きく変わり、何もやる気が起きず、いろんなものに反抗的だった時期にもなります。
その後の大学時代は小説を書く代わりに、いきどころのないエネルギーをぶつけるように格闘技に明け暮れたのですが、やっぱりエンタメに関わることへの好きな気持ちは変わりませんでした。
私が通っていた大学では学部3年時に専攻を選択する仕組みだったのですが、そのタイミングで私は国文学(日本文学)を選びます。中高時代は書き手として関わった文学の世界に、また近しい立場に戻ることにしたのです。どう軌道修正しても、自然と引き寄せられる業界ってありますよね。私にとっては、それがエンタメでした。だから卒業後もエンタメ業界に行こう、と決めたんです。
ーーその思いが就職先を選ぶときの判断基準にもなったんですね。
栗田:はい。しかし、そこから学生なりに業界について調べてみて、エンタメ業界には業界ならではの慣習や文化のようなものが色濃く残っていることを知りました。長きに渡る下積み期間や、年功序列制度など……そんな環境で働くよりは、もっと時代の変化をつくりだすような挑戦ができる、数段飛ばしができる会社に入りたいと思いました。それで最終的に選んだのが、グリー株式会社です。
ーーグリー株式会社ではどのような経験をされたのでしょうか。
栗田:まず、入社する際には新領域に携わりたいと強く希望し、結果としてバーチャル/ライブエンターテイメントの世界に飛び込みました。エンタメ関連の技術はテクノロジーの進化によって目まぐるしく更新されていきますから、すでに結果が見えている領域ではなく、誰もプロがいない、ゼロから挑める新しい領域にチャレンジしたかったんです。
VR領域のディレクターワークを一通り経験したあと、あるバーチャル領域のプロダクトを立ち上げる責任者を内定者時代から務める機会に恵まれました。すでに社内で成功の確度が高いモバイルゲームなどの事業に携われる環境があるなかで、あえて既存のエンタメの概念にとどまらない、まったく新しいプロダクトをゼロからやろうと手を挙げるひとは、珍しいものです。他にやる人がいないからこそ、当時何者でもなく、何も持っていない私は挙手したんです。入社時の目算通り、数段飛ばしができる機会を得ることができました。
限られたリソースの中、立ち上げのために必要な業務は何から何までやりました。PdMとして仕様を切ったり、デザインをSketchで起こしたりといった業務から、アプリリリースのためのストア開設、法人登記、サービスのプロモーション、初期コンテンツのディレクターまで……。ひとつのプロダクトを作り上げるほぼすべてを経験できたと思います。
ーーそこからなぜミラティブへ転職したのでしょうか。
栗田:そのサービスについて不満は一切なかったのですが、今後サービスを展開する方向性について会社としての方針と、自身が思い描くビジョンの折り合いがつかなくなり、次第に転職への思いが強まっていきました。
転職先を決めるときに重視したのは、新しい領域に挑戦しているスタートアップ企業かどうかです。あと、コミュニティサービスの勘所を会社としてつかめていることも大切だと思っていました。そこに対する理解が深い企業であれば成長性が見込める、と。そういう基準で、ミラティブを選びました。
ライブゲーミング領域で一筋の光を狙う
ーー ミラティブにおける栗田さんの役割を教えてください。
栗田:ミラティブのCOOを務めています。COOは一般的に事業全体の「足りないところ」を網羅的に補うポジションだと認識しています。現状ミラティブは特にライブゲーミング領域に注力しているので、その事業直轄を主に担っています。
ーーライブ配信市場やモバイルゲーム市場の市況感について、どのようにお考えですか。
栗田:率直に言ってしまうと、ライブ配信市場自体は決して楽観視できる状況ではないと思います。著名なライブ配信サービスのユーザー数は伸張しつつも、いずれも鈍化傾向にあります。既存のライブ配信が提供できる体験は、さまざまな切り口があるものの、大枠では共通点が多くあります。そうしたライブ配信という体験を求める人の可処分所得の限界という観点から考えると、ライブ配信単体での伸び代は必ずしも期待できません。
モバイルゲーム市場もまた、昨今のモバイルコンテンツの中では最も成功した領域のひとつではあるものの、直近の新作ゲームの数は減少傾向にあります。海外企業の参入やコロナ禍におけるコンシューマ機の伸長、そしてクロスプラットフォーム化といった要因が重なり、ユーザーが抱くゲームへの期待値は各段に高くなりました。その結果、一作あたりの制作コストが膨らみ、”外せなくなって”しまっていることが、制作側の課題になっていると考えられます。
ーーそういった市況感を踏まえ、ミラティブはどのような戦略を考えているのでしょうか。
