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ニジボックスの主力事業のひとつ「リクルート共創」では140名以上のデザイナーが活躍中です。最近では「Air ビジネスツールズ」におけるさまざまなプロダクトの成長に大きく貢献する事例も。まさに「共創」という言葉の通り、フラットな関係性から生まれるニジボックスならではの介在価値といえるでしょう。
そこで今回はニジボックスのUI/Webデザイナーである若菜さん(上写真左)と竹林さん(オンライン参加・下写真)、そしてリクルートで「Air ビジネスツールズ」の複数プロダクトのデザイン責任者を担当する新谷さん(上写真右)の3名に、実際の現場での象徴的なエピソードを語っていただきました。
社会課題の解決にも役立つ「Air ビジネスツールズ」
–– まずはみなさんが手がけてきたプロダクトについてお聞かせください
竹林:さまざまな事業を取り巻く煩わしさを減らす「Air ビジネスツールズ」の中の『Airウェイト』というプロダクトになります。飲食店や病院などさまざまな施設で発生する順番待ちのストレスとお店側の業務負荷を同時に解決する受付管理アプリです。
若菜:『Airウェイト』には私も昨年まで2年ほどデザイナーとして携わってきました。昨年10月からは別のプロダクトに移ったのですが『Airウェイト』時代には仕事の進め方からデザインに対する考え方まで本当に多くのことを学ばせてもらったなと思っています。特に今日いらっしゃる新谷さんからは多くの刺激をもらいました。
新谷:いや、私こそ若菜さんや竹林さんの活躍や成長ぶりから毎回刺激をもらっていますよ。もともと若菜さんがいた頃はチームにデザインディレクター(プロダクトにおけるデザインマネジメント全般を担う)がいなかったこともあり、当時マネジャーだった私がデザインレビューも担当していたんですよね。その後竹林さんがジョインしてきて、いまやかなり広範囲にわたってご活躍されています。
–– 最近『Airウェイト』をあちこちで見かけます
若菜:利便性や導入ハードルの低さからご利用いただく飲食店や公共施設が続々と増えています。また多言語対応によりインバウンド向けに観光地に導入される事例もあります。物流業界における「荷待ち時間」の短縮にも有効に活用されるなど、社会課題の解決に貢献しているケースも少なくありません。
–– そうしたプロダクトのデザインワークで意識することってなんですか?
若菜:新谷さんからよく言われたのはユースケースをしっかりと考える、ということでした。具体的には、どの業種のカスタマー/クライアントをメインターゲットとし、対象者が落ち着いて座っているのか、あわただしくしているのかなどをはじめ、どんな状態でプロダクトに触るのかを考えた上で、最適なUIを実現することを意識していました。
竹林:『Airウェイト』って早く受付したい人がサッと済ませられるものであって、じっくりと説明を読んで理解して、というプロダクトではありません。画面に出てきた案内に沿ってボタンを押していけば次々に進んでいけるような、シンプルで“カンタン”でスマートなものであるべきです。体験のハードルの低いUI設計を常に心がけていました。
–– ふだんの業務の流れはどういったものでしたか?
新谷:当時はクライアントの声を起点に案件化されるケースが多かったですね。特に若菜さんが担当していた時期はVoC(Voice of Customer/Client)を拾って企画する事案が活発でした。そこからリクルートのディレクターと若菜さん、竹林さんをはじめとするニジボックスのデザイナーで細かく案件を詰めて、ある程度固まったところで私のところに持ち込んでもらうという流れでした。
クライアント目線に立ち返ったプロモーションサイト改善
–– 印象に残っている案件はありますか?
