フォースタートアップス(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チームであるエンジニアプロデュースチームを作り、スタートアップに対してキーパーソンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアのご支援をしております。
株式会社プレイドは、「データによって人の価値を最大化する」をミッションに、CXプラットフォーム『KARTE』などを展開する会社です。サイトやアプリの訪問者の行動や感情をリアルタイムに解析し、一人ひとりに最適なサービスや体験を提供する―そんなワクワクする顧客体験を実現し、進化させている会社です。
今回は、2019年11月に大手SIerからプレイドに転職された安海悠太氏に、参画の経緯や大企業からスタートアップへの転職のリアルなどを伺いました。
安海 悠太 氏
2017年4月に新卒で大手SIerに入社、ソフトウェアエンジニアとして機械学習、AI関連の複数のプロダクトの設計、開発に携わる。2019年11月にプレイドに入社。
同社の詳細は『PLAID Engineer Blog』をお読みください。
仕事は面白いものの、成長機会損失への不安が拭えなかった。自社プロダクト、ビジョン共感など4つの条件を満たしたプレイド
前職のことと転職のきっかけを教えてください。
安海:前職の大手SIerでは、機械学習、AIの事業化検討の仕事をしていました。お客様に対して、プロダクトのプロトタイプを作って提案し、事業化できるか検討します。具体的な業務内容はアプリケーションのプロトタイプの設計、実装、それから機械学習のモデル設計から実装まで、技術的には幅広くやらせてもらっていました。新しい技術を使えて挑戦もでき、面白いと感じていましたが、勉強会などで社外のエンジニアの方と交流するなかで、だんだんレベル差を感じるようになりました。「このまま今の会社にいたら、得られるものはたくさんあるけども、この人たちに追いつける自信はない」、と思ったのがきっかけで、情報収集を始めました。
どのような点でレベル差を感じたのですか。
安海:検証段階のプロダクトだったので、やはり実際に稼働しているプロダクトとは全く違います。ユーザー数の多い・少ないで難易度はかなり違ってくるので、使っている人が非常に限られるという点で、大きな差を感じました。レベルが高いと感じたのは、メガベンチャーの方が多かったです。もちろん大企業の方でも技術レベルの高い方はいらっしゃるんですが、メガベンチャーには、技術的に高い方を積極的に採用している会社もあるので、そのような会社の方々が目を引きました。
また、事業やプロダクトに対する立ち位置として思ったのは、結局、SIerで作るプロダクトはお客様のものだということ。業態上の特性で、機能を作ってチャレンジするというサイクルは、そう何度も踏めません。それでは、自分の成長機会を損失すると感じました。やはり、自社のプロダクトを持っている会社のほうがプロダクトに裁量権があり、自由度も高く、サイクルもより多く、より高速に回せます。そのような環境で働きたいと思いました。
それで、転職活動を始められたのですね。
安海:はい。ただ、職場が嫌いになって転職するわけではなく、将来的に転職も考えるというスタンスでした。なので、時間をかけて情報収集をしたいと思い、転職エージェントとはできる限り会ってみて、その中から自分と合いそうな何社かと付き合うことにしました。
その一人が、フォースタの村上さんです。村上さんは、私のやりたいことを汲んで、その会社の人との相性なども考慮して提案してくれました。他のエージェントさんは、私の得意分野ややりたいことを考慮せずに勧めてくるような会社もあったので、随分と違うなと感じました。そもそもプレイドも、当時、自分で調べたなかでは行き当たらなかった会社だったので、新しい情報をくれる人だとも思いました。
いくつか選択肢がある中でプレイド社への入社を決めた理由は何でしょうか。
安海:私が転職先に求める条件は四つ。一つは、いろいろな技術領域に携われること、二つ目は自社でプロダクトを持っている会社、三つ目はプロダクトが好き、四つ目が会社のビジョンに共感できること――です。
ビジョンへの共感を大事にしている理由は、スタートアップではプロダクトがピボットし、別のプロダクトが生まれることも往々にしてありますが、「このプロダクトは好きだけど、こっちは嫌い」では、自分のモチベーションが上がらず、働くのが大変だからです。ビジョンに共感していれば、ビジョンからプロダクトは派生するので好きになれるはず。この四つに合致するのがプレイドでした。
四つの軸を明確にできたのは、時間をかけて活動したからだと思います。情報収集を始めてプレイドに決めるまで、半年ほどかけました。考える時間も多くとれましたし、いろいろな転職エージェントさんに会って壁打ちし、カジュアル面談でいろいろな企業さんのお話も聞き、「やりたいことは何か」と聞かれるなかで、だんだん軸が定まってきました。
