お客様も従業員も幸せに!製造現場への想い| 製造本部 × デジタルマーケティング 本部長対談
「"ALL for ONE SPOON" 食の可能性をデジタルで広げ、『一さじの喜び』を届け続ける」
食事を通して人々に生きる喜びを届けるべく、高齢者福祉施設や医療機関向けに食事サービスを提供する、株式会社ナリコマホールディングス(以下、ナリコマ)。大阪府大阪市に本社を構え、関西を中心に成長を続けてきた当社では、全国約2,900施設、365日毎日約53万食のお食事をお届けしています。
今回は、商品開発・献立作成・食事の調理や包装・品質保証など食事の製造に関する業務全般を行う製造本部の本部長・高橋 和樹と、デジタルマーケティングを推進するコーポレート本部の本部長・北窓 佐和子の対談をお届け。
お客様にお食事をお届けする使命感、セントラルキッチンで働くメンバーに対する感謝など、普段なかなか聞けない製造本部の熱い想いに迫りました。
なお記事の執筆には、株式会社ストーリーテラーズさんにご協力いただきました。
参加者紹介
高橋 和樹さん(2011入社 製造本部 本部長 )
北窓 佐和子さん(2020年入社 コーポレート本部 本部長、デジタルマーケティング室)
システムエンジニアから製造本部へ、異色のキャリア![]()
高橋さん: 私は2011年7月に入社して、今年で14年目になります。現在は、製造本部の本部長とグループ全体の執行役員を務めています。献立作成、商品開発、品質保証、そして6つのセントラルキッチンでの製造と、365日食事をお届けする業務全般を取りまとめています。
でも実はもともと、当社にはシステムエンジニアとして入社したんです。約15年間、他の会社でエンジニアとして働いていて、食品製造に関しては全くの未経験でした。
北窓さん: その状況で、最初に「製造本部に行ってほしい」と打診された時はどう思われましたか?
高橋さん: 「私が行って大丈夫ですか?」というのが第一声でした。今でも「食品製造未経験の私をよく抜擢したな」と思いますし、当社の中でも珍しいケースです。
製造の現場研修も2、3ヶ月間の予定だったんですが、気づいたら1年ぐらい現場作業をしていて。そのあたりから「路線が狂ってきたな」と思いましたね(笑)。
北窓さん: でも、その経験が今でも高橋さんの軸になっていますね。
高橋さん: そうですね。現場の皆さんの気持ちを拾いやすいです。それに、当初現場で一緒に働いていたパートの方と会うと、いまだに「アメちゃんあげるわ」と昔と変わらない感覚で接してくれるので、ありがたいですね。
大阪北部地震で感じた従業員の底力![]()
高橋さん: ナリコマで忘れられない経験の1つに、2018年の大阪北部地震の時のできごとがあります。震源地が大阪のセントラルキッチンの近くだったので、水道・電気・ガスの全てのインフラが止まりました。その瞬間、「終わったな」と思いました。「毎日食事を作って、毎日お届けして、というサイクルが、これでもう途切れたわ」と。
地震は朝7時58分に発生したので、すでに多くの従業員が出勤している状態でした。一旦パートのメンバーには帰ってもらうことにしたのですが、「昼1時に、可能であればもう一度出勤してもらえるとありがたいです」とだけ伝えました。
その間、私を含め社員で電気やガスの復旧作業を行っていたのですが、正直「この状況では、パートさんは誰も帰ってこないだろうな」と思っていました。
ところが、なんとほとんどのメンバーが戻ってきてくれたんです。自宅でタンスが倒れる、窓が割れるなど被害を受けた方が多くいたにもかかわらず、仕事を優先して戻ってきてくれました。
そして、一番大変だったのが「エレベーターが動かなかったこと」。食事はセントラルキッチンの2階や3階で製造しているのですが、1階から出荷するので、通常は業務用エレベーターで食事を1階に運びます。でも、電気が止まっているのでエレベーターが動かない。やむを得ず、バケツリレー方式の手作業で約1000コンテナ全部を運んだんです。
その時、セントラルキッチンのメンバーだけでなく、差し入れを持ってきてくれていた今の会長の竹内までが「俺もやるわ」と作業してくれて。
こんな危機的な状況でも、パートや会長といった立場や役割に関わらず、全員が一丸となって協力して作業してくれた。それこそ、「ナリコマのパワーだ」と、改めてこの会社の良さを実感しましたね。
その日は結局、日付をまたいで深夜2、3時まで作業しましたが、最終的に食事を滞りなく、全食出荷することができたんです。
北窓さん:それは本当にすごいですね。私は当時まだナリコマに入社していませんでしたが、ナリコマの底力と信念を感じるエピソードです。
従業員の幸せを大切にした組織づくり![]()
北窓さん: 高橋さんが当社で役員を務める中で、どんな会社や組織をめざして動かれていますか。
高橋さん: もちろん、お客様に安全でおいしい食事を届けることを大切に考えていますが、同時に社員がより安心して働き続けられる環境の整備もめざしています。
