価値観の違いを超える“伝える力・聴く力”の磨き方~信頼できる柱が欲しい経営者のための『プロパーCHRO』の育て方Vol:20~
こんにちは。株式会社シンシア・ハート代表の堀内猛志(takenoko1220)です。
僕は、50名から4000名まで成長した企業の人事役員として、各ステージの人事組織戦略の遂行に奔走してきました。
このシリーズでは、「信頼できる柱が欲しい経営者のための『プロパーCHRO』の育て方」と題して、自身の経験をもとに、
▼人事トップになるために実行したこと
▼意識していたマインド
▼経営や現場とのコミュニケーションのtips
などをお伝えしていきます。僕の経歴詳細は、以下の記事からご確認ください。
https://cloudy-supernova-846.notion.site/Profile-ceda2eb306f74cc682f7565e3550f462
ここ最近、僕は仕事でもプライベートでも、言葉の選び方についてよく考えています。言葉で相手に思いを伝えることは、簡単なようでいて本当に難しいですよね。
同じ言葉を選んでいるはずなのに、人によって受け取り方が違ったり、褒めたつもりが、相手を傷つけてしまったり。そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
なぜそんなことが起きるのかというと、僕は、一人ひとりの価値観や考え方が異なるからだと思っています。価値観の違いについては、本シリーズのVol.19でも取り上げ、皆様から大きな反響をいただきました。
原因ではなく要因を分析する“人事の目”~信頼できる柱が欲しい経営者のための『プロパーCHRO』の育て方Vol:19~
結局のところ、価値観が異なる人とわかり合うためには、シンプルにコミュニケーションを重ねるしかありません。ただし、価値観がズレたまま会話を増やすと、かえってストレスになってしまいます。
これを踏まえて、本記事では、経営者や人事がコミュニケーションの際に意識しておきたい6つのTipsをお伝えしたいと思います。
目次
Tips1:行動の裏にある感情・価値観を見極める
Tips2:違いを違いとして受け止める
Tips3:視座を落とさずに視点を変える
Tips4:性別による思考の差を理解する
共感を求める会話と、報告を求める会話
情報の共有から安心の共有へ
Tips5:解決マインドを改める
Tips6:自分と違う人と関わることを避けない
まとめ:人と向き合う仕事の本質
Tips1:行動の裏にある感情・価値観を見極める
僕は、行動の奥には思考があり、思考の奥には感情があり、さらに、感情の奥には価値観があるという4層構造で人間を捉えています。言葉や行動が表に出てくる前には、「これを喋ろう」「こう動こう」と頭で考えていると思うのですが、それを司っているのは、その人の感情と価値観です。
そして、同じ出来事でも「ムカつく」と感じる人と「ハッピー」と感じる人に分かれるのは、育ってきた環境や人生経験から培われた価値観が異なるから。前回もお伝えしたように、5歳違えば外国人、10歳違えば宇宙人くらいのレベルで、価値観は全然違うんです。
だからこそ、初めて会う人でも、付き合いが長い人でも、表面的な言葉や行動以上に、その奥にある感情や価値観がどうなっているのかを考えながら対話することが必要になります。
詳しくは下記の記事で書いているので、気になる方はぜひ読んでみてください。
Tips2:違いを違いとして受け止める
SNSなどのメッセージの文末に付く「。」に威圧感や冷たさを感じるという「マルハラ」も、世代による価値観の違いが生み出す現象です。
また、今の若い世代は、最終的につまらなかったら時間の無駄だからと、小説を最後から読んだり、ドラマを最後のオチから見たりすることがあるといいます。
そんな話を聞くと、「それ、何がおもろいの?」「いやいや、物語っていうのは……」と言いたくなる方もいらっしゃるかもしれません。でも、本やドラマの正しい楽しみ方なんて、実際は決まっていないんですよね。
