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フィットネス参加率7%の現状と可能性。2万人調査で見えた3つのポテンシャル層と新規toC向けサービスFitFits(フィットフィッツ)の挑戦
こんにちは、hacomono note編集部です。
今年もhacomonoは、2025年7月30日〜8月1日に東京ビッグサイトで開催された、日本最大のスポーツ・健康まちづくり総合展「SPORTEC 2025」に出展しました。
会期中には、取締役COOの平田が登壇し「2万人調査データから考察したフィットネス参加率向上の新サービス」と題したセミナーを開催。全国2万人規模の独自調査から明らかになったフィットネス業界の実態や、利用者インサイトにもとづく新しいサービスなどを提案しました。
本記事では、その内容をレポートします。
登壇者プロフィール
取締役COO
平田 英己/社内ニックネーム:ひでさん
株式会社ローランド・ベルガーにて、消費財を中心に戦略策定・企業再生などのプロジェクトに従事。その後、楽天グループ株式会社の執行役員として国内のエンターテインメント関連のEC事業を担当。
2022年4月にCOOとしてhacomonoに参画。同年7月に取締役に就任した。
テニスインストラクター歴4年
2万人調査で見えた日本のフィットネス参加率
私たちhacomonoでは、2025年1月に約2万人を対象としたサーベイを実施いたしました。
フィットネスの利用状況を示す代表的な指標として、「フィットネス参加率」が良く用いられます。これは、全国民のうちフィットネスクラブを利用している人の割合を表すものです。
日本のフィットネス参加率については複数の統計がありますが、おおむね4〜5%と言われています。欧米では10〜20%の国が多く、日本人のフィットネス利用はそれらと比べて大きな伸びしろがあると考えられます。
そのため、フィットネス参加率を上げることが、日本人の健康課題の緩和につながると期待されています。今回の調査は、日本におけるフィットネス参加率の実態を把握し、その課題解決の手がかりを得ることを目的としています。
調査の結果、10.3%の人たちが月額会費を支払ってフィットネス関連のサービスを利用していることがわかりました。この数字には、総合フィットネスクラブ、24時間ジム(以下、24ジム)、ヨガ・ピラティススタジオ、暗闇フィットネスなど、幅広いフィットネス関連施設での利用が含まれています。
年齢・性別で詳しく見ると、セグメント毎のフィットネス参加の違いがより明確になります。20代男性の参加率がもっとも高く、年齢が上がるにつれて低下していく一方で、可処分時間の多い60歳以降で再び上昇する傾向がみられます。女性については、男性に比べて参加率の底を打つ年代が若く、50歳から再び月額会員が増加する傾向があることがわかりました。
今回の調査データはサーベイの設計上、未成年や70歳以上を含んでいないため、日本全体の縮図としては不完全です。そこで、全年代を含むように人口分布に合わせて補正したところ、日本の全人口に占める月額会費を支払っている割合は6.9%(約7%)という数字になりました。
SPORTEC開催期間中に国際展示場駅と東京ビッグサイト駅に掲出した広告「フィットネスが、日常に。7%→20%」は、この調査結果をもとに作成したものです。日本のフィットネス参加率を欧米並みに引き上げる事を目指し、業界全体で力を合わせていきたいという思いを込めています。
また、業態別にみたデモグラフィック分布、業態別フィットネス参加率についてもデータをまとめてみました。下記のグラフをご覧ください。
上記のグラフは、男性を黒、女性を赤で表し、年齢が上がるにつれて色を薄くして各セグメントを示しています。割合の大きい部分に注目すると、24ジムでは男性が7割を占め、ヨガ・ピラティスでは女性が8割ほどを占めていることがわかります。また、総合フィットネスでは60代以上の男女の割合が高い傾向がみられます。
フィットネス参加率向上の3つのポテンシャル層
ここからがポイントです。フィットネスの参加率をもっと高めるには、どこに可能性があるのかを探った結果、「フィットネスに参加する可能性がある人たち」を3つのタイプに整理できました。
1つ目は「入退会繰り返し層」です。上記左側のグラフは、業態別のフィットネス参加率を示しており、各業態の月額会員が母集団の何%を占めるかを示しています。
月額会員をグレー、過去5年以内に退会した人を赤で示しており、グレーのフィットネス参加率が最も高いのが24ジムであることがわかります。これはchocoZAPやエニタイムフィットネスといった大手チェーン店が国内で急速に店舗数を拡大した結果と言えます。各業態のフィットネス参加率を合計すると、全体のフィットネス参加率の10.3%を超えますが、これは複数の業態で月額会員になっている人がいる為と考えられます。
