ITやAIの進化によって、さまざまな問題解決手法が生み出されている昨今。
一方、問題を解決するのではなく、「本質的な問題」を発見する「問い」の可能性に注目が集まっています。
弊社・クエスチョンサークルは、“問い”にフォーカスした組織開発プログラム「クエスチョンサークル」を通して、さまざまな企業の組織課題の解決、支援型リーダシップの開発をサポートしてきた企業です。
代表インタビュー前編では、「問いの力」で組織を変えるクエスチョンサークルの魅力や創業に至った思いについて、宮本に語ってもらいました。
「学んだだけ」で終わらない。研修にはない「クエスチョンサークル」の魅力
--さっそくですが、改めて事業内容についてお聞かせいただけますか?
メインの事業は、「クエスチョンサークル」という組織開発プログラムです。
これは、4~8名ほどのチームをつくり、1つのテーマに対して「質問」を繰り返していくアクションラーニングの手法を取り入れた、約半年間のプログラム。月1回ほどのセッションと、行動計画への落とし込み、実践、振り返りをセットでおこないます。
そのほか、支援型リーダシップの開発をテーマにしたプログラムなども提供しています。
--組織開発プログラムとしての「クエスチョンサークル」の特徴を教えてください。
月1回のセッションで行動計画を立て、それを次のセッションまでに実践するというものですが、1番の特徴は、月に1度のセッションよりも、職場でのアクションに重きをおいていることです。
セッションでの気づきや学びだけで終わらせず、実際に職場でのアクションを通じて、意識や行動の変化を作り、チームでお互いにフォローしながらメンバーの関係性が変わることが、大きな価値となっています。
--せっかく学んだことを職場で活用できない、なんて事態を避けられるわけですね。
そうですね。私も研修事業に携わってきたので、あまり研修を悪く言えませんが、これまで勤めてきた研修会社では、受講生が学びを実践する機会なく終わってしまうことに難しさを感じることがありました。
「クエスチョンサークル」は知名度でいえばまだまだですが、実際に行動や関係性を変えていく仕組みがあるという点では、競合サービスと比較して大きなアドバンテージがあると自負しています。
また、セッションでは与えられた教材ではなく、現実の問題や等身大の悩み事をテーマに進めていくので、メンバーが当事者意識を持ちやすく、その後も自走しやすいという特徴があります。
--お客さん(取引先)としては、どんな企業が多いですか?
大企業とのお付き合いもありますが、社員数50〜150名程度の成長ベンチャーが多いです。
主に、経営層・マネジメント層の方とご一緒する機会が多く、「現場がうまく回らない」「部署間の連携を高めたい」といった問題意識から、プログラムを導入していただいている印象ですね。
初めは経営チームから導入して、その後マネジメントクラス、ミドルクラスと展開していき、数年に渡ってお付き合いいただくことが多いです。
--宮本さんは、クエスチョンサークルの立ち上げ以前から、フリーのコンサルタントとしてとして「クエスチョンサークル」のプログラムを提供してらしたわけですよね。この仕事の面白さは、どんなところにあると思われますか?
「変化」が良く分かるんです。個人もチームも組織も。
セッションの日だけ盛り上がるわけじゃなくて、職場での実践を通して、職場でのコミュニケーションやメンバーの関係性が変わっていく。特に、半年間のプログラムを2期、3期と続けていくと、組織自体が変わっていくのがよくわかります。
こうして携わった顧客の変化を目の当たりにできるのは、非常に面白いです。
質問される側・する側の両方を変える「問い」の可能性
--「問い(質問)」にフォーカスした組織開発プログラムという面では、クエスチョンサークルは先駆け的な存在かと思います。「問い」を活用するに至ったのには、どんな経緯があったのでしょうか?
「問い」との出会いは、以前会社勤めしていた頃に上司に勧められた、山田ズーニーさんの『あなたの話はなぜ「通じない」のか』という本でした。
これをきっかけに「問いには大きな可能性がある」と感じるようになり、当時の営業場面で活用するようになりました。
--営業では、どんな風に問いを活用されたんですか?
