「人類の価値観を解放し、つなげる」この壮大なミッションを掲げ、次世代キャリア支援AIプラットフォーム「BaseMe」を運営する株式会社ベースミー。代表の勝見へのインタビューを通じて、当社が「今」どのような背景から生まれ、どのような課題に挑み、どのようなプロダクトを世に送り出しているのか、その根幹に迫ります。
1. 価値観から生まれるキャリアの原点
インタビュアー(以下、Q): まずは、これまでのご経歴、特にBaseMeを立ち上げるに至った原体験やターニングポイントについて教えてください。
勝見(以下、A): はい、よろしくお願いいたします。
私は株式会社ベースミー代表の勝見です。弊社のミッションは「人類の価値観を解放し、つなげる」ことですが、このミッションの原点は、私自身の原体験にあります。
幼少期、私の実家は八百屋を営んでおり、当時は「強烈に働かされていた」と感じていました。振り返れば、大変な環境でしたが、その中で人とのつながりや「働く」ということの意味を学ぶ機会を得ました。
しかし、大学生となり就職活動の段階になると、この八百屋での経験を通じて得た「人とのつながり」や「リアルビジネスでの学び」を、どう言語化し、既存の就活サイトや人材エージェントに伝えれば良いのかがよく分かりませんでした。当時の企業探しは「業界」や「職種」からしか情報が得られず、自分の価値観や想いを起点に企業を選ぶことは非常に難しかったのです。
これまでのHRプラットフォームは、企業側の採用課題に寄り添うものが主であり、ユーザーに合ったパーソナルな体験設計に特化したサービスはまだ生まれていませんでした。
そんな中、AI、特に機械学習(ML)や大規模言語モデル(LLM)の進化により、個人に合わせたパーソナライズ体験が可能な時代が到来しました。AIを活用すれば、一人ひとりに最適化されたキャリア支援ができる。そう確信し、「自分自身を軸に」という意味を込めてBaseMeをスタートさせました。
BaseMeは従来の新卒採用手法とは全く異なり、学生のプロフィール、経験、志向性、行動データを分析し、企業の文化や価値観とマッチングさせることで、学生と企業の相互理解を深めます。これにより、一人ひとりが自分らしいキャリアを選択できる社会を目指しています。
私たちはテクノロジーの力で、自己理解から始まるキャリア選択体験を再定義し、個人の価値観を言語化し、それに共感する企業と出会える社会を創ろうとしています。
2. 65年間変わらぬ就活市場と人材業界の「負」に挑む
Q: 原体験から生まれたBaseMeですが、既存の就職活動や人材業界にはどのような課題があると思いますか?
A:日本の就職活動の仕組みが課題だと考えています。就職活動の仕組みは、リクルート社が大枠を構築されてから約65年間、ほとんど変わっていません。多くの方の就活のイメージにあるように「良い大学・良い高校を出て、良い企業に勤めれば安泰」という条件マッチングが主流でした。しかし今、日本の成長を牽引してきた企業でも終身雇用は難しいと公言しています。つまり、従来のいわゆる「良い企業に入る」という教育の出口は、もはや幻想になりつつあるのです。
かつての製造業が盛んだった時代は、一度作ったものづくりのパターンが数年間安定して稼働するため、そのパターンを正確に実行できる「右から左へ流す人」、つまり新卒一括採用でポテンシャルのある人材を大量に採用するモデルで十分に機能していました。
しかし、今の情報化社会では、昨日までの正解が今日には更新される。ソフトウェアのように変化が頻繁に起こる環境では、言われたことをただこなすだけとみられるような一括採用は機能しません。今求められているのは、状況に応じて意思決定し、即座に変化に対応できる「対応力に優れた人材」です。
残念ながら日本は、製造業で成功してきた歴史の影響から、新卒一括採用というレガシーな採用慣習を変えられずにいます。その結果、自分のやりたいことが分からないまま入社する状態を生み出し、産業の流動性が低下しています。私は、この変わらない就職活動の仕組みこそが、日本の産業がグローバルで引けを取る一因ではないかと考えています。
さらに、人材業界には独特の「負」が存在します。それは、エージェントモデルによる情報の非対称性です。全てが当てはまるわけではないですが、エージェントは、自分(企業)が知っている情報しか提供できません。例えば10社しか知らなければ、ユーザーに提示できるのも10社のみです。結果として、求職者は本当に必要な情報にアクセスできず、自己開示もできない状態が続きます。
多くの産業がUberやAirbnb、Spotifyのように「ユーザーファースト」へと進化したのに対し、人材業界は未だに「企業側が機会を所有する」モデルから抜け出せていません。転職希望者は増えているのに、転職者数は横ばいという現象も、この構造的な課題が原因だと考えています。
さらに既存の求人プラットフォームは広告掲載型のビジネスモデルを採用しており、ユーザーにとって最適な意思決定を追求するとビジネスモデルが崩れるというジレンマを抱えています。こうした背景が、人材業界の労働集約型の構造や、テクノロジー導入の遅れにつながっていると思っています。
3. AIが拓く「最適な意思決定」という価値観の解放
Q: そのような業界の課題に対し、BaseMeは具体的にどのようにアプローチし、どのような価値を提供していますか?
