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イベントレポート:児童発達支援管理責任者が登壇。「子どもの困った行動への関わり方(方針と対応方法)」とは。


LITALICOでは、2023年10月に児童指導員、幼稚園・保育園や学校の先生などのお子さまに関わる支援者・教育者の方を対象として、「子どもの困った行動への関わり方(方針と対応方法)」と題したオンラインセミナー(https://litalico-c.jp/events/152)を開催しました。本レポートでは、当日のセミナー内容の一部を抜粋・編集してお伝えしていきます。

講師プロフィール
LITALICOジュニア 児童発達支援管理責任者
阿部(あべ)さん(以下、阿部)
LITALICOへ中途入社し、児童発達支援・放課後等デイサービスを運営する「LITALICOジュニア」にて児童指導員として従事。その後保育所等訪問支援事業の訪問支援員を担当し、2019年より児童発達支援管理責任者として勤務。現在は、社内の新任児童発達支援管理責任者の育成・研修実施に加え、虐待や不登校などの困難ケースのサポート業務も兼任。また、社外向けに保育士や支援職、関係機関向けの研修を担当。

はじめに:お子さまの「困りごと」をどう捉える?

ー講師の阿部からは、導入パートで参加者へある問いが投げかけられました。
(阿部)皆さんは、以下の状況に陥ったとき、どんな気持ちになりますか?

失くし物をしても「全く気にならない」という方もいれば、「気になるけど大丈夫」、「気になって仕事にならない」という方もいらっしゃるでしょう。人によって同じ出来事に対しての感じ方にそれぞれ違いがあるということです。

「困りごと(障害)」は個と環境の相互作用によって生じる

(阿部)個と環境がうまく噛み合わないことによって、困りごと(障害)がうまれることがあります。お子さまによっては、何か注意を受けたときの反応を例とすると、周囲の雑音が気になる、何度も聞き返されたりすることが嫌だと感じるなどの理由で、教室の外へ飛び出したり、教科書を投げてしまうといった行動が見られることもあるかもしれません。

私たちにできることは、お子さまごとに異なる困りごと(障害)の発生要因をよく知ろうとし、環境を整えることで、ポジティブな相互作用を生み出す働きかけだと考えています。

ここから、具体的な例を用いて説明していきます。

行動面に困難さのある子どもへの対応って?

(阿部)負のループに陥っていませんか?
園や学校、家庭において、「早くしなさい」「どうしてできないの?」といった声をかけてしまうこともあるかもしれませんが、それでは失敗体験が繰り返されるばかりで、子どもの自己肯定感が下がってしまうかもしれません。私たち支援者も、お子さまにとっては自分の周囲をとりまく「環境」のひとつです。

お子さまがより力を発揮できるような環境をつくるために、大人(支援者)が必要な声掛けや行動のために変われるか?がとても大切です。例えば、お子さまへの働きかけを、ポジティブなかかわり方と、ネガティブなかかわり方の2つに分けて考えてみると、ちょっとした声かけにも大きな違いがあることが分かります。

(1)ポジティブな関わり例
・できないことよりも、できることに着目すること
・できないことについては、できるように支援者が環境設定や声かけを工夫すること

(2)ネガティブな関わり例
・できない時や失敗した後にネガティブな声をかけること
(「ダメでしょ」「だから言ったでしょ」「なんでそんなことするの」など)

例えば、掃除の時間、いつも掃除をせずにふざけている太郎くんがいたとします。今日はほうきを持って掃除に取り組んでいますが、太郎くんはほうき係ではありません。

ネガティブなかかわりの場合「やるんだったら自分の係をやりなさい」と言ってしまいたくなるかもしれません。しかし、ポジティブな関わり方を意識し、太郎くんが自分から掃除に取り組んでいることに観点を置くと「ほうきを使って掃除してるね!素晴らしい!」といった声かけができると思います。

結果として、太郎くんは掃除に取り組んだ積極的な姿勢に対して褒められるので、「明日も掃除をやってみようかな」と思えるようになります。これまでは掃除に参加することがなかった太郎くんにとって、掃除に対して前向きに取り組むひとつのきっかけになったということですね。掃除に取り組めるようになったら、「今日の太郎くんはほうき係だから、ほうきをお願いできるかな?」と具体的な役割を声かけしてみるといいでしょう。

もしも「困った行動」に出会ったら?

