「産業革命の中心を、ここに。」をパーパスに掲げ、市場規模150兆円のリテール領域の変革に挑むNELは、ブランドとお客様を推しでつなげるプラットフォーム「osina」やAIで顧客ニーズを汲み取り改善する「カスタマーAI」サービスなどを提供しています。
「osina」を活用し、新たな顧客層にリーチするとともに、ブランドの認知向上に取り組んでいるのがお菓子ブランド「キットカット」です。「キットカット」はosinaでキャンペーンを実施し、1ヶ月で動画の累計再生数が870万回を記録したほか、合計377投稿が生まれるといった成果も出ています。
なぜ、「キットカット」はosinaを活用し、FGC(Fan Generated Contents)の創出といった取り組みを始めることにしたのか。ネスレ日本のコンフェクショナリー事業本部 インツーホーム マーケティング部 部長の村岡慎太郎氏とNEL代表の西田が対談しました。
目次
応援メッセージの発信内容が“届く人”と“届かない人”がいる、「キットカット」がosinaを活用した狙い
──まず最初に、ネスレ日本にとって「キットカット」はどのようなブランドなのか。改めて教えていただけないでしょうか?
──受験シーズン前には「キットカット受験生応援キャンペーン」を実施されていますが、これはどういった取り組みのキャンペーンなのでしょうか。
──さまざまな形でキャンペーンを開催されてきたかと思いますが、その背景にはどのような課題感があったのでしょうか?
1ヶ月で870万回再生、377投稿を実現したosinaの価値
──osinaのどういった部分に魅力を感じたのか、ぜひ教えてください。
──実際、osinaの活用によってどのような成果が出ているのでしょうか?
──ブランド側の考えとして、osinaを活用するメリットはどこにあると思いますか?
「全国の応援を全国の受験生に届ける」ミッションの実現に向けて
──マーケティングのあり方もどんどん変わってきているんですね。
──ありがとうございます。最後に今後の展望についても教えてください。
▼NEL社に興味を持った方へ
応援メッセージの発信内容が“届く人”と“届かない人”がいる、「キットカット」がosinaを活用した狙い
──まず最初に、ネスレ日本にとって「キットカット」はどのようなブランドなのか。改めて教えていただけないでしょうか?
村岡:「キットカット」は1973年に日本で発売を開始してから50年以上が経ち、国内でも多くの方々に認知いただけるブランドになっていると思います。
また、「キットカット」は九州の方言「きっと勝つとぉ(きっと勝つよ!)」が、商品名と似ていることから、1990年代後半以降、自然発生的に受験生のお守りとして広まり始めました。2003年以降、ネスレ日本で「キット、サクラサクよ。」を合言葉に、試験前日に宿泊する「ホテル」や、受験生を試験会場に運ぶ「鉄道・タクシー」、願書を預かり大学に届ける「郵便局」や「大学」、「街」、「神社」などのさまざまなパートナーと組み、不安や緊張と闘う受験生に寄り添う活動を20年以上にわたって展開することで、「キットカット」は“頑張る人を応援するブランド”という位置づけを確立してきました。
──受験シーズン前には「キットカット受験生応援キャンペーン」を実施されていますが、これはどういった取り組みのキャンペーンなのでしょうか。
村岡:受験の際、受験生はたくさんの不安を抱えながら勉強をがんばっている中、受験生の親御さんや学校の先生などは「プレッシャーをかけたくないけど応援したい」という気持ちを持っている。その気持ちをサポートするような取り組みになっています。「キットカット受験生応援キャンペーン」は受験生にとってのキャンペーンというよりも、受験生を応援したい人たちの気持ちを「キットカット」を通して形にするキャンペーンです。
具体的には、「キットカット」をメッセージツールや応援ツールとして使ってほしいと思い、個包装に「キット、ここからだ」や「キット、ゴール目前」といったメッセージをプリントしています。このメッセージは、私たちがXなどで募集し、お客様から投稿いただいた内容をベースにしており、実際のリアルな声なんですよね。
そういったメッセージもキットカットを通して届けられれば、受験生にもプレッシャーがかかりにくい。親御さんや先生などの「受験生を応援したい」気持ちをサポートするために、受験シーズンは応援メッセージを「キットカット」にプリントするようにしています。
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※ネスレ日本のコンフェクショナリー事業本部 インツーホーム マーケティング部 部長の村岡慎太郎氏
2021年には学生に人気の教育系YouTuber「葉一」さんとコラボレーションした受験生への応援メッセージ動画を公開したり、2023年には公式アンバサダーで歌手のAIさんが書き下ろした受験生応援ソング「ワレバ」を使用したテレビCMを放送したりしました。
また2024年はオフラインでの取り組みも実施し、受験生への応援メッセージを「桜」のデジタルアートに仕立て、原宿 jingで公開。2025年は1,000機のドローンが受験生や受験生を応援する方の祈りを込めた巨大な鶴や満開の桜、受験生への応援メッセージを描くドローンショーを、元日に防府天満宮で開催しました。
──さまざまな形でキャンペーンを開催されてきたかと思いますが、その背景にはどのような課題感があったのでしょうか?