A: BaseMeは、「人類の価値観を解放し、つなげる」というミッションのもと、個人の「最適な意思決定」を支援することに注力しています。
たとえば、「給与が高い企業に行きたい」「東京で働きたい」といった条件も、その人の価値観の一つです。しかし重要なのは「ユーザーが最も大切にしている軸で選択肢を深く調べ、納得して意思決定できること」です。
私たちは、機械学習(ML)や大規模言語モデル(LLM)を活用し、独自の「価値観マッチング」を実現する次世代キャリア支援プラットフォームを運営しています。サービス開始以来、すでに30,000名以上の学生と150社以上の企業に利用され、プレシリーズAラウンドではシリコンバレー拠点VCのWiLをリード投資家に、CyberAgentなどから合計4.6億円を調達し、さらなるプロダクト強化と事業拡大を進めています。
BaseMeの強みは、ユーザー体験と成果に表れています。就活後も利用を続けるユーザーが多く、アクティブ率が非常に高いのが特徴です。卒業後もAIと対話しながらキャリアの準備や目標達成のプランニングができるため、ライフタイムバリュー(LTV)の長いプロダクトとなっています。
当社のスカウト承諾率は30%に達しており、他社主要サービスの平均承諾率(3~4%)を大きく上回ります。この圧倒的な成果は、AIによる高度な自然言語処理とレコメンド技術により、ユーザーの価値観・志向性・潜在ニーズを日々の対話から精緻に抽出し、マッチングアルゴリズムに反映していることの証明です。表面的な経歴やスキルにとどまらず、深層的な情報を解析することで、従来のプラットフォームでは実現できなかった「高精度の人材マッチング」を可能にしています。
さらにBaseMeは、企業様に対してRPO(採用プロセスアウトソーシング)を提供しています。営業出身や人事経験の少ない企業の採用担当者様に代わり、採用ペルソナ設計から価値観マッチングによる幹部候補の特定までを一気通貫でサポートし、大きなインパクトを生み出しています。
また、大学のレポートや卒論、奨学金申請、さらには恋愛相談まで、BaseMe AIの用途は多岐にわたります。ChatGPTやGeminiといった汎用AIも広く使われていますが、BaseMe AIはユーザー自身のプロフィールや幼少期の経験などパーソナルデータを継続的に学習しているため、「自分専用のAI」として選ばれています。
このパーソナルデータに基づいた学習によって、企業とのマッチング精度も飛躍的に高まります。就職後も使い続けられ、転職やライフイベントの意思決定の際にも再び活用され、本人がまだ気づいていないニーズまで先回りしてレコメンドできる世界を目指しています。
実際、Netflixでは視聴の約80%がレコメンド経由、SpotifyではDiscover Weekly利用者の60%以上が新しいアーティストに出会うとされています。BaseMeも同じように、検索しなくても「自分に最適なキャリアの選択肢」と自然に出会える体験を提供します。これこそが、私たちが描く「価値観を解放し、最適な意思決定を促す」世界です。