注目すべきは退会者の割合です。右側のグラフは左側のグラフと同じデータを別の形式で表したもので、月額会員を100%とした時に、過去5年以内に退会した人がどの程度いるのかを示しています。
24ジムでは退会者がそれほど多くない一方で、総合フィットネス、パーソナル、ヨガ・ピラティスなどでは退会者の割合が高くなっています。これらの中には、サービスへの不満などから退会したものの運動への関心を持ち続けている人や、ライフステージの変化に合わせてフィットネスを再開したいと考えている人が一定数存在していると考えられ、新たな潜在市場を形成しているといえます。
さらに、現在フィットネスクラブに通っていないものの、公園で運動したりランニングをしたりといった形で日常的に体を動かしている人々も存在しており、こうした層も潜在的な市場として注目されます。
調査結果から浮かび上がったポテンシャル層を整理すると、次の3つの層に分類できます。
①入退会繰り返し層「5.1%」
②無料運動層「24.8%」
③フィットネス関心層「32.4%」
日本のフィットネス市場は約5,000億円といわれており、これは全体の約10.3%の消費者によって形成されています。上記のポテンシャル層の一部を取り込み、フィットネス参加率を1ポイント引き上げることができれば、市場規模は約5,500億円へと拡大する計算になります。
それだけ伸びしろが大きく、挑む価値のある市場ですが、この1ポイントを引き上げるには生活者の行動変容が必要であり、業界全体での取り組みや新たな価値提案が欠かせません。
それではここから、このポテンシャル層をさらに掘り下げていきます。
各層への具体的なアプローチ方法
それぞれのポテンシャル層について、年代・性別ごとの分布を見てみました。
①入退会繰り返し層は、20〜34歳の男性に多くみられます。
②無料運動層は、35〜54歳の男性に多い傾向があります。
③フィットネス関心層は、35〜45歳の女性に多いことがわかりました。
入退会繰り返し層と無料運動層について、入会理由や運動の目的を深掘りすると、興味深い傾向が見えてきました。
入会理由や運動の目的として最も多いのは、「運動不足の解消」や「ダイエット」であることがわかります。これらの理由を選んだ人の割合は、月額会員と入退会繰り返し層のいずれにおいても高い水準を示しています。
一方で、「ボディーメイク」や「生活習慣病の予防」といった、より明確で具体的な目的については、月額会員の方が高い割合を示しました。つまり、「運動不足解消」や「ダイエット」以上に強い動機付けがある場合、フィットネスクラブを継続的に利用する傾向が高くなると考えられます。
退会理由を尋ねたところ、「値段が高かった」や「なんとなく行かなくなった」といった回答が目立ちました。特に後者については、「サボり癖がついた」「モチベーションが下がった」「最初だけは通っていた」など、より具体的な選択肢に細分化して再調査を行いましたが、それでも多くの回答者がこれらの理由を選んでいることがわかりました。
また、フィットネス利用時の懸念点についても、「お金を払っているのに行かなくなると損した気分になる」といった回答が多く、同様の傾向が見られました。
調査の結果、フィットネスクラブは総じてサービスの質が高いことが改めて明らかになりました。プログラムやレッスンを通じて、「値段以上の価値」を感じてもらえると、継続率が高まる傾向がみられます。また、無料で運動している人たちが天候の影響を気にしていることも、潜在的な需要の存在が確認できました。
現在の市場は、モチベーションが高く、経済的にも余裕があり、明確な目的を持つ人たちが中心となっています。しかし一方で、動機が弱かったり、月額会費を高く感じたりすると、通わなくなるリスクがあることも、今回のデータからも浮かび上がりました。
裏を返せば、こうした層の中にこそ、まだ大きなチャンスが眠っているということです。
hacomonoの新サービス『FitFits(フィットフィッツ)』
こうした分析を踏まえ、hacomonoは3つのポテンシャル層すべてに向けた新サービス『FitFits』を2026年初めにローンチする予定です。
『FitFits』のコンセプトは「やりたいことを毎回選べるフィットネスマーケット」。月額制のフィットネスプラットフォームで、ユーザーは、サブスクリプションプランに応じて付与されるコインを使い、ヨガ・ピラティス、24ジム、サウナなど提携施設のサービスを、その日の気分や目的に合わせて自由に選んで、体験することができます。