プレイドは、カジュアル面談の段階で「ここに行きたい」と強く思ったので、以降は他企業の選考にはほとんど進まず、プレイドが駄目なら転職は先延ばしにして、自分のレベルを上げてから、再び活動しようと思っていました。
レベルの高いエンジニアと一緒に働き、日々の仕事がビジョンに直結する点が魅力
入社してから改めて感じる、プレイドの魅力はどこでしょう。
安海:そうですね。『KARTE』は、Webやスマートフォンアプリ上のユーザーの行動データをリアルタイムで解析し、それに応じて一人ひとりに合った様々なアクションを起こすことができるプラットフォームです。これは、自分がエンドユーザーになったとき、すごく楽しい世界が待っていると思うのです。普段、インターネット上での体験は画一的なものになっており、それまでの文脈が基本的に考慮されず、自分宛にレコメンドされている気がしません。例えば、これまでスキー場の情報を調べていた人が、スポーツ店のECサイトに入っても、人気のランニングウェアが紹介されるといった感じです。そうではなく、もっと自分にフィットしたアクションをもらえると、インターネット上の体験がグッと楽しくなります。
あと、前職では機械学習やデータ分析に携わっていましたが、データの力は大きいものの、まだまだ扱える人がいないと感じていました。例えばオンラインショップをやっている人は、データをたくさん持っています。でも、自分では活用できずに、データの専門家に頼んで分析し、その結果を使ってようやく最適なアクションをエンドユーザーに届けるという流れが多いです。これでは時間がかかり、リアルタイムでエンドユーザーに楽しい体験を届けられません。現場の人がもっとデータを使えればより良い世界が待っているという思いがあったので、「データによって人の価値を最大化する」というプレイドのミッションにも、とても共感しています。
ご担当のお仕事も詳しく教えてください。
安海:入社以来、データ統合・利活用プラットフォーム『KARTE Datahub』の開発を担当しています。『KARTE』で取得したデータの分析、可視化、および様々な外部ツールとデータ連携ができるプロダクトです。分析した結果を『KARTE』のアクションとして利用するといったこともできます。今はそのなかで、グラフやチャートなどでデータを可視化する機能の開発を主に担当しています。技術領域ではなく、機能ごとに担当するスタイルなので、フロントエンドだけでなくサーバーサイド、インフラ部分なども全部、自分でやっています。
前職との違いで大きいのは、上の許可がいらないこと。前職は、例えばプロトタイプを作成するにも上司と、さらにその上の上司の許可も必要でした。許可をとるために割く時間が多かった印象があります。わたしたちは遠い目標により早く到達するため、個人で判断しスピード感をもって動くことが重要だと考えています。許可取りは、時にスピード向上の阻害要因となってしまいます。もちろん会社全体の方向と整合性を取りながら進めるのですが、縛りはなく、比較的自由に裁量を持って仕事に取り組めます。この自由には当然責任も伴いますが、失敗を許容し、歓迎さえするカルチャーもあります。
失敗してもその学びは次に活かすことができますし、失敗しないと得られない貴重な材料もあります。その材料を数多く得ることが、遠くの目標に早く到達するためには大事なのです。そのため誰かに謝る必要はなく、新しいことに積極的にチャレンジできる点は前職と比較して大きく異なる点です。
エンジニアはレベルが高くて、それぞれが豊富な経験を持っています。そのような人たちと一緒に働けることもプレイドの魅力の一つ。加えて、プロダクトに対して「リスクを取っていろいろな開発をしていこう」という考え方が会社全体として浸透しているので、思い切って挑戦できます。例えば、新しい機能を開発すると、バグが出る不安がありますが、そこを懸念し過ぎると開発サイクルが遅くなります。その点、プレイドにはどんどんリスクを取ろうというカルチャーがあるので、個人だけでなく企業が成長し続けるという観点から考えても、とてもいい環境だと感じています。
『Datahub』が目指す姿はどのようなものですか。
安海:データ活用の敷居を下げられると良いなと思っていて、プレイドでは、「データの民主化」と呼んでいます。今はデータ活用において、ツールや人の分断が起きていると思っています。サイズの大きいデータはエンジニアが触り、それを分解・整形したものを、現場の人がExcelやSpreadsheetなどで触るといったような光景を思い浮かべてもらうと分かりやすいと思います。『KARTE Datahub』で誰もが大きいデータから小さいデータまですべて扱えるようになれば、分断は起きません。だから今、誰もがどのような種類のデータも扱えるようにする方向で開発を進めています。
ExcelやSpreadsheetなどのツールは、特にデータ分析に詳しくなくても直感的に扱うことができます。そのような体験をデータのサイズや種類によらず適用できるようになれば、いろいろな人がデータを活用でき、サービス提供側もやりたいことが迅速にできるようになり、結果としてエンドユーザーへより素早く価値が提供できるようになります。『KARTE Datahub』の開発を進めることは、ミッションである「データによって人の価値を最大化する」に近づいている実感が持てるので、その点もやりがいに感じています。
