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こんにちは!採用担当の大熊です。
主力事業であるスタッフDXアプリケーションサービス「STAFF START」を軸に着実な成長を歩んでいるバニッシュ・スタンダード(以下、VS)。
本格的な海外市場進出に向けての第一歩として、2025年1月12日(日)〜14日(火)の3日間ニューヨークで開催された世界最大級の小売展示会「NRF 2025: Retail's Big Show」(以下、NRF)に出展し、現場で働くスタッフのEX(Employee Experience/従業員体験)向上を実現するサービスの魅力について提案しました。
今回は、NRF出展を終えた代表の小野里にインタビュー。NRF出展という経験から得られた手応えや今後の展望についてお話しを聞いてみました。
小野里寧晃(おのざと やすあき)
1982年群馬県前橋生まれ。2004年、大手Web制作会社キノトロープ入社。EC事業部長として、主にアパレル企業などのECサイト制作に従事。2011年、株式会社バニッシュ・スタンダードを設立し、EC構築から運営の全てを請け負うフルフィルメント事業を行う。2016年、「リアル店舗を存続させるEC」を目指し、スタッフをDXさせるアプリケーションサービス「STAFF START(スタッフスタート)」を立ち上げる。著書として『リアル店舗を救うのは誰か ~今すぐ「店舗スタッフ」にECを任せよ』(日経BP)を出版。
(聞き手:Corporate Design・大熊 彩乃)
STAFF START、海外展開に向けて本格始動
ーーまずは、NRFへの参加を決めた動機や背景を教えていただけますでしょうか?
小野里:そうですね。今回のNRF出展に向けての数ヶ月間にわたって準備を整えてきましたが、STAFF STARTの海外展開自体はもっと前から、サービスリリース当初から構想として持っていました。このサービスは世界にも通用する、という確信があったんです。
理由はシンプルに2つあります。
1つは、STAFF STARTが単に利便性や効率化を目的にしたサービスではないという点です。STAFF STARTは「この仕事が好きだ」「好きなことを仕事に頑張りたい」と思う気持ちや、生きる気力を応援するためのサービスであり、より良い接客を通じて誰かの幸せを生み出したいという努力に報いるためのサービスです。
僕らがSTAFF STARTに込めた想いは、日本特有のものではなく、万国共通のものだと信じていました。だからこそ、世界に通じるという確信があったし、将来的に海外進出を実現するぞ、という思いは常にありました。
2つ目の理由は、単純に小売・サービス業界の仕組み自体が万国共通である点です。店舗のなかに商品を販売する店舗スタッフさんが立っている。お客様に接客をする…。こうした仕組みもまた、日本特有のものではありません。だからこそ、国を選ばないサービスであると考えていたんです。
ーーなるほど。海外展開に向けての構想自体はかなり前からお持ちだったのですね。では、なぜ今回アメリカを拠点とするNRF出展を決断されたのでしょうか?
小野里:日本発のサービスが海外進出を目指す場合、一般的には中国や韓国、シンガポールなどアジア圏を選ぶ企業が多いのではないかと思います。文化も近いですし、比較的時差も少なく、業務をする上でやりやすいですしね。実際、STAFF STARTも海外対応第一弾は台湾で、そこで成果を上げることができました。
それでも今回僕がアメリカを選んだのは、アメリカでSTAFF STARTを成功させることがさらなる海外展開への一番の近道だと思ったからです。険しい道だとは覚悟していましたが、世界で大きな影響力を持つアメリカという国で認められ、実績をつくることがその後の海外展開に向けての足がかりになると考えていたんです。
↑アメリカへ旅立つCEO:小野里とCTO:西川。今後の海外展開に向けての大きな挑戦に緊張と同時にワクワクが止まらない様子。
アメリカ視察での手応え
ーー確かアメリカには、2022年にも視察に赴いていましたよね。
小野里:はい。2022年10月にLAとNYにて視察を行いました。ゲリラ的に様々なブランドの店舗スタッフにインタビューを行い、店舗スタッフの生の声を集めましたが、そこでわかったことは、アメリカの店舗スタッフの置かれている労働環境の厳しさでした。
日本よりも2倍も3倍も物価の高いアメリカにおいて、彼らは最低賃金と同等の給料で働いています。確か、当時のレートでだいたい時給が2,200円くらいだったかな。一瞬、高く感じられるかもしれませんが物価を考えると、実質は700〜800円程度の時給で働いていることになります。
さらに困ったことに、小売業界で働く店舗スタッフは、サービス業に従事するスタッフとは異なりチップも貰えない。彼らは、センスやノウハウ、商品への愛情をしっかりと持っていて、熱量も持っているのに。そう考えると、彼ら(アメリカの店舗スタッフ)がいかに厳しい環境の中で働いているかが分かります。もしかしたら、日本以上に厳しいかもしれません。
「それでもなお、この仕事を続けているのはどうして?」という質問を何人もの店舗スタッフに問いかけましたが、一様に返ってきた答えは「このブランドを愛しているから」というものでした。
「好きを仕事にしたい」「好きを諦めたくない」という思いもまた、万国共通なのだと感じました。彼らにSTAFF STARTというサービスを説明すると「こんなサービスが使える日本はずるい」「私たちも使えたらいいのに」という声が寄せられ、いかにSTAFF STARTが店舗スタッフに望まれているサービスであるかを実感したんです。
ーー現地で聞いた声がひとつの自信になったんですね。
小野里:そう思われるかもしれませんが、実際はそうでもありませんでした。なぜかというと、日本でもサービスが普及するまでかなり苦労したからです。いくら強く現場から望まれていても、サービス導入を決定するのは、あくまで本社(本部)ですから。
今でこそ店舗スタッフがECサイトに立って接客をする仕組みが一般的になりましたが、リリース当時はまだまだ店舗とECサイトは別のものとして捉えられていましたし、ブランドの顔=芸能人、モデルという図式が色濃くありました。
1社1社、説得して回って、やっとのことで受け入れられたサービスです。アメリカでは、もっともっと苦労すると思っていましたし、厳しい声もたくさん寄せられることを覚悟していました。だから、アメリカをはじめとする海外に通用するサービスである自負こそあれ、そこに至るまでの道のりはかなり険しいものと考えていたんです。
NRF出展を振り返って
ーー相当な覚悟を持っての挑戦だったんですね。では、NRF出展に向けて何か目標設定のようなものはあったのでしょうか?