(阿部)お子さまの困った行動への対処方法として、3つのポイントに絞ってお伝えしていきます。
①問題行動が起きにくい環境を整える
問題行動のきっかけとなるような不快な刺激を取り除くという視点で、周囲の環境を整えてみるのも大切です。伝え方としても、お子さまの理解度に合わせて、端的に具体的に、ないしは視覚的に理解しやすいように伝えるなど様々な手段があります。先々の見通しがないと不安なお子さまに対しては、事前に時系列で見通しを伝える、というのも有効的な可能性があります。環境整備をして改善につながったお子さまの支援例を紹介します。


<片付けが苦手なお子さまの事例>

この子は、元々片付けがとても苦手で、声掛けをしても注意散漫で最後までやりきるのが難しいといった状況でした。そこで、「登校してからやるべきこと」をマグネットに書き出すタスク管理シートを作りました。終わったらそれらのマグネットを裏返すことを繰り返していくと、その子が大好きな戦車の絵が浮かび上がってくるという仕掛けです。結果、お子さまが自分ひとりで登校後の身支度・整理ができる頻度が増えていきました。

②適切な行動につながるよう手助けする
「適切な行動を知っているけれど、うまく使いこなせておらず自分自身で判断してその行動を起こせていない場合(不足学習)」は、困った行動が出る前に手助けをするのが効果的です。アイコンタクト、視覚補助、声掛け、動きのサポートなど、お子さま自身が「今、どんな行動をするのが適切な場面」か、思い出せる手がかりを支援者が伝えるのがポイントになります。

<授業中に落書きなど別のことをしているお子さまの例>

この事例では、特定の誰かというよりも、クラス全体が授業中に集中が切れると落書きをするなど関係のないことをして過ごすことがあり、担任の先生に困りがありました。そこで、教室の後ろにコーナーを設け、お子さまが作った絵や折り紙を掲示してOKというルールを設けました。貼った人は、終わりの会で作った感想をお話ししてもらうようにしたんです。コーナーを設けた当初は、絵を貼るために授業中に落書きをするお子さまが一時的に増えましたが、「どうしてこの絵を描いたの?」「とても上手に描いたんだね」などと承認されたり、見てもらえるという経験を通じて、結果的には授業を聞く時間と制作する時間とを明確に切り替えできるお子さまが増えました。

③クールダウンを促す
不快な感情がたまってきている場合や、困った行動が起きてしまってヒートアップしている場合には、まず落ち着けるように環境を整えることが必要になります。「その場から離れる」「フードを被る」「水を飲む」「深呼吸する」「安心できる人に抱きしめてもらう」などの行動を通じて、まずはクールダウンを促しましょう。

<通常学級にクールダウンスペースを取り入れた事例>

この事例では、教室の中で落ち着きづらかったり、しんどいと感じたお子さまが落ち着けるスペースを設けるために、マットや机、段ボールを使ってクールダウンスペースをつくりました。クールダウンスぺースを導入した当初は、スペースの必要ないお子さまがふざけて過ごすような様子が見られましたが、担任の先生から「このスペースは、メガネが必要な人にメガネがあるように、落ち着くことが必要な人のためにつくったスペースなんだ」とお話しいただいたことをきっかけに、クールダウンが必要なお子さまが、適切なタイミングで自発的に使えるようになりました。

まとめ:個と環境の相互作用によって困りごと(障害)はうまれる

(阿部)同じような小学校1年生のお子さまであっても、年少のお子さまであっても、一人ひとり性格や特性、くせ、身体的特徴、コミュニケーション力は異なります。一方で、園や学校では同じような教室の構造になっていることが多いのではないでしょうか。しかしながら、一部のお子さまにとっては環境が学習環境としては最適でない場合もあります。このお子さまがなぜこの行動をするんだろう?」と思った時は、使用する道具や周囲の環境、大人の働きかけから変えられることはないだろうかという考えのもと、ここまでに伝えたような工夫をしてみていただけるとよいかもしれません。

また、今日のセミナー内容はお子さまと支援者間の関わりだけではなく、大人同士のかかわりにもいかせるものだと考えています。私たちはお互いに違う捉え方をする『個』である一方、それぞれに影響を及ぼしあう『環境』であることを認識することが大切なのではないでしょうか。ぜひ明日からまた、お子さまや大人同士とのかかわりを意識してみていただけたらと思います。

ー イベントレポートは以上となります。LITALICOでは、毎月社内の専門家や外部の講師をお招きして児童福祉や就労支援にかかわる従事者の方を対象にさまざまなイベントを実施しています。ぜひ今後の開催もチェックしてみてください。


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