「中高生ひとり一人の可能性を一人でも多く、最大限伸ばす」をミッションに掲げ、2010年の創業から次世代デジタル人材育成を手がけるEdTech企業、ライフイズテック。当社ではIT・プログラミング教育サービスを学生向けのキャンプやスクールだけでなく、企業で働く社会人に向けても提供しています。今回はDX事業部で活躍する樋口美紀さんに立ち上げ期から現在に至るまでの軌跡、さらに事業の意義や将来性についてお話をうかがいました。
Profile 樋口美紀(Miki Higuchi)DX事業部 エバンジェリスト 東京大学大学院教育学研究科修了後、大手精密機器メーカーに入社。エンタープライズ向けサービス事業のコンサルティング営業を担当後、同事業の事業企画スタッフとして中期戦略や年間予算の策定業務に従事。2021年2月、ライフイズテック入社。学校向けのオンラインプログラミング教材のマーケティングを担当したのち、法人向けのDX人材育成事業の立ち上げに従事。大手企業を中心に数多くの組織におけるDX人財育成やDXが進む組織カルチャーの醸成を支援している。
根っからの“教育オタク”が教育を仕事にするまで ──これまでのキャリアについて教えていただけますか? 教育系の大学院を修了しましたが、教育業界を一度離れ、最初のキャリアは大手の精密機器メーカーの総合職からスタートし、営業企画や事業企画など主に企画系の仕事に携わっていました。子どもの頃から好きな教科は図工!と即答するぐらい何かを創り出すことが好きなのと、同じぐらいの温度感で人が好きなタイプ。人々のコミュニケーションを豊かにするために、人間中心にものづくり・ことづくりを進める企業理念に惹かれ、入社を決めました 。
──教育系から製造業というのは異色といえば異色ですね 本音をいえば根っからの教育オタクで(笑)教職課程も受けていたし、教育に関するアルバイトも多く経験しました。ただ、当時の教育業界はレガシーな側面が強くて。教育という仕事の尊さは充分わかってはいたものの、新しいものを創りたいという想いが果たして教育現場で実現できるのか、という疑問もあり、製造業の世界に飛び込みました。
──その後、あらためて教育の世界に戻って来たいきさつを教えてください 前職の会社のことは今でも大好きです。大きな組織に在籍しながら中期戦略の立案や年間予算の策定といった重要なお仕事を経験し、充実した日々を送ってはいたのですが……経営方針の変更に伴い会社の理念が大きく変わった時に、転職を考えはじめました。
ただ、転職活動を始めた当初は「これをやりたい」という明確な軸がなく、年収や福利厚生を基準に仕事探しをしていました。そんなときにやってきたのがコロナ禍です。一時帰休で、仕事ができない日々を送る中で、自身のキャリアを見つめ直す時間ができました。また帰休により一時的に月収は下がりましたが、生活ができることもわかりました。だったら何も条件に縛られることなく、本当に自分のやりたいことを軸に転職先を探してみたい。自然とベンチャーやスタートアップまで選択肢に加わることになりました。そこであらためてやりたいことは何かを突き詰めて考えた。その答えが「教育」だったのです。
──教育への思い入れには何か理由があるのでしょうか? 両親ともに教育に関する仕事に携わっていたので家庭環境によるものもあったのではないかと思いますが、最も自身の原体験になっていることは、大学時代のアルバイトでの経験です。中学受験対策の学習塾で、個別指導を担当したお子さんがいわゆるグレーゾーンのお子さんでした。数字の概念を理解することが難しい特性を持っていて、算数では手が止まってしまう状態でした。
私もあの手この手を使ってなんとか理解してもらうよう努力します。だけど、やればやるほど混乱させてしまうばかり。私も落ち込みますし、その子もガックリきてしまうという悪循環に陥っていました。いろいろ悩んだ末に、概念がわからなくてもいつも0点の算数で何かひとつでもわかったという体験ができたほうがいいんじゃないか。たとえ計算が上手にできなくても楽しく生きていければそのほうが幸せなんじゃないか、と思い至ったんです。
そこからは概念の理解の優先度は下げ、時には「おまじない」と言ったような言葉も使いながら、暗記で対応できるものを中心に伝えるようにしました。 数の本質理解よりも、パズルゲームのように解いたのだとしても、私もできるんだという達成感や自己肯定感を持ってもらうことに焦点を切り替えて、受験期までを伴走しました。
そして合格発表の日。お母様から電話で「一次試験は残念な結果でした。でも、先生、うちの子がもう一回チャレンジしたい、って言ってきたんですよ。ありがとうございます」と涙声でお話いただけて。普段は、どちらかというと遠慮がちなお子さんが、もう一度やってみたいと自ら主張するまでの成長を見せてくれたことが私は本当にうれしかった。この時、人が変わる瞬間に立ち会える教育の素晴らしさを知ったのです。
理念やビジョンと実際にやっていることのズレがない集団 ──ライフイズテックを知ったきっかけは? 最初はEdTechの分野でメディア等でも名前をよく目にした企業を志望していました。ところがエージェントさんと話をしていくうちに「もしかすると樋口さんに合うのはこの会社かもしれない」と紹介されたのがライフイズテックだったんです。