若菜:『Airウェイト』のプロモーションサイトでのトップページ改善(下部画像参照)という案件がありました。マーケティングチームからの案件だったのですが、新谷さんとの定例で頭出しして懸念を無くしていこうと思っていたんですね。それでワイヤーフレームを見てもらったんですが、ここで重要なご指摘をいただくことに。
ひとつは『Airリザーブ』という別のプロダクトのカスタマージャーニーマップを土台にしてコンテンツの検討が進んでいたこと。もうひとつはペルソナが古いことでした。考えてみれば当たり前の話で、『Airリザーブ』は予約システム、『Airウェイト』は受付システムです。両者は使われ方そのものが大きく異なります。また、ひと言で受付システムと言われてもピンと来ないのではないか、というフィードバックもいただきました。そこで、私たちデザイナー側でカスタマージャーニーマップから作っていくことにしました。
–– 他チームに頼り切らず、自分たちでもマーケティングに染み出していったと
若菜:ニジボックスのマネジャーと一緒に『Airウェイト』独自のカスタマージャーニーマップを作成して、ペルソナも大幅に刷新しました。その上で提供コンテンツの内容をもう一度練り直したところ、新たな課題やクライアントの困りごとに気付けたんです。
そもそも、サービスのカテゴリが説明できておらず、クライアントは『Airウェイト』が自分たちの要望にマッチするかどうかを判断できない状況だったんですよね、そこで魅力を伝えるコンテンツを大幅に増やしました。
新谷:当時私たちは「自己紹介コンテンツ」って呼んでいたんですが、そもそも『Airウェイト』とはこういうものです、という説明が抜けていたんですよね。それを若菜さんが企画して追加してくれたんです。その結果、最終CVRが3倍以上改善されました。素晴らしい成果です。
■改善前
■改善後
若菜:ABテストで2倍ぐらいCVRに差が生まれました。
–– すごい!よくそこまで改善できましたね…
若菜:ただ単に依頼されたデザインをこなすだけの取り組み方をしていたら気付くこともなかったのかな? と思います。新谷さんはいつも答えを教えるのではなくヒントをくれるんですよね。
この時も「他のサービスで作ったジャーニーマップや過去案件を参考にしてみたら?」と助言をもらいました。ただ『Airウェイト』にそのまま適合するかは分からないとのことだったので、別部署のクリエイティブチームまでお話を聞きにいきました。そこでカスタマージャーニーマップをつくる上での留意点をいくつか確認しつつ、新谷さんに見ていただきながら進めていったのが良かったのかなと思います。
–– 他のチームの方も巻き込んだんですね
若菜:以前、ある課題で悩んでいたところ、新谷さんから「聞いてきたら?」と言われて。それをきっかけに別チームのディレクターにヒアリングしたり、逆に意見したりできるようになりました。眼の前の物事に疑問を持っていいし、必要ならば他のチームと協業してもいいんだと学びました。実際にグラフィック作成の際にクリエイティブチームの方に何度も壁打ちしてもらいながら進行しました。
新谷:以前から『Airウェイト』チームにはデザインマネジメントチームを頼ってくれる空気があります。企画する人からマーケの人、開発担当まで案件を全部詰め切ってから持ってくるのではなく、デザイナーと一緒に考えようというカルチャーなんです。疑問を持ったら誰に何を言ってもいい。みんなで一緒に議論しながら案件が進んでいくのが日常の光景です。
若菜:ディレクターの要件定義まで染み出して共有する、という貴重な経験ができました。リクルート全体でも上流への染み出しを歓迎する空気がありますよね。新谷さんに高い視座からフィードバックをいただいたことが、成果に結びつくきっかけとなりましたし、今の自分の力にもなっています。
潜在化していた「体験のひっかかり」を未然に解消
–– 竹林さんが担当された業務で印象に残っているエピソードは?
竹林:導入店舗からの要望が強かった、『Airウェイト』での受付の際に最後の画面に案内文を表示する機能を追加した案件です。
このサービスをユーザーが利用する際には、店頭でまず人数を入力して、次にテーブルかカウンターかを選んで、と案内が進んでいくのですが、最後に「○○でお待ちください」など、受付完了後のカスタマーの次の行動を促す案内を表示できていなかったんです。そのため、貼り紙や声がけなど、店舗のスタッフが対応する必要が生じたり、利用者が受付完了後も画面の前で戸惑ってしまうなどで、店の前に行列ができてしまったり。さらにはクーポンが出ているのに気付かずに立ち去ってしまうケースもありました。
そこで、お店側がお客様に伝えたいことをテキストメッセージとして画面に表示できる機能を提案したんです。
–– 制作時にはどんな点に苦労しましたか?
竹林:もともと『Airウェイト』は多言語対応で、日本語の他に英語と2種類の中国語、そして韓国語でサービス提供していました。ただし自動翻訳ではありませんので、お店側は最大で5言語分の翻訳文を作成する手間がありました。この点もサービスの導入のネックや解約要因になりえるのではないか? と新谷さんに相談しました。
新谷:『Airウェイト』は大手企業にも導入いただいているので、10店舗以上で使われているケースもよくあります。チェーン店の本部の方が店舗の数だけログインして、なおかつ4言語も5言語もテキストボックスにコピペするのは体験価値としてよくないですよね。当事者にとっては負荷以外のなにものでもありません。表にはでてこない要件ですが、きちんと考えたほうがいいんじゃないか、という話をしました。
竹林:そしてこの課題の解決策としては「基本的に英語で考えてみる」というものでした。日本語を英語に翻訳するのは簡単ですし、おかしな文章だった場合も店舗側で気付きやすいですよね。逆に中国語や韓国語は我々日本人にとっては間違いを判断しにくいです。最初はそれぞれの言語で入稿できるような設計で考えていたのですが、「中国語・韓国語の設定に関してはさらに英語も選択できるようにしたら店舗側にも親切なんじゃないか」と話しながら、UI設計を進めました。
新谷:ただしそのことは当初の要件に入っていなかったので、竹林さんからディレクターに改めて説明する必要がありましたよね。
竹林:はい、担当ディレクターの方に説明をしたらすぐに納得いただけました。私は良いと思ったことや必要に感じたことは積極的に提案するタイプなので、関係者への提案することには慣れていたので、プロジェクト進行の上でハードル高く感じることはありませんでした。しっかりと会話してプロダクト目線も考慮した上で、デザイナー側と企画側でやりたいことが異なる場合は折衷案を考えたり、いつも議論しながら進めています。
新谷:今回は竹林さんからディレクターを説得していただいて、チーム全員の合意のもとで着地できました。関係者にすんなり理解いただけたのも、普段から竹林さんがプロダクトのために誠実に仕事をしてくれているからだと思います。
要件として明文化されていないけど、よく考えると体験上のひっかかりがあるとか、ネガティブな気持ちになる。そのような細かい違和感を取り除くことがプロのデザイナーの仕事だと思います。そこをひたむきに追求しているのは本当にすごいですね。
クライアントやカスタマーの体験をこだわって突き詰める。ディレクターや、マーケティング側ではなかなか考えがおよばないものです。そこにニジボックスのデザイナーがしっかりと向き合うことは大きな介在価値であり、あるべき役割分担といえるのではないでしょうか。
竹林:やはり新谷さんからは視座の高さを学んでいます。リクルートやニジボックスでは、エビデンスに即した定量データからジャッジします。これは、私が今まで経験したことのないやり方なので衝撃を受けたというか、かなり勉強になっていますね。
プロのデザイナーとは? 当事者意識と行動力
–– ニジボックスのデザイナーがここまでプロダクトにコミットする理由は?