スタートアップへの不安や抵抗はゼロ。リスクを取らず、将来のキャリアが危うくなることのほうが怖かった
スタートアップに興味を持ったきっかけや、転職の選択肢に挙がった理由をお聞かせください。
安海:スタートアップを探したというより、条件に合う会社がスタートアップでした。先ほど挙げた4つの条件の1つ、いろいろな技術領域に関わりたいという点は、大きい企業だとフロントエンドの人、バックエンドの人など、どうしても技術領域ごとにチームが分かれてしまいます。100人、200人以下の規模の会社だといろいろな技術に関われるので、その条件に合致するのはスタートアップでした。
大企業からスタートアップに移るにあたり、不安や抵抗はありましたか。
安海:それは、あまり考えませんでした。転職したときは24歳で、今も26歳ですが、まだまだリスクを取れる年齢です。逆にここでリスクを取らないほうが、自分が成長できなくて、将来的なキャリアが危うくなる。むしろ、今、リスクを取るべきだと考えていました。
実際、プレイドに入社して技術力はとても上がったと思います。前職はプロトタイプの作成までしかやっていなかったので、「こういうのを、とりあえず作れます」程度の技術力でした。今は、作ったものをいろいろな方に使ってもらえます。ユーザーにより安定的で、信頼できるプロダクトを使ってもらえるように取り組むことで、身につく技術力は大きいです。
今、入社時の1年半前の自分を振り返ると、何もできなかったなと思います。まだまだ全然足りないけども、自分としてはかなり成長できた実感を持てています。技術領域も、前職ではUIとその少し後ろを作っている程度でしたが、今はインフラからデータベース構築までやるようになり、できる領域が広く深くなっています。
エンジニアとして見える世界もだいぶ変わりました。例えば以前は、エンジニアはコードが書ければいいと思っていましたが、それだけでない。アルゴリズムを考え、データベースの構成も、コードのアーキテクチャもプロダクトのアーキテクチャも考えなければいけないと、視野が広がりました。技術さえあればいい、というのも違います。プロダクトは、いろいろなステークホルダーがいてできあがっています。技術だけではなく、そこのコミュニケーションが大事だと、もちろん頭ではわかっていましたが、その辺りが腑に落ちるようになりました。
これから大企業からスタートアップへの転職を考えている人に、アドバイスはありますか。
安海:そうですね。大企業からスタートアップというとリスクを取ると見られがちです。確かに短期的にはリスクかもしれませんが、長期的には、若いうちにリスクをとっておかないことのほうがリスクになると思います。30歳、40歳となると、よりリスクを取りづらくなっていくので、必ずしも転職とは限りませんが、若いうちに挑戦しておくことは大事だと思います。
以前は、どこかの会社に雇ってもらわないといけないという感覚があったのですが、転職してその感覚は少しずつ減り、代わりに「自分でやっていける」という感覚が芽生えています。でも「この会社にいたい」から、自分で「会社にいる」という選択肢を取っている。逆に「いなくてもいい」という選択肢も取れることは、自分にとって大事です。「いなければいけないからいる」では辛いですから。この1年半、自分のスキルを高めてきたことで選択できるようになったのだと思います。
とはいっても、スタートアップが即戦力で活躍できる人ばかりを採用しているわけではありません。入社前は私も、スキルや経験が豊富でないと入れないと思っていたのですが、それはなく、恐らく、年齢が若い人ほど長い目で見てくれるはずです。もちろん、ある程度の即戦力としての技術力は必要ですが、伸びしろを見てくれていると、プレイドに入って感じました。
そこまで恐れなくていい。まず挑戦してみることですね。
安海:はい。自分も転職活動を始めたときは、絶対に転職しようと思っていたわけではなく、「まず話を聞いてみるのも、企業やエージェントさんと情報交換すること自体は無駄にならない」という気持ちでした。それが最終的には転職し、自分のキャリアをステップアップさせることができた。会って話してみれば、そのなかで自分のやりたいこともわかってくると思います。カジュアル面談は選考ではないので、会社の話を聞きに行くというスタンスでアクションを起こし、最終的には転職しないにしても、自身のキャリアを考える上で得るものがあります。
結果的に、今の会社にいることが正解かもしれません。それを確認する一つの材料として使ってもいい。何となく今の会社がいいのかな、と疑問に思っている方は多いと思います。それを「今の会社でいい」と確かめる作業にもなります。納得感をもって仕事をすることは一番大事で、やるだけはタダ。ならやってみるといいと思います。
お忙しい中、インタビューにご協力頂きまして、ありがとうございました!
インタビューご協力:株式会社プレイド
for Startupsエンジニアプロデュースチーム
担当のヒューマンキャピタリスト:村上 修一
HEROES第1弾