自動車関連事業をはじめとした多角的な事業展開で、全国800を超える店舗ネットワークを持つ株式会社カーベル。「新車市場」「100円レンタカー」などで知られる同社が、2023年、新たに踏み出したのは、まったく異なる“人材紹介”というフィールドでした。
未経験からの挑戦として始まった、新卒紹介事業「推薦入社」ですが、学生の集客は順調に進む一方で、企業開拓の壁に直面する日々が続きました。
そんな時に出会ったのが、ヒトツメの「エージェントシップ」です。この出会いが、チームを、そして事業そのものをどう変えたのか。取締役・田中一徳さんに、その挑戦の裏側を伺いました。
株式会社カーベル 取締役 田中 一徳
1990年 新日本プロレスリング株式会社に最年少19歳で入社。年間出張300日をこなし、地方大会の売上記録を樹立。
2000年 企画宣伝部に配属。サークルKとのコラボレーションで「武藤&蝶野弁当」を企画・販売し、歴代売上1位を達成。
2002年 大阪支店長に就任。大阪ドーム28,000人、福岡ドーム48,000人の大規模興行を担当。
2006年 営業部長に就任。年間125試合の日程調整と全国巡業を統括。この経験で培った調整力と全国ネットワーク構築のノウハウが、現在の多角化事業を支えている。2012年 株式会社カーベル入社。以降12年連続で営業成績1位を記録。
2016年 部長に就任。
2019年 取締役に就任。自動車業界FC展開において出店数469店舗で日本一を達成。
2022年 年間講演数50本。全国1,500社以上の自動車販売店の経営課題解決に貢献。2023年 新卒採用に特化した「推薦入社」制度をスタート。
「採る側」から「紹介する側」へ。異業種カーベルが人材領域に踏み出した理由
ーー どのような事業をされているか会社の特徴を教えてください
株式会社カーベルは、今年9月で19周年を迎えます。
クルマ・暮らし・ライフイベントにまたがる複数事業を、全国ネットワークで展開しています。中核は、全メーカー・全車種を“まとめて安く買える”「新車市場」。現在は全国約470店舗まで広がり、メーカーごとの販売網を横断して選べる“クルマ版・家電量販店”的な体験を実現しています。
この成功を起点に、レンタカーの価格常識に挑んだ「100円レンタカー」(全国250店舗)、パートナーとしてのペットとの最期の時間に寄り添う「ペットの旅立ち」(全国36店舗)、国産スポーツカーの中古を扱う「R35Garage」、優良中古車のリース・サブスクリプションサービスの「コレCARラ」、新車中心の「マンスリーレンタカー東京」へと事業を拡張。toBには加盟店の加入促進、toCには“安く借りる・お得に買う”価値を届ける――この両輪で事業をスケールさせてきました。
ーー なぜ、これまでの事業とは全く異なる“新卒領域の人材紹介業”を始められたのでしょうか?
これまで築いてきた事業領域とは異なる“人材紹介”に挑戦したのは、自社の経験を新たな形で社会に活かせると感じたからです。その想いを形にし、2023年11月に新卒紹介事業「推薦入社」をスタートさせました。
この挑戦の背景にあるのは、創業以来貫いてきた「成功事例を研究し、自社流にアレンジする」という実践哲学です。ただ真似るのではなく、カーベルらしさを加えて全国展開する――それが成長の原動力になっています。
もともと自社でも新卒採用を行うにあたり、広告出稿やイベント出展などに数百万円単位の投資を重ねてきました。しかし、採用競争の激化とともに「広告を出しても人が集まらない」「大手が注目を集める一方で埋もれてしまう」という課題に直面しました。
そんな中、採用イベントで他社エージェントの動きを間近に見ていた代表が、「採る側ではなく、紹介する側に回れば、この仕組みをカーベル流に進化させられるのではないか」と閃いたのです。
2023年1月、「何か面白いことをやるから準備しておけ」という代表のひと言から始まり、7月には構想が明確になり、自社が積み重ねてきた採用ノウハウをもとに、学生と企業をつなぐ新しい形の人材紹介サービス――「推薦入社」が動き出しました。
ーー 新卒人材紹介事業に参入後、どのような課題に直面しましたか?
まったくの未経験からのスタートだったため、立ち上げ初期は試行錯誤の連続でした。
当初は、特定分野で高い実績を持つ就職・転職支援サービスの企業と連携し、ノウハウを学びながら運営を始めました。学生の集客は比較的順調で、初月から一定の手応えを感じていました。
一方で、企業側の求人確保には大きな課題がありました。事業を正式にスタートしたのが2023年11月で、すでに25卒の採用活動が本格化していた時期です。学生の流入は多くありましたが、紹介できる企業がまだ少なく、サポートしたくても十分な提案ができないというもどかしさを感じていました。
自社とつながりのある企業に声をかけ、求人を集めてはいましたが、学生の数に対して紹介先が足りない状況が続きました。
それでも手を止めることなく、毎週のようにウェビナーや交流会、オフラインの勉強会に参加し情報を集め、他のエージェントの取り組みを学びながら、課題解決の糸口を探っていました。
仕組みではなく“人”。カーベルが語る、エージェントシップの真価
ーー エージェントシップを知ったきっかけや、導入しようと思った理由を教えてください
学生の集客は順調に進んでいたものの、紹介できる企業が限られていた私たちにとって、求人確保は事業成長を左右する最重要課題でした。そうした中、情報収集のために参加していたウェビナーや交流会、勉強会などを通じて、2024年4月ごろにヒトツメの「エージェントシップ」の存在を知りました。
ヒトツメさんは、多数の企業求人を抱え、それを私たちのようなエージェントにシェアする仕組みを持っていました。
「企業開拓にかかる時間とリソースを大幅に削減しながら、学生により多くの選択肢を提供できる」――この仕組みを知った瞬間、まさに私たちが探していた解決策だと感じました。
導入を決めた理由は、単に求人数の多さだけではありません。
私たちのサービス内容を丁寧に理解し、今後どう成長していくべきかを一緒に考えてくださったヒトツメ代表の木山さんの姿勢に強い信頼を感じました。
「エージェントとして成長するために必要な情報や手法を、惜しみなく共有してくれる」――この安心感が、導入の決め手になりました。
ーー エージェントシップではどのようなサポートを受けているのでしょうか?