多くの人が、自分と違う時点で「バツ」を突きつけたくなってしまいますが、赤色が好きな人に「青色を好きになってよ」と言っても、根本的に好きな色を変えることはできません。だからこそ、コミュニケーションにおいては、違いを「間違い」ではなく、単なる「違い」として受け止めることが非常に重要なんです。
Tips3:視座を落とさずに視点を変える
僕は、仕事柄たくさんの経営者の方に会いますが、マネジメントが上手いなと感じる方には、ある共通しているポイントがあります。それは、どんなにスキルや経験が上がっても、視座を下げることなく、視点を変えることができるという点です。
言葉だけではわかりにくいと思うので、具体的な場面を用いて説明しましょう。たとえば、営業の社員が「全然アポが取れなくて大変だ」と嘆いていたとします。
そこで、経営者が「わかるわかる。大変だよね」と一緒に共感しているだけなら、視座はメンバー目線まで下がってしまっているといえます。
そうではなく、メンバーに視点を合わせ、何をもって大変と言っているかを理解しつつも、「自分たちは何をなしとげたいのか(意義)」「そのために何を達成すればいいのか(目的)」「では、具体的にどうやってアポをとればいいのか(行動)」と、メンバーの視座を引き上げる。これこそ、経営者としての視座はそのままに、別の視点から物事を見ることができている例です。
視座も視点も経営者目線のままだと、偉そうに上からものを言うだけになりますし、逆にどちらもメンバー目線まで下がると、尊敬されなくなったり、自らの言葉やフィードバックに重みがなくなったりしてしまいます。
視座と視点の使い分けは非常に難しいのですが、マネジメントが上手い人と下手な人で大きな差が出る部分なので、まずは意識することから始めてみてほしいと思います。
Tips4:性別による思考の差を理解する
男女という性別で、違いを一括りにすることはできません。ただし、やはり身体と同様に、男女の脳には差があると感じています。ここからは、僕がそれを実感した2つの出来事を紹介しながら、コミュニケーションのヒントをお伝えしていきたいと思います。
共感を求める会話と、報告を求める会話
生前、妻は寝る前によく「お話しよう」と言っていました。そこで、僕が今日の進捗や気づき、学びなどを話し出すと、妻は「そうじゃなくて、もっとどうでもいい話してよ」と言うんです。
僕は、「話をする」=「報告する」だと捉えていたので、どうして妻がそんなことを言うのかよくわかっていませんでした。でも、過去を振り返るうちに、彼女にとっては「話をする」=「共感する」だったのだと気づきました。「話をする」という行動に対する認識の違いは、男女で差が出がちな部分です。
また、僕は社長なので、従業員に話をすることはよくありますが、妻と違って、従業員はなかなか「もっと違う話してください」とか、「いや、それ全然わかんないです」なんて言えませんよね。
だからこそ、相手が何を求めているのかを察してコミュニケーションをとることが、お互いの理解を深める第一歩になると思います。
情報の共有から安心の共有へ
もう一つの出来事も、会話に関する認識の違いです。
妻が亡くなってから、息子の世話のために、僕の母が来てくれることが増えました。息子を保育園などに預ける際に一緒に行くこともあるのですが、ちょっと時間に遅れたりすると、母は「今朝はこういうことがあって……」と、言い訳にも聞こえることをたくさん並べるんです。
僕は「遅くなってすみません!」と一言で済ませてしまうタイプなので、母に対して「聞かれてもないこと言わんでええやん」「保育士さんだって暇じゃないよ」と思っていました。
また、保育士さんからはいつも「息子くん、ご飯は何を食べましたか?」と聞かれるのですが、僕は「何時に、何を、どのくらい食べたか」と簡潔に答えます。でも、隣で別のお母さん方が同じ質問をされているのを聞いてみると、派生する情報をたくさん喋っているんです。
そういった様子を見ているうちに、お母さん方は、いつ何が起きるかわからない子どもを人に預けることに対する不安を軽減するために、自分が持っている全ての情報を共有しているのではないかと思い始めました。
