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〜出資者・インキュベイトファンド株式会社代表パートナー 赤浦徹様 × OneBox株式会社代表取締役 伊藤直樹が語る、10年の挑戦の軌跡と未来〜
2025年8月10日、OneBox株式会社(以下、OneBox)は創業10周年を迎えました。この10年は順風満帆な成長物語ではありません。むしろ、その大半が失敗と挫折の連続でした。
ペットのトリミング事業に始まり、キュレーション、動画、ブロックチェーン……。立ち上げては壁にぶつかり、資金繰りに追われ、何度も「ここで終わるのか」と思わされた瞬間がありました。
それでも代表の伊藤は、挑戦をやめませんでした。どんな逆境も力に変え、倒れても必ず立ち上がる。「絶対に死なない」──その執念のような粘り強さが、OneBoxを生き延びさせてきました。
その挑戦のそばには、10年前に出会った投資家・赤浦徹氏がいました。まだ22歳の若者に過ぎなかった伊藤を信頼し、失敗を重ねるたびにも変わらず信じ続けてくれた存在です。
(左から)インキュベイトファンド株式会社 代表パートナー 赤浦徹様、OneBox株式会社 代表取締役 伊藤直樹
【プロフィール】(敬称略) インキュベイトファンド株式会社 代表パートナー 赤浦 徹(あかうら とおる) 1968年生まれ。神奈川県出身。ジャフコにて8年半投資部門に在籍し前線での投資育成業務に従事。 1999年にベンチャーキャピタル事業を独立開業。以来一貫して創業期に特化した投資育成事業を行う。 2013年7月より一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会理事。2015年7月より常務理事、2017年7月より副会長、2019年7月より会長、2023年7月より特別顧問就任。 OneBox株式会社 代表取締役 伊藤 直樹(いとう なおき) 1993年生まれ。群馬県出身。早稲田大学在学中にOneBox株式会社を創業、代表取締役に就任。事業を立ち上げ続け、3つの事業を売却。
22歳で起業、最初の挑戦は出張トリミング
なぜ何度も倒れては立ち上がれたのか?──壮絶なトライ&エラーの舞台裏
逆境を生き延びるために──事業立ち上げ支援の時代
カスタマーサクセスとの出会い、そしてSuccessBoxへ
「頑張れ」に込めた信頼──投資家が語る、本当に「伸びる起業家」の条件
次の10年へ──「死なない会社」から「社会に革新を届ける会社」へ
伊藤:
出会ったのは10年前、僕が21歳(赤浦さんは当時20歳くらいだと思っていたそうですが)の頃でした。*サーキットミーティングがきっかけでしたね。
(*インキュベイトファンドが主催する、パートナーファンドの投資意思決定者がシード期起業家を対象に行う事業相談・ファイナンス支援プログラム)
赤浦氏:
当時、サーキットには8名ぐらいいらっしゃいましたが、伊藤さんを初めて見た時、「随分しっかりしているな」という印象でした。
伊藤:
他の投資家の方々にコテンパンにされてすっかり元気をなくしていた僕に、「どうしたの?元気ないじゃん」と優しく声をかけていただいたのを覚えています。
当時まだ大学生だった僕が事業について説明した際、赤浦さんからは「うまくいくかは分からないけど、笑顔が良かったからいいと思います」と言っていただいたのが印象的でした。
赤浦氏:
当時トリミングを派遣する事業だと聞いて、「お店という場所がなくても、インフラがなくても、すぐに商売できる」というのが面白いと思いました。
「ペットはこれから増えるし、トリミングのニーズも増える。スキルを持つ人たちが稼げるようにしてあげるのはいいことだ」と可能性を感じていました。
伊藤:
しかし、最初の挑戦である出張トリミング事業は、市場の壁にぶつかりました。AirbnbやUberのようにすべてをリプレイスできるだろうと思っていましたが、実際には「市場が思ったより狭かった」というのが結論でした。
老犬を飼っている方や、お金持ちにしかニーズがなかったのです。
赤浦氏:
私自身も後になってペットを飼い始めて、実際に毎月トリミングに連れて行くことの大変さを実感しました。毛が散らばったり、預ける手間があったり。当時はペットを飼っていなかったので、ニーズをすべて分かっていなかったなと。
伊藤:
あの時は「無知だからこそ飛び込めた」という部分もありました。それでも、その最初の挑戦が、今のOneBoxの礎となっています。
伊藤:
その後、会社は「泣かず飛ばず」の時期が続きました。キュレーションメディアが流行ればそれに乗り、動画メディアが来ればそれに挑戦し、そしてブロックチェーンが来ればブロックチェーンを活用したポイントサイト事業に、と時代の潮流に合わせて様々な事業に手を出してきました。
赤浦氏:
その中でも、ブロックチェーン事業は大きく成長しましたよね。
伊藤:
はい、ビットコインでポイント還元をするポイントサイトというビジネスモデルでした。
月次で安定した収益を確保できるようになり、利益も十分に積み上がる水準となりました。チームも一段と厚みを増し、まさに成長の真っ只中でした。
赤浦氏:
