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スタートアップ企業の女性経営者が考える介護と育児で目指す世界とは?(株式会社aba・宇井吉美さん)

こんにちは。人事兼広報の三輪です。
「日本の子供たちを笑顔にする」といったビジョンにリンクさせ、他の業界や領域で活動される方々の考えを皆様にお届けいたします。
本企画のバックナンバーは、以下からご参照ください。

さて、今回インタビューを受けてくださったのは、株式会社aba 代表取締役社長の宇井吉美さん。介護テックを手がけるスタートアップ企業の経営責任者であり、2児のお母さんでもあります。

📝 宇井吉美さんについて(公式サイト:https://www.aba-lab.com より抜粋)

三輪:宇井さんご無沙汰しています!お忙しいところありがとうございます。早速ですがインタビューを開始させていただきます。まず、宇井さんの現在の活動内容を教えていただいてもよろしいでしょうか?

2つの活動

宇井社長(以下、宇井):プライベートまで含めると大きくは二つの活動をしています。

一つ目は、株式会社abaの代表取締役としての活動です。
こちらはもともと大学の時に開発した介護ロボットの一種である排泄ケアシステムの“Helppad”という商品を製品化するために会社を興したことから始まりました。ホームページではコンサル事業などの情報も掲載しているのですが、基本的に今はHelppadの販売に注力しています。現在は、大体100施設ほどにご導入いただいています。そして2023年の秋には、施設利用者さんの意見を取り入れ、センサーの仕組みそのものを変更させた“Helppad2”という製品をリリース予定です。Helppadをさらにバージョンアップし、そこから品質を高め、拡販をしていくことが私の仕事です。

そして、二つ目。本日のインタビューの主旨にもリンクすると思うのですが、私自身に子供が二人いることもあり、船橋ワーキングマザーの会という地域活動の事務局を担当しています。こちらはコミュニティ作りが主な活動で、毎月一回土曜日におしゃべり会というイベントを開催しています。コロナ禍の間はオンライン実施に切り替えていましたが、去年の秋ぐらいからは徐々にリアルの場も再開しています。

三輪:イベント内での活動はどういったものですか?

宇井:保活(子を保育所に入所するために保護者が行う活動)や親子防災、共働き家庭での家事の分担方法だとか、色々な働き方をしているワーキングママ達が、自分のキャリアを諦めずに子供やパートナーと地域でどう生きていくかを模索していく互助を促進しています。私はもともとそこの会員だったのですが、途中から運営側に加えてもらい、インスタライブを開催したりと露出もしています。会社だとやらないようなことも経験させてもらっていて面白いです。笑

三輪:インスタライブですか。想像していた地域の互助会とは少し違いますね。その会は主にママさん達の育児とキャリアの両立がテーマなのでしょうか?

宇井:そうですね。こちらの互助会は10年以上前に発足しているのですけど、当時は、子供を産んだら女性は家に入るものでしょう?みたいな社会風潮が強く、仮に復職できたとしても時短勤務で、ポジションを含めた社会的地位を高めることも難しい時代だったと思っています。その頃、現代表らが中心になって立ち上げたんです。自分のキャリアもパートナーとの生活も諦めずに地域みんなで子育てしていく環境作り、その都度コミュニティの中で一緒に解決していく、そういったことに繋げています。

三輪:ワーママ会も精力的に実施されているとのことで日々多忙そうに見受けられますが、宇井さんが双方の活動に力を注げられる理由は何でしょうか?

宇井:abaの活動と共通していることが多く、学びに繋がるからだと思います。高齢者介護はテクノロジーを利用し、子供に関しては地域活動や地域コミュニティという方法で支援していることから、介護者が高齢者を支えることとパパやママが子供を支えることは似ている部分があるかなと考えています。だから、どちらにおいても良し悪しを体感しながら学ぶことができていますね。

三輪:なるほど。ワーママ会へ参加したきっかけについても教えてもらえますか?

