AIが候補者リストを作成提案する「AIエージェントモード」提供開始 | Wantedly, Inc.
この度、ビジネスSNS「Wantedly」において、企業が採用活動を行う際にAIが採用要件理解から候補者のスクリーニング、リスト化までを一元的に行う新機能「AIエージェントモード」を提供開始しま...
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こんにちは、ウォンテッドリーでソフトウェアエンジニアをしている市古(@sora_ichigo_x)です。現在は Visit Sourcing Agent Squad でスカウトの新機能「AIエージェントモード」の開発を担当しています。
はじめに
何を、なぜ作るのか
どうやって AI に候補者リストを作成させるか
AI が候補者リストを作成する際の問題点
ヒューマン・イン・ザ・ループ(Human-in-the-Loop, HITL)
ソーシング計画をどう作るか
さいごに
「AIエージェントモード」は 2025年11月にリリースされたスカウトの新機能で、候補者探しの一部を AI で自動化することができます。
ウォンテッドリーでは2024年2月に 「スキル・プロフィール生成機能」 (スキル診断結果からAIがプロフィールを自動生成)をリリースしていますが、あれから1年以上が経ち、生成 AI を取り巻く技術・運用環境は大きく変わりました。今回はその変化を踏まえ、あらためて「どう設計すべきか」をゼロから判断する必要がありました。
本記事ではAIエージェントモードを開発する中で、特に「どのようにして AI に候補者リスト生成を任せ、かつ安全に運用できるように設計したか」をお話しします。
今回の開発で掲げた目的とミッションは次の通りです。
"ソーシング工数を削減するため、ソーシングを AI で自動化する"
Wantedly のスカウト機能におけるソーシング工数とは、スカウト対象となる候補者を探索・選定するための作業を指します。この工数は採用担当者の業務全体に占める割合が大きく、候補者探索に時間を取られることで、本来送れたはずのスカウトが送れない、候補者とのコミュニケーションに十分な時間を割けない、といった課題が存在していました。
AI エージェントモードは、採用担当者が採用要件を入力するだけで、AI がソーシング計画を生成し、候補者を自動リスト化する体験を提供します。この機能では、これまで採用担当が時間をかけて行っていた「採用要件の整理・検索・候補者選定」の一連の作業を AI が自動化することで、ソーシングに割いていた工数を大幅に削減し、担当者が本来注力すべきコミュニケーションにリソースを戻すことを目指しています。
採用要件を入力すると、AIが候補者リストを作成する。これを実現するには一定工夫が必要です。
まず一番シンプルなやり方は次の通りです(シンプルと言っても、ステップ3ではツール呼び出しをサポートしたりとやることは多いですが...)。
しかし、このやり方にはいくつかの問題があります。
採用領域においては、ソーシングの信頼性はユーザーのキャリアと企業の信用に直結するため、これらは許容できない問題です。そこで採用したのがヒューマン・イン・ザ・ループという考え方です。
ヒューマン・イン・ザ・ループとは "AI や自動化システムの中に意図的に人間の判断ステップを組み込む設計思想" のことです。その必要性は次の3点に集約されます。
例えば、Wantedly の AI エージェントモードにおいて、このヒューマン・イン・ザ・ループの考え方を取り入れると前述のやり方を次のように変えることができます。
AI が生成した検索条件・判断材料を一度人間がレビューするため、安全性と説明責任を確保できます(以下はソーシング計画の表示例)。
LLM に与えられた最も重要なゴールは「ソーシング計画」を作成することです。その過程では、LLM が検索 API 呼び出しを通じて候補者数を確認し、候補者数が少なければ条件を再調整するといった“思考のループ”を実行します。
重要なのはここで複数のトレードオフが発生することです。
これらを踏まえ、実現方式は次の 2 つが候補になりました。
結論として、今回採用したのは 2 (ワークフロー型) です。特に現段階では以下の判断が意思決定の理由となりました。
懸念を上げるとしたら、会話性や汎用性を重視するユースケースではモデル駆動の方が有利というメリットはあります。しかしBtoB 領域で候補者リスト化という明確な業務目標がある環境下では会話性や汎用性が求められるケースは稀であり、また実装次第では後から部分的にモデル駆動へ移行することも可能と判断し、ここでは 1 (モデル駆動) を選ばないリスクを許容しています。
本記事で解説したのは、AI エージェントモードの初期設計フェーズにおける設計方針です。実際の本番環境では、これに加えて以下が必要になります。
これらの詳細はチームメンバーが今後ブログで紹介してくれる予定です。興味があればそちらもぜひご覧ください。