仕事でも、チームメイトとしてプロジェクトを達成しようとする中では、いろいろな情報をシェアしておいた方が、ミスやリスクを回避しやすいですよね。
僕をはじめ、男性は「聞かれたことしか喋らない」という人も多いと思うのですが、もっと話すことに対して前向きになっても良いのではないかと感じています。そうすることで、単なる情報だけでなく、安心を共有できる会話になるのではないでしょうか。
Tips5:解決マインドを改める
僕は、何か問題が起きたときの向き合い方には、「解決マインド」と「解少マインド」があると考えています。なお、後者の「解少マインド」は、僕の造語です。
解決マインドは、ストレスになっている課題や原因をクリティカルな方法でゼロにすることを目指します。ソリューションによって、起きている問題をゼロにできると考えるため、喧嘩が終われば「この話はきれいさっぱり終了」となるタイプです。
解少マインドは、課題や原因を解決する以前に、それによるストレスを減らすことを第一に考えます。話を聞いてもらい、共感してもらうことで、怒りのボルテージやストレスのアベレージを下げるタイプです。多くの場合、課題や原因自体は解決に至っていないので、後々似たような原因で喧嘩をすると「前もそうだったやん!」となります。
僕は解決マインド、妻は解少マインドだったので、喧嘩のときは僕はゼロ状態を目指してソリューションを探り、妻はストレスを減らすことを目指して共感を求めていたので平行線でしたw
前職時代には、仕事でも同じような経験をしました。後輩から仕事を辞めたいと相談され、金曜日に飲みに行っていろいろ話した末、「もう大丈夫。頑張れそうです!」と言っていたのに、月曜日には「やっぱり退職したい」に戻っている。僕が「もうクリアやな」って思ったことが、全然解決できていないんですよね。
これは、どちらが良い悪いという話ではなく、そうした違いが“存在する”という事実の話です。
管理職になる方々は、他にも決めなければならないことや、考えるべきことがたくさんあるので、問題に対して解決マインドで臨もうとする方が多いと思います。ですが、いくらソリューションを用意しても解決できないこともあるんですよね。
時には、寄り添うことそのものが、最大の解決策になるのだと思います。
Tips6:自分と違う人と関わることを避けない
僕は、こうした人間の複雑な部分を面白いと思っているので、この仕事をしています。一方で、「面倒くさいな」と感じる人もいると思います。
ただし、ここまで紹介した1〜5のTipsを実践できるかどうかは、結局のところ、自分と価値観や考え方が違う人と、どのくらい対話を積み重ねることができるかにかかっています。人との関わり方は、一朝一夕で身につくものではありません。修行のように、日々の積み重ねで少しずつ磨かれていくものです。
どうか「全部AIに丸投げできたらいいのに」などと、人と向き合うことを放棄しないでください。苦手だと感じる相手と向き合う時間こそが、自分を成長させてくれるはずです。
まとめ:人と向き合う仕事の本質
人材紹介業において、求職者との面談は一期一会です。一瞬で相手のことを理解し、相手が欲しい言葉を投げかける必要があります。
何十人、何百人もキャリアアドバイザーが在籍している大手企業であれば、「前の人はダメだったけど、次はいい人に当たったらいいな」と思ってもらえるかもしれません。一方で、当社のような小さい会社は、一度「なんかダメだな」と思われてしまえば、二度目はないでしょう。
また、コンペなら、落ちてもまた来年応募してくれる可能性がありますが、採用の場合「今回は辞退するけど来年も受けます」という候補者はそういません。その1回しかないチャンスを確実に掴むためには、今回紹介したTipsが役に立つはずです。
同業の皆さん、人事の皆さん、そして経営者の皆さん。難しいけれど面白い、人と向き合うこの仕事、これからも一緒に頑張っていきましょう!
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