その1の続き…
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その1では、
・医療・介護の現場を学びながら「ホスピス住宅」を構想
・事業の軸は「何のためにやるのか」「どんな価値観を大切にするのか」
・自分だけの視点に偏らないよう、対話を通じて言葉を磨く
・「コール&レスポンス」形式で、言葉をじっくり深める
・創業メンバーとともに、最終的な経営理念を決める合宿をしようと決意
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◆経営合宿で共有した価値観
泊まり込みで語り合った2日間。
僕たちは、福岡市早良区の古民家を借りて、泊まり込みの合宿を行いました。(このときの詳しい話は、またゆっくり書きたいと思います。)この合宿では、
・お互いがどんな人生を歩んできたのか
・どんな想いでこの事業に取り組んでいきたいのか
・それを事業としてどう表現するのか
こうした根本的なことを、丸2日間じっくりと対話しました。
◆「その人らしく暮らす」とは?
合宿を通じて、僕たちは改めて「その人らしく暮らす」ことの奥深さを実感しました。そして、それを言葉で表すことの難しさにも直面しました。
なぜなら、人それぞれ生きてきた背景も価値観も違い、一つの言葉でひとまとめにできるものではないからです。
たとえば…
・仲間と一緒にいるのが楽しい人もいれば、一人で静かに過ごしたい人もいる。
・誰かの支えを求める人もいれば、自分でできる限りのことをやりたい人もいる。
・その違いは、入居者さんだけでなく、ご家族、スタッフ、連携する医療関係者、さらには自然環境にまで広がっている。
だからこそ、僕たちは「ご利用者だけでなく、そこに関わるすべての人が、自分らしくいられる場をつくりたい」と考えました。
◆「その人らしさ」を大切にするだけでは足りない!?
ただ、一方で「その人らしさを大事にする」という言葉には、どこか違和感もありました。
「その人さえよければ、それでいいのか?」
「特定の誰かや、多数派の価値観だけが尊重される場になってしまわないか?」
そうではなく、お互いの「その人らしさ」を尊重し合える場にしたい。
ただ自分の「らしさ」を主張するのではなく、互いに認め合い、理解し合おうとする「在り方」を大切にできる場にしたい。
何度も対話を重ねながら、僕たちはようやく、お互いが共有できる価値観を見つけることができました。
まだ「理念」として言葉に落とし込むことはできなかったけれど、創業メンバーで大切にしたい想いをしっかりと共有できたことは、大きな収穫でした。
◆言葉だけじゃ足りない。だから「絵」にした。
再び、長浜さんとの対話がスタート。合宿を終えたあと、改めて創業メンバーであり看護師でもある落合も加わり、長浜さんとの対話を再開しました。
僕たちは、合宿で感じた葛藤や、言葉にしきれないもどかしさを伝えました。
すると、ある日、長浜さんが「アンサーソング」のように、1枚の絵を描いて返してくれたのです。
◆「見る人に解釈を委ねる」アート
その絵には、人や動物が一緒に過ごしている空間が描かれていました。
暖かい雰囲気もあるけれど、よく見ると、一人で静かに過ごす人もいる。少し寂しそうな人もいる。俯瞰的にも見えるし、ある一瞬を切り取ったようにも見える。まるで、大きな流れの中にある「ある一点」を描いたような作品。
長浜さんは、こう言いました。「こちらの考えを伝える言葉を探すのもいいけれど、この絵のように、“見る人にその解釈を委ねてみる”のも、ひとつの方法ではないでしょうか?」
この言葉に、僕は衝撃を受けました。
そうか、僕たちがつくりたい場って、そういうことなんだ。
一方的な「正解」を決めるのではなく、それぞれが感じたことを分かち合う。それぞれの「解釈」があっていい。大切なのは「つながり」を感じられること。
◆「繋がっている」という感覚
「繋がっている」と聞くと、「知っている」「仲がいい」「友達だ」みたいな関係をイメージしがちだけど、それだけじゃない。
僕たちは、そもそもひとつの「いのち」を生きている。意識していなくても、生きていることそのものが、すでに何かしらの「つながり」を持っている。
そのつながりの中で、知らない間に、お互いの「いのち」が響き合い「その人らしさ」が形成されている。この感覚を大切にできたら、お互いの違いを認め合いながら、それぞれの解釈を受け取ることができるんじゃないか。
そんな想いを言葉に添えて、この絵を見ながら対話ができたらいい。こうして、僕たちの「コーポレートアート」が生まれました。