【Our Voices】新しい「働き方」と「人材調達のかたち」づくりに挑戦する
InterRace株式会社 代表取締役社長
桑田 良紀
2003年、株式会社リクルートに新卒入社。HR事業部に配属後、新規事業開発室に異動し、医療分野の新規事業立ち上げ、買収後企業のPMI、M&A業務に従事。2011年にHR事業部に異動し、営業企画部長、事業企画部長を歴任。2018年11月にリクルート卒業と同時にポートフォリオワーカーとしての活動を開始し、InterRaceを創業。複数社の執行役員やNPO法人理事も兼任。
「働き方」と「人材調達のかたち」を問いなおす、次の5年へ
私たちInterRaceは、創業から7年目の節目を迎えました。多くのご縁に支えられ、これまで毎年増収増益を達成しながら、着実に歩みを進めてきました。
そして2024年春、私たちは新たな決断を下しました。ビズリーチを展開するVisionalグループに参画し、これまでの延長線上ではない「非連続な成長」を目指す挑戦をスタートさせたのです。
なぜ、そのような意志決定を行ったのか。その背景となる私がInterRaceを創業した想いについて、まずお話しします。
InterRaceの原点にあるもの
「9.5%」──この数字からすべてが始まりました。
これは、私が新卒で入社し約16年間在籍したリクルート社で、中途採用領域を担当していた当時に強く意識していた数字でした。人材紹介サービスにおける“求人決定率”、すなわち企業から預かった求人のうち、実際に採用が決まった割合を示す指標です。
当時、人材紹介事業は対前年売上成長率120%前後の成長を続けており、市場は拡大の一途をたどっていました。その一方で、この求人決定率は横ばいで、現在は7.5%に低下しています。多くの企業が人材紹介サービスに求人を出しても、多くの企業は思うような採用に結びつかないという実情が続いているのです。
なぜ、採用に結びつかないのか。その背景には、日本の労働市場における「人材流動性」の低さがあります。人材流動性とは個々の人材がひとつの企業にとどまるのではなく、企業間を柔軟に移動し、その移動によって雇用が活性化する度合いを指します。人材の流動性は、経済成長を促す重要な要素です。先進国では、人材の流動性が高いほど、潜在成長率が高い傾向が見られますが、日本は相対的にこの流動性が低い状況にあります。
そんな状況下で、企業が事業変革や組織刷新を図ろうと求人を募集しても、求める人材からの応募が十分に集まらずに、採用に至らないことが少なくありません。その結果、新しいケーパビリティの獲得が後回しになり、組織の高齢化や蛸壺化が進み、事業転換や新しい挑戦が生まれにくい構造になっています。
もちろん、こうした課題に対して、人材業界の先人たちの頃から、転職のイメージを前向きなものに変えようとする努力や、サービスのUX改善に向けた施策は、業界全体で継続的に行われてきました。ただ、それでもなお構造そのものを大きく変えるまでには至っていません。
その背景には、これまでの構造的な力学によって恩恵を受けてきた“成功体験”の存在があると私は考えています。戦後の復興から短期間での成長を経てきた日本は、新卒一括採用や、終身雇用モデルが合理的に働き産業復興、勃興に大きな寄与を果たしてきました。しかし一方で、IT技術の進化、グローバリゼーションの加速、少子高齢化など社会構造の変化を受けた中では、その成功体験を客観的に見直して構造変革を起こす必要があるとの想いが、とても高まっていました。
そんな気持ちが沸々としていた折、リクルート勤務時代にサンフランシスコで開催されたSalesforce社主催の世界最大級のビジネス&AIイベント「Dreamforce」に参加する機会を得ました。このイベントには、実に多様な背景、ケーパビリティを持つ個人事業主たちが集まり、学びやネットワーキングの場として活用していました。
印象的だったのは、多くの参加者が“ポートフォリオワーク”という働き方を合理的に実践していたことです。彼らは、自分らの人生の目的に合わせて労働時間や働き方を設計し、柔軟かつ戦略的にキャリアを築いていました。そこには、“自由”というよりも、“自律”という思想が根底にありました。
彼らと対話し、観察するなかで日本にも、こうした働き方を支えるインフラが整えば、高い専門性や経験を持つ人材が、より柔軟に活躍できるのではないか、転職だけでなく独立や副業など働き方フォーマットが変われば人材流動性を高めて、日本の再成長に寄与できるのでは、と考えたのです。
(※プロフェッショナルが独立して、規模拡大を追わない働き方を選ぶ人々は、のちに『ソロプレナー』という言葉で語られることを、後日、安川慎一郎さんから教えていただきました。)
この仮説は、やがて社会全体の課題と重なっていきます。今後の日本では、育児・介護の負担増や都市部の生活費高騰など、働く世代を取り巻く環境が厳しさを増すことが予想されます。もし、個人が自分の価値観やライフステージに応じて働き方を選べる社会があれば──市場価値の高い人材を中心に、キャリアの可能性がもっと広がるはずだ。そんな時代背景やきっかけ、そして個人的な原体験を通じて、私はある可能性に目を向けるようになりました。
ただの“人材マッチング”ではなく、
“働き方の構造そのもの”をつくり替えることで、
社会の停滞を打ち破ることができるのではないか──。
それが、InterRaceという会社の存在目的の礎となっています。
プロフェッショナルと企業をつなぐ、新たな仕組みの実装
この仮説を出発点として、私たちが構想したのがInterRaceのあり方でした。独立したプロフェッショナルが持続的に活躍できるよう、働き方そのものを支える“インフラ”を構築すること。そして、採用に課題を抱える企業と、柔軟な働き方を望む個人をつなぐ、新たな仕組みを社会に実装することでした。
