「中高生ひとり一人の可能性を一人でも多く、最大限伸ばす」をミッションに掲げ、2010年の創業から次世代デジタル人材育成を手がけるEdTech企業、ライフイズテック。ひとり一人の「より豊かな今と未来をつくる力」を育み、その多様な力を地域や社会へと届けるためのさまざまなプロダクトやサービスを開発・提供しています。今回は国土交通省での勤務経験を活かして自治体などに向けた商品開発に取り組む寺島陵太さんにお話を伺いました。
Profile
寺島陵太(Ryota Terashima)事業開発事業部 ビジネスプランニンググループ マネジャー
大学卒業後、広告制作会社である博報堂プロダクツに新卒として入社。営業として金融から食品、美容まで幅広い業界を担当する。媒体やイベント、CM制作などさまざまな経験を積んだ後、国土交通省の職員公募にエントリー。見事合格し、総合職の課長補佐として入省する。自動車局、航空局、不動産・建設経済局などを経験。2024年9月、ライフイズテック株式会社に入社。現在は自治体などに向けた商品開発や経産省の実証事業に携わっている。
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クリエイティブの現場から霞が関への華麗なる転身
──これまでのキャリアについて教えていただけますか?
就職活動の時点では働くことに対して解像度高く捉えられていなかったのですが、いろいろなことに関わりたい、経験の幅を拡げたいという思いから広告業界を志望しました。いくつかの会社から内定はいただいたのですが、最終的に決めたのは博報堂プロダクツという制作会社。広告大手である博報堂グループの一社です。
グループ会社といえども実際には博報堂本社に常駐。営業として媒体からイベント、CM制作までプロマネのような立場で携わりました。当時はいまよりも社会全体に活気があって業界も元気いっぱい(笑)。そうした世相を背景に楽しく仕事していましたね。現在はわかりませんが、その頃は現場の営業に大きな裁量がありまして。クライアントの企業規模によっては入社1年目や2年目でも顧客に深く入り込んで自由に提案できたんですね。
社内の報告スキームも最終的な結果や成果を伝えるだけで良かったので、顧客に正面から向き合える環境でした。本当に自由闊達というか、現場力の強い組織でしたね。担当した業界も文字通りさまざまで、大手金融から食品メーカー、外資系金融、美容系まで経験できました。その点において就活の時のヨミは間違っていなかったと思います。
結局9年間ほど在籍していたのですが、現場が強いだけに将来のキャリアを考えるとこのまま縦軸に昇格していくのは果たして…と考えるようになりました。また広告業界ではよくある話なのですが、どうしても形のないものを売っているので、もう少し実のあるというか、世の中の役に立つ実感を渇望するようになるんですね。
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そんなときたまたま目にしたのが国土交通省の職員公募。総合職の課長補佐を民間からはじめて公募で採用する、という取り組みでした。国交省といわれても調べたところでわからないことだらけでしたが、なんとなく自分の生活に近いようなイメージがあり、それならとエントリーした次第です。
──それで霞が関に転身なさるわけですね?
入省後に配属されたのは自動車局でした。いわゆるタクシーやトラックなどの許認可制度を扱う部局です。だいたい2年で異動するのが慣例ですので、その後に航空局で脱炭素の取り組みを、さらにその次は不動産・建設経済局で特定技能制度を扱っていました。
7年間の官僚経験でわかったことは、制度やルールが決まっていく流れやそこに働く力学みたいなものですね。広告業界とは作法も流儀もなにもかも違うのですが、やっていることは実は共通点がありまして。どちらも複数者の間に入って調整や交渉を行なうことだったんです。広告のときは主にクライアントとクリエイティブだったのが、省庁では国会議員と業界団体だったり企業だったり。仕事の本質みたいなものは大きく変わらないんだな、と思いました。
社会の役に立つ実感も得られました。法改正して実際に執行・運用する場面があるのですが、その結果以前よりも良くなったとか、便利になった、事業が上手くいくようになったなど感謝の言葉を直接いただくことが多かったんですね。やはりそういう時には自分たちが取り組んでいることの意義や、社会の役に立っている手応えを感じましたね。
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教育市場が面白くなりつつあることがわかる
──国交省をお辞めになるきっかけとなった出来事は?