新谷:やはり一緒に仕事をする中でお互いを頼っていく関係性が築けていることが大きな理由ではないかと思います。たとえばディレクター側が全部ガチガチに要件を詰めてこれ以外は不可です、というような状態から案件がはじまると、デザイナー側から新たなアイデアやこだわりは出てこないでしょう。そうではなく、「こんなこと考えているんですけど、どう思います?」と相談ベースで話を持ちかけてくれる。そのような信頼関係がベースにあるからではないでしょうか?
若菜:良い意味で分業化されすぎていませんよね。例えば営業担当がクライアントから要望をいくつかもらってきて、ディレクターがその中からどれを案件化するかを精査する。といった流れで案件が進んで行くと思います。私たちの現場では、その要件を詰めるところからデザイナーが介入して、開発にも仕様を確認しつつ齟齬がないようにデザインを作成し、さらに実装後にも再確認し、問題がなければQA(品質チェック)に渡して…と、業務にグラデーションがかかっています。まさに一緒に進めていくスタイルなんです。
–– プロダクトへの理解はどうやって深めていますか?
若菜:実際に触ったり、開発の仕様書を確認したりしています。プロダクトのマニュアルや営業の提案資料を読み込むこともあります。その他にも事例などプロダクトにまつわるものを全て読んで、触って、理解を深めています。
竹林:ニジボックスのSlackチャンネルに「タッチパネル研究会」というのがあるんです。「街で『Airウェイト』を見かけたよ」みたいな投稿や、実際に店舗でどのような使われ方をしているのか、どんな案内をPOPで掲示しているのかなど、内外問わずさまざまな受付システムの写真を撮って蓄積し、運用面で参考にしています。こうした日々の活動でプロダクトの理解が深まるんですよね。
若菜:タッチパネルの参考UIがネット上に無さすぎて(笑)こうなったら実際の店舗で見て写真をみんなにも上げてもらおうというのが最初のきっかけでした。とにかくタッチパネルの参考資料を集めたい、みたいな思いが強かった記憶がありますね。
新谷:タッチパネル研究会! そんな経緯でできたチャンネルだったのですね!今日はじめてその誕生秘話を知りました(笑)。すごい熱量というかこだわりを感じます。素晴らしいですね。
–– ニジボックスのデザイナーに今後どのような関わり方を期待しますか?
新谷:プロのデザイナーとして、若菜さんの案件では情報をきちっと相手に伝えることを突き詰めてこだわる点。竹林さんの場合はひっかかりのない究極の体験をやはり突き詰めてこだわる点。この2点をこれからも追求してほしいですね。これができるのはデザイナーしかいないので、誇りを持って取り組んでいただきたいと思います。
そのための前提として、さまざまな役割の人たちと一緒に議論する関係性が欠かせません。でもお二人はもう十分にクリアできていると思います。頼もしい限りです。
–– あらためて、お二人と一緒に働いてみて、どんな印象をお持ちですか?
新谷:今日紹介されたような事例は、きっかけこそ私から提供することはあっても、基本的にお任せしている中で進めてもらっている状態なんですね。若菜さんにしても竹林さんにしても1つの意見から100のアプローチを試みてくださるような方々です。高い当事者意識と行動力にいつも感心させられます。
若菜・竹林:ありがとうございます!
新谷:『Airウェイト』は今や竹林さんがメインとなって活躍してくれています。若菜さんは別チームですが「Air ビジネスツールズ」の中でどんどん羽ばたいてくれています。リクルートのプロダクトにおけるコアな部分をニジボックスのメンバーが担ってくれるのは頼もしい限りです。これからもよろしくお願いします。