お久しブリーフ。マサです。ゲッツ。アンド、ターン。
最近、チームビルディングのセミナー(?)などのご依頼をいただくことがありまして、コラボレーションツサービスの提供事業者で代表を務めるものとしてはとても光栄な機会ですので、喜んでお受けさせていただきました。
とはいえ、チームビルディングの有効性や、コラボレーションの持つ力などをどのように伝えていくか、手法にとても悩みました。僕が話して参加者はそれを聞くような、所謂スクール形式で行っても、おそらく誰もが表面的には知っていることばかりを伝えることになってしまいます。殆どの人が、深くメカニズムまでを考えたり体験したことはないけど、表面は自己啓発本などを通して「いいものだ」と知っているような内容ですし。
そこで、インプロビゼーション(即興演劇)を使って身体を動かして感じて学ぶワークショップ形式を採用しました。知っている方はかなり少ないと思うのですが、僕、10代のときに演劇に興じてまして。東京都豊島区にある舞台芸術学院にも通っておりました。他のインプロビゼーション・ワークショップではどのような事が行われているかわかりませんが、その周辺の経験もあるので、それなりに楽しく体験してもらい、僕の伝えたいことの3割は伝わるワークショップが出来ていると思います。演劇経験者とマネジメント経験者のハイブリッドだからこそ提供できる価値です。えへん。
※ 忙しくなりそうなので、今頂いているお話までお受けさせていただき、しばらくはお断りさせていただきたいのですが、当記事や、その他の記事などを参考に、是非、トライしていただけたらと思います・・・っていうほど、簡単じゃないですが。
イエスアンドのスキル
敢えて「スキル」と呼ばせていただきますが、相手の言葉を否定せずに一旦すべて受け入れて、自分のアイデアを更に付け加えて返すことができるスキルを「イエスアンド」といいます。
「イエスアンド」を検索すると「柔らかく否定する話法」や「相手を説得するための話法」として紹介している記事もあるのですが、僕はそれらを「間違ったイエスアンド」として話しています。「イエスアンド」はテクニックや手法ではなく、アイデアを2人以上で作っていくための「マインドも含めたスキル」として「イエスアンド」を紹介しています。
参考になりそうな記事を紹介しておきますので、あとで理解を深めるために是非読んでみてください。
会社内のチャットや会議などでは、発言しやすい空気を作りアイデアを広げることが重要な場面なのにもかかわらず、誰かがなにか発言すると「いや」「はい、でも」と、すぐに「ノー」や「イエスバット」な会話になります。一生懸命に考えているからこその発言なのかもしれませんが、否定が繰り返されると気楽な発言が許されないアイデアを殺す場になりがちです。チャットのログにはアイデアの死体が転がり、そのうち、チャットは死体も出てこないほどのデスゾーンになっていきます。これは、周囲の人たちの性格が悪いのではなく、単に「イエスアンド」のスキルを持っていない人が多いからそうなってしまうのです。圧倒的なスキル不足。
「ヌーラボ」という社名を説明するときに「Null(なにもない)から有を作りだす研究所(Laboratory)、略して、Nulabです」と言っているのですが、「イエスアンド」のスキルは、まさに「なにもないところから何かを作り出すマインドセット、スキルセット」だと感じています。
その「イエスアンド」ができるためには、最近よく聞く「心理的安全性」が必要になります。また、逆に、「イエスアンド」が心理的安全性を作るために必要なスキルだったりするのだろうと思います。鶏と卵のような話ですが、まずは「イエスアンド」のスキルを身に着けようとするところから始めてみるのもいいのではないかと、自分が「イエスアンド」できているわけでもないにも関わらず、提案させていただきます。
おそらく、インプロビゼーションのワークショップで使われる「インプロビゼーション・ゲーム」の殆どが「イエスアンド」のスキルを必要とすると思いますが、とても簡単な学習方法「イエスアンドイェイ」というゲームがありますので紹介します。
イエスアンドイェイ
二人一組になり、一人は相手に設定を渡します。実際にありえない設定でもいいです。もうひとりは、その設定を一旦ぜんぶ受け入れて、自分のアイデアを1つプラスして返します。意思疎通できたタイミングで、二人で揃ってカメラ目線(他の参加者の方を向いて)で「イェイ」とVサインして言います。例えば・・・
Aさん「Bさん、火星から来たんだってねぇ。」
Bさん「うん、そう、火星から来たんですよ。家族も一緒ですよ。」
Aさん、Bさん「イェイ!」
時折、返事が「イエスバット」になっていたりするので、ファシリテーター(インプロヴァイザー)はよく聞いて、笑顔で指摘してあげるといいかもしれません。とにかく「イエスアンド」はスキルなので、身につけるまで繰り返しの練習が必要だと感じます。また、設定が悪口とか皮肉とも取られるものだったりするときもあるので、そこにも気をつけたほうが良さそうです。
動画付きで説明している記事もあるので、紹介しておきます。
アンサンブルな環境
「イエスアンド」がインプロビゼーションのワークショップで僕が一番伝えたいことなのですが、チームビルディングを感じるためのワークショップなので、更に「チームのみんなが全体の中の一部になって機能する『アンサンブル』」についても、ワークショップ内で言及させてもらっています。が、これが非常に伝えづらい。実際、参加者に伝わっているかどうかも、ちょっとわからないです。