とくにこれといった具体的なエピソードがあるわけではないのですが、省庁というものは将来の姿がはっきりと見えすぎるところがあります。先のポストやポジション、あるいはどのようなミッションが与えられるのか。それを見ていて役所の仕事は課長や課長補佐がいちばん面白いんだな、と感じていたんです。もともと現場が好きだというタイプでもありますし。
最終的に運輸系の予算を取りまとめる部局で1年ほど業務に携わったところで、霞が関でのキャリアにピリオドを打つことにしました。
──ライフイズテックへの入社はどういった経緯で?
しばらくは転職市場を見ながら何をするか、どこに軸を置くか考えていました。もともと教育には興味があったんです。ただ先生になりたいという気持ちはなかったのと、教育事業はビジネスとして成立させるのが難しそうなイメージがありまして、就活のときはマーケットとして見ていなかったんですね。でも最近はどうやらDXが進んでいたり、EdTechというものが盛り上がっているらしい。もしかしたら当時とは状況が変わっているかな、と思って調べていくと出てきたのがライフイズテックの名前でした。
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どんな会社かなと探っていくうちに讃井さんの動画を見つけまして、こんなにも面白いことになっているのかと驚いたのを覚えています。しかもメンバーを募集しているので、半分お試しでエントリーしたというのがジョインまでの経緯です。実は今回の転職にあたって他の会社には一切応募していなくて、ライフイズテックのみで、縁がなければ官僚を続けていました。
讃井さんの動画のどこに惹かれたかというと、生成AIをはじめとしたテクノロジーで教育が変わっていくという期待ですね。政府の「GIGAスクール構想」などの取り組みはは国交省時代から知っていましたが、ふわっとした理解で終わっていました。そのあたりも含めてしっかりと情報としてわかりやすく伝わりました。ここから10年ぐらいで教育はガラッと変わっていく、また変えていけるだけの世の中の空気づくりもできている。これは面白くなりそうだ、と感じました。
入社にあたっては対自治体へのアプローチであることだけわかっていました。それなら自分の経験も強みも活かせそうだ、と。一方でどういう動きをすればいいかなどは実際に入ってみないとわからないのでさほど気にしませんでした。ただ面接の3回目、4回目あたりでいまの上司から山梨県での取り組みについて話してもらったことで解像度がグッと上がりました。何を提供しているかもクリアになったし、率直に楽しそうだなと思いました。
決め手となったのは事業部長との最終面接ですね。ここから先のビジョンをどう描いているか、かなり詳細に語っていただけました。そのおかげでいまの教育を取り巻く環境、世の中の空気の醸成度合いまで含めて前に進んでいけそうだと確信できました。もちろん足元でやっていることも面白そう。子どもたちにとって意義があることですしね。
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子どもたちの成長を目の当たりにできるやりがい
──現在のお仕事について教えてください
自治体向けイノベーション人材育成プログラムにおける商品開発を手掛けています。具体的には山梨県DX人材育成エコシステム創出事業[※1]における中学生の体験会や大学生を育てるプログラムの実施を通した県内発型のDX人材育成の仕組み作りですね。それこそ参加者の募集からプログラムの納品に至るまでのひと通りに携わるのですが、全体を通してやっていることとしてはライフイズテックの中の商品開発であると認識しています。
一つひとつのキャンプや1day体験会自体はすでに販売できる状態でパッケージングされているのですが、それらをつなげてまとめてエコシステムにするのが目下のミッション。それを山梨県と共同でつくっているという意識です。
あとは経産省の「未来の教室」に採択された実証事業にも携わっています。中高生が自分の興味関心のもと、地域の課題に対して解決策を調べて形にして最後は提案する探究学習という授業があるのですが、「未来の教室」事業では、そこで生成AIを使っていこうという実証に取り組んでいます。これもまた製品化に向けて動いているので、まさに商品開発ですね。
[※1]山梨県内の中高生から大学生まで幅広く、DX人材の育成を行うと共に、育成された大学生DX人材が山梨県内の中小企業の課題解決を担う仕組みづくりも目指す事業
https://preview.studio.site/live/ogO0lpb5O2#dxleaders
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──やりがいはどんなところにありますか?
