スマホ1台でゲーム実況ができる配信プラットフォーム「Mirrativ」を運営するミラティブでは、年に一度社内表彰「Mirrativ Award」を行っています。2025年に新設された「AIわかりあい賞」は正社員を対象とした賞でしたが、めざましい実績を残したインターン生の藤本伊織さんが特別賞を受賞しました。AIを活用してゲーム開発のテストサイクルを劇的に短縮し、チーム全体の生産性向上に貢献しました。今回は、受賞の背景や取り組み、仕事への向き合い方について話を聞きました。
藤本 伊織(ふじもと いおり)
筑波大学で情報学群、知識情報・図書館学類に在籍。学生時代はボードゲーム制作に没頭し、自作ボードゲームをゲームマーケットで販売。2025年3月末よりミラティブのライブゲーム部 第2スタジオにて内定者インターンを開始。ライブゲームにおけるLPの作成や、ゲーム体験の改善に取り組む。幅広いことを見聞きして楽しむのが好きで、新しいことを素早くキャッチアップするのが得意。
AIを駆使して1日単位の改善サイクルを実現
―― まず、インターン中の業務内容について教えてください。
現在は内定者インターンとして、ライブゲーム部の第2スタジオに所属しています。第2スタジオでは、ライブゲームの企画書を作って外部のゲーム会社に開発を依頼したり、他社が開発したゲームの運用面について確認したりしています。私はそのなかで、新規ゲームのテストプレイの段取りや既存ゲームの改善提案、施策に合わせたWebサイト制作まで、さまざまなことに携わっています。
――AIわかりあい賞を受賞したときの気持ちをお聞かせください。
正直「自分が受賞していいのかな」という気持ちでした。今回取り組んだことは、技術的にはそれほど難しいことではないので、受賞に対する驚きが大きかったですね。
――具体的な取り組みについて教えてください。
1つ目は、新しいゲームを作る際のテストプレイ工程の効率化です。通常の流れでは、企画書をまとめたあと、エンジニアに依頼してゲームの試作版を開発してもらい、それをテストプレイするという流れなのですが、このプロセスには時間がかかります。
そこで、エンジニアに渡す前の段階でAIを活用して試作版を作ることで、エンジニアの負担を減らすだけでなく、何度も修正できるようにしました。テストプレイをして修正点を発見し、修正してまたテストプレイをするというサイクルは、それまで1週間ほどかかっていましたが、これを半日で回せるようになったので、大きな業務効率向上につながったと思います。
2つ目は、施策ごとのWebページ制作です。例えば、ランキングページはものによって15分ごとに結果が更新されたり、ランキングで上位を取られた配信者さんがページに訪れるとアンケートフォームが申請可能になるなど、施策に応じて様々機能を追加することがあります。こういった施策に合わせたページを作るときにAIを活用することで、1日でページが完成し、PdMが確認するだけで公開できるようになりました。
▼実際に藤本さんが制作したLPの例
https://www.mirrativ.com/page/lp?path=/livegame/slacolo/ichigeki/index
――特にどこが評価されたと思いますか?
単純にAI活用によって制作物の作成速度が早くなったという点もあるのですが、それに伴って改善のループ速度が大きく変化したことだと思います。上司からも「ライブゲームを作るときは、今までもっと時間をかけて悩んでいたけれど、それが一気に早くなってびっくりしている」と言っていただけました。今までこのプロセスに長く取り組んできた方の目で見ても劇的な変化だったんだ、と改めて感じました。
▲先輩社員が驚いている様子
――取り組みを進める上で工夫したことはありますか?
試作版を作る前、チーム全体で議論しながら仕様を決めていくのですが、そこで決まったことのなかでも、実際に作ってみると意外と抜け・漏れがあるんです。そういうときは、文章の行間を読むように想像で埋めたものを確認してもらい、良いか悪いかを判断してもらいました。仕様を完全に言語化するのはとても大変なので、完璧になるまでの部分を自分で埋めるのも大事だと思います。
――難しかった局面はありましたか?
ゲーム構造そのものの方向転換があったときです。試作版を確かめながら議論している途中で、視聴者と配信者の関係性を再定義しようという話になり、ゲームの構造自体を大幅に見直すことになりました。そのときの対応は大変でしたが、試作版を作っていたからこそ「この構造ではだめだ」と早期に気づけて、手戻りを防げたのだとも感じています。もしも気づかずにアルファ版やベータ版の段階まで進んでいたら、リリース中止か、あるいは諦めてリリースするという選択肢しかなくなっていたと思います。
――仕事を進める上で大切にしていることは何ですか?
