バリュエンスでは、2020年から「アスリートのためのデュアルキャリア採用」を開始しました。
この取り組みは、代表の嵜本が元プロサッカー選手という背景から、夢を追うアスリートが引退後のキャリアや不安定な生活への不安を理由に競技を諦めることなく、競技もシゴトも本気で取り組める環境を提供したいという強い想いのもとスタートしました。競技を引退してから初めて第二の人生を考えるのではなく、現役のうちから複数のキャリアを築き、能力を最大限に活かしながら働くことを目指した取り組みです。
2022年6月にデュアルキャリア採用でバリュエンスに入社し、現在は、なんぼや 横浜店の副店長を務める上原 平(うえはら たいら)さん。実は、日本の総合格闘技団体および競技の一つである修斗の選手でもあります。2025年3月23日に開催された、「プロフェッショナル修斗公式戦」で見事勝利し、環太平洋フェザー級王座を防衛しました。今回は、修斗もなんぼやのバリューデザイナー(査定士)も、とことん究める上原さんにお話を伺いました。
勝ち負けだけが全てではない。観客の心を揺さぶる「表現者」でありたい
―修斗(総合格闘技)を始めたきっかけを教えてください。
上原|実は、小学校3年生から大学の途中までずっと野球を続けていました。就職活動のタイミングで周りが辞めていくのを目の当たりにして、当たり前のように私も部活を引退しました。それまで野球中心の生活を送っていたので、急にぽっかりと穴が空いてしまったような感覚を覚えました。そんな中で、新たに熱中できるものはないかと考えていたところ、近所に修斗のジムがあって、フィットネス感覚で通いはじめたことがきっかけです。最初は体を動かして楽しむ程度でしたが、やっていくうちに徐々に負けず嫌いな性格が顔を出し、「もっと強くなりたい」という思いが膨らみました。気づけば、本気で修斗にのめり込んでいました。
―チームプレーから個人競技になり、心境に変化はありましたか?
上原|実は、野球をしていた時から、「自分が活躍したい、自分が打ちたい」というエゴイストな一面があったんです(笑)。そんな自分には、チームプレーより個人競技の方が向いていると気づきました。競技において、勝ち負けももちろん大切ですが、プロになってからは勝敗以上に「自分自身の生き様を観客に届けたい」「私の表現で観客の心を動かしたい」という気持ちが強くなりました。
―勝敗ではない観客の心を動かす「表現」とは、どのようなものですか?
上原|格闘技の試合というと、パンチの打ち方や技術を見ることを楽しみにしていらっしゃる方もたくさんいると思うのですが、私は試合に臨むまでの背景や想い、周囲の人の支えなど、全て含めて、「私の人生」を見ていただきたいと思っています。そうした「表現」の喜びを教えてくれたのは、私の修斗の師匠です。師匠の試合を初めて見たときに、試合での動きを通じて人生を楽しんでいる姿を体現していると感じました。その姿に強く惹かれ、私も同じように人生を楽しみ、それを表現することで観客に価値を届けたいと考えるようになりました。
修斗とキャリアの二刀流を実現するための環境
―まさに、バリュエンスのバリューマインド「好きを、究めよ。」の体現者ですね!
バリュエンスに入社する前は別の会社にお勤めだったそうですが、入社した経緯を教えてください。
上原|大学卒業後に一般企業に就職しましたが、競技とシゴトを両立できる環境ではありませんでした。修斗にもっと真剣に向き合いたいという想いが強くなっていた頃、バリュエンスが日本修斗協会と提携し、デュアルキャリア採用を始めたことを知りました。「ここなら両立が叶う」と直感し、すぐに応募しました。
―デュアルキャリアでの働き方についていかがですか?
上原|これまでは、競技に打ち込む時間が十分に取れませんでしたが、バリュエンスに入社してからは、練習場がある横浜エリアに配属してもらい、練習時間が確保しやすくなりました。私の場合は、シフトなども柔軟に対応してもらっています。職場では当たり前のように、自分のようなデュアルキャリアの働き方を尊重してくれる風土があるので、競技にもシゴトにも集中しやすいと感じています。
人生をより豊かにする「余白」の時間
―競技にもシゴトにも集中できたからこそ、副店長に昇格されたんですね!そのときのお気持ちは?