創業当初より、私たちは企業の「正社員採用」だけでは補いきれない事業現場の人材ニーズに対応してきました。事業課題の解決に即したケーパビリティをもつプロフェッショナルを集めてプロジェクトチームを組成し、事業開発やマーケティング支援といった幅広い領域で業務委託に取り組んできたのです。そうした実践を通じて、個々の課題に合わせたプロの業務設計や運用手法を磨き上げ、より高い再現性と介在価値を追求してきました。
そして3年前、より大きな介在価値を発揮するため、事業領域を「採用」に絞り、集中的に取り組むことを決断しました。
当時は、この働き方自体の意味は体感できるようになっていましたが、その為に大事なのは①業務自体を高度化させる②業務設計工程を重視し、プロジェクトチームの役割、ケーパビリティを明確にする③アカウントマネジメントとプロジェクトマネジメントをわける。などの介在であることがわかってきていました。その介在モデルの再現性を高めるために、先ずは今後高度化が求められる「採用領域」に投資を絞ることにしたのです。
以来、スタートアップ企業の年間100名採用、グローバル製造業のハイスペック採用、事業変革を担う幹部候補の採用など、さまざまなプロジェクトにおいて、プロリクルーターとチームを組み、現場と向き合い続けてきました。プロリクルーターの登録者数も450名を超え、取り組みの成果が目に見える形で表れつつあります。
Visionalグループへ参画した理由
このように、私たちは構造的な採用課題の根幹に向き合い、「働き方」そのものを見直すインフラの実装を目指してきました。そしてこの構想を一気に加速させるために、2024年春、私たちはVisionalグループに加わるという大きな決断をしたのです。経営チームで何度も議論を重ね、事業計画を何度もリバイズしながら、仲間とともに考え抜いた末の、未来への本気の意志決定でした。
これから描く5年後、10年後の非連続な成長を現実のものとするために、必要な選択だったと私たちは考えています。この判断には、大きく2つの理由があります。
まず1つ目は、Visionalが累計27,500社以上の導入企業と、227万人を超える登録者という強固な顧客基盤を有していることです。この提携により、InterRaceはこれまで以上のスピードで、事業目的である「働き方をつくる」ことが出来ると判断したこと。
2つ目は、思想面での深い共鳴です。InterRaceは創業当初から「プロの働き方創出」を掲げてきました。一方、ビズリーチでは「リクルーターのプロフェッショナル化」という構想を推進しており、両者のビジョンは高いレベルで重なり合っていました。
また、InterRaceがこれまで培ってきたタレントアクイジションのノウハウは、ビズリーチが展開する「ダイレクトリクルーティング」プラットフォームのさらなる進化に貢献できると考えています。たとえば、リファラル採用やタレントプールの活用といった、広義のダイレクトリクルーティング領域においても、InterRaceが持つプロリクルーターのネットワークとその運用力は大きな強みとなります。この協働により、より多様な企業の採用課題に対応し、ビズリーチ側にとっても新たな価値を創出する土台を提供できると確信しています。
こうして、「戦略」と「思想」の両面で確かなシナジーを見出す手応えを感じた私たちは、仲間とともにVisionalグループへの参画を決めました。
新しい働き方の循環モデルを構築
私たちが構想する「プロフェッショナル・インフラ」は、まず採用領域において3つの仕組みの実装を目指しています。それが、「日本最大規模の案件流通基盤」「自発的な学習を促す基盤」「プロフェッショナルとしての力量を可視化・記録化する基盤」です。各基盤を連携させながら機能することで、個人は自身の価値観やライフステージに応じた機会を選び、自律的かつ持続可能なキャリア形成が可能になります。
ここでは各論に深くは触れませんが、この仕組みが整えば、フリーランスやソロプレナーといった働き方を選ぶ人たちが、プロリクルーターとして自分らしく活躍し続けられる社会に近づくと、私たちは確信しています。
また、採用業務という領域は、年間を通じた業務量の繁閑差が大きく、環境変化も激しいため、求められるスキルやノウハウの高度化が常に進んでいます。こうした領域においては、従来の正社員中心の組織運営では、対応しきれない場面が増えてきています。
そこで私たちは、業務習熟のための長期的な育成を必要としない「即戦力プロ」を適時的確にアサインし、業務量に応じて柔軟に編成できるプロジェクトチームを通じて、業務の波を吸収しながらも機能強化を実現していく仕組みを提供していきます。
その結果、企業と個人が合理的に「働き方」を選び合う新たな関係性が生まれ、社会全体で持続可能な成長が促されると考えています。たとえば、個人が「雇用か業務委託か」「勤務地や勤務時間はどうするか」といった問いに、自分の意思とスキルで選択できる社会。家事・育児・介護といったライフイベントの変化にも柔軟に向き合いながら、それぞれの人生観や価値観に基づいて前向きに働く人が増えていく社会。そうした未来を、私たちは真剣に見据え、実現に向けて動き出しています。
未来の働き方をデザインしよう
私たちは、働き方そのものを問うことから始まり、その構造を作り替えることに取り組んでいます。変化を待つのではなく、仕組みごと創る。それがInterRaceの姿勢です。
これからの社会で、個人が「雇用か業務委託か」「どこでどのように働くか」を選び取る。その能力・スキルを身につけ、人生における選択肢を広げていく。そんな世界を目指して、私たちは一歩一歩、前に進みます。
これから、きっとこれまでの5年とはまったく違う景色が待っていると思います。私たちはその変化を、仲間とともにかたちにしていきたいと考えています。
次の成長フェーズを迎えたInterRaceで、未来の労働市場を一緒に創り上げていきませんか?