教育系のベンチャーはどの会社も素晴らしい理念やビジョンを掲げているのですが、教育をビジネスにするのにはかなり時間がかかります。そのため崇高な理念と実際の収益確保の面でギャップが生じるケースが往々にしてありました。難しいことは重々承知なのですが、違和感が拭えなかったというのが本音のところでした。
そんな中、ライフイズテックはそうしたズレが一切ありませんでした。面接でお話をさせていただいた経営陣やメンバーの方々のお話を伺う中で、この会社で働きたいという思いが固まりました。単年で成果をあげていきつつ、ロングスパンでもしっかりと考え抜かれていた。言っていることとやっていることの整合性が取れている点に強く惹かれたんです。
──入社してから現在に至るまでの経緯を教えてください まずは学校向けオンラインプログラミング教材のマーケティング部門で事業拡大に向けての施策を考えたり、学校の先生方へのインタビューを実施していました。その後、3ヶ月目ぐらいのタイミングでDX事業部の原型となるプロジェクトが立ち上がります。そこにBtoBの事業企画というバックグラウンドを買われてお声がけいただきました。スタートはたった3名。いわゆるオリジナルメンバーです。
とても貴重な0→1を経験させていただきました。ライフイズテックにとってはじめてのBtoB事業です。顧客企業のリストもありませんし、何もかも手探りの状態。でも素晴らしいプログラムをつくれるメンバーがいて、10年間にわたって蓄積されたノウハウもあります。それをどうやって必要としている人々に気づいてもらうか。一つひとつコツコツやってきて、ありがたいことに現在では大手企業様とのお取引もどんどん増えています。
立ち上げ当初は企画もやれば営業もやる。コンテンツもつくっていたしマーケティングにも踏み込むなど、それこそなんでもやっていましたね。それが10名となり、30名へと拡大するなかで役割分担も進み、組織化が進んでいるところです。
──仕事のやりがいはどこにありますか? 研修やワークショップをお届けする際に、現場で起こる受講者様の表情の変化、そして実施後に受講者様や担当者様からいただく言葉が、やりがいです。研修後に、感謝のメールをいただくことも少なくありません。しかも1年ほど経ってから「あの時に受けた研修がいまになって活かされている」といったコメントをいただけることも。本当にやってて良かったと思う瞬間ですね。
またDX事業部を気に入っていただけるだけでなく、会社全体のファンになってくださる方も少なくありません。ライフイズテックがやっていることそのものが素敵だから応援したい、と大企業の部長クラスの方々が言ってくださるんですね。私自身、ミッションやビジョンに惹かれて入社した一人ですから、これは本当にうれしいことです。
社会課題にリアリティと説得力を持ってアプローチできる ──ライフイズテックが企業向けDX研修を手掛ける意義とは 中高生向けのIT人材育成というイメージが強いだけに違和感を覚えるかもしれませんよね。法人向けのDX事業部を立ち上げた背景にあったのは、当時10年間、中高生向けの事業を推進する中で見えてきた課題でした。それは次世代のデジタル人材を育成したとしても受け入れ側の企業のデジタル化が遅れていては活躍できる場が不足しているのでは、という懸念です。デジタル人材である中高生が社会に出た時に思う存分能力を発揮できるフィールドを増やしたい、という思いから立ち上がった事業なんです。
──なるほど、実に理にかなったというか、納得の理由です 最近では危機感を認識されている企業も増えてきています。「情報 I 」という科目でPythonを習ってきた高校生が大学進学し、社会に出ていくのが2029年。私たちは「2029年問題」と呼んでいるのですが、その頃に企業側が優秀なスキルを持った人材を受け入れることができるのか。彼らを活躍させる土壌は果たしてあるのか。ライフイズテックと企業側の間で課題感が一致しつつあるところです。
──競合優位性はどのようなところにあるのですか? 本当にそこまでこだわるの?というくらい体験設計にこだわっています。私たちはLX(ラーニングエクスペリエンス)と呼んでいるのですが、受講者のみなさんからもこうした世界観を作っていけるのはライフイズテックならでは、とご評価いただくほどです。またメンターとして活躍する大学生、大学院生などの若い世代とのつながりを持ち続けられているのも他の研修ビジネス事業者にはなかなかできないことだと思います。
──3人での立ち上げから現在は30名規模にまで成長しました 振り返ると10名ぐらいの頃が最も大変でした。たとえばプログラムのカスタマイズ。お客様にとっては絶対こうしたほうがいい、とわかっていてもそれができる体力が当時の自分たちにはなくて、できませんとお伝えするしかなかった。営業としてはお客様にいいものを届けたいし、同時に社内事情も理解している状態です。正直、ジレンマを抱えていました。