しかし、その後撤退を余儀なくされたと。
伊藤:
ええ。世間では取引所のハッキングリスクによる暗号資産の安全性へのイメージが良くなかったことや、ボラティリティの高さからくる事業リスクや投資リスクが課題でした。
VCや銀行からの資金調達も難しく、フリーキャッシュフローで運営できるまでには至らなかったのが反省点です。
最終的にはコロナのタイミングが決定打となり、旅行・マイル関連の広告クライアントが一斉に停止したことで、事業を畳む決断をしました。経営者として「事業を畳む」という決断は、本当に辛いものでした。
赤浦氏:
厳しい局面に直面した時、共にやってきた仲間に理解してもらい、別々の道へ仲間を送り出すことになるというのは、経営者として最も辛いことだと思います。しかし、そこをやり切った、あるいはやり切らざるを得なかったという経験は、伊藤さんにとって非常に大きかったのではないでしょうか。
伊藤:
そうですね、忘れもしないハードシングスの一つでした。
そんな折に赤浦さんから、「本当に、よく辞めなかったね。あの時はもうダメだと思ったよ」と言っていただいたことがあります。
僕にとって起業家は小学生からの夢でした。プロ野球選手や医者と同じように、憧れの職業だったんです。だから、「好きなことをやっているんだから、辞めないです」と伝えたら、赤浦さんが「それだね、それが辞めない理由だね」と褒めてくださったのを覚えています。
伊藤:
ブロックチェーン事業を撤退した後、とにかくキャッシュを稼がなければならない状況に陥りました。そこで、「事業立ち上げを受託する」という力技で、何でもやりました。特にB2C領域の新規事業立ち上げに特化して、まさにゼロイチの部分を支援していました。
赤浦氏:
それを続けるうちに、事業立ち上げにおけるヒアリングや調査のプロセスを切り出して、サービスとして提供するようになったのですよね。
伊藤:
その通りです。多くの企業は新規事業のアイデアを出すものの、開発やリリース前に頓挫してしまう。
しかし、そこには一定のコストと予算がかかっています。そこで、ヒアリング代行や周辺領域の調査代行サービスを提供しました。年間で1000件、多い時には1日15件もユーザーヒアリングをこなしました。
赤浦氏:
オンラインミーティングの普及がその働き方を可能にしましたよね。
伊藤:
はい。コロナ禍により、オンラインミーティングが一般ユーザーにも浸透し、効率的なユーザーヒアリングが可能になりました。
カレンダーツールで簡単にブッキングでき、一件ごとに収益が入る、まさに「働けば働くほど身入りが増す」という状態でした。この経験を通じて、「顧客の声こそがすべて」だと痛感しました。この調査事業はN1インタビューをどんどん回していくという意味で「N1 Cycle」と名付けていました。
赤浦氏:
その時期に、「どんな状況でもキャッシュを生む力を身につけた」わけですね。
伊藤:
ただ、このN1調査事業はユーザーヒアリングの数をこなさないと伸びていかないビジネスモデルのため、身体的に「しんどい」上にどこかで頭打ちになると感じていました。
そこで、調査代行だけでなく、調査データをサービス開発や企画に活用する、より上流の支援ができないかと考え始めました。様々な業界のお手伝いをする中で、一番フィットしたのがB2Bのカスタマーサクセス(CS)領域だったんです。
赤浦氏:
B2B企業ではエンドユーザーへのデプスインタビューや調査が少ない、という点に着目したのですね。
伊藤:
はい。B2C企業ではエンドユーザーとの距離が近く、プロダクトへの解像度が高いのに対し、B2BではB2Cよりもエンドユーザーに届くまでの構造が複雑なため、顧客への造詣が深い人が少ないと感じました。
その結果、「解約がなぜ起こるのか」「どうすればアップセル・クロスセルできるのか」といった課題に多くの企業が苦しんでいることに気づきました。これらの課題解決の鍵を握るのが、まさにカスタマーサクセス領域でした。
カスタマーサクセスという言葉自体が登場したのはここ20年ほどの出来事で、日本に上陸してからは10数年ほどたちます。
SaaSというサービス形態が市場に浸透してきたことに起因しているのは周知の通りです。
赤浦氏:
SaaSは、もっと昔はASPと呼ばれていましたね。
伊藤:
はい。カスタマーサクセスという言葉についてはまだまだ市民権が得られているとは言い切れませんが、一定のポジションが認められたのはここ4〜5年のことだと認識しています。
Googleトレンドでも検索数が急増しており、このドメインに可能性を感じました。そこで、カスタマーサクセス領域に「ベットする」と決め、3年間ほどコンサルティング事業を行いました。
現在では、お客様からの要望で、カスタマーサクセス業務ができる人材をソーシング(提供)する事業も行っています。コンサルティングでナレッジやノウハウを共有し、人材提供で実働を担うという、歯車が回り出すような良い循環が生まれています。これは、10年間の試行錯誤の末、すべての経験がここに収束した感覚です。
伊藤:
赤浦さんにとって、例えば「伸びる起業家」や「投資したいと思う起業家」とは、どんな人物像や特徴を持っているのでしょうか?