上原|正直、昇格できると思っていなかったので、とても驚きました。というのも、勤務時間も他のメンバーより融通をきかせてもらっている分、十分に貢献できていないと少し負い目を感じていたんです。それだけに、私自身の働きぶりを公正に評価してもらえたことはとても嬉しかったです。デュアルキャリアで頑張る姿が、仲間の励みになれば嬉しいですね。
―修斗王者と副店長の二刀流は大変なことも多いのではないでしょうか?
上原|入社当初の方が大変だったかもしれません。週5勤務に加えて、朝も夜も練習を入れて、無理やり詰め込んでいたので体調を崩してしまうこともありました。本気でやるということイコール無理やり全部やるということではない、と学びました。今は、自分の調整方法が分かってきて、「余白」の時間を作ることを心がけています。
―なるほど。余白を作ることで心の余裕にも繋がりそうですね。
上原|そうですね。デュアルキャリアって、シゴトも格闘技も真剣に取り組んでいるからこそ、どちらかで壁にぶつかったとしても、人生はそれだけではないと実感できます。格闘技かバリューデザイナーか、二者択一で考えるのではなく、自分の人生をより豊かにすることを念頭に置き、心のゆとりを持つようにしています。一つのことに固執しない考え方が、両方の世界でプロフェッショナルとして生きるコツかもしれないです。
―その「余白」の時間はどのように過ごされていますか?
上原|私の勤務体系は土日休みなので、休日はジムでのインストラクター業務や自分自身のメンテナンスに時間を充てています。練習がない日は、ゆっくりする時間も作りますが、アクティブレストを意識して、軽く歩いたりランニングをしたりしています。肉体的な休養だけでなく、心の休養を取ることで疲労感の軽減につながるので、休みの日もなるべく体を動かすようにしています。
人生を通して「誰かの心を震わす」存在に
―バリュエンスのシゴトが修斗にもたらす相乗効果ってありますか?
上原|お客さまとの接客を通じて多様な価値観に触れることができ、視野が広がりました。それが修斗での自己表現にも活きていると感じています。シゴトで感じたこと、経験したことを競技に取り入れることで、より深い表現ができるようになりました。
―今後の目標を教えてください。
上原|競技では、環太平洋を超えて世界チャンピオンを目指しています。ただ勝つだけでなく、自己表現を通じて誰かの心を震わせるような選手になりたいです。
一方バリュエンスでは、店舗管理やマネジメントに携わるなど、常に新しい挑戦をし続けたいと考えています。バリュエンスのカルチャーでもある多様性と、社員の可能性を広げるためのさまざまな取り組みを活用し、自身のキャリアを通じて表現していきたいと思っています。最終的には、デュアルキャリアを通じて、バリュエンスへ恩返ししていきたいです。会社が掲げる「大切なことにフォーカスして生きる人を増やす」というミッションに貢献しながら、私自身も成長し、会社とともに発展していけることを願っています。
修斗とバリューデザイナーという2つの軸を持ちながら、どちらかを選ぶのではなく、人生を通じて「自分らしさ」を表現し、その姿を見た誰かの心を動かせるような存在になりたいと思っています。
―最後に、修斗王者であり副店長の上原さんから、バリュエンスのバリューマインド「好きを、究めよ。」を実践する上で、心かげていることを教えてください。
上原|理想主義的に聞こえるかもしれませんが、「好きなことしかやらなくていい」という信念を持っています。一見わがままな考え方に見えるかもしれませんが、人生は私たち一人ひとりが主役となるゲームのようなものです。だからこそ、私は「好きなことしかやらなくていい」と思っています。
―それでも王者を勝ち取ったり、副店長に任命されるまでに、多くの困難を乗り越えられてきたのではないでしょうか?
上原|本気で好きなことに向き合えば、どんなに大変なことでも自分の糧になると信じて取り組むことができますし、自然と好きにつながると思います。苦労や困難も自身が掲げた大きな目標に向かうためのステップと捉え、自分自身の成長を感じることができれば、乗り越える力が湧いてくるのではないでしょうか。
―大きな目標があるからこそ、目先の課題も楽しんで乗り越えることができるのですね。「人生を通して、誰かの心を震わせたい」という熱量に感銘を受けました。本日は、貴重なお時間ありがとうございました!