村岡:課題というよりは、「キットカット受験生応援キャンペーン」をより良いものにしたい、という思いが強くありました。私たちは「受験生を応援したい」と思っている方々の声を受験生に届けることが大事だと思っていたのですが、テレビを活用した従来の発信方法では、発信内容が“届く人”と“届かない人”が出てきてしまう。その差を埋めたいと思っている中で、osinaのことを知り、一緒に取り組みを始めることにしました。
1ヶ月で870万回再生、377投稿を実現したosinaの価値
──osinaのどういった部分に魅力を感じたのか、ぜひ教えてください。
村岡:もともと、応援メッセージ自体はXなどのプラットフォームを通じて集めることはできていたんです。そのメッセージをテレビCMやYouTube、TikTokなどで発信していたものの、“届く人”と“届かない人”が生まれていたので、osinaを活用し、マイクロインフルエンサーの方々を通じて応援メッセージを届けるという取り組みをしました。
マイクロインフルエンサーを探し、声をかけるのがすごく難しくて。過去に私たちでもやってみたことがあるのですが、5人が限界でした。ただ、osinaは一定の条件を満たしたマイクロインフルエンサーの方々を300人もアサインできる。ここは私たちの力だけでは実現できない部分だと感じましたし、そこがosinaの大きな魅力でもありました。
やっぱり「キットカット」は応援したい人たちの気持ちを代弁するブランドでもあるので、誰も傷つけたくありません。数百人規模のマイクロインフルエンサーの方々に投稿を依頼すると、誰かを傷つけてしまうような内容が投稿されてしまうリスクも一定生じてしまう可能性がありますが、osinaの場合はそういったリスクもありません。審査によってきちんとスクリーニングをかけており、安心感があるというのも良さのひとつでした。
西田:osinaはブランドとお客様を“推し”でつなげるプラットフォームです。ユーザーはosinaに掲載されている商品の中から、愛用品や気になる商品を購入しSNSに動画を投稿することで、報酬を得ることができる仕組みになっています。
今回、ネスレ日本様とは「キットカット史上最高」の製品での投稿企画に加えて、「受験生応援キャンペーン」での投稿企画などを実施しました。ユーザーに近い方々が自分の経験をもとに、キットカットの魅力を伝えていく。十人十色の声を届けられる仕組みであることがosinaの大きな強みであり、最大の価値だと思っています。
──実際、osinaの活用によってどのような成果が出ているのでしょうか?
西田:「受験生応援キャンペーン」の成果としては、osinaを通じて投稿された動画の累計再生数は870万回を記録し、投稿数も377件を記録しました。当初、500万回再生と250投稿という目標を掲げていた中で、達成率としては高い数字の着地になりました。
村岡:osinaとの取り組みがキットカットの売上にどれくらい直接的な影響があるかは把握しづらい部分はあるのですが、投稿された動画870万回再生されており、今までリーチできていなかった層にもリーチできていると思います。
西田:定量的な分析もさせていただいたのですが、TikTokで「#受験」を調べてみると、「受験に関する投稿を見ているユーザーが何を見ているのか」キャンペーンの実施前、実施後で比較できるんです。実際に調べてみると、「#受験」の投稿に紐づいて「#キットカット」に関する投稿が紐づいてくるという状態を作ることができました。母親世代、父親世代も含めて受験に関する投稿を見てらっしゃる方々に対して、キットカットのコンテンツが当てられるという状態を作ることができたことが一番大きな成果だったと思います。
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NEL代表 西田
具体的には、「#受験」に関する動画は1ヶ月間で5700万回再生されているのですが、そのうちの800万回再生を紐づけられた。総再生数の約12%を占有する状態がつくれましたし、「#受験」の関連キーワードとしてブランド名が挙がっていたのは「キットカット」だけでした。この取り組みを通じて、認知獲得に貢献できたのは良かったです。
──ブランド側の考えとして、osinaを活用するメリットはどこにあると思いますか?
