スタートアップの採用担当者・採用責任者が、普段は聞けない・言えない採用の悩みを持ち寄って話す、ウォンテッドリー主催の少人数制イベント「採用ホンネ会」。第2回が10月15日(木)、恵比寿のウォンテッドリーオフィスで開催されました。
今回のテーマは、AI時代の「口説き」です。募集の作成やソーシング、スカウト文面の作成など、採用業務の効率化が進む一方、候補者と対話するAI面接サービスも登場しています。では、「この会社で働きたい」と思ってもらうための口説きも、AIに任せられるのでしょうか。人間だからこそ届けられる価値とは、何なのでしょうか。
ゲストにお迎えしたのは、生成AIを活用した採用支援プロダクト「OpenSeek」を開発・運用する、株式会社CAPER代表取締役の山下俊さん。ウォンテッドリー執行役員の橋屋とともに、AIによる効率化を採用力の向上につなげる方法と、候補者の心を動かすための働きかけを考えました。
「AIによって採用活動がコモディティ化するからこそ、逆に人間の希少性がどんどん上がってくるのではないか」。橋屋が投げかけた問いを起点に、AIと人、それぞれの役割を探る議論が始まりました。
株式会社CAPER代表取締役|山下俊氏
2016年にグローバルウォーカーズ株式会社を立ち上げ、DeepLearning・アノテーション領域に取り組む。その後、アフリカ拠点のスタートアップに転職後、2022年に株式会社CAPERを創業。
山下 俊のプロフィール - Wantedly
ウォンテッドリー株式会社 執行役員 セールス&マーケティング担当 / Visit Tribe Leader│ 橋屋 優理
2009年4月、シャープ株式会社に新卒入社。法人営業や営業企画を経験したのち、エムスリーキャリアへ転職し、医師領域の人材紹介事業に従事。HR系スタートアップ2社では新規事業の立ち上げに携わり、2022年にウォンテッドリー株式会社に参画。Engagement Suite事業の責任者を務めたのち、2026年9月より執行役員 セールス&マーケティング担当、Visit Tribe Leaderを務める。
橋屋 優理のプロフィール - Wantedly
目次
テーマ① AIを使って採用力は上がるのか?
「会って話すところ」は、人が担う
CAPERが目指しているのは、採用で人が担う仕事を、できるだけ「口説くこと」に絞ること。それ以外のオペレーションをAIに任せることで、採用担当者が候補者に向き合う時間をつくろうとしています。
AIを使うところと、使わないところ。その線引きを尋ねられた山下さんは、現時点での考えを次のように話しました。
「人に会って話すところは、人間がやるべきかなと思っています。僕らは中途採用で即戦力層を狙うサービスを提供しているのですが、まだAI面接だと、正直、人は口説けないかなと思っています」
AI面接サービスを試した経験から、山下さんは、候補者の選別に活用することと、入社への意欲を高めることには違いがあると指摘。AI面接官との対話に新しいことや示唆を期待しにくいのではないかと考え、口説く役割は人が担うべきだと話しました。
橋屋は、9月30日に開催した第1回「採用ホンネ会」での議論を振り返りました。「採用のどこまで、AIに任せますか」をテーマに、AI戦略の立案から実装までを支援する株式会社LeapWellの菊田俊平さんを迎えた回です。
AIに任せる採用、人が100点を取りにいく採用 ─ 採用ホンネ会 vol.1レポート | Wantedly, Inc.