宇井:はい。当時は、代表なので産育休を取得するという立場ではないということもあり、子供を産んだあとどうやって仕事に戻るのか、働き続けるイメージが全然湧いていませんでした。そんな悩みを抱えるなか、臨月のときに初めてワーママ会のことを知ったことがきっかけです。
私の実家は関東の都市部からは離れたエリアで、祖父母と同居されていたり自営業の方だったり外部に子供を預ける方が都市部に比べると少ないんですよね。その印象が強かったので、同じく自営業である私も3歳ぐらいまでは一緒に居た方が良いのかな?と漠然と考えてました。ワーママ会の中でそういった自分の身の上を話して、同じ境遇のワーママさんがどうやって両立したか等のイロハを教えてもらいました。今では運営側にも関わっていますが、初めはギブしてもらう側の会員でしたね。

abaの歴史や転機、M&Aや資金調達に関して

三輪:abaさんのこれまでの歴史と転機などがあればお伺いしたいです。VC(ベンチャーキャピタル)から累計12億円の資金調達をされたニュースなんかも拝見しましたが、このあたりの背景も教えてください。

宇井:まず、2007年にabaの前進となるプロジェクトを立ち上げ、2008年に排泄センサーの開発をする機会がありました。ここが私の中の始まりです。会社を作るまでの2008年から2011年は学業の一環としてプロジェクトを稼働させていたので、今ほど心身を注げてはいませんでした。それでも何とか完成したプロトタイプを元に、共同で製品化してくれる企業を探していました。その時、東日本大震災をきっかけに進めていた提携話が破綻したこともあり、法人化する選択肢をとったことは大きな転機だったなと思っています。もちろん最初から会社っぽく活動できていたわけもなく、2016年までは自転車操業でした。私が介護職で稼いだお金でエンジニアの給料を払うみたいな、とんでもないキャッシュフローでしたね。そして、2016年。総務省のI-Challenge!(ICTイノベーション創出チャレンジプログラム)という補助事業を取得でき、abaにとって物凄く大きなお金が得られました。そこから、排泄センサーを用いて開発したい旨を国に提案、国益になると判断していただき、業務サイクルを改善して現在まで事業展開ができるようになりました。

三輪:そういった変化を経て段々と組織化してきたんですね。

宇井:組織といっても一般的に想像される組織ではないかと思います。実家がラーメン屋で家族経営していたこともあり、下町ロケットのようなファミリー感のある組織に憧れていたので、従業員も含めてみんながファミリーだという意識を持っています。ですが、スタートアップやベンチャーって成長痛を伴いながら血の入れ替えをしながら進んでいくものだと思うんですよね。スポーツの世界で、年齢や怪我、戦力外通告を受けてリタイアされる方がいても「仕方ない」と認められるように、事業でも本来はそのスタンスで動かないといけないはずです。当時を振り返るとおかしな乖離を作ってしまったなぁと思っています。その歪みに気持ちが離れていくメンバーも多かったですね。2020年の頭ぐらいに退職者が増えた時期がありましたが、この時は本当にもう無理かなって思うこともありました。ちょうどその頃に買収の話もありまして、私自身疲れていた実感もあり、周囲からの助言でも「ここで買収されて少し落ち着いてから次の挑戦をしたっていいじゃないか」「それも1つのExitの形だと思う」と言われていました。

ですが、その買収の提案を受けてから、IPOをされた方や、会社を売却された方、買取される方、M&Aを仲介している方など40~50人ぐらいから話を聞いている間、M&Aをしなくていい正当な理由を探している自分がいることを、相談する人たち何人かに指摘されて。フラットに相談してるよりは、売却したくない気持ちがあるから売却しない正当な理由を確認しているみたいな感じがする。だから、既に宇井さんの気持ちは固まってるんだろうねって。また、それと並行してVCからの資金調達も進めていました。調達の話を進めていく中で徐々に一皮二皮剥けていく感覚があって、自分の気持ちに気付かされたこともあり資金調達にシフトすることにしました。

資金調達に関してもう少し補足すると、2019年にVCから2度目のファイナンスをしていて、その頃に資金調達の波に乗るようになったんですよ。最初の補助金が取れたときに一人目の出産、1回目のエクイティファイナンスとVCからのファイナンスした時に二人目の妊娠をしています。そういった状況でプライベートも含めて揉みくちゃにされて、色々な外部環境に鍛えてもらったところはあったなぁと思います。

M&Aの裏話

三輪:踏み込んだ内容までも教えていただきありがとうございます。ポジティブな結果に至っているから聞いてしまいますが、M&A関連の話を社内のメンバーには説明されていたのでしょうか?