アンサンブルは、自分が常に全体のなかの一員であることを意識することで生まれる「集団メカニズム」のようなやつです(ほら、わかりにくい)。おそらく、この記事を読んでいる人に伝わりやすい言葉を選ぶとすると、アンサンブルとは「序列などを排除して社員一人ひとりが主体的に考えて自ら動く『自律型組織』と呼ばれている環境のようなもの」だと思います。メンバーの一人ひとりは、自分の欲求で動くのではなく、全体に対してアンテナを張って耳を傾けて、アンサンブルが求めるもの(自律した組織が求めるもの)に従って動くことが求められます。
なので、自分が大きな存在の一部だということを知り、各自が「誰かたったひとりのクリエイティブな人間の意見がチームを牽引する」という幻想を捨て、さらに「自分がコントロールしたい」という欲求も手放し、大きな存在が作り出す「可能性」に身を委ねる一方で、「部分」に集中して大きな存在に貢献することが大事になります(本当に、伝わりにくいですよね)。
アンサンブルについては、アメリカのシカゴの即興コメディ劇団「セカンド・シティ」が書いた『なぜ一流の経営者は即興コメディを学ぶのか?』を読んでいただければ、理解が少しだけできると思います。
コントロールしたい欲求を捨て、全体の一部として機能するということを体験する「ワンワード」という「インプロビゼーション・ゲーム」があるので紹介します。
ワンワード
4人から8人くらいで輪になって、テーマを設定して、一人一文節づつ話してテーマに沿った物語を作るゲームです。話がつまらなくなった時点で誰かが「ストップ」と宣言すると、また最初から始めることが可能です。また、次の文節が思いつかない場合でも「ストップ」を宣言できます。なれてきたら動きも入れると面白くなっていきます。
ファシリテーター(インプロヴァイザー)「テーマは『エアコンの使い方』です」
Aさん「はじめに」
Bさん「リモコンを」
Cさん「手にとって」
Dさん「じっと見つめて」
Eさん「運転ボタンを」
Fさん「押します」
Gさん「次に」
Aさん「指先を」
Bさん「・・・ストップ」
物語をコントロールする欲求を手放して、全体の物語をしっかりと聞いて把握して、しっかりと部分として機能するように1分節を話します。このゲームをしていると、同じギャグやボケを二度、三度と繰り返して笑いを取るお笑いのテクニック「天丼」になりがちです。物語として成立しなくなってくるので「ストップ」といいましょう。
また、「うまいこと言おう」とする人がでてきたりするかもしれません。「うまいこと言おう」として新しい文節が言えないケースがあったりします。おそらく、コントロールしたい気持ちがそこにあるので「うまいこと言おう」と思ってしまうのかもしれません。そういう欲求を手放しましょう。自分のことより全体のことの優先度をあげて、物語全体を通して面白くなることを優先してもらいましょう。
ワンワードも、動画付きで説明している記事もあるので、紹介しておきます。
インプロビゼーション(即興演劇)は役者の悪い癖を直すトレーニング
詳しいことは知らないのですが、どうやらインプロビゼーション・ゲームというものは、当初、即興演劇をする役者の悪い癖を直すために開発されたもののようです。悪い癖というのは、以下のようなものです。
・相手の話を聞いていない
・相手をよく見ていない
・自分だけ目立とうとする
・自分の思い通りに操作しようとする
・言葉にとらわれて、その奥にある本当の意味、思いを理解しない
なるほど、僕もたくさんの悪い癖を持っていそうです。
チームには台本がなく、刻々と変わる状況にアドリブで対応していかなければなりません。まるで即興演劇です。さらに、クリエイティブなチームってことになると、次々と起こる出来事を受け止めつつ、シャープに反応し、その中で相互に創造性を働かさなければならないです。なんという、高度なアンサンブル!その中では、プロジェクトチームのメンバーも即興演劇の役者さんと同様の悪い癖を直していかなければなりません。・・・と、いうわけで、インプロビゼーションを研修に使っている会社さんが、日本でもチョボチョボと出てきていそうです。
最後にスーパー楽しい「インプロビゼーション・ゲーム」の「インアウト」を紹介します。これぞ、即興演劇です。
インアウト
ステージ上には2人立ってもらい、テーマを決めて演じてもらいます。例えば「バスのなか」など。2人が演じだしてしばらくして、3人目がステージに自分のタイミングでステージにはいってきます。そのときに何かしらの理由(設定)をつけなければいけません。例えば、「始めてのお使いのためにバスに乗ってきた」などです。ステージ上に3人になったら、最初からいる1人は、何かしらの理由(設定)をつけてステージからおります。例えば、「目的地に到着した」などです。これを繰り返していきます。
同様に、動画付きで説明している記事もあるので、紹介しておきます。
最後に
即興演劇は道具も要らない、なにも準備もしなくて良い、とてもスピーディーにできるクリエイティブな創造活動です。でも、周囲の言動をしっかりと深く観察し、場面に応じて常に変動する状況の中で、リーダーシップを素早く移動させて機能させることを身につける必要があります。また、全体としての創造性を高めていくために個人が「部分」として集中しなければ、面白い舞台になりづらいです。
まさか、自分がティーンエイジだった頃にやっていたことが、今、企業研修などに使われているとは思いもよらなかったですし、自分がまた、演劇を使ってワークショップをやっているとは(笑。
ひとまず、イエスアンドのスキルを身に着けて心理的安全性を作り、ピーター・ドラッカーさんも言う通りフラットな組織であることを維持することはナレッジワーカーとして働いている限り、ビジネス的にも必要なことですし、個人ではなく大きな存在としてアンサンブルして一人では出せないアイデアや成果を出していくことも同様に必要なことだと思います。
がんばります。