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実践者に聞く!プロジェクトを成功に導く事前準備ー「PM Lesson #01」イベントレポートー

成功するプロジェクトの共通点はなんでしょう?
絶対解はないものの、先人たちの知恵を集結した世界的なガイドラインがあるのです。
本記事では、組織、年齢、業界などを超えた多様な人が熱く語り合ったイベント「PM Lesson #01」をレポートします。

プロジェクトの成否は、開始前に決まってる?!

2002年という早い段階から、クリエイティブの領域に世界標準のプロジェクトマネジメントの知識体系「PMBOK®(ピンボック)」を導入してきたロフトワーク。プロジェクトマネジメント(以下PM)に関する勉強会、学習支援制度も手厚く、国際認定資格PMP®ホルダーを20名ほど生み出してきました。

一方で、PMは、プロジェクトや社風、そしてメンバーのキャラクターによっても千差万別です。しかし他社のプロジェクトマネージャー同士の交流機会は多くない。

そのような背景のもと、組織を超えてPMを学び、交流するイベント「PM Lesson」は過去2回京都で、2024年7月は渋谷にて初開催されました。「PMの啓蒙が私の“推し活”」と語るほどPMを愛するロフトワークの基が中心となり、プロジェクトマネージャー、ディレクターなど5名のスピーカーをお招き。お題は「プロジェクトの成否、実は開始前に決まってる説」。あまり意識されていない、けれど重要な「立ち上げ=開始前」のコツを参加者とともに掘り下げていきました。

執筆:吉澤 瑠美
イベント企画,記事編集:ロフトワーク 基 真理子


高校生からベテランPMまで、業界も経験値も多種多様な人たちが集った。

「隙のある問いかけ」がメンバーのエンゲージメントを高める

メンバーのコミットをいかに引き出すかが、プロジェクトの成否を左右する、と始めたのは、ロフトワークのクリエイティブディレクター 安元佳奈子。プロジェクト立ち上げ期(開始前)は、どうしてもプロジェクトマネージャーが単独で進める作業が多くなりがち。その結果、後から合流するプロジェクトメンバーとの間に、情報量の差が生じてしまうのです。

そこで安元が紹介したのは、ロフトワークがプロジェクト開始前に必ず作成する「プロジェクトマネジメント計画書」でした。国際標準の知識体系『PMBOK® ガイド』に記載されている知識エリアに沿ってプロジェクトの全体像を網羅的に書き起こしていきます。プロジェクトマネージャーはPM計画書を書き上げるプロセスを通して、プロジェクトの進め方抜け漏れなく検証するのです。

プロジェクトマネージャーが「未完成の一案」を掲示することが、意見や主体性を引き出すと話すロフトワークの安元。

また読み合わせでは、クライアントとプロジェクトマネージャーの認識する作業範囲を照らし合わせます。もちろんプロジェクトの立ち上げ時点では不明確なことばかりで、完璧な計画書は作成できません。ただプロジェクトマネージャーがPM計画書を書く際に感じた違和感やもやもやを正直に議題として提示することで、メンバーへの問いかけを促進し、空中戦に留まらない議論に導いてくれるのです。 加えて、このプロセスは、メンバーの自分ごと化も自然と引き出していきます。

最後に「不確実で複雑なプロジェクトを実行するためには、隙のあるコミュニケーションで対話を生むことが大切」と安元はコメントしました。

社会に不足している「きちんと話をすること(対話)」がプロジェクトを推進する

現場で活躍する4名のトークパート後は、ゲスト講師 野村隆昌さんの講義。黎明期からプロジェクトマネジメントに関わり、数多くのロフトワークメンバーも野村さんの講座を受けてきています。「私のことはNickと呼び捨てにしてください。」という発言から始まった野村さんのお話しは、他の4人とは一味違う視点でした。

1990年代以降、アメリカのテック系企業が隆盛し社会が便利になる一方で、社会環境に起因する心身の疾患を患う人は年々増えています。そんな現代で、求められているものは「きちんと話をすること(=対話)」である、と野村さんは指摘します。


長年培ってきたPMの専門的知見と経験から、独自の論点を展開されたゲスト講師のNickこと野村さん。

しかし、簡単なようで対話は非常に難しい。例えば、藪から棒に「どうだった?」「何か質問は?」と投げかけたことは誰でもあるのではないでしょうか。あるいは、一方的な伝達によって、相手を困らせたことはないでしょうか。

対話とは「意識された、フラットで、落ちついた、丁寧で率直な、連続する会話」であると野村さんは定義し、「私は」で話し始めて「〜と感じました」と主観を加えることを意識するよう促しました。

このような対話は、必ずしも盛り上がるわけではありません。それでも相手の発言中に口を挟まず、途中でボールを丁寧に受け取り投げ返すことを繰り返すことで、関係性が醸成されます。野村さんは「対話は関係に通じる」とし、「チームビルディングの前に対話のワークショップを開くべき」と提案しました。


あなたの課題、プロジェクトマネジメントを学ぶと解決できるかも?!

トークパートが終わり、後半は参加者が5〜7名程度の小グループに分かれて意見交換を行いました。参加者からは「トークパートで興味を持ったことを、熱量が高いまま話せた」「これまでのモヤモヤを共有できた。仕事において感じる課題感はみな同じなのだと自信がもてた」という感想が寄せられるなど、大変盛り上がりました。

こうして組織や経験を超えて、学び合い、知見を交換する機会を待ち望んでいた方も多かったようです。高校生から50代まで、業界も経験値もバラバラな参加者同士が、前のめりに話し合う光景からは、プロジェクトマネジメントの本質的な魅力を教えられた気がします。

それは「人と人が向き合う活動」すべてにおいて、プロジェクトマネジメントは光を与えてくれる可能性。あなたが抱えている課題も、プロジェクトマネジメントを知ることによって、何かヒントを得られるかもしれません。

イベントは今後も継続していくとのこと。続報をご期待ください。


組織や経験値を超えたグループディスカッションでは、熱量あるポジティブな空気が生まれていた。


主催後記

数多ある課題を抱え、試行錯誤しつづけるも、何も解決できない。そんな無力感に打ちひしがれたWeb担当者。それが、ロフトワークに入社する前の私でした。そんな時、出会ったのが無償公開されていた『Webプロジェクトマネジメント標準』。仕事がうまくいかない原因は、スキルではなく、進め方に問題があっただけだ、と希望の光を与えてくれたのです。それから6年あまり、ディレクター、プロジェクトマネージャー、そして現在は採用人事を経験する中で、PMは仕事にみならず、私の人生そのものにも多大な影響をもたらしてきました。念願の国際資格PMP®も取得した今、私がこれから目指すのは「世の中に一つでも多くの良いプロジェクトが生まれるきっかけを作る」ことです。我がアイドル「プロジェクトマネジメント」を推して、伝道していきたい!その衝動で本イベントも企画しました。他のプロジェクトマネージャーの方の話を聞けること、語り合えることは、とても刺激的な時間となり、継続して開催していこうと強く思っています。

PMを学んでみたい方、プロジェクトマネージャーやディレクターとして働いてみたい方向けに、カジュアル説明会も開催中です。ぜひお気軽に参加ください。

ロフトワーク HRディレクター
基 真理子

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