宇井:初めは取締役しか知らなかったのですが、もう途中からめっちゃしゃべってました。こういう会社から話が来ていてどうしようかな?みたいな。笑

三輪:宇井さんらしいです。笑 今でもM&Aしない気持ちに変わりはないですよね?

宇井:そうですね。いつだってカードとしては持っていますが、当時相談した方々と話させてもらった上で、そもそも私ってすごいわがままだなって言うのを改めて自覚しました。M&Aされた方々って親会社になる会社のカルチャーにしっかりフィットされるんですよね。会社の一部になるのだから当然です。だからわがままな私には難しいかもと。今まで手がけた受託開発もですが、受託側なのに提案して企画からひっくり返すことがほとんどで、自分の納得してる企画でないとやる気が削がれてしまうんです。少なくとも私が代表している間はabaは独立企業が良いと思っていますね。

abaを形成するビジョン

宇井:ありがたいことにabaのカルチャーやビジョン作りをやらせてもらっているのですが、打ち立てているビジョンが他社のどのケアテックメーカーとも違うんですよね。世界観が新しすぎるみたいで・・・。例えば、abaのビジョンを“テクノロジーで誰もが介護できる社会”から“テクノロジーで誰もが介護したくなる社会を作る”に変えたんですよ。以前のビジョンだと、どんな状態でも介護できていれば良いというようにになりかねないなと。私自身も学生時代に祖母を介護していて、つらいな、大変だなと思っていました。ですが、職場で介護を経験した時に、介護は本当は楽しいということを現場の人たちから教えてもらいました。その体験を元に、もっと楽しく介護はできるんだと訴えたかったんですね。

三輪:介護はしなければいけない義務的なものとして世間に認知されている風潮があるからですね。

宇井:その通りです。マストなものという感じだったんですけど、違うな、楽しいなと思ったんですね。ですが介護をされる方はそもそも楽しむ余裕がないんだってことも教えてもらいました。だからこそ、他のメーカーさんや昔の私は「介護ってつらいものだ」「つらいから誰もやりたくない」「誰も介護者にはなりたくないから人じゃない何かに変わってほしいよね」「だからテクノロジーを入れたほうがいいよね」と、介護はネガティブなものという軸で考えてしまうんです。だけどabaは「介護は本当は楽しいけど楽しんでいる余裕がない」「楽しんでいる余裕がないから手に抱えてるいっぱいあるものを減らそう。」「減らすために介護の現場にテクノロジーを入れよう。」と考えています。現場にテクノロジーを入れることに関しては一緒なのですが、根本にある思想が違うので、出来上がってくるモノが全然異なるんですよね。その一点をとっても、どこのメーカーにもハマらないなって思っています。

三輪:確かに、つらかったことを楽にできますよとか軽減することをアプローチするモノが多いですよね。

宇井:abaは介護者ファーストなんですよ。他のメーカーさんは、要介護者も介護者もWin-Winでと話をされるのですが、介護職の経験を通じて思うのは誰よりも介護者本人のこと。誰が高齢者や障害者のことを一番考えているかって、私は介護者だと思っています。それがプロの介護者か家族介護者かはさておき。一番身近にいる介護者を飛び越えて、メーカーがご本人の事を考えるっておこがましいかなって。要介護者を支援する介護者を全力で支援する。その結果として要介護者に良いケアが届く。そうありたいと考えてます。

三輪:介護は楽しい、だから本当に必要とする前から始めていこう。そのアプローチの仕方ですと、そういった行動に繋がるでしょうし、他社製品との導線も角度が異なりそうですね。

