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「常識」とは何か スタートアップという「変革者集団」への強い共感から新しい価値を生むと決めた新しい風
彼から感じた印象を一言で表すなら「当事者意識の塊」だ。多くの人々が政治や仕事、あるいは社会全体といった大きなテーマに「他人事」だと感じられてしまう中で、フォースタートアップスのシニアヒューマンキャピタリスト、久保田匠海の言動は、いつも自分が「関与する/介在する」という行為に対しての真摯な責任感がある。
この責任感は、久保田が考えるスタートアップの「定義」を聞いてもつながってくる。ビジネスを「利益を追求する場」として捉えられがちな中で(もちろん、それも大切であることは間違いではないのだが)、久保田は「それだけが価値ではない」と考えている。
「スタートアップとは『正しいことをする』という使命感から始まります。単なる自己保全や自己利益のためだけでなく、他の人々の生活を豊かにするため、あるいは業界や社会の常識を変えるために存在するものなのです。」
久保田は、自らの採用支援という仕事だけに留まらず、社内の法人営業力を強化する「社内向けプロジェクトマネジメント」にも携わり始めた。彼がスタートアップに設けた定義は、久保田自身の未来像についても当てはまるようだ。
【プロフィール】
久保田 匠海 Takumi Kubota
フォースタートアップス株式会社 タレントエージェンシー本部 シニアヒューマンキャピタリスト
高校在籍時、日本の教育に課題を感じ、広島大学では教育学を専攻。在学中に従事したNPO団体での活動から「なぜやるのか」の重要性に気付いたことで、“結婚式の常識を変える”というビジョンに感銘を受け、2020年に新卒でウェディングスタートアップである株式会社アールキューブ(現株式会社エニマリ)に入社し、法人営業に従事。コロナの影響を受け、同年10月にフォースタートアップスに入社。シリーズA-Cのアーリー/ミドルフェーズのスタートアップへのハイクラスの支援を中心に行い、2021年度には全社CxO支援1位を獲得(※役員除く)。その後シニアヒューマンキャピタリストに昇格し、現在は法人営業力強化の社内向けプロジェクトマネジメントにも携わる。
スタートアップという「変革者集団」への強い共感
久保田は大学卒業後、ウェディング関連のスタートアップに入社した。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響もあって事業を撤退、転職を余儀なくされた。特段、スタートアップに転職先を絞っていたわけではなかったが、フォースタートアップスとの面談を進めていた時に掛けられた言葉に心を射抜かれたという。
「面談で、現在プリンシパルの林佳奈から『日本という国は延命治療をしている場合ではない』という話をいただきました。僕自身、昔から現状維持に固執する大人たちを苦々しく思うシーンに出会ってきました。自分の心のもやもやが、林の放つ言葉の数々に惹かれて思考が変化していきました。そこから、常識を変えていこうとする考えに共感し、フォースタートアップスの仕事への興味がより強くなったんです。」
フォースタートアップスのバリューにある「Startups First」には、「全ては日本の成長のために。スタートアップスのために。」という言葉が掲げられている。そして、「スタートアップス=『進化の中心』にいることを選択する挑戦者たち」とも定義される。久保田にとってはスタートアップが、企業や個人によらず「変革者の集団」だと腹落ちできたとき、大きな共感を覚えたという。
2020年の10月、久保田はフォースタートアップスに入社。その後、主にアーリーフェーズやミドルフェーズのスタートアップを対象に、ハイクラス人材の採用支援に奔走する。2021年度には全社でCxO支援(※役員を除く)の実績者第1位に輝いた。
「CxOの採用支援は自ら旗を立てましたから、プレッシャーも大きかったのですが、自ら宣言したことを実現させられたことは、自信に繋がりました。社内における重要なクライアントのプロジェクトに1年間伴走したのも、ヒューマンキャピタリストの自分にとって大きな経験でした。もし、これらの経験から成功がなければ、自分には自信がないままだったかもしれません。高みを目指すために、機会を獲りに行って良かったと今では振り返ります。」
