これまでアカデミックな世界で生きてきた近江が、今年春に“大転身”し、「ストックマーク」に入社。新しい世界で感じたことや発見、また一児の父でもある彼が描くキャリアプランを含めてインタビューしました。
プロフィール
近江崇宏(おおみ たかひろ):京都大学大学院理学研究科博士課程修了後、東京大学生産研究所にて8年間勤務。時系列解析を中心とした統計や機械学習の基礎・応用研究に従事した。専門書の執筆や機械学習のトップの国際会議「NeurIPS」への論文採択などの経験もある。2018年には特任准教授となり、大学院の運営や学生の教育にも携わった。
2020年4月にストックマークに入社し、Machine Learning部門にて自然言語処理の研究開発に取り組んでいる。
アカデミックから民間企業勤務を志した理由
——現在行なっている業務内容を教えてください。
プロダクトに用いられている機械学習の検証・実装・モデル化を担当しているML(Machine Learning)事業部に所属しています。業務時間の50%はプロダクトに直接関連するような業務にあてて、残りの50%は今後のプロダクトに応用できそうな技術開発や会社全体の力を高めるための技術的な調査や検証などにあてています。業務全体としては大きくこの2つに分かれます。
前者について具体例を挙げるなら、ニュース記事をAIで解析するための方法を考え、それを実行するためのプログラムを書き、それを実際にプロダクトに入れる作業も含めて担当しています。
ーーストックマーク に入社するまではどんなキャリアを歩んできたんですか?
大学では物理を専攻していました。でもやってるうちに「そんなに面白くないな」と(笑)。物理で学ぶ対象は素粒子のような小さいものから宇宙という大きいものまであり、あまりに幅広いうえに、自分の現実との接点が見出せないことが多かったので、ちょっと違うな。と思うようになりました。
それで大学院に進む時には、「もっと現実と接点のある分野を専攻しよう」と考えていたのですが、同専攻でデータ解析を行う先生の研究に興味を持ち、それを機にデータ解析について学び始めました。当時は昨今のようにデータ解析が流行るとも思っていなかったんですけどね。
——結果的に、その時に培った知見が今のキャリアに生かされていますね。単刀直入に聞きますが、研究に再び専念したいと思うことはないですか。
未練は全くありません(笑)。研究では、新しいAIのアルゴリズムを開発するとか、性能を評価するということに重点が置かれます。そのような基礎的な研究も個人的には好きですが、今はAIを現実社会でどのように活用していくかという点が面白いと感じています。そのため、ストックマークでは自分の知識を活かして、お客様の役に立つようなプロダクトを開発することの面白さを日々感じています。
「ストックマーク」には勢いを感じた
——転職活動を始めるに至った経緯を教えてください。
実際いろいろと気持ちの変容がありました。大学で研究の仕事を始めた時は、大学や国の研究機関で仕事を見つけられたらいいと思っていました。ただ大学が現在置かれている状況や、自身がいたポジションも任期があったことなどを考え、契約満了を一年後に控えた2019年の春ごろに、大学で引き続き職を探すか民間企業に移るのかを考え始めました。
自分が専門とするデータ解析や機械学習などは基礎的な研究というよりは、社会で役立つサービスにするため、いかに応用するかという風にどんどんフェーズが移ってきていました。
大学の研究は、自分の興味を満たすためにやっていることが多いのですが、その研究が大学以外の世界で、実際にどう役立たせるのか、プロダクトとしてどう作っていくか、ということの方が面白そうだったので企業に転職することを決めました。
——初めての転職活動はどのように進めましたか?