商談前に、「問いの100本ノック」と称して、お客さんに聞いてみたいことを100個挙げてみるんです。すると、自然と顧客企業への興味関心が湧いてきて、さらに本質的な「問い」を見つけられるようになりました。
それまでの、自社のサービスについて一方的に説明するスタイルから、お客さんに問いを投げ掛け、相手が本当に困っている本質的な問題が何なのかをお客さんと一緒に考えていく営業スタイルに変わっていったんです。
--「問い」をテーマにした事業をスタートさせたのには、そんな原体験があったんですね。
とはいえ、当時はまさか「問い」をテーマに会社を経営することになるとは、思ってもいませんでした(笑)
本格的に「問い」にフォーカスした事業を始めることになったきっかけは、独立後の苦労にあります。
当時は、研修トレーナーや組織開発プロジェクトのファシリテーターといった仕事をしていました。しかし、自分があれこれ動いても、誰もついてきていないという状況が多々あったんです。
--「誰もついてこなかった」というと、どういうことでしょうか?
研修トレーナーとしてもファシリテーターとしても僕1人が頑張っていて、空回りしている状態でした。
今思い返せば、その原因は、僕がシナリオを描いて、僕なりの答えにみんなを誘導しようとしていたからなんです。
そうなると、顧客となるメンバーは自分自身で考えることをしないので、やらされてる感が生まれて、結果的にプロジェクトの進行も止まってしまう……。
そこで、ファシリテーターとして学びを深めようとさまざまな講座を受講しました。コーチング、ファシリテーション、ワークショップ、マインドフルネス、Tグループ……。その中に、日本アクションラーニング協会の「質問会議®︎」がありました。
--そこで再び、問いの力を実感したと。
はい。講座を通して「質問会議®︎」を実践してみたら、「ついてきてくれていない」と感じていたメンバーが自ら考えて、自走するようになったんです。僕にとって、大きなパラダイムシフトでした。
メンバーが自分のなかにある答えを見つけられれば、人ってこんなに変わるんだと。これまで僕の答えに誘導しようとしていたからダメだったんだと気づかされました。
そこから、自分なりに「問い」を活用したプログラムを仕組み化して、今に至ります。
組織開発は、1+1が、3にも10にもなる仕事
--そもそも宮本さんが人材開発・組織開発を仕事に選んだ理由があれば教えてください。
就職活動の時に、この人材ビジネスという分野を選んだ理由には、ヒト・モノ・カネの経営資源で最も「ヒト」に惹かれるというのがありました。
30歳で独立した後は、研修トレーナーとして活動していましたが、1〜2日の研修案件よりも、半年~数年かけて組織の変化に関われるプロジェクトのファシリテーターといった組織開発の仕事に本腰を入れるようになりました。
--人材開発よりも、組織開発の仕事を選ぶようになったのはなぜでしょう?
人材開発でいうと、1〜2日の企業研修を終えて、アンケートで良いコメントを書いてくれたとしても、職場で実際に活かされているかはわからないんですよね。
一方で、ファシリテーターのように半年~数年かけて実践する組織開発の仕事では、組織の変化がよくわかる。さらに、お客さんとより深い関係になれるのもあって、プロジェクト型の仕事のほうが楽しかったんです。
--なるほど。宮本さんが考える、組織開発の魅力についてお聞かせいただけますか?
チームには大きな可能性があるんです。1+1=2じゃなくて、3とか4、さらには10になるような。逆に、1+1が1にも満たないこともあります。
--1+1=2ではなく、3にも10にもなる……?
例えば、クラブ活動やアルバイトなどで、自分1人では発揮できないようなことが、チームでは不思議と発揮できた。そんな経験って、誰しも1度はあると思うんです。
僕の場合、それは高校3年生の受験生の時の「激勉会」と呼んでいた同級生の集まりでした。
通常、受験勉強というと一人で頑張るものだと思いますが、当時、土日も一緒に勉強していたその集まりには、不思議なエネルギーがありました。「あいつが頑張ってるからオレも頑張る」「オレが頑張ればあいつも頑張れる」そういう空気があって、結果的に受験合格だけでなく、それぞれの可能性も大きく拓かれたように思います。
--組織の関係性が、個人の可能性をも拓いていくんですね。
実は、人って1人ではそう簡単には変われないと思っています。でも、人と人との「関係性」というのは、ちょっとしたキッカケで容易に変わります。
例えば、ちょっとしたキッカケで、ギクシャクしていた営業部と製造部の関係が連携できるようになったり、互いに遠慮していた上司と部下が、自己開示をきっかけに頼り合える関係になったり……。
組織開発の仕事をしていると、そういう場面を目の当たりにすることが何度もありました。
そんな変化を実感できるので、この仕事は本当に面白いと思いますね。