必ず合意を取ることです。自分一人で物事を勝手に進めてしまうと、必ず見落としが出てくると考えています。だからどんなにちいさなことでも、上司、あるいは横のつながりの人に話して、合意を取りながら進めることを大切にしています。なんでも話すようにしていると、会話の中から今まで知らなかった“隠れた仕様”がポロッと出てくることもあるんです。それを拾ってさらに良いものを作ることができるので、自分がやろうとしていることをつぶさに伝えることで得られるものは大きいと思います。
自己開示から始まるコミュニケーションで信頼を築く
――インターンという立場でも主体的に動けた要因は何だと思いますか?
先ほどの大切にしていることにもつながりますが、自己開示を徹底していたことかな、と思います。リモートで働いていると、雑談を通して仲良くなる機会が少なかったり、なかなかその人の人柄を知る場面に出会えなかったりします。
なので、毎週開催されている雑談会で自分のことを積極的に話したり、Slackに用意された個人チャンネルに趣味のことを書いたり、他の方とのコミュニケーションのきっかけを作るよう意識していました。そのおかげで、社内の人たちにインターンでもしっかり認識してもらえて、声がかかったりすることもありましたね。
――チームの雰囲気はいかがでしたか?
とても気を配って見てくれていると感じました。例えば、不安だなと思ったことを個人チャンネルにひとりごとのように書くと、必ず誰かがアドバイスをくれたり、手を差し伸べてくれたりします。優しい人が多いチームですね。
また、ミラティブのSlackには部活動のチャンネルがあって、そこで自分の好きなゲームや好きなものの情報を投稿すると、リアクションがたくさんつきます。そういうところであたたかなコミュニケーションが生まれているのも、いいなと思いました。
――インターンに関わらず、ふだんの生活でもAI活用はされていましたか?
大学の講義でチーム開発をする際に、AIを使って開発に挑んだ経験がありました。それ以外にも、趣味でプログラミングをしていて、新しい技術のキャッチアップも好んでやっています。そういった経験が、今回の取り組みにも活きたと思います。
――そのほかに、今回の取り組みに活きたことはありますか?
私はもともとボードゲームを作るのが趣味で、ただ遊ぶだけではなく、どんなルールなら楽しめるか、ゲームの構造そのものについて考え、言語化することがよくあります。
今回携わったゲームはカードゲームをもとにしていたので、どんな挙動ならば楽しめるか想像できたところが、試作版を作るうえでも役立ちました。
ただし、ライブゲームとしてどんな仕様であれば、配信者と視聴者の方がそれぞれ楽しめるかという観点は、ボードゲームとは全く異なります。そこは議論を重ねていくなかで、たくさんの気づきがありました。
――今回の取り組みを通じて、AIの可能性はさらに広がりましたか?
今までは趣味というか、あくまで個人の範囲で使っていたので、自分がAIを使ってできることは、それほどすごいことだとは思っていませんでした。それが今回の取り組みのおかげで、利用目的や仕様を見定めれば、ビジネスの場でもちゃんと活きる技術なのだと感じることができました。AIを活用することの可能性は、以前よりも大きく感じています。
これから広義の「楽しい体験」をミラティブでつくりたい
――今後挑戦してみたいことはありますか?
まず、ライブゲームにこだわらず、ミラティブで遊べるゲームを作りたいですね。ただ、ユーザーさんが楽しめることが重要なので、ゲームという表現にとらわれなくても良いと思っています。
実世界でもゲームの表現を活用することで成立しているエンターテインメントの事例はたくさんあります。例えば、リアル脱出ゲームのような体験型エンタメも、ゲームの文脈からヒントを得たものです。そういった楽しめる新しい仕掛けを、ミラティブの中でも創り出せるといいですね。
――これからミラティブへの入社を検討している学生のみなさんに向けてメッセージをお願いします。
人は誰もが進む一般的な道に進もうとしがちですが、その道が自分にとって最適なのかどうかは、一度立ち止まって、よくよく考えたほうがいいと思います。そのとき、自分の好きなことが何なのか見定めて、追求してほしいなと思います。仕事をしていく上で、自分の嫌いなことを仕事にするのはしんどいし、つまらないことを何十年もやっていくのは大変です。だから好きなことに対してまっすぐ進んでいくことが大切ですし、それができる仕事を選ぶうえで、もしミラティブに興味があるならば、ぜひ選考を受けてみたり、インターンを経験してみてください。
※記事の内容は執筆当時(2026年2月時点)のものです。