宇井:私自身楽しいものだって前提があるから、ビジョンの前半部分の“誰もが”という表現にしています。誰かに押し付けるのは違うと思いますし、そもそも統計データ上だけでも介護者って世界に9億人いるんですよ。日本だけでも900万人以上。また、国内では毎年10万人が介護離職をされていたり、仕事をしながら介護をするビジネスケアラーや子供が介護に関わるヤングケアラーも問題になっていますよね。クラスに2、3人はヤングケアラーといった状況です。もはや国民総出で介護をしている状態だと思っていますし、やはり、やりたくないと思う方が大多数かなと思います。もっとみんなで分散して、みんなで楽しくできるようにするためのテクノロジーはないかなって考えてますね。そして、そういった方々にまず届けようとするのがファーストプライオリティなんですけど、私はむしろ残りの71億人たちが立場問わず介護したくなるようにしたいんです。支援されている介護を受ける側の障害者や高齢者も含めた71億人が。要するに支えられている人達も支える側に関わるといった互いに互いを支え合う究極の自立支援なんですよね。

健康寿命に関する表現で「ピンピンコロリ」という言葉があります。最後まで自立して、最後は寝込むことなく亡くなる、そんな終わり方が人の迷惑にならないし良いといった意味合いの言葉ですが、私はむしろいつだって倒れられる社会がいいなって思っています。風邪をひいたら看病してほしい、入院したらお見舞いにも来て欲しい。ぎりぎりまで自分のことができるよりかは、みんなが支えるスキルやマインドで負担にも考えない、何度も立ち上がれるということが、社会のあり方として当たり前な状態であって欲しいと思います。仏教の有名な説話で、天国と地獄では食事をするときに1mほどの長い箸を使わなければいけないというお話があるのですが、天国の人は目の前の人に食べさせてあげる、自分も向かいの人に食べさせてもらう。しかし地獄の人は、長い箸を使って自分で食べようとして誰一人として御馳走を食べることができない。私は、天国側の世界観が良いなと思います。

宇井社長の育児に関して

三輪:仕事と育児の両立に紐づくところかなと思うのですが、1日のスケジュールはどのような流れでしょうか?

宇井:最近は、5時ぐらいに起きてメールやSlackのチェック、6時から営業のトップと朝会をして・・・。

三輪:6時ですか!?

宇井:もともと彼は朝が早いんです。トライアスロンを2回完走していて、パーソナルトレーナーもされていたので体力もあるからなのか。私はちょっと頑張って起きていますが・・・。笑

そこから、長い時は7時ぐらいまで会議をして、子供たちの準備と送迎を挟んで9時前に出勤しています。そこから10時ぐらいまでは主に採用面談や執筆系の仕事。10時から16時が営業活動です。私の現在のメイン業務は製品販売なので、日中帯はそこに時間を充てています。
そして16時から採用面談、取材の応対。18時ぐらいに子供たちを迎えに行き、そこからママに戻ります。

ただその間も家事をしながら電話対応やテレビ会議をすることもあり、子育て上これは良いのか?と疑問に思うこともあります。資金調達のときには、ヘッドセットしながら会話している様をずっと見聞きしていたはずです。

三輪:もしかしたら、ビジネス上の教育ではすごい英才教育なのかもしれない。

山下:賢いお子さんに育ちそうな感じがしますね。

三輪:出資してもらったらいいんじゃない?とお子様が言い始めるかもしれないですね。

宇井:ヤマは超えたので最近は会議が無い日もあるのですが、「ママ、テレビ会議は?今日は何で無いの?」と言われます。会議があるのがデフォルトになっているようで、「なんでないんだろうね?誰も私と会議してくれないんだよね。」って返してます。笑

三輪:就寝時間は何時ぐらいですか?

宇井:子供は私といるとどうしてもテンション上がっちゃうみたいで、22時を過ぎてしまうことが多いです。出張で家を空けるときはパパにお任せしますが、そういう時は20時半ぐらいに寝ているようで。睡眠時間的には私がいない方が良いかもしれない、なんて思います。笑

私自身は子供たちと一緒に寝落ちしてしまうか、目が冴えてる日や仕事が溜まっている日は24時ぐらいまで。そして先ほど話した朝会に寝坊することもたまにあり、営業トップから「起きたら声かけてください。」とDMが届いていることがあります。笑

三輪:パワフルですね。宇井さんは旦那さんも含め共働きなのでしたっけ?