ナリコマのサービスは、現代の世の中に本当に刺さると思っています。だからこそ、社員全員が同じ方向を向き、頑張った分だけ給与に反映される環境にしたい。そして、経歴や学歴問わず、活躍している社員がしっかりステップアップできる土壌をさらに整えていきたい。
できれば会社が50年先も健全に続くよう、定年までの残り9年、そういったことに取り組んでいきたいと思っています。
北窓さん: 高橋さんが秘めている熱い想い、日頃のちょっとした言動からひしひしと伝わってきています。高橋さんもそうですが、会長を含め当社の経営陣は、お客様はもちろん、従業員の幸せをとても重要視していますよね。
高橋さん: そうですね。先ほどお話した大阪北部地震の時のように、ピンチの際に従業員から助けてもらっていますから、恩返ししないといけないと思っています。
物価高でもできるだけ価格転嫁はしないのが使命![]()
北窓さん: ここ数年、円安や気候変動の影響などで食品の価格がどんどん上がっています。ナリコマの食事サービスのご提供について、どのような影響がありますか。
高橋さん:この4、5年で企業物価指数は大きく上がりましたが、お客様にご提供する価格に関しては、企業努力でなんとか維持してきました。正直もう限界が近いとは感じていますが、お客様に価格転嫁しないようにするにはどうするかを、購買や商品開発、献立など各部門が考えてくれています。
今、多くの病院や福祉施設の統廃合が進んでおり、経営が難しい状況です。それでも、当社の食事を日々召し上がっているお客様は約18万名もいらっしゃる。そういった方々へ365日お食事をお届けするという私たちの使命感は相当強いものです。なるべくご負担をかけない価格で、お食事を提供し続けたいと考えています。
北窓さん: 限られた予算の中でどのようにやりくりするのか、病院・福祉施設の皆様は常に考えていらっしゃいますよね。そこで毎日ご提供する食事の価格は、積み重なると大きなインパクトになることは明らかです。
ですから、当社は値上げ交渉はなるべく回避すべく、努力しています。他社が早い段階で値上げに踏み切る中でも、私たちは本当に最後の最後、どうしてもしなければならないという状況になって初めてお願いする。物価高の第一波のときも、半期ぐらい頑張って持ちこたえたんです。
こうした背景や難しさは、お客様にはなかなか伝えにくい部分だと思いますが、営業社員から「こんな思いでナリコマは価格を維持しています」と自信を持って伝えられれば、お客さまにもご理解いただけると思いますね。
右肩上がりの成長![]()
北窓さん:ここ数年、当社はお客様の数が前年比おおよそ120%に増えていくという成長を遂げています。
高橋さん:正直、私としては2011年に入社してから10数年、「気づいたらここまで会社が大きくなっていた」という感覚です。この感覚は、多くのメンバーが持ってるような気がします。今でこそ、「中長期の計画を立てて、一緒に達成をめざしていきましょう」という流れはありますけどね。
当社の事業はこれからまだまだ伸びる市場なので、「自分たちがもっと頑張れば、さらに良い会社にしていける」と、従業員皆が思ってくれているのかなと感じます。
私の経験上、多くの会社では、従業員が自ら意見を出して、会社の事業や雰囲気づくりに関与することは、なかなか難しいと思います。一方で、当社では従業員側が会社を作っていく、成長させていくという文化がある。その分大変ながらも、改善や挑戦への意欲が湧きやすいのかなと思いますね。
北窓さん:改善や挑戦という面では、当社はこの業界ではまだあまり進んでいないDX化を積極的に推進していますね。その点、製造の現場を取りまとめる高橋さんはどのように捉えていらっしゃいますか。
高橋さん:そうですね、まずお食事は第一に美味しさありき。その上で、人にしかできないことと、人でなくてもできることを振り分ける必要があると思っています。人でなくてもできることは日進月歩で増えているので、そういった作業はシステムや機械に割り振っていきたいですね。
でも、献立の構成や味の違いなんかは、最終的には官能の部分でしかわかりえない時もある。この感覚は絶対に手放してはいけない。ただ、そういった部分以外で、人間が苦労や苦しい思いをしてやらなくても、機械やAIを使ってすぐできる作業は、どんどんDX化していけるといいですね。
現場の声をモチベーションに
北窓さん: 私たちデジマチームと製造本部は、今までなかなか直接的な接点がありませんでした。これを機会に、「デジマチームにもっとこうしてほしい」というご意見をお聞きしたいです。
高橋さん: 私たち製造本部は、「365日お食事を届けること」について、相当大きな使命感を持っています。私の妻も「そこまでやらなあかんもんなの?」と聞いてくるくらいです。
だからこそ、お客様の喜んでいらっしゃる姿や感謝のお言葉が、製造本部のメンバーにもっと伝わってくると、さらにモチベーションが上がると思います。どうしても普段は、ポジティブなお言葉より、お叱りの声などネガティブなお言葉しか私たちの元に届いて来ないので。
そして、お客様からのお喜びや感謝のお言葉を力に、安全で美味しいお食事をもっと多くの方々に届けていきたいですね。