RubyKaigi のスピーカーの常連でもある hasumikin こと羽角 均 と、 youchan こと大崎 瑶 が 2024 年にアンドパッドに入社しました ! 数々の OSS を開発し、支持を得ている二人ですが、やりたいことは、実は全く違います。
今回はそんな二人が、なぜアンドパッドを選んだのか、これまでのキャリアを紐解きながら対談しました。 肩の力の抜けたトークにも注目です。 ぜひご覧ください !
なお、今回は前後編に分かれており、この記事は前編です。 後編は RubyKaigi 2025 直前スペシャルとしてお届けします。
大崎 瑶 @youchan
drb-websocket, opal-drb, wasm-drb などの Gem の作者。 Asakusa.rb, Chidoriashi.rb のメンバー。
羽角 均 @hasumikin
ワンチップマイコン向け Ruby 言語実装の PicoRuby やキーボードファームウェア PRK Firmware の開発者。 2020 年と 2022 年にフクオカ Ruby 大賞の大賞を受賞。 さらに 2021 年には Ruby Prize の最終候補者にもノミネートされた。
Ruby 歴はどちらが先輩?
—— お二人の自己紹介を兼ねて、 Ruby 歴を伺いましょう
hasumikin: Ruby 歴ということなので、では、大崎 (youchan) 先輩から(笑)。
youchan: え、 hasumi さんの方が長いと思うんだけど。 では、私から話しますね。
Ruby と関わるようになったのは RubyKaigi 2007 が最初でした。 そのとき私は Java のプログラマで、ちょうど 2007 年に「 Java から Ruby へ」( O'Reilly 刊)という本が出て、 RubyKaigi 2007 でもそういうトークもあってムーブメントのようなものを感じて、 RubyKaigi に初参加しました。それもただ参加したというわけではなく "速報 logger" として参加しました。
—— そんな役割があったのですね
youchan: そう、書いたものも残ってますよ。
そのあと仕事は引き続き Java でしたけど、サークル的な活動で、毎日今日のカレの写真が出てくる「今日カレ」という iOS アプリを開発して、バックエンドは Ruby/Rails で書いてました。 趣味で作るアプリだったので手間のかからない Ruby/Rails はよかったですね。
—— かわいいアプリですね
2014 年にユビレジに転職してから仕事でも Ruby を書くようになりました。 当時のメンバーには co-founder の soutarou さんが取締役にいて、 a_matsuda さんが技術顧問で、他にも名の通ったエンジニアが沢山いました。
その 2014 年に角谷さんからバトンを受けて、 a_matsuda さんが RubyKaigi をリブートされたのを見て、私も登壇したいと思って初めてプロポーザルを出しました。 RubyKaigi 2015 から登壇して、それから 5 年連続で登壇しました。 Ruby 歴と言いながら、最後は RubyKaigi 歴のような感じですが、そんなところですね。
—— ありがとうございます ! では hasumi さん、お願いします
hasumikin: Ruby を知ったのは youchan と同じで 2007 年ぐらい。 当時は建築業界の専門新聞社にいて、出版部門で新聞記事を再編集して月刊誌にしたり、建築関係の単行本を企画編集したりする仕事をしていました。
—— 新卒で建築・建設業界に関わっていたのですね。 驚きです
hasumikin: ちなみに大学の専攻も建築系です。
—— なんと。 一方で、お仕事としてはちょっとプログラミングとは遠そうですが ...
hasumikin: 趣味で PHP を書いていたほか、仕事でデータベースを使っていたので、それを便利に集計したりするプログラムを書いていたり、会社の Web サイトも開発したりしていました。 そんなとき、たまたま本屋で Ruby on Rails の本があって、面白そうだなと思って読んだのが Ruby を知った最初ですね。 後でわかったのですが、世界の shugomaeda が翻訳者でした。 「 Rails によるアジャイル Web アプリケーション開発」(オーム社 刊) というタイトルです。
—— 選んだのが 前田 修吾 さんの翻訳本とはさすがですね。 ちなみに読んでいかがでしたか?
