UDSでは、個性を活かし“自由に”働いているメンバーが多い。何がきっかけで自由を求め、どう自由を表現しているのか。
今回紹介するのは、プロジェクトデザイン事業部の野本翔哉(のもと しょうや)。建築設計のバックグラウンドを持ちながら、事業企画の目線も取り入れた設計を行なっています。転職後の苦労を乗り越えられたきっかけ、UDSらしい業務内容について深掘りしました。
建物の存在価値を感じた
──これまでの経歴をお伺いしてもいいですか。
UDSは2社目で、もうすぐ丸3年になります。それまでは6年ほど組織設計事務にいて、マンションやホテルの設計をしていました。
──組織設計事務所って、一般的な設計事務所とは違うんですか。
設計事務所は、ざっくり大きく2つに分けられます。組織設計事務所と、アトリエ系のデザイン設計事務所。組織設計事務所は極端な言い方となってしまいますが、例えばマンションであればマンションに特化して設計し続ける事務所が多いイメージです。なので効率は良いけれど、形がだいたい決まっている。アトリエ系のデザイン設計事務所は、意匠性の高い建築やインテリア設計を中心により先進的でクリエイティブな設計を行っている会社が多いという感じでしょうか。UDSはアトリエと組織事務所の良いとこ取りみたいなイメージかもしれません。
当時の事務所での設計の流れは、まず企画チームが敷地に対してどのぐらい建物が建つかなど、ボリューム検討を行います。その後、設計チームで建物の構造を具体化していく基本設計から始まり、実施設計、確認申請、着工という流れになります。私は、設計チームで基本設計から確認申請まで行っていました。
──詳しくありがとうございます。そもそも建築に興味を持ったきっかけはなんですか。
きっかけでいうと谷口吉生さんが設計していた葛西臨海公園ですね。小さい頃から、地元に近い葛西臨海公園によく行っていました。そこから建築に興味を持つようになり、高校から建築の学科で学び、前職である組織設計事務所へ就職しました。
──そこからUDSに転職しようと思った理由はなんですか。
決まったフォーマットでの設計が多く、設計に対する窮屈感を感じるようになったからです。6年ほど働く中で、個人的な感情ですが、ただ箱を作っているような感覚になってしまいました。建築は何十年もあり続けるのに、そういった感覚で設計するのは違うんじゃないかと思うようになっていったんです。
また、UDSが運営するHOTEL EDIT YOKOHAMAの近くで当時ホテルの設計をしていたこともあり、UDSの存在は知っていました。デザイン的にも良いなと思っていて、UDSの求人を見つけたタイミングで勢いで転職しました。
──ただ箱をつくるのではない空気を感じたんですね。
そうですね。建物の存在価値みたいなもの、UDSの言葉で言えば“エンドユーザー目線”を感じていました。
わからないこととわかることを繋いでいく
──入社後はまずどんなことをしましたか。
初めての転職で、最初はUDSの中での自分の立ち位置が分からなかったです。どう働いていいかわからず、半年ぐらい手探りでやっていました。ただ、その過程でSOKI KANAZAWAの設計を担当をさせてもらったのが、かなり大きかったです。
SOKI KANAZAWAでは、一から全て自分で設計するわけではなくて、外部のデザイナーさんをアサインしながら、デザインディレクションやプロジェクトマネジメントとしての役割をしていました。その中で、前職でやっていた仕事とUDSの仕事の仕方がマッチした感覚があった。自分の立ち位置はこうあるべきというのが、だんだんと掴めてきたんです。
──手探りの状態を、どう乗り越えたんですか。
未経験のことはやってみなきゃわかんないっていう精神でやりました。分からない前提で、とりあえずやってみる。時間をかけて、わからないことが少しずつわかるようになっていきました。
あとは前職で経験していた理解している部分と未経験でわからない部分をつなげていくことで、目指す全体像が見えたと思っています。建物がどうあるべきかを考えるきっかけになったし、つくっていくべきものが見えてきました。
──決まったフォーマットではなく意思を持って形にしたものは、どんなものがありますか。
SOKI KANAZAWAの大浴場は、あえて浴槽の周りにコの字型の休める空間を作っています。これは、同じ石川県の加賀温泉などを見に行って、総湯(そうゆ)の文化を取り入れました。総湯とは温泉街の共同浴場のことで、みんなでお風呂に入り、周りで休憩しながら会話を楽しむような歴史的・文化的な背景があります。
──他にも、歴史や文化を踏まえて設計したこだわりはありますか。
チームのみんなでコンセプトやブランディングを決めるところから始まり、ブランドの考え方を建築・デザインに落とし込んでいきます。特徴的なデザインでいうと、骨材を見せるような洗い出し仕上げを多く使いました。金沢のまちは海が近いこともあり、海の砂を使って歩道などを洗い出し仕上げにする伝統的な技術背景があります。そうした文脈を踏まえて設計に取り入れました。