AIに業務を任せるうえで、菊田さんが示した判断基準は、「100点を取らないとまずい仕事かどうか」と、「人間では不可能なスピードや規模を実現できるか」。責任やリスクを伴うコミュニケーションは人が担い、AIには人間だけではできないことを任せる、という考え方でした。
これを踏まえ、橋屋は「人がやったほうがうまくいくものは、AIに任せない」と自身の考えを語りました。
「私の解釈では、人と会う場面は、100点を取らなければいけない部分だと思っています。口説きの部分は、やっぱりまだ人間が担うべきだと、私も同じように思っています」
AIスカウトの成功にも「賞味期限」がある
では、スカウトの文面作成ではどうでしょうか。橋屋は、AIでも文章を書けるうえ、プロンプトを工夫すれば質を高められることから、人とAIの役割分担が難しい領域だと話しました。
山下さんの考えは「AIを正しく使えば採用力は上がる」というものです。
「『AIを使ってスカウトを送ったら、返信率がめちゃくちゃ下がりました』という話を聞くこともあります。正しく使えないと下がるけれど、うまく使えば全体では上がる。それが僕の考えです」
山下さん自身も、AIスカウトが広がり始めた頃から、どうすれば歩留まりが上がるのか、さまざまな実験を重ねてきました。その中で得たヒントが、「人間の行動を模す」ことでした。
「当時よかったのは、連絡を送る前に、プレスリリースや、その他の発信を読ませることでした。生っぽい情報を手に入れたうえで、それを文章に反映させると、歩留まりが上がったんですね。ただ、これにも賞味期限があると思っています」
効果があった方法も、多くの企業が取り入れれば、似たり寄ったりの文面になっていきます。そうなると、再び候補者に届きにくくなる。山下さんは、その変化を次のように説明しました。
「人間が正解を作れたら、歩留まりが一瞬上がる。それをみんなが模して、また歩留まりが下がる。そういうサイクルなのかなと思います」
AIを使うこと自体が、採用の成功を約束するわけではありません。どんな情報を読み込ませ、どんな文面を届けるかを考え、結果を見ながら改善する。AIの力を借りて、その試行錯誤のスピードと質を高めていくことが、採用力を上げるための一つの道筋だと捉えられます。
AIで浮いた時間を、関係づくりに投資する
ここで橋屋は、AIによって採用業務が楽になることと、採用力が上がることを分けて問い直しました。人事担当者の負担を減らせることはイメージできるものの、AIを使うことで、人が行うよりも採用成果が上がるのはどのような場面なのか。山下さんに、具体的な経験を尋ねました。
山下さんが提案したのは、スカウトなどの業務をAIに任せ、そこで浮いた時間を、人との関係づくりに投資することです。
「口説く相手には、候補者もいれば、人材紹介エージェントもいます。スタートアップの皆さんであれば、投資家を口説くことも当然ありますよね。結局、マインドシェアをどれだけ奪えるかというゲームだと思っています。マインドシェアを奪うのは、一朝一夕ではできないと思うんです」
山下さんが紹介したのは、とある企業が一つの人材紹介会社に対して、採用する企業側の営業担当者が3人、専属でついている事例でした。その3人が毎週訪問し、採用目標の達成に向けて話し合っているといいます。
「毎週訪問して、『これはどうなっているんだ』『この目標をどうやって達成するんだ』と、ひざを突き合わせて会話する。そうする会社と、そうしない会社では、絶対に結果が違うというのは、直感で分かると思います。AIで浮いた時間をそういうところに投資すると、大きく変わると思うんです」
AIの導入効果は、自動化した工程の中だけで捉えてしまいがちです。しかし、効率化によって生まれた時間を使い、人に会う機会や関係づくりの目標を引き上げれば、採用活動全体で生み出せる成果も変わってきます。
一人の候補者に会える回数には限りがあります。だからこそ、候補者との対話に加え、人材紹介会社や協力するパートナーとの接点を増やし、連携を深めることにも時間を使う。「人事は営業だ」といわれてきた活動を、AIによってさらに広げられるのではないかという話に発展しました。
テーマ② 口説ける会社、口説けない会社
「口説く力」を、個人と仕組みの両面から考える
口説くための時間を増やした先で、候補者に選ばれる会社と、そうでない会社の差はどこに生まれるのでしょうか。後半は、「口説く力」をどう高めるかに議論が移りました。