村岡:お客様に近い方々が、お客様に伝わる言葉で、キットカットを通じた応援のメッセージを発信してくれる。そこが最大のメリットだと思います。やっぱり、応援の方法は人によって異なる。例えば、直接的に「頑張ろうね」って言う人もいますし、少し控えめに「無理しないでね」って言う方もいます。また、メッセージの伝え方も料理レシピのような形で面白くして伝える人もいるわけです。どうやったら商品の魅力が伝わるか。ここに関しては、ユーザーに近い方々が何より知っていますし、等身大の言葉で魅力を代弁していただくというのは、osinaとの施策でしかできないことだと思います。
実際、osinaとの取り組みを進めるにあたって、投稿内容に「余白をつくる」ことを意識しました。osinaのクリエイターの方々は自分のクリエイティブの強みや、メッセージの伝え方など、その人なりの“やり方”を持っている。それを踏まえず、私たちから1から10まで「こうやって欲しい」と伝えたら、インフルエンサー施策を実施する必要はなくなってしまいます。私たちではできないことをやってほしいからこそ、最低限守ってほしい部分はお伝えした上で、それ以降のHow(手法)の部分はお任せする。そこが大事だと思います。
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osinaは数百人単位の規模であっても、審査などを通じて一定のクオリティをコントロールできるところが強みだと思いましたし、ブランドとしても安心して依頼できました。
西田:インフルエンサーの方もそうですし、一般の方々も動画制作スキルが高くなってどんどん発信者に変わってきています。そういう中で、ブランド側の強制力があるほど、そのブランドに対するイメージが変わってしまいますし、逆に余白があればあるほどユーザーは自由にブランドの魅力を伝えていけるようになる。ブランドとして絶対に外せない部分はきちんと守りつつ、しっかりと余白を持たせながら、ユーザーと一緒に発信していくという形が今の時代、もしくはこれからの時代に重要になっていくと感じています。
「全国の応援を全国の受験生に届ける」ミッションの実現に向けて
──マーケティングのあり方もどんどん変わってきているんですね。
西田:今は若い世代になればなるほど、好きなタレントのコンテンツだけではなく、レコメンドで流れてくるコンテンツも好きなものにパーソナライズされるようになり、商品の評価軸がすごく分散する、という状態になっています。
昔は「良い洗剤は何ですか?」と聞いたら、ほとんどの人が「白くなるもの」「いい香りになるもの」と答え、その商品は◯◯社のものといった形でイメージが8〜9割統一され、市場シェアが決まっていました。
ただ、今の時代は評価軸がどんどん分散されており、「私は韓国が好きなんで韓国風のアロマが好き」「こういうブランドメッセージを出されているので、私はこのブランドが好き」といったように、その人の価値観をもとに商品を評するという流れが加速しています。
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そうした時代において、自分の価値観に合った人がオススメしている商品、いわゆる消費者に近い方々の発話が非常に大事になってきていると思っています。それをNELでは“クラスター”と呼んでおり、さまざまなセグメントで適切な発話者による適切なコンテンツを発信していく“クラスターマーケティング”を意識的に取り組むようにしています。
村岡:発信者のマイクロ化が進み、1対1のコミュニケーションに近くなってきているので、若い世代の方々にとっては「あの人の話していることが面白い」といった“人”起点で興味関心が強まっていく。それに加えて、プラットフォーム側のアルゴリズムによって、その人がよく観るコンテンツ内容に紐づいて、レコメンドされるものもどんどん変わるという“プラットフォーム”起点での興味関心の強まりもあります。きっと、この両方の変化を捉えていくことがブランドとしては今後重要になっていくんだろうなと感じます。
──ありがとうございます。最後に今後の展望についても教えてください。
村岡:「キットカット」は引き続き“頑張る人を応援するブランド”でありたいと思っています。受験生を応援したい方々のサポートは継続していきたいですし、2026年も「キットカット受験生応援キャンペーン」は実施する予定です。どういう内容にするかはまだお伝えできませんが、「キットカットを通じて受験生をみんなで応援する」「全国の応援を全国の受験生に届ける」ことが私たちのミッションだと思っているので、そのミッションを実現するために、引き続きNELさんの力を借りたいと思っています。
西田:osinaに関して言えば、ユーザーの70%以上が10〜20代の方ですが、中には子どもがいる方々も使ってくれています。「キットカット」というブランドを通じた輪の広がりを作っていくことがNELの貢献できる一番のポイントだと思っていますので、今後もいろいろな側面でネスレ日本様と一緒に取り組みを進めていきたいです。
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