他にも、SOKIは「素の器」という意味があるので、現地の素材や仕上げをメインに使っています。地元の職人さんと一緒に洗い出し仕上げをおこなったり、地元の材木屋さんのところに行って素材を調整したり、石も現地の採石場に行って見せてもらいました。外構の植栽も能登半島の山に自生する植栽や金沢の風土に沿ったものを、地元植木屋さんと相談しながら選定しています。そういった地元の素材をたくさん使用したことは、ブランドを建築に落とし込めた良い例かなと思います。
──建築やデザインなど、さまざまな形でブランドを表現しているのが伝わりました。
企画もわかる設計者の強み
──現在の具体的な業務内容もお伺いしていいですか。
同じ設計でも、物件によって意図的に立ち位置を変えています。いわゆる基本設計から着工までの業務だけではなくて、図面を書くところから現場監理まで意匠設計者として進めていく場合もあったり、金沢のようにPMの立場でコスト管理しながらデザイナーさんをアサインして設計ディレクションしていくこともあります。
デザイナーだけの立場で関わっていくと、建物の表層のデザインだけになってしまうこともあります。それに対して、UDSでは企画・設計・運営の視点からプロジェクト全体をコントロールできる立場にいる。これは、働いていて魅力的だなと思っています。
──それは、自分の出来ることが増えていくのが魅力なのか、それとも建物のアウトプット的に良いものが作れる魅力?
後者ですね。クライアント、エンドユーザー、UDS(設計者)のそれぞれが求めているものを見て考えていることで、合理的でありながら魅力的な建物をつくれている気がします。
──建築バックグラウンドでありながら、企画もやっているのは意外でした。
例えば、無理に部屋を詰め込むのではなく、この部屋を取りやめて共用部にした方が全体の賃料が上がるかもしれないし、そうすることで建物全体の価値が上がるんじゃないか、といった話をしたりします。設計だけをピンポイントにやっていては、その部屋をやめることによって事業収支が成り立つかどうかが分からないので、そうした提案はなかなか通りづらい。
プロジェクトデザイン事業部として、プロジェクトに応じての事業計画も検討しつつ、企画から設計、そして運営までをトータルで見ているからこそ提案できる内容もあるのかなと思っています。
──入社前の話で、「UDSの建物には存在価値がある」という言葉がありましたが、実際に入社してみて何が建物の存在価値を生み出していると思いますか。
UDSがつくってきた建物は、都内なのか地方なのか、ホテルなのかマンションなのか、場所やターゲットによってそれぞれニーズは異なると思うんですけど、それぞれに対してそれぞれの心地良さを提供できているように感じます。
例えば、HOTEL KANRA KYOTOとHOTEL ANTEROOM KYOTOであれば同じ京都にあるホテルだけれど、コンセプトもデザインも全然違う。同じような建物をつくるのではなく、その土地や要件に対して柔軟に対応しながら作り込むことが存在価値を生み出しているのかなと思っています。
メンバー間で常に情報共有する
──UDSの組織的な良さは、何がありますか。
フラットさですかね。チーム内ではチャットツールのSlackで、最近出来た建物を共有したり、美味しい料理屋さん見つけたといった雑談をよくしています。
自分たちが欲しいものや良いと思うものをチームで常に共有し合っているので、仕事の際にメンバーの好みも分かっていて、最終的にはみんながいいと思うものにたどり着く。施設はいくつもあるしそれぞれ担当も違うけれど、最終的には同じように良いものが出来上がっている理由って、常にメンバーの感性を共有しているからかなって思っています。
──確かに、良いと思うものがみんな近い感じはします。働く人たちはどんなメンバーが多いですか。
みんなフレンドリーだけれど、業務に対してストイック。それぞれ企画・設計・運営に対して自分なりのこだわりを持っていて、いいものを作ろうとしています。
また、事業部を超えて交流があるのもいいなと思っています。年代の近い人たちや、同じ沿線に住んでる人たちでご飯に行っていたりするのは素敵ですよね。
──最後に、今後一緒に働くメンバーに一言お願いします。
所属しているプロジェクトデザイン事業部は、中途採用のメンバーが多いです。そのためバックグラウンドがみんな違っていて、強みを生かしながら仕事をしています。
その反面、新卒の方をあまり採用してこなかったのですが、新卒で入社してくれる方が一からでも設計の担当になれるような、人材育成の体制づくりにも尽力したいと思っています。もちろん新卒だけではないですが、やりたいことがあってチームでコミュニケーションを取りながら、がむしゃらに挑戦して取り組める方に来てもらえたら嬉しいです。