宇井:はい。共働きで、パパもうちの会社で働いています。

三輪:ではご夫婦でHelppadに関わってるわけですね。でしたら、子育てや家事に充てる時間もお互いの状況を見つつ調整し合えそうですね。

宇井:そうですね。2人目を授かったときは、かなり助けてもらいました。ただ、私は役員でパパは社員ですから、そこの立場は明確に切り分けるようにも気をつけています。

育児の中で大事にしていること

三輪:ご夫婦の中で、育児で大事にしている部分やこだわりはありますか?

宇井:私はずぼらなので、人にとにかく頼りまくるようにしています。子供が好きだからといっても育児が得意かというとそれは別の話だと考えています。介護も同じところがあるのですけど、嫁なんだから介護するものだとか、ママなんだから子育てするもんだとか、それは違うかなと。子育てや介護する側は能力上できるできないの話をしているのに、すべきすべきでない、またはその内できるだろうとかで返される論調が世の中には多いなぁと。さらに言えば、それができないなら子供を産むなよという意見。これは例えば、走るのが好きだとしても、好きな人みんなが足が速いわけじゃないのと一緒だと思うんですよね。足の遅い人に、努力をしてオリンピック出ろとか、速く走れないなら走るなよと言っているのと同じ気がしていて。飛躍しているなと思ってはいますが、論理や言いたいことは分かっているつもりです。最初は私も、子供が好きだから案外できるかもと思っていましたし、できないことも伸びていくかなと考えていました。これが恐ろしいほどできないんですよね。自分で抱えすぎていつもイライラするママでいるぐらいならば、保育園の先生やベビーシッター、子供の面倒を見れる近所のママさんに頼りまくることを選択しています。色々な方から愛情を分け与えてもらいつつ、私といる時はなるべく笑顔で過ごせるようにと。そこはこだわっているポイントかもしれません。パパの場合はママが全然やらないから俺がやらなきゃ、みたいな感じで男女逆転してる場面はありますが笑、結果的に子供たちに渡る子育ての質が高まるように頑張っています。

三輪:確かに、性別や立場に応じた義務感で押し付け合ったりするような環境ではなく、できる人を頼り頼れるような環境を増やしていけたら合理的かもしれないですね。

宇井:先ほど話した、倒れられる社会ですね。育児に関してはほとんどがその子のママが担当することで、家庭によってはママが体調を崩して育児がままならなくなることも多いと思っていて、もっと周囲を頼れる環境が必要です。ワーママ会でも地域という大家族でお互いの子供の面倒を見合うってことを大事にしていて、だから事務局メンバーは写真をみても抱っこしてるのが違う子供の親だったりして、親子が判別できないことがあります。笑
今の世の中は少子高齢化を課題として子供の存在がますます大事だとされるので、だからこそ助けあってみんなで育てればいいのかなって思います。先ほどの論調なんかは責任感のある人ほど刺さっちゃうんですよね。そして傷ついちゃうと思うので、みんなでうまく擁護していけたらなとも思います。

育児に対する国のサポートに対して

三輪:一時保育の利用の話も伺いましたが、他に病児保育の支援だったりと国内の支援状況に関してご意見があれば教えてください。

宇井:そうですね。幼児保育の補助金に関しては、内閣府がベビーシッターにも1回あたり上限8,000円の補助金を出すことになって相当頼みやすくなったなと感じます。近所のママさんの預け合いサービスもありますし。

ただ、子供が病気になった時はまだまだ大変だなと思います。ある時、病児保育施設に預けようかと思ったんですが、「インフルエンザに罹っている子が5人来ているので覚悟してくださいね。」と言われ、控えたことがありました。その日は、子供を看ながら仕事をしました。感染拡大の側面で考えても、病児保育は訪問型が望ましいのかなと思いますが、介護と同じく個別対応ですとお金がかかっちゃうので、そこで利用できる補助金が増えるとかなり助かるかなと思います。子供が病気の時くらい仕事休んでやれよと意見が出そうな話ですが。

三輪:弊社は病児保育に関するサービスをリリースしているので、今のご意見やエピソードはすごい参考になるなと思いました。そのサービス自体は、病児保育の予約を電話ではなくブラウザから気軽にしてもらおう、また施設側もそのサービス上で予約状況が確認できるといった一気通貫のモノなのですが、そちらのサービスにも関わっている山下さんは、宇井さんの話を聞いて率直にどう思われました?

