こんにちは! みらい翻訳セールス&マーケティング部のNateこと唐尾です(弊社では「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」を重視する という考えのもと、お互いをニックネームで呼び合う文化があります)。
私は現在、リセーラーサクセスチームの一員として販売パートナーの皆さまと連携しながら「言語の壁を超え、新しい生活と仕事の様式をもたらす」というビジョンを更に広げていくため、日々さまざまな取り組みを行っています。
・・・それにしても、「言語の壁を越える」とはどういうことでしょう?また、言語の壁を越えることで見える「新しい生活」とは一体何なのでしょうか?今回は、私たちセールス&マーケティング部がどのようにしてこの問いと向き合っているかについてご紹介します。
自己紹介
私はIT業界や製造業界を対象とした翻訳会社のプロジェクトマネジメントや、PCメーカーでの海外事業の企画職、SaaS事業の立ち上げ等を経て、2022年5月にみらい翻訳に入社しました。いわゆる人手翻訳の元サービス提供者であり、メーカー時代は国際色豊かな海外支社や工場のメンバーと日々英語でやりとりする中で1ユーザーとして機械翻訳もしばしば利用していたという、翻訳と関わりの深い生活をしてきた人間です。もともと映画や音楽、小説などへの興味から英語を学び始めたこともあり、異なる文化に紐づいた言葉を通してさまざまな景色を見せてくれる翻訳という行為を楽しんできました。
同じ概念を説明するのでも、日本語とそれ以外とでは切り口や道筋が異なるものですし、辞書上で同じ語意を示す表現だとしても、それぞれの言葉が結ぶ像が完全に重なることはありません。こうした言語の間にある曖昧さ、あるいは”Lost in translation”と呼ばれるような余白は、私たちに多様な視点があることに気づかせてくれるものであるのと同時に、ビジネスにおいて正確な情報や意図の伝達が必要となる状況では、複雑な言語の壁として立ちはだかります。
コミュニケーションの断絶は、加速度的に広がる
例えば、私が身を置いていたものづくりの世界では、一般に製品仕様に対する理解と認識の統一が重視されます。多数の関係者が関わる数多くの工程を素早く何度も回しながら一定の品質を担保するためには、製品の物理的な組成(どんな部品を使っていて、どう組むのか)だけでなく、その製品の設計思想から稼働時のふるまいまでが厳密に定義され、明文化され、組織全体でばらつきなく完全に理解されることが重要で、必然的に製品仕様書をはじめとした文書やコミュニケーションの正確性は、事故のない安心・安全な製品づくりの核と考えられています。製造業における「正確さ」とは、「情報の同一性」が担保されていること、といっても良いかもしれません。
こうした環境においては、文書の外で同様の概念を説明する場合にも、文書との「情報の同一性」が厳しく求められます。その説明は上司や、関係部署の認識と合っているか?根本的な思想とずれておらず、かつ現実的な表現になっているか?こうしたことを考えながら慎重にコミュニケーションを行う必要があり、それは翻訳の際に高い壁となって発信者を悩ませます。文書であれば、技術英語の理解、社内用語の統一、禁止表現の排除。海外の製造関係者とのコミュニケーションにおいては、工数が想定しやすく、極端・異質な負荷を想像させるような表現は避ける必要があります。営業関係者に対しては、現地の市場の声が設計思想に反映された、納得感のあるストーリーが読み取れるように伝えることが好ましいでしょう。これらの調整や配慮を行いながらも、翻訳によって情報の同一性を毀損しないようにしなければなりません。
コミュニケーションコストが上がり、誤訳への不安が高まると、まず最も気軽にコミュニケーションできるチャネルの利用が減っていきます。チャット、メールの頻度が下がり、細かい情報のやり取りができなくなるのに合わせて、事前の合意形成の機会が失われていきます。
細かな情報の流通が失われると、情報の発信側と受信側の双方で外国語のスキルがより秀でた人材にコミュニケーションが集中するようになり、双方のキーパーソンが「ホットライン(電話)」で書面以外のすべてのコミュニケーションを担当するようになります。
しかしキーパーソンは、キーパーソンであるがゆえにコミュニケーション以外の負荷も請け負っており、情報交換の頻度はまちまちで安定性に欠けます。最悪の場合、事前の合意形成ができずに会議が開かれた結果、双方の認識の相違によって紛糾したり、当初の想定通りに合意できなかったことでリリーススケジュールに影響が出るなど、組織全体の生産性に関わる問題に繋がります。
機械翻訳サービスにできること
このような状況で情報の発信者が抱える最も大きな不安は、「自分の書いた訳文が、本当に元の表現と同一性を保てているのかがわからない(保証がない)」ということです。これを解決するためには、訳文が正しく原文のニュアンスを再現できているかを素早く、その場で確認できることが重要です。