もし僕に足りない部分があるとしたら、ぜひ教えていただきたいです。
赤浦氏:
最も大事なのは「相性」です。
僕の立場を結婚に例えるなら、出資関係は多重婚のようなものです。何十人、何百人もの起業家と出資という血縁関係を結ばせてもらっています。
その中で重要なのは、「フィーリングが合うか」「この人と一緒にやりたいと思えるか」といった感覚です。
そして、起業家にとって絶対に必要なのは「諦めないこと」。
どんな状況でもやり続ける、何としても成し遂げるという気持ちです。
僕自身も起業家として、またベンチャーキャピタル事業を続ける中で、この気持ちは非常に大切にしています。
加えて、人との信頼関係を築き続けることも欠かせません。それが長期的な関係性につながります。
つまり、起業家に必要なのは、誠実で魅力的な人間であり、そこに人やお金が自然と集まり、戦略にフォーカスしてやり抜く「執念」があることです。
伊藤さんは、これらをすべて持っていると僕は思います。
伊藤:
ありがとうございます。ハードシングスを乗り越える中で、赤浦さんには本当に助けられました。投資家として、起業家が苦しんでいる時にどのように向き合うと決めていますか?
赤浦氏:
結局、「頑張れ」としか言えないんですよね。僕自身も人のお金を扱っているので、「苦しそうだから手を差し伸べるよ」というわけにもいかない。だから、「頑張れ」と伝えることぐらいしかできない。
ただ、本当に苦しい時、一歩超えるか超えないかのギリギリの瀬戸際で、その一歩を超えたからこそ今がある会社ばかりなんです。大きく成長した会社も、皆そのギリギリの連続だった時期があります。
伊藤さんは、仲間と向き合いながらも、体制を見直さざるを得ないような本当に厳しい場面を経験し、資金繰りの苦しさをよく知っている。本当の起業の苦しさを知っている起業家は強いと思います。
諦めない芯の強さ、人間力。これが伊藤さんの基本的な力です。僕から見ると、伊藤さんは「偉い人」だなと思います。
伊藤:
10周年を迎えられたことに心から感謝しています。次の10年、OneBoxは「死なない会社」から、さらに「社会に革新を届ける会社」へと進化していきたいと考えています。私たちのビジョンは、SuccessBoxを社会インフラにすることです。
この先の10年は、さらに「もっと高くジャンプしたい」ですし、「もっと目線を上げていきたい」と思っています。視座を上げるためのアドバイスをいただけますでしょうか。
赤浦氏:
ベンチャーキャピタル自体も独立した企業体なわけでして。私自身も「どうやったら世界を代表する企業を作れるのか」という課題意識を抱え、現在進行形で考え、挑戦しているところです。具体的には、仕事の仕方、ビジネスの作り方、時代の流れの読み方──その違いを模索しています。
例えば、TSMCの創業者は50歳を過ぎてから起業し、世界有数の企業に育て上げました。だからこそ「全然今からでもやれる」と思うんです。何度もギリギリのラインを飛び越えていけば、さらにスケールアップしたチャレンジができる。僕自身も今まさに「世界を代表する企業をどう作るのか」を考えているところです。
大切なのは、世の中の大きなパラダイム、つまり大きな流れを掴み、その流れに合った「社会に必要とされるもの」を作ることだと思います。
例えば、日本が強みとするものづくり、メイド・イン・ジャパンの高品質なハードウェアを作る分野。宇宙分野、エネルギー分野(水素、マイクロリアクター)、ペロブスカイト太陽電池などの電池技術。また、コンテンツIPも日本の強みで、『鬼滅の刃』のように世界で通用するものはたくさんあります。
時代の大きな流れを捉え、成長領域にしっかり目を向けることが、さらに高くジャンプするために重要だと思います。
伊藤:
これからの10年も、私たちは「挑戦をやめない」ことを宣言します。どんな困難が待ち受けていようとも、「何度でも立ち上がる」。そして、時代の潮目を読みながら社会に革新を届ける会社として、社会に価値を提供し続けていきます。
赤浦氏:
私も、投資家として、同じ起業家として、伊藤さんと共にこれからも前を向き、世の中を良く変えていくために、ぜひ一緒にチャレンジしていきたいですね。
編集後記:OneBox広報・安井の視点
本記事では、OneBoxの10年間を支えてくださった投資家・赤浦氏との対話をお届けしました。挑戦と失敗を繰り返しながらも、諦めずに歩み続けた過程を振り返ることは、広報としても非常に学びの多い時間でした。
取材中、伊藤の「好きだからやめない」という言葉に、挑戦の原点を垣間見た気がします。そして、その挑戦を信じ続ける赤浦氏の眼差しからは、投資家と起業家の間に築かれた信頼の重みを感じました。
起業家と投資家、二人三脚の10年は、単なる企業の歴史にとどまらず「信じ続けることの力」を示しています。OneBoxは次の10年に向けて、社会に残る価値を創出する挑戦を続けてまいります。今後のOneBoxの挑戦にぜひご注目ください。
なお、この記事は、OneBox公式noteに掲載中の記事を転載したものです。