山下:営業担当の話を伺っていると、施設側のコストが支払えないという問題はありそうだなと思っています。なので、利用できる補助金が増えて利用できる人が増えて、となってくれると病児保育業界全体で良い風が吹きそうだなと。インフルエンザのエピソードは、施設さんによっては預かる部屋を分けて対応している施設もあるんですが、実際のところはうまく管理できていないという話も伺いますね。

宇井:この話をして、私は大丈夫だったという利用者さんの話もよく聞くので、施設によっていろいろ処置はしてるのかもしれません。とはいえ、このあたりに利用できる補助金が増えるとママさん達がさらに働きやすくなるかなとは思います。介護職や店舗販売業だとか、その現場以外でどうにもならない仕事をされているママさんは、どうしても預かってもらいたいといった場面はあるはずです。そういった際に訪問型に頼ると数万円の支出に繋がりますし、ならば欠勤をした方がマシだとも判断し兼ねない。ただ欠勤が続くと職場側も配置替えを検討せざるを得ない状態に発展する可能性もありますし、極端に言うと退職勧奨が起きてもおかしくはないですよね。私も経営者としてすごく分かります。お互いのために変えたほうが良いだろうとの考えが生まれてしまう。そこに訪問型の病児保育が今より有効に活用できる仕組みがあればリスクを防ぐ、少なくとも減らすことに繋がるなと思います。

育児に対する社会的な支援に対して

宇井:結婚=寿退社を当たり前とする文化の会社に勤めていたママさんがいたんですが、そのママさんはそこで初めて産休育休を取られた方でした。働く女性にとって新たな事例を社内に作ったものの、間が空かずに二人目の子を授かったことで自主退職に追い込まれたんですね。仕事がなくなった方って保育園に預けることができなくなるじゃないですか?その後、そのママさんは、一人目の子の手を引きながら就活するという状態になってしまいました。誤解の無いように説明を加えますが、制度上そうなっているだけで保育園側は何も悪くないんですよ。家に介護状態の方がいるとか、その子に障害があるとかでない限りは、基本的に退園するというルールなので。以前に議員さんとも会話をしたのですが、時限措置で、例えば下の子が満1歳になるまでは籍を置く、保育園に預けても良い、生まれたばかりの子は一時預かりを利用する等で、ママさんが就活できる状態を作ってあげて欲しいなと考えてます。

三輪:なるほど。現在の世の中は女性の社会進出や女性役員や役職者の輩出に着目されているかと思いますし、アンケート型の調査で女性比率、女性の役職者の人数の確認をされたりと国自体が後押しする風潮はあるのですが、お話いただいた事例も踏まえて実態が伴っていないケースが散見するなと感じますね。

宇井:やりようは幾らでもあると思いますが、まだまだ追い付いてないように思います。この手の話題に関しては色々なメディアでことあるごとに喋ってます。

まとめ

三輪:最後の質問になります。今後力を注ぎたいことを教えてください。

宇井:沢山ありますが一番は、Helppadを世の中に普及させることでオムツ交換のタイミングに迷わない状態を作りたいです。ありがたいことにHelppadはユーザー(要介護者)にもすごく愛してもらっていて、中には横展開をしてくださる方もいらっしゃいます。そういったユーザーには、アンバサダーとして参加してもらい、ユーザーとメーカーのように明確に区別せずボーダレスにしていけたらなと。やっぱり利用者の生の声が非常に大事で、我々にも忌憚ない意見を言ってもらえるような関係性を構築したいですね。
飛躍しますが、介護者、要介護者、メーカー、町全体を1つの介護施設みたいにして行きたいという想いがあります。育児においても同様に、誰の親、誰の子とかそういった垣根を超えて皆が支え合うことが当たり前な社会になって欲しいです。

この度インタビューに応じていただきました宇井社長に、改めて感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

さて、2児のお母さんでありながらも女性経営者としてバリバリ働いているパワフルな宇井さんでしたが、実は色々な方に頼りまくっていたという意外な一面から親近感が湧いた方もいたのではないでしょうか?
今後もこのような特集を掲載していきたいと考えておりますので、その際にはまたご一読いただけますと幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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