これまでずっとアカデミックな世界にいたため「転職活動ってそもそもどうすれば……?」と戸惑いました。ひとまず転職サイトに登録して、ダメなら諦めようと思ってましたが、ありがたいことにAIブームのおかげで、複数の会社から声をかけていただきました。その中から面白そうな会社に絞って選考を受けることにしました。
その中で、会社として技術を大事にしているかや、プロダクトに対していかにデータ解析やAIを活かすかの明確なビジョンを持っているかという点を重視しました。
——何社か面接を受けた中で「ストックマーク」に決めた理由は何ですか。
正直“ピンときた”ということに尽きますね。「ストックマーク」に一番勢いを感じました。
CTOの有馬幸介と面談をした時に事業や社風などについて色々話を聞いてそう感じました。言語化するのが難しいのですが…(笑)
また、AIをどのようにビジネスに結びつけるかということは難しい課題だと考えていますが、「ストックマーク」はエンジニアだけでなくビジネスサイドも強く、会社一体となってプロダクトに関わっていることが面談を通してわかり分かり、共感する部分が大きかったです。
他には、ベンチャー企業は私生活関係なく仕事をするイメージがあり、採用前は不安もありました。私には4歳の子供がいて、育児にもしっかり取り組みたかったからです。でも実際に子育てをしながら働いている社員の話を聞くことができ、その方々の存在は後押しになりました。
「仕事も育児もやりがいを感じています」
——「ストックマーク」に実際に入社して、選考前のイメージとギャップを感じることはありましたか。
先ほど申し上げた通り、ある程度自分のペースで働けることを重視していたのですが、その点は心配なかったです。入社して3日目に緊急事態宣言が出て、“働き方”が根本的に変わったというファクターもありますが、想像していた以上に理想としていたペースで仕事しています。
会社で作業する日のタイムスケジュールは、9時半に出社して16時過ぎに帰宅。そこから子供の世話を行い、子供が就寝してから、残った仕事に取り組むという感じです。フレキシビリティがしっかり確保できて、生活と仕事がどちらもいい具合に回っているのは期待していたとおりでした。もちろん、最終的にしっかりアウトプットすることが大前提としてありますが、細かいところは任せてくれるところが働きやすいです。
——日々の業務の中でやりがいを感じるのはどんな時ですか。
作ったものがしっかり動くようになった時に最もやりがいを感じます。これまでの大きな成果物は2つ。一つはニュース記事を読み、その中から企業名だけを抜き出してくるAIです。もう一つは、インターネットから収集した日々のニュース記事を毎日、自動で解析するシステム基盤の開発です。
ユーザーに提供する精度という点に最も責任を感じているので、高精度なプロダクトを作ることが自分に与えられたミッションの一つだと思っています。
——まさしく“成果主義”ですよね。実を伴うアウトプットが全て。
ストックマークにはプロダクトを良くするためなら妥協しない人が多いと感じます。例えば、組織でエラい人が「こうじゃないか?」と話すと周囲は「そうですね」と応じることが“安易なやり方”として往往にしてあると思います。でも「ストックマーク」はそうではない。立場に関係なく「プロダクトにとって、本当にそれが重要なのか」をとことん議論して開発に取り組みます。
何よりプロダクトを要視しようとする姿勢が、社員全員に共通していると感じます。また60人程度のベンチャーで、人間関係が概ねフラットであることも大きいのだと思います。まだ入社間もない時から私の意見にも耳を傾け、取り入れてくれます。全社員が責任を持って、プロダクトのために貪欲に働く社風が浸透していると思います。
この環境の中での開発できることで、AIとビジネスをつなげていくことの楽しさを感じています。
——今後、ストックマークでやりたいことはありますか?
ストックマークはビジネス文章に特化したAIを開発しているという点に特徴があります。今後はAIの性能を上げるための独自の技術開発を行い、プロダクトの質やストックマークの技術力をさらに向上させていきたいと考えています。
また、AIを開発してプロダクトを改善することだけでなく、自分たちが持っている技術力の高さを世間にいかにアピールするかも重要だと感じています。そのため、最近では「ストックマーク」では技術的な面を紹介するブログを始めたり、外部の研究会などで発表するようになりました。今後はこのような外部への発信などの活動にも力を入れていきたいです。