栗田:まず前提として、スマートフォンは「何か楽しい体験をしたい」と思ったとき、誰もが利用できる便利なデバイスですよね。それでもなお新作モバイルゲームに対する投資が減少傾向にあるのはコンテンツ自体の魅力の問題ではなく、収益維持が難しい構造自体の問題なのではないでしょうか。言い換えれば、既存の方法では企業がおもしろいものを継続的に供給することが構造的に難しくなりつつあるわけです。だからこそ私は、今と同じ、あるいはそれ以上におもしろい体験を利益構造が合う形で作ることができれば、モバイル市場におけるゲームの市場拡大は可能だと考えています。
モバイルゲームのユーザー数はライブ配信のユーザー数をはるかに上回り、両者を比較すれば前者は大きな市場だと捉えられます。このモバイルゲームのユーザー層に、ライブ配信の魅力やおもしろさを届けることが、今後ミラティブが描く戦略の鍵となると考えています。
では、ライブ配信を事業軸とするミラティブが届けられる「おもしろさ」とは何か。それは、自分が好きな人の声が聴けて、その好きな人にコメントやギフトを贈ることで喜んでもらえる。こういったコミュニケーションそのものだと考えています。これをいかにしてゲーム体験の中に組み込んでいくかが重要です。それが、いま私が担っている「ライブゲーミング領域」につながってきます。
ーーライブゲーミング領域は両市場をつなぐ、新たな領域ということですね。
栗田:そうですね。国内外を見ても、ミラティブは同領域の先端を走っていると言える状況だと思います。すこし話がそれますが、私は前職の社長の言葉で、非常に感銘を受け、心に残っている言葉があります。それは「波が来た時に波に乗れるのは沖にいた人だけ」という言葉と、「成功は星の瞬き」という言葉です。
沖は足がつきませんし、冷たく苦しいものだけれど、それでも波がくると信じてとどまり続ければ、浜辺から眺めてる人には乗れない波に一番に乗ることができますよね。そして、成功を実感できるほど輝いている瞬間、その星はもう燃焼しきっているのです。
新規サービスもまたこういうものだと、ライブゲーミング領域に挑んでいると痛感します。ミラティブは、いまライブゲーミング領域という波が来ることを信じて、沖で踏ん張り、輝く瞬間に向けて虎視眈々と市場を狙っているフェーズです。
おもしろさを追求し、今なき価値を生み出す濃厚な経験を
ーー「エンタメ」を軸にキャリアを歩んできた栗田さんですが、今後の目標はありますか。
栗田:私は一貫しておもしろいものが作りたいと思い続けています。そしてそれを、世界に名をとどろかせた日本の名クリエイターたちと比肩できるようなサービスに育てることが、自身の目標です。その目標から言えば、現時点のミラティブや私は、まだまだ道半ばも良いところです。これからミラティブの事業が影響を与える面積を拡げていくことに、私は情熱を注いでいきたいです。
ーーミラティブの魅力を栗田さんの視点から教えていただけるとうれしいです。
栗田:エンタメを提供するサービスに関して言えば、正しいことばかりを突き詰めることが必ずしもユーザーのおもしろさに直結するとは限りません。ミラティブでは、正しいことは前提としつつ、「おもしろい」という判断基準を何より重視しています。
ですから、現職で「おもしろいものを作りたいけれど、それを実現できない」という葛藤を抱えている人にとっては、ミラティブはそこにチャレンジできる環境があることを魅力としてお伝えしたいです。
もちろん、その人がおもしろいと感じていることをやりきれるのかどうかも判断軸のひとつですが、私はおもしろいものであればできるかぎり採用するよう心がけています。一方で、おもしろくないもの、あるいは「やらなければならない」とか別の論法から生まれたものなどは、会社全体で見ても採用に至るケースがほとんどありません。
ーー他社と比較したときのミラティブの独自性はどのような点にありますか。
栗田:私はここまでおもしろさを重視している話や、ライブゲーミング領域の話をしてきましたが、だからといってミラティブだけが「おもしろもの」を作れる、と言っているわけではありません。
例えば、大手企業がエンタメのコンテンツを作る場合、数百億円の予算を投じてAAAタイトルを作ります。ミラティブはスタートアップですから、それと同じ戦略を取ることはできません。
一方で、ミラティブには「ライブ配信のノウハウ」と「ゲームが好きなユーザーが集まる居場所」という強力な武器があります。その武器を活かして、まったく新しい体験そのものを作るというのが、ミラティブの戦略の独自性です。
既存のものを廉価で作る、あるいは人気シリーズのクオリティを高めるのではなく、今はまだこの世に存在しないおもしろいものを作りたいと思っている人に向いている会社だと思います。
ーー 最後に、候補者へのメッセージをお伝えください。
栗田:エンタメ業界に興味を持ち、おもしろいものをつくりたいと考えている人は、ミラティブのようなベンチャー企業を一度経験してから、モバイルゲームやコンシューマーゲームを扱う企業に戻ってもいいのではないでしょうか。ここまで挙げたような成熟した市場にチャレンジするとき、きっとミラティブで経験したことが存分に活かせるはずです。この環境で経験できることは「濃厚だった」と振り返れるものだということを、自信をもって約束します。