求人シェアはもちろんですが、それ以上に価値を感じているのは、実践的な支援です。私たちが最も苦戦していたのは、学生との面談の中で「どうクロージングすれば決定につながるか」という部分でした。
そんな時に木山さんから、学生との面談をどのように進め、どのタイミングでクロージングにつなげていくのか、その流れを細かく教えていただきました。特に、実際の面談の様子を収録した録画データを共有していただき、クロージングまでのプロセスをリアルに体感できたことは大きな学びでした。
話のテンポや“間(ま)”の取り方、伝え方の強弱など、私たちにはなかった視点も多く、チーム内での議論が一気に活発になりました。
そこで得た気づきをもとに、「どのタイミングで企業を提案するか」「どんな言葉が学生の意思決定を後押しするのか」を検証しながら、自分たちの型として定着させていったのです。
結果として、CA(キャリアアドバイザー)全体のスキルが大幅に向上しました。カーベルでこれまで培ってきた"人と向き合う力"や"伝える力"に、新たなノウハウが加わり、学生の心を動かす提案ができるようになりました。
さらに、定期的に木山さんと面談し、数値の見方や改善ポイントを直接アドバイスいただけるのも大きいです。困った時にすぐ相談できる距離感があり、実際にオフィスを訪問して意見交換をすることもあります。
単なる「仕組みの提供」ではなく、伴走型のサポートを通じて、私たち自身の成長を後押ししてもらっています。
数字の裏にあるチームの成長。エージェントシップが変えた“決定力”の本質
ーー エージェントシップ導入後、事業成果にはどのような影響がありましたか?
導入後、最も大きく変わったのは「決定率」です。25卒と26卒を比較すると、決定率は約2倍に。昨年は2月まで追いかけていた数字を、今年は10月の時点で前年を上回る成果を出せるようになりました。
中でも印象的だったのは、今年2月に未経験からCAデビューしたメンバーが、「決定率23.8%」という高い成果を上げたことです。この業界では「20%を超えると優秀」だと聞いたことがありますが、初年度から結果を出せたのは、本人の努力と、エージェントシップを通じて得たノウハウの融合が大きいと感じています。
エージェントシップのノウハウをベースに、社内教育も内製化が進み、未経験CAでも短期間で成果を出せる仕組みが整いつつあります。
さらに、紹介できる企業の幅が広がったことで、学生一人ひとりに合わせた提案ができるようになりました。「この子にはこの企業のカルチャーが合う」「このタイプならこの業界が伸びる」など、仮説を立てながら面談を進められるようになり、提案の質そのものが変わったと感じています。
こうした一連の変化を通して感じるのは、“CAの育成”こそ事業の核だということです。ヒトツメさんのサポートを受けて、単なる成果の改善だけでなく、自走できる組織へと着実に成長できている実感があります。
ーー どんな会社にエージェントシップの導入をおすすめしたいですか?
私たちは新卒領域の人材紹介業を始めてまだ2年ほどですが、立ち上げ当初は企業開拓の難しさに直面しました。同様に、新規で始めたばかりのエージェントほど、学生を集客できても「紹介できる企業が少ない」という壁にぶつかるのではないでしょうか。
特に、すでに多くのエージェントから営業を受けている企業に新規で提案するのは、非常にハードルが高く、実力を発揮する前にチャンスを逃してしまうケースも少なくありません。
そうした課題を抱える会社ほど、エージェントシップの導入効果は大きいと思います。
自社でゼロから企業開拓を進めようとすれば、300〜400社の求人を集めるまでに膨大な時間とコストがかかります。
その点、ヒトツメさんのように実績あるプラットフォームと連携すれば、すぐに多様な求人を扱えるようになり、限られたリソースでも学生に最適な提案が可能になります。
つまり、「やる気はあるのに求人が足りない」そんなエージェントにこそ、強い味方になる仕組みだと思います。
互いの強みを活かし合える関係を築ける会社であれば、確実に成長スピードを上げられるはずです。
ーー 今後の目標を教えてください
現在、「推薦入社」チームは首都圏(1都3県)を中心に展開しています。この26卒採用のタイミングで、当初掲げていた数値目標をほぼ達成できそうな見込みです。次のステップとして、27卒ではさらに前年比150%の成長を目指しています。
私自身は、東京拠点の基盤が整い次第、次の展開地として大阪への進出を計画しています。
その後は福岡などの主要都市にも広げ、全国的に「推薦入社」を展開していく構想です。
また、学生のサポートを通じて感じるのは、今回の就職活動でご縁がなかった学生が、数年後に第二新卒として戻ってくる可能性も大きいということです。この循環が生まれれば、私たちが支援できる領域はさらに広がるはずです。
これからも、自分たちらしい形で事業を磨き込み、学生・企業の双方にとって価値ある出会いをつくっていきたいと考えています。