「なぜなのか」に直面し続けた学生時代
古い慣習に囚われたり、現状維持に固執したりする大人たちの姿は、久保田にとってある意味「原体験」となっている。広島の田舎町で育った久保田は、4人兄弟の長男として育った。広島県内でも上位の公立高校で学んだが、進路指導室で目にした光景が強烈な違和感となって久保田に宿る。
「通っていた高校は大学への進学実績を多く持つ学校でした。ある日、進路指導の担当教官が『この生徒はこの成績なら東大にも行けるぞ』と話しているのを耳にしたこと、また、私自身が陸上部の部長だったことで、志望外の大学の体育学部を案内されたことも重なり、本人の希望や資質を考えず、まるで学校の実績のために大学を勧めているように感じたことがありました。そこから、どうしてこういった教育が行われてしまうのか。『私たちは何のために学校に来ているのか』という疑問が浮かんだのです。」
久保田はその違和感から教育に興味を持ち始め、教育に関して学べる場所を探した。家計になるべく負担をかけないようにと家族への配慮をしながら、祖父からの勧めもあり、国公立大学の広島大学を進学先に選んだ。
しかし、大学に入っても葛藤は続く。勉強に励むべく大学へ進んだにもかかわらず、同世代の学生たちがサークル活動や飲み会に明け暮れていたのである。久保田の中に「どうして、こうなってしまうのか」という疑問がまたも沸き起こる。疑問を抱えながら時間が経ち、大学3年生の時に変化が起きた。政治家と共に活動を行うNPO団体のプログラムとの出会いだった。
このプログラムを通じて、様々な経験をしたそうだ。「地方学生が、自分の将来を考えるきっかけにしてほしい」と思い、団体へ参加するようになった。真摯に向き合い続けた久保田は広島県支部の代表を務めるほどに活動に取り組んだ。しかし順風満帆であったわけではない。メンバーをまとめられずに離散する苦い思い出を残したのだ。自身にとっても挫折経験となったが、そこから「なぜやるのか」に加えて「誰とやるのか」の重要性や、「自分が何のためにここにいるのか」について考える大切さを、肌身に染みて理解したそうだ。
その後、久保田は「結婚式の“常識”を変える」というビジョンに惹かれ、前述のようにウェディングスタートアップに入社する。しかし新型コロナウイルスの影響により対人コミュニケーションが制限されるなかで、「なぜやるのか」についての疑問が拭えなかったことが転身の理由として大きかったそうだ。
高校、大学、そして就職と、目の前の現状から悩み考えることも多かったが、それらは久保田の内心における「軸」を育て上げるのに必要な期間だったのかもしれないと振り返る。
「自分はこの会社で何を成すべきなのか」 CxOクラスの採用支援に見つけた活路
2020年、フォースタートアップスへ入社。
「実は最初の1週間で、もう辞めたいと思っていました(笑)周りと比較してしまっていたんです。当時は自分と同年代の社員は少なく、周囲には名門大学出身者やキャリアパスに優れた同僚たちが集まっていました。相当暗かったのか、下を向いていたのか、みなさんに心配されて声をかけられることも多かったですね(笑)」
しかし、他人と自分を比較することをやめた瞬間、彼のターニングポイントは訪れた。常務取締役の恒田有希子の言葉が、その瞬間に大きな影響を与えた。「人の成長はそれぞれであり、社内での実績や予算達成も一つの物差しに過ぎない。周りではなく、あくまで昨日の自分と比べるといい。」という言葉をかけられたのだ。その言葉は、自身の成長意欲に飽くなき関心を寄せる久保田の心に、しっかりと響いた。
「自分はこの会社で何を成すべきなのか」に集中しようと周囲の実績は横目に自身の意識を切り替えた。久保田の頭に浮かんだのは「周囲がまだできていないこと」へのチャレンジだ。当時のフォースタートアップスを取り巻く状況は、中長期で支援し続けている企業が著しく成長していた。