ただ、その時期を乗り越えていまは30名。いろんな強みや得意分野を持っている人が仲間に加わったことで、あらためてカスタマイズを組織でできる仕組みが作れました。DX事業部は一人ひとりの強みを活かして働ける環境を事業部長をはじめ、マネジャー陣がしっかり作ってくれているので、得意分野で能力を発揮したい方に最適です。逆にマネジメントに挑戦したい方には組織づくりを仕事にすることもできます。
自分も事業も会社も理想の形に近づきつつある手応え ──ますます成長していくであろうDX事業部の未来はどうなるのでしょう レガシーな会社の中で岩盤のように変わらなかったことが、ライフイズテックのプログラムによって何かしらの影響を受けて動き出す。あるいはヒエラルキーが強い組織が時代の変化についていけなくなる中でライフイズテックのプログラムが存在感を発揮する。10年後、20年後に日本の企業の成功事例として語り継がれるエピソードに必ずライフイズテックの名前が刻まれる。そんな未来を創造していきたいです。もちろん世の中を変えるのは私たち1社だけでは不可能です。だからこそ、1社でも多くの企業の方々に私たちのサービスもお届けしたいですし、一緒に未来を創る仲間を増やしていきたいと考えています。
──このミッションを実現させるために人材も増やさないとですね もちろんです。DX事業部、あるいはライフイズテック全体に共通して求められる素養はベクトルが外に向かっていること。そして、実行力という意味では、待ちの姿勢ではなく自分で考えて動ける、オーナーシップがあることが重要なポイントではないでしょうか。
いまDX事業部は加速度的に伸びていて、フェーズとしては10から100へという時期を迎えました。そんな中で面白く感じられる点としては日本を代表するような企業との共同企画や、ビッグプロジェクトからの引き合いが増えてくるということ。すでにライフイズテックを知っているお客様や、お客様同士でつながりがある状態にアプローチすることも可能です。事業のダイナミズムを肌で感じられる醍醐味に溢れています。
最近ではかなり長いお付き合いとなるケースも増えてきています。一回の研修に魂を込めていた時代から、お客様の会社の変化を作りつつ自分たちも成長していける、ロングショットでの取り組みが主流となってきました。お客様と一体感を持って仕事に取り組めることも魅力のひとつといえるでしょう。
──仕事以外の働く環境としての魅力はどんなところにありますか? 風通しの良さは抜群ですし、先ほども言いましたがオーナーシップを持って提案すればやりたいことに挑戦できる環境です。ただしそこには責任が伴うことを付け加えておきます。またDX事業部はどんどん変化を遂げてきています。その変化に柔軟にアジャストできることも求められます。いわゆるセルフ・アンラーニングなのですが、それが比較的しやすい職場であるとも言えます。
たとえば転職して3ヶ月目って落ち込んでしまう方が多い時期かなとと思うんです。前職でできていたことが上手くできなかったり、成果を焦るあまり空回りしたり。転職したての頃のアドレナリンが切れるのがちょうど3ヶ月目ぐらいで、得てして無能感に苛まれがち。でも、それこそまさにアンラーニングの瞬間だと思っていて。その落ち込みを克服できるかどうか、これは成長に必要なことなんだと思って前に進めるかどうかが鍵を握っているんですよね。
そういうときに必要な自己開示がしやすい環境がDX事業部にはあります。無理に自己完結しなくても、みんな話を聞いてくれる。これもDX事業部の魅力のひとつかと思います。
──最後に、樋口さんの将来のビジョンがあれば聞かせてください 事業部の立ち上げを経験したときにやってみたいな、と思った構想がひとつあります。それは突出したスキル、才能を持ちながらも同時に生きづらさを抱えている子供たちが、もっと自身の才能を活かして活躍できるような育成や採用の仕組みを、企業とともに創り上げていくことです。例えば、シリコンバレーでは特性を強く持った人材が活躍をしています。特定の分野でいわゆる天才的な能力を持っているけれど、例えば社会的なコミュニケーションの進め方は一般的な方とは違う感覚を持つ人もいるでしょう。そういった土壌を日本の企業にも根付かせていきたい。育成資金や環境づくりなどに、企業を含めた社会全体で手を差し伸べられるようになれば。
いまDX事業を通じてライフイズテックのファンが増えてきています。私のこの構想にも一緒にやりたいと言ってくれるお客様がきっといるはずです。壮大なビジョンかもしれませんが、その実現に自分も事業も会社も一步ずつ近づきつつある手応えを感じています。 転職をしようと決めた時は、このような将来のビジョンを数年後に自分が語っているとは思ってもいませんでした。ライフイズテックに入社し、事業の立ち上げを経験し、チームのみんなと多くの企業の方々との出会いを通して、今、こうした新しいビジョンを持てていることを幸せだと感じています。想いをカタチにしていける、そんな仕事に向き合える環境があるので、ぜひチャレンジを求めている方に、ライフイズテックの仲間になっていただけたらと思います。
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