日本のフィットネス業界を支えてきたのは月額会員制であり、この形は50年以上にわたりほとんど変わっていません。一方で他業界に目を向けると、流通構造の改革によって市場が大きく拡大した事例が数多くあります。
たとえば、中食・宅配市場はコロナ禍にUber Eatsが日本で急速に普及したことで拡大しました。背景には、女性の就業率の上昇などにより「誰かに食事を用意してもらいたい」という潜在的な需要が高まっていたことがあります。
また、ビデオ・DVDなど家庭向け映像市場も、NetflixやAmazon Prime Videoの登場により、自宅で映画や韓国ドラマを見る事が一般化し、大きく成長しました。
いずれのケースも、新興の強い企業が流通構造を改革することで市場拡大を実現した事例だといえます。
本調査で明らかになったように、フィットネス業界にもまだ多くの潜在需要が眠っており、流通構造が変わる事でその需要を取り込み、市場そのものが大きく成長する可能性があると考えられます。
新サービス「FitFits」は、従来のビジネスモデルが抱えていた課題を解決し、ポテンシャル層を取り込むことを目的に設計されています。
フィットネスの店舗にとっては、FitFitsという新たな収益源(レベニューソース)を得るだけでなく、そこから月額会員を獲得する機会にもつながります。
さらに、すでにhacomonoの会員管理システムを導入している店舗であれば、追加の業務負荷を最小に抑えながら運用できるため、投資やリスクを抑えつつ事業を拡大することが可能です。
想定しているユーザーは、情報感度が高い「働く運動ノルマ層」です。たとえば30〜45歳の女性で、まとまった時間は取りにくいものの運動は続けており、ただしモチベーションが下がりがちで「義務的にやっている」感覚を持つ人たちです。
さらに、20〜40代の男性で、幅広い趣味を楽しんでいるもののフィットネスはまだ初心者という層も含まれます。加えて、市場規模の大きさや社会的な意義を踏まえると、シニア層も重要な対象と考えています。
フィットネス業界の新しい可能性
最後に、今後のさらなる展望についてお話しします。
B2Cの商品・サービスの一般論として、消費者の「好き」の度合いが強くなるほど客単価が伸びるのが、収益最大化の理想的な構造です。
たとえば、ラーメンが大好きな人は毎週のように食べに行きますし、アイドルの推し活は「好き」であるほど熱量を持って取り組むものです。
しかし、フィットネス業界ではこの構造が成立しづらいのが現状です。月額会員制という仕組み上、「少し興味がある」「好きになりはじめた」といった段階では会員にならない限り客単価はゼロのままであり、一方で「好き」が一定のラインを超えても、それ以上は客単価が上がらないという構造的な課題があります。
そこで『FitFits』は、まず利用者数を増やし、新しい層を市場に引き込むことで、これまで「ゼロ」だった層を市場の中に取り込むことを目指します。
さらに、hacomonoは将来的には、「好き」の度合いが高い人たちの客単価を伸ばす仕組みの構想も描いています。たとえばゴルフ市場では、ゴルフが好きな人ほどラウンドを重ね、ゴルフ人口が減少する中でも市場規模を支え続けてきました。フィットネスにおいても同様のことは十分に可能です。
この次のステージでは、コアなファン層の熱量を最大化しながら市場を拡大していく戦略が求められていると考えています。そうなれば、フィットネス市場はさらに拡大し、参加率の上昇を通じて日本の健康課題の解消にも貢献できるはずです。
いかがでしたでしょうか。
hacomonoは今後、従来の「ひとつのジムに通い続ける」という固定的なスタイルを超え、これまで運動に縁のなかった人たちにも開かれた、誰もが気軽に始められるフィットネス体験をつくっていきます。
『FitFits』は2026年初めの本格ローンチを目指しています。
私たちが掲げるのは「フィットネスが、日常に。7%→20%」。業界のみなさまと一緒に、フィットネスがもっと身近で、生活の一部となる社会の実現を目指していきます。
これまでのアクティブ層だけでなく、運動習慣のなかった新しいユーザーにも気軽に試してもらえる場を広げ、これまでにない新しい接点を生み出していくことを目指します。そして、フィットネスが日常に溶け込む社会を、みなさんと一緒につくっていければ嬉しいです。
▼toCマーケティングのリーダー候補を積極募集中です!
https://open.talentio.com/r/1/c/hacomono/pages/115487
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