一方で、CxOレベルのハイクラス人材の採用支援には苦戦している現状があった。久保田は「ハイクラス人材を半年で2名採用する」と目標を設定し、ハイクラス人材の採用支援に焦点を当てることを決め、しっかり達成する。
「私たちは、成長性のあるスタートアップを見極め、その成長を採用で後押しするために伴走したいと考え、全社を巻き込み取り組んでいきます。しかしまだまだアーリーフェイズやミドルフェイズのスタートアップに対する支援ができるヒューマンキャピタリストが少なく、市場の成長性を鑑みるともっと支援できるようにしなければならない課題であると感じました。創業間もない、10人以下のスタートアップにも伴走し、何ができるかを探り続け中長期で支援し続けることが必要だと考えています」
スタートアップスと向き合うことで、自分自身が変わった それを社会に証明することが重要だ
現在のスタイルを確立出来たのは、久保田が担当として採用支援をするスタートアップ2社の存在が大きい。あるBtoB SaaS企業には、自らCOOの採用を支援した。CEOや人事担当者を訪問するたびに、その企業のミッションやプレゼンス、今後のスケーラビリティについて質問を重ね、ターゲットの業界に対する解像度を深めるだけでなく、その企業に集うメンバーがどういった思いを持ち、「なぜ、その企業で働くのか」を理解できていたからだ。
「その企業の社員の中に混ざったとしても、きっと私が一番、この企業に関する様々なことに詳しいと思います」
久保田の口から自然と出た言葉には、真摯に向き合って支援企業を理解しようとした日々が刻み込まれているようだった。「経営者や社員と顔を直接合わせて話し、知れば知るほど、よりその人たちや企業文化が好きになっていきました」と久保田。ある意味では「社外社員」のような存在になることが、久保田の支援スタンスといえるのかもしれない。
実際に求職者と会ったときにも、会話をするなかで得意とする企業にフィットする人材だと感じ、そのまま採用につながるケースも少なくない。経歴だけではわからない部分に対するマッチングを実現できているが、久保田は「これが私たちの強みであり、非常に面白いと感じています。」と自信をのぞかせる。
久保田がこの業界で働き始めてから早3年。今、ヒューマンキャピタリストの仕事に対して思うことがある。
「フォースタートアップスの組織が大きくなる中で、”目の前のスタートアップスに向き合う”というカルチャーが薄れていかないようにしたいと思っています。僕がこの会社で最も好きなのは、それぞれのヒューマンキャピタリストがスタートアップスに向き合うことで、その企業に最も精通していく人が増えることです。自分自身も、そのように企業と向き合うことで良い支援を実践できているからこそ、周囲のヒューマンキャピタリストにも自信を持った支援実績を作るためのきっかけを創出していきたいと考えています。」
久保田は自分の経験を通して、スタートアップの世界がもたらす変容の価値に確信を持っている。「スタートアップスと向き合うことで、自分自身が変わる。それを社会に証明することが重要だ。」と話す。
そして、彼が次に目指すフェーズにはさらなる展望もある。「今後の3年をかけて取り組みたいことは、スタートアップス(挑戦者)の輪を広げることです。例えば、これまでスタートアップで働くことを選択できなかった人たちに、自分の可能性に気づいてチャレンジしてもらうことです。専門学校出身者や国家資格保有者といった人たちが、新しい選択肢に出会えるようにしたいと考える。そのためには、まず僕自身が仲間を集い背中を見せられるほどに成果で体現し、今よりも社会に影響力を与えられるようになる必要があります。」
久保田が高校時代から考え続けてきた「自分は何のためにここにいるのか」という問いに、日々新たな答えを見つける行動力と精神が掛け合わさり、次なる「常識」を変えていくアクションへつながっていく。
自分たちの「常識」とは何か、そして変革によってどのような新しい価値が生まれるのか。それらを追求することで、彼自身のキャリアだけでなく、周囲の人々や業界、さらには社会に新しい風を吹き込こもうとしている。「なぜやるのか」を胸に、久保田は自らアクションを起こし続け、今日も進む。
(取材・文/長谷川賢人)