FLaT/Mirai Translator®︎はわかりやすく操作にストレスのないUIで、訳文を母語に再度変換した結果を同時に確認できる逆翻訳機能や、手元ですぐに確認できるデスクトップアプリなどを備えていますが、単にツールの機能として対応するだけでなく、訳文が必要とされる文脈や背景を理解した上で原文のニュアンスをより正確に再現するための入力方法をご案内するなど、高い外国語のコミュニケーションスキルを持っていなくとも訳文の正確性を確認できる機械翻訳の活用方法を様々な形でユーザーの皆様にお伝えしています。上に挙げた例は私の一つの体験に過ぎませんが、私たちは常にこのような翻訳の現場のリアルに基づいた改善ができるように、部署を超え、見解や学びを持ち寄って最善の対応を考えています。
既存の機能の活用法だけでなく、新しい機能の開発を検討する時も、私たちは常にユーザーの皆様の「生産性の向上」から考え始めます。メンバーそれぞれの体験や知見を持ち寄って、ユーザーにとっての生産性とは何なのか、またそれを支える要素・阻む要素は何なのかを、営業だけでなくPdMやエンジニアリングのチームとも一緒になって分析します(ニックネーム文化に代表されるみらい翻訳のフラットな社風は、こうしたオープンな議論を強力にバックアップしています)。
こうした分析や議論から出てくる答えは、必ずしもすべてが新機能の開発に繋がるわけではありません。それは時に、お客様の特別な背景や事情にニューラル機械翻訳が寄り添うための使い方を共に考えることであり、あるいはお客様が想像されたことがなかった活用シーンをお伝えすることであり、またあるいは、お客様の生産性の向上という課題に共に向き合い、お客様の「新しい生活と仕事の様式」それ自体をご提案することなのです。
みらい翻訳で働くということ
目標を「翻訳ソフトウェアを提供する」ではなく「言語の壁を越える」とすることで、翻訳というテーマの探求がいかに奥深く多様なものになるか、イメージいただけたでしょうか。みらい翻訳に入社して3ヶ月、既に首までどっぷりと機械翻訳の世界に浸かってもがく日々ですが、個人的に感じた、みらい翻訳の入社前後の印象についてもお伝えしたいと思います。
私がみらい翻訳の面接を受けた時には様々なメンバーとお話をさせていただいたのですが、海外とのやりとりが多かった私から見ても、現場から役員クラスまでのメンバーがお互いにリラックスしてニックネームで呼び合う様子は衝撃で、日本の会社の面接を受けているという感覚がありませんでした。
実際に入社してみて感じたのは、こうしたオープンな社風は一人一人の知的好奇心とプロフェッショナリズムによって支えられている、ということでした。隣の人の仕事の悩みも自分の課題に引き寄せて肩を並べて考えられるような人にとっては、序列という概念はただの「壁」に過ぎません。ニックネームで呼び合うという文化は、仲の良さを演出するためではなく、本質的な課題を単刀直入に話し合うために壁を取り払うための実践的な手段として活用されているものなのです。
それに、みらい翻訳のメンバーはお互いが翻訳というものに対して持っているパッションの違いを楽しんでいるようにも感じます。私にとってそれはリズムや音韻(ライム)であって、面白い・クールな言い回しの収集なのですが、ある人にとってはコミュニケーションの不確実性への興味であったり、あまりにもファジーな文脈という概念をいかにAIに学習させるかということであったりします。
そんな人々が集まっているので、大小様々な議論が加熱しがち&皆が自主的に動けるがゆえに一人でなんでもやってしまいがちなのが玉に瑕。10->100の拡大フェーズにあるみらい翻訳にとって大切なのは、拡大する組織の中で個人のポテンシャルに頼らず仕事の再現性を確保できる体制を作り上げることなので、製造業での経験を活かしながら仕事の交通整理も進めています。また、機械翻訳のエンジニアリングのプロが集まっているので、セールスメンバーとしてはできるだけお客様が求める「品質」というものの中にある不安や背景を想像したり紐解いたりしてお伝えできるように心がけています。
言葉が示すその先へ
FLaT/Mirai Translator®︎は、ツールとしての機械翻訳機能だけでなく、コミュニケーションコストがなくなり、「言語の壁」がなくなったその先の世界のご提案も含めたサービスです。これからも翻訳を起点に、お客様に合った生産性向上の方法を共に考え、ご提案できる集団を目指して突き進んでいきます。
お客様の背景を理解し、最適なコミュニケーションのあり方を提案するには、言葉を愛し、コミュニケーションを楽しむ心が不可欠です。みらい翻訳では、言葉が持つ可能性を信じ、世界に存在する言葉の壁を共に紐解いて下さる方を探しています。びびっときた方、一緒に仕事しませんか?ぜひぜひお待ちしています!