小野里:正直にいえば、何か目標をもって臨んだというより「アメリカという国がSTAFF STARTというサービスをどう受け止めてくれるのか」が分かるだけでも御の字だと思っていました。色々な指摘をいただいて、見えてきた課題にひとつひとつ真摯に向き合おう。そのための一歩として、まずは現地の声を聞こうと考えていました。
ーー実際に出展してみての手応えはいかがでしたか?
小野里:想像以上に多くの国の企業様から関心を寄せていただけました。アメリカだけじゃなく、カナダやメキシコ、他にもフランス、イタリア、イギリスなどヨーロッパの企業様や、デンマーク、スウェーデンなど北欧の企業様もブースにお越しくださいました。今挙げたところだけでも、ぱっと思い出せるごく一部です。
ーー予想していたよりも多くの関心が集まったんですね!小野里さんがイベント全体を通して最もワクワクしたポイントはどんなことですか?
小野里:一番ワクワクしたのは、僕自身が最も確認したかった「企業(本部)の人間がSTAFF STARTをどう受け入れてくれるのか」に明確な答えを得られたことです。
以前のアメリカ視察の時から、STAFF STARTが店舗スタッフには強く望まれているサービスだという点では絶対の自信がありました。しかし、その一方で「絶対に本部はYESと言わないだろう」「本部はインフルエンサー文化だから私たち(店舗スタッフ)のことなんか目もくれない」という声も多く聞かれました。だからこそ、僕もきっと本部からはNOを突きつけられると思っていたんです。
ですが、ブースを訪れた方々からは「このサービス最高じゃないか」「AIやロボットではなく、人間だからこそできる仕事がある」と多くの賛同と共感の声が寄せられたんです。僕が予想していたようなネガティブなコメントは殆どありませんでした。
ブースを訪問してくれた方の多くはディレクターやマネージャー以上の経営層やエグゼクティブといったハイレイヤーが殆どでしたが、彼らが口を揃えて言っていたのは労働環境の悪さから人手が不足する、不足した人手を補うためにAIやロボットを活用する、結果としてさらに人間の雇用が奪われる、といった悪循環と「果たして自分たちが実現したかった世界はこんな寂しいものだったっけ?」というものでした。
だからこそ、「好きを、諦めなくてもいい世の中を。」というサービスビジョンを掲げ、頑張っている人が正当に評価される仕組みをつくるというSTAFF STARTに対して多くの反響と共感を得られたのだと思います。
もちろん、海外進出にあたっては言語や文化、法律など越えるべき壁はたくさんあります。ですが、その壁を乗り越えてでもSTAFF STARTというサービスを使いたい、と各国の企業様が感じてくれたこと、異なる文化を持った多くの国々の方と共感できたことが一番ワクワクしました。
NRFでの経験と今後の展望について
ーー最後に、STAFF STARTの海外市場進出を通じて小売業界をどのように変革していきたいか、将来的なビジョンを教えてください!
小野里:難しい質問ですね。笑
これはあくまで妄想なんですが、今は小売業界における個々人の接客レベルや店舗スタッフ個人の頑張りには非常に大きな差があると思っています。これが可視化されていないからこそ、頑張っている人が評価されないという状況がある。
ですが、STAFF STARTが日本だけでなく世界に普及していくことによって、販売スタッフに求められる仕事の水準も上がり、その仕事ぶりに支払われる対価も上がり、店舗スタッフになりたいという人々が集まるという好循環を多くの国々で生み出すことができると考えています。
インターネットだって、最初はごく一部の人しか使っていませんでしたが、今は世界規模で誰もが当たり前に使うインフラの一部になっていますよね。STAFF STARTもまた、それと同じような位置付けを目指していきたいと考えています。
僕らはいわゆる「IT業界」の人間ですが、STAFF STARTというサービスで生み出したいのは効率や利便性ではなく、あくまで「人の持つ可能性や努力を応援し、それが正当に評価される仕組み」です。こうしたヒューマンファースト、スタッフファーストという理念は、今後事業が発展していくなかでも絶対にブレることなく持ち続けたいです。