山下さんは、「本当に人を口説けるようになるにはどうしたらいいのか。それはすごく難しいところだと思います」としたうえで、一定の型をつくる余地はあると話します。
「営業のエース社員を採用する側に持ってくるとか、エンジニア採用ならVPoEやCTOが口説くとか、一定のルールはあると思います。誰を口説くかによって、『口説きの型』があるのかもしれません。なので、AIロープレのようなもので、型を作っていくのはありだと思っています」
一方、橋屋は「100人を口説けるような型を作ろうとしない」ことも大切だと指摘しました。一人にうまくいった方法が、次の人にも通用するとは限りません。誰にでも好かれようとするのではなく、誰を口説きに行くのかを定める必要があるという考えです。
この話を受け、山下さんは、口説く力を高める方法には二つあると整理しました。
「一つは、私自身がめちゃくちゃ口説く力を上げるという、個人の能力の話。もう一つは、仕組みで口説く力を上げるという話です」
個人の能力には上限があっても、会社として口説く力を高める仕組みはつくれる。そこで紹介されたのが、カジュアル面談から次の接点につなげる取り組みです。
「応募したいと思いませんでした」は、次につなげるチャンス
山下さんや支援先の企業では、カジュアル面談で満たせなかった候補者の期待を補うために、必ず次のアクションを取るようにしていると話します。
「分かりやすい例だと、『今日の話を聞いてみて、応募したいと思いますか』と必ず聞く。『応募したいとは正直思いませんでした』と言われたら、『なんでですか』と深掘りできますよね」
そこから聞こえてくるのは、「従業員の雰囲気が分からない」「正直、事業的に面白いかどうか分からない」「なんでこれで勝てるのか分からない」といった、率直で、ときには辛辣な意見です。山下さんは、それを「結構チャンス」と捉えます。
「『では、次は社長を連れてくるので、一緒にご飯に行きましょう』とか。相手の期待を満たせなかったところを、次の施策で埋めに行く。その仕組みをずっと作っていくのは、いいと思います」
事業への疑問があれば経営者と話す機会をつくり、チームのことが分からなければ、一緒に働く人と話す機会につなげる。候補者の反応を確かめながら、次に誰が、何を伝えるかを考えることが、会社として口説く力を高める仕組みになります。
では、候補者にそこまで率直な意見を話してもらうために、どんな工夫をしているのでしょうか。橋屋の問いに、山下さんは、会っている相手の違いがあるかもしれないと答えました。
「我々は、転職を全く考えていない人にも結構会っているんですよ。そもそも転職を考えている方ではないので、率直に聞きます。『興味はありましたか』『応募したいと思いましたか』と聞くと、普通に答えてくれます」
橋屋は、それを転職潜在層に会う取り組みの副産物かもしれないと受け止め、こう続けました。
「転職潜在層に会うには、顕在層にスカウトを送る何倍も頑張らなければいけない。その取り組みに下支えされているということですよね。AIも含めて効率化できれば、そうした層にもリーチできるという話なのかもしれませんね」
転職意欲を待たず、最初から想いを届ける
転職を考えていない人にもアプローチする背景には、候補者に届くスカウトの量が増えていることもあります。
山下さんは、登録型の媒体で歩留まりが下がっていると感じる理由として、候補者一人が受け取る情報量の増加を挙げました。メッセージが増えるほど、一つひとつのスカウトは埋もれやすくなります。
「我々のようなスタートアップも、前の会社も、知名度は全然ありません。そんな中で、有名な人をCTOとして口説きたいとなったら、転職意欲に関係なく、とにかく一度お話の機会をもらう。初手で一緒にお寿司を食べに行ったこともありました」
採用したい相手に、最初の接点から思いを込めて向き合う。その話を受け、橋屋は、細かなテクニック以上に、初速から全力で想いを届ける姿勢が大きな学びだったと振り返りました。これに対し、山下さんも「もう、それだけが今後の人間の価値なのかもしれないですね」と応じます。
候補者に会い、想いを伝え、反応を受け止めて次の行動を考える。その熱量を持った人で採用チームをつくることの大切さを、改めて考える時間となりました。
第三回は2026/11/17(火)開催
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