hasumikin: 思想の濃い本だなと(笑)。 それから転職して 2010 年にプログラマになりました。 PHP を使っている会社でしたが、内部の書き捨てのスクリプトは Ruby で書いていいよ、ということだったので Ruby を使い始めました。 製品の開発に使うようになったのは 2013 年に Rails の案件に入ってからでした。 そんなときに「松江にいれば Ruby で仕事ができる」と思いこんで、 2014 年に東京から松江に移住しました。
youchan: その理由で !? すごいですね。
hasumikin: もう少しリアルなことを言うと、当時フリーランスで手伝っていた会社が松江に拠点を立ち上げることを聞きつけたのですね。 さきほどの "松江にいれば Ruby で仕事ができる" という期待もあって「松江に呼んで欲しい」と言うと、「社員になるならいいよ」と回答をもらったので、その会社の社員になって移住した、というのが真相です。
—— 真相はそれとしても Ruby City MATSUE の話が呼び水になったことは間違いないですね
hasumikin: RubyKaigi について言うと、 2017 年の広島が初参加でした。
—— Ruby を知った年からすると参加が少し遅めなのですね
hasumikin: 地元の松江で開催される RubyWorld Conference には行ってましたが、 RubyKaigi は聞いていたもののカンファレンスそのものの魅力に気づいてなかったからですね。 松江から近い広島で開催されるというので、行ってみたら、とても楽しかったので、それから毎年参加するようになりました。
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(対談はオンラインで行われました)
なぜアンドパッドに? 惹かれた理由はそれぞれ
—— そんな Ruby 歴を持つお二人がアンドパッドにきたくだりを伺わせてください
youchan: アンドパッドに転職する前は Ruby ではなく TypeScript を書いてる会社にいたのだけど、 2024 年になってやっぱり Ruby を書きたいなって。 その背景が伝わるように言語化すると、プログラミング言語は、言語としての能力だけじゃなくそのコミュニティも大事だと思っていて、 Ruby のコミュニティは独特で特殊性があり、エンジニアの特性も違います。 私にとっては Ruby エンジニアは共通コンテクストを持っていて、一緒に働きやすいと思えます。
—— 確かに、各プログラミング言語によって、コミュニティの雰囲気は違いますね。 転職活動ではその Ruby に加えて、どんな軸があったのですが?
youchan: RubyKaigi にスポンサーしているような企業がいいなと思いました。そして参加者が多い企業はコミュニティにも積極的に参加していると思うので、そういう企業が良いなと思っていました。 そう考えていたので、 RubyKaigi 2024 で転職活動をしているよ、という話を周りにしていると、 makicamel さんから「ぜひウチに ! 」と声を掛けられました。
—— maki さん、 GJ すぎる !! maki さんとはもともとお知り合いだったのですか?
youchan: 個人的にも仲がよくて、私にとっては妹のような存在かな。
—— では、それが決め手になったのですね
youchan: makicamel さんも一つだけど、もう一つ決め手になったのが tricknotes さんですね。 一緒に仕事をしたいと思いました。
—— tricknotes さんもお知り合いだったのですか?
youchan: tricknotes さんにもお会いしたことがありましたが、選考プロセスで話したことが決め手になりました。 色々と話しましたが、開発組織の課題に対する考え方が合ったことが大きいですね。
—— なるほど。 さらに突っ込んで話を聞きたいところですが、次は hasumi さんのいきさつを伺えますか?
hasumikin: 端的に言うと、秒速さんに引っ張ってもらったから、というところですね。 RubyWorld Conference が開催されるたびに、秒速さんが松江に来て一緒に飲んでいて、ずっと熱烈 Love コールをもらっていました。 去年ぐらいに新しいことをしようかと思って、秒速さんと稲田さんに会って、転職活動らしいことはせずアンドパッドめがけてやってきました。 建設業界にもう一度関わるというのは、自分のキャリアのまとめとしてもアリだと思ってました。
—— どの辺が "アリ" だったのでしょうか?
hasumikin: 建築を専攻していたけど、建築そのものの仕事はしたことがなく、新聞や出版という業界の周辺から見ていただけなので、ちゃんとわかりたい、と思っていたことが一つ。 そして、建築そのものが面白い上に、産業規模もデカいので、新しいサービスを作っても伸びしろがあり、アンドパッドに入ればそれができると思えたことですね。
アンドパッドに入ってみてどうですか? アンドパッドにあるチャレンジングな環境
—— youchan 、 hasumi さんとも同じアンドパッドでも違うところに惹かれているのが面白いのですが、実際入社してどうでしょうか?
youchan: アンドパッドの開発組織の課題について、私がそれを解決しようとするチームで働けることが面白いところです。 tricknotes さんとの組織課題の話でも触れましたが、最近は組織・チームとシステムのアーキテクチャの構造に私の興味があって、コンウェイの法則だったりとか、「チームトポロジー」(日本能率協会マネジメントセンター 刊)のような開発組織づくりに興味があります。
開発組織とアーキテクチャは、今までのキャリアの中でも自分にとって重要な研究テーマ、課題と思っていて、その解決に取り組めるところが面白いところです。
—— あら、 youchan はこれまで FinOps を行うチームにいたと思ったのですが ...