やはり一つひとつの現場に入ると見えてくるものがあり、そこに面白さがあります。たとえば中学生って最初はやや斜に構えていたりするものじゃないですか。そういう子たちがプログラミング体験を通してどんどん笑顔になっていったりするんですね。
あと大学生にデジタルスキルをしっかり研修して中学生を教えるメンターへと育成するのですが、やっぱり最初はちょっと頼りなかったりする。大丈夫かな、なんて思う学生もいるんですよ。そんな子たちが山梨の中小企業が抱える実際のDX課題に対して解決策をプレゼンするまでになる。実際に受注に至るまでを見ていると本当に成長したなあ、と感慨深いものがあります。
もし、山梨県がこの取り組みをやらなければ、おそらくデジタルに深く踏み込むこともなかったであろう子たちがどんどん成長していく。こんなふうに子どもたちが大きく変わっていく姿を目の当たりにできるのが何よりのやりがいです。
その反面、仕事の難しさを感じることもあります。私のチームが担当している商品開発系の仕事は誰も答えをもっていません。それでも自分で考えて、少なくとも答えの方向性のようなものを作っていく必要があります。そのはじめの一歩を踏み出す役目を自分たちのチームが担っているんですね。誰も教えてくれないことだけに、難易度は決して低くありません。
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物事に対する解像度や構造化のスキルを磨いていく
──自治体を相手にビジネスを進める難しさはどんなところにありますか?
自治体とのタッグということで民間と比べて難しいのではないか、というイメージを抱かれがちですが、決してそんなことはありません。ただし経験を踏まえて言える特徴的なことは2年で異動になることです。ここは確かにやりにくさを感じるかもしれません。ただ、そのためにも仕組み化を進めていく必要があるわけで。担当が変わっても大筋がブレないような構造化が重要なテーマのひとつです。幸い、いまは熱心に取り組んでくださる担当者に恵まれていますが、たとえ状況が変わったとしてもしっかりとサイクルが回っていけるように整えることこそ私のチームのミッションだと認識しています。
逆に新任の担当者さんがライフイズテックと組むことで教育に熱い思いを持ってくださるようになるとうれしいですし、そういう方を一人でも多く増やしたい気持ちはありますね。
──教育はもちろん企業への解決策提示となると一定の品質担保も必要ですね
まず子どもたちに対する教育のクオリティについては100%担保されていると断言できます。ライフイズテックには創業以来のノウハウが蓄積されているのと仕組みづくりが整備されているので全く不安はありません。体験会やキャンプの現場を見ているとメンターの大学生や社員の手厚いフォローに感動さえ覚えます。これなら間違った成長はさせないだろうなと。
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一方で例えば、先ほどよりお話ししている山梨県DX人材育成エコシステム創出事業内での中小企業への提案などは、大事な部分は大学生に考えてもらいますが、手前のヒアリングの部分などは社員がかなり入り込み支援体制を整えています。アウトプットの品質担保についてはライフイズテック側で強力にサポートしているので問題ありません。
──入社して身についたスキル、あるいは磨きたい能力などはありますか?
いままでの仕事よりも物事に対する解像度や構造化するスキルが求められるので、ひとつの事象から抽象化して展開する能力は伸ばしていきたいと思っています。そのために必要なのは真似ること。できている人のそばでどうやっているか見て真似ることに尽きます。幸い社員の中でもその能力に長けている方と一緒に働けているので、日々勉強になっています。
私のように広告の世界や自治体などでの実務経験がある方ならば、持っているスキルやこれまでの経験をフルに活かせると思います。中でも特に向いているのは、答えがなく何も決まっていない状態のままでも物事を進められる人ですね。決まっていなくても仮のゴールが置けるというか、自分なりに着地点を設定し、プロジェクトを推進できる人。
ただし、そういったスキルを身に着けたいという理由で入社してくるとミスマッチになるかもしれません。そうではなくて、やりたいこと、子どものこと、教育のことに集中できる人のほうがいい。いわゆる「事」に向かっていけば結果としてスキルは後からいくらでもついてきます。能力も開発されるでしょう。そこは約束できます。
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