2 月から横断開発を行う部門に異動して、具体的にはアンドパッドのたくさんのサービスの中でも中核になっている巨大モノリスをモジュール分割するということを始めてます。
—— 意図としてはもっとチームが開発しやすくする、という狙いですよね
そうですね。 開発組織が陥りやすい問題で、組織を機能単位で分けてしまいがちです。 だけどソフトウェアのアーキテクチャは必ずしも機能単位ではなくて、例えば、ミドルウェアに近い、共通のコアな部分があったりして、そういったものをモジュール化しようとしています。
—— なるほど、 tricknotes さんのインタビュー記事 でもチラっと触れられていたところですね。 各社がとても悩んでいそうなテーマです。 では、 hasumi さんはいかがでしょうか?
hasumikin: RubyWorld Conference 2024 のアンドパッドのスポンサーセッションでも話しましたが、ビジネスサイドのメンバーたちが熱くて、自分たちの作っているものの良さを信じているところがすごいですね。 プロダクトへの愛が深い会社だと感じています。
—— 具体的にはどんなところでそれを感じますか?
hasumikin: 年一回開催される ANDPAD ユーザーコミュニティの祭典 ANDPAD AWARD や、 youchan も受講したと思うけど入社時に行われる 1 週間のオンボーディングですね。
youchan: あのオンボーディングは私もとてもいいなと思いましたね。
hasumikin: オンボーディングは全職種向けなので、開発だけでなく業界の構造やアンドパッドの歴史も紹介されます。 その中で新サービスの担当者からも説明があるのですが、作っている熱意を丸裸でぶつけてくるので、あの 1 週間は濃かったですね。
—— 私も入社時に受講してよかったですね。 あとは hasumi さんのお仕事はまだまだステルスで進めているものですが、読者にちょこっとだけお話いただけますか?
hasumikin: 住宅ストックと呼ばれる既存の住宅を大切に活用する取り組みの中で、 ANDPADサーモ を昨夏にリリースしましたが、それに隣接するものですね。 ANDPAD Vietnam と一緒のチームで開発を進めています。 アカデミアや行政機関、アンドパッドを含めた民間コンソーシアムと一緒に新しい分野・マーケットを研究しながら、新しいものを開発しています。
youchan: PicoRuby は開発で使っていますか?
hasumikin: 使っています。
—— これ以上の話はリリースするまでのお楽しみですね !
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(対談を終えた youchan)
アンドパッドではどんな Rubyist が活躍しそうですか?
—— では、お二人の対談記事 前編 の締めくくりとして、アンドパッドにはどんな Rubyist が合いそうか聞かせてください。
youchan: アンドパッドは良くも悪くも開発組織が大きいので、色々な課題があって、色々なことに挑戦できる環境です。 どんな Rubyist でも活躍できそうだなと思います。
hasumikin: Ruby 以外にも興味を持てるといいと思います。 フロントエンドやインフラなど周辺技術もそうですし、建設産業に特化しているので、業界にも目を向けられる人が活躍するんじゃないかなと思います。
—— ありがとうございます ! どんな Rubyist でも合うという点では、 youchan はソフトウェアアーキテクチャに興味がある Rubyist ですし、 hasumi さんは建築・建設業界に興味がある Rubyist なので、挑戦できる幅が広いですね。 では、一旦前編はここまでにします !
youchan: ありがとうございました。
hasumikin: ありがとうございました。
シニアな Rubyist 、 hasumikin と youchan の二人にアンドパッドを選んだ理由をテーマに対談してもらいました。 youchan はソフトウェアアーキテクチャ、 hasumikin は建築・建設業界での挑戦、どちらも違う目的を持ちながらアンドパッドに入社しました。
アンドパッドはプロダクトをどんどん作り、新しいユーザ、新しい業務に応えるプロダクトを作るチームが増えています。 その一方で、その開発スピードと質を落とさぬよう、モノリスな Rails アプリケーションでの開発のしやすさの改善も進めています。
Ruby が多様に使われるなら Rubyist も多様です。 その多様さも活かせる Vertical SaaS ならではの挑戦環境がアンドパッドにはあります。 ぜひ読者の皆さまのやりたいことをカジュアル面談や応募の際、お聞かせください !