こんにちは、いつもご覧いただきありがとうございます。
おぉーっ!ナイスバッティング!
ある日曜日、体育館いっぱいに、笑い声と歓声が響き渡りました。
これは、私たちが初めて開催した「oyakataクリケット大会」のワンシーン。
今回はそんな一コマをお届けします!
oyakataクリケット大会とは?!
2025年7月13日、アイティップスは、インドの職業訓練校を卒業し、現在は日本の現場で働く若者たちと、彼らの就職先であるトーヨーテクノ、加藤工務店の社員の皆さまが一堂に会する交流会を開催しました。
当日は大人から子供まで総勢23名が集まり、インドの国民的スポーツであるクリケットを楽しみました。
(※クリケットとは、バットとボールを使って得点を競う、野球に似たチームスポーツで、インドをはじめ多くの国で親しまれています。)
しかし、これは単なる交流会、レクリエーションイベントではありません。
なぜ、ただの「交流会」ではないのか?
私たちが向き合っているのは、日本の製造業・建設業が抱える人手不足の課題と、インドの若者が直面する就職難の課題。そして、双方の架け橋となる”人づくり”です。
来日した卒業生たちは、異国の環境で日々奮闘しています。 文化も慣習も異なる中、時に孤独や誤解に直面することもあるでしょう。特に現場では、些細なコミュニケーションの齟齬が、重大な事故につながる危険もあります。だからこそ、仕事上の指示や連絡だけでなく、休憩中の雑談や互いを気遣う一言といった、何気ないやり取りが、心理的な安心と現場の安全の基盤となります。
一歩進んだ関係性を築くために
トーヨーテクノ様、加藤工務店様は、日頃から卒業生たちと共に現場で汗を流しています。現場での信頼関係は日々着実に築かれていますが、今回はその”もう一歩先”を目指しました。それは、
形式的な「同僚」の枠を超え、国籍や立場を超えて心が通い合う関係へと進んでいくこと。
そしていつか、職人の技や仕事に向き合う姿勢を本当の意味で継承していく――
「親方と弟子」と呼べるような関係へとつなげる、その第一歩です。
そのきっかけとして選んだのが、インドの国民的スポーツ「クリケット」でした。
この日ばかりは、立場が逆転。
卒業生たちが“先生”となり、他の社員の皆さんにルールや技術を教える役割に。
バットの握り方、ボールの投げ方。普段とは違う立場で関わるうちに、自然と笑顔と拍手が広がっていきました。
当日の様子を写真でお届けします!
それでは、ここからは大会当日の様子を写真と共にご紹介します。
(写真1:集合写真 )
前列にはインドから来た卒業生たち、後列には受け入れ企業の社員の皆さん。そして子どもたち。国籍も年齢も超えた最高の笑顔が集まりました。皆さんがこの日の主役です。
(写真2:MVPのタミーさんと子どもたち )
この日のMVPに輝いたタミーさん(写真中央)と、すっかり懐いた子どもたち。大きな体で優しく微笑むタミーさんと、誇らしげにトロフィーを掲げる男の子の姿は、このイベントが生んだ温かい友情を象徴する一コマでした。
「本当に初めて?」と驚くような、素晴らしいプレーもたくさん生まれました 。思い切りよくバットを振る姿や、躍動感あふれるフォームで投げる姿も見られました。卒業生たちの熱心な指導の甲斐もあって、皆あっという間にクリケットの虜になっていたようです 。試合が始まると、随所で珍プレー・好プレーが続出。時には白熱する場面もあり、得点がかかった場面では、自然と皆のプレーに熱が入ります 。それを見守る周りの皆も笑顔。勝敗以上に、一緒にプレーする楽しさが体育館に満ち溢れていました 。
卒業生からバットの持ち方を教わる社員の皆さん 。仕事の時とは全く逆の立場で、自然な笑顔がこぼれます 。言葉や文化の違いがあっても、一つのボールを一緒に追いかければ、心はすぐに通じ合える 。私たちは、そんなスポーツが持つ力を改めて実感しました。
「接点」が信頼をつくる――インドでの体験から
アイティップスのメンバーや、共に訓練校を運営する日本人職人さんたちは、インドに長期滞在しています。ある日、現地の滞在先で、その地域のリーダー的存在の方から、こう言われたことがあります。
「日本人が集まっているだけで、みんな怖がっている。ここから出ていってもらえませんか?」
私たちは毎朝訓練校に通い、若者たちに技術を教え、帰宅する。そんな静かな日々を過ごしていました。
それでも、「そこにいるだけ」で無意識の警戒が向けられる現実――
この出来事は、私たちに深い気づきを与えました。
「人は、知らないものに対して不安を抱く」
これは日本でも、世界のどこでも同じことが言えるはずです。
ザイオンス効果と、スポーツの力
心理学には「ザイオンス効果(単純接触効果)」という概念があります。
「何度も顔を合わせることで、相手に対する好意や信頼が生まれる」というシンプルな人間の心理です。
スポーツは、まさにこの“接点”を自然に生み出してくれる最高のツール。共に走り、笑い、拍手し合う時間は、言葉では伝えきれない安心や信頼を育ててくれます。
アイティップスが目指すもの
アイティップスの理念は、「すべてのがんばる人に、幸せを」。懸命に働くすべての人を応援し、努力と幸福がより身近になる世界をつくることです。
来日する卒業生を単なる「労働力」としてではなく、地域の一員として、共に生きていく「仲間」として迎えていく。そして、仲間である彼らに伝承された技が、つながりを伴いながら世界へと広がっていく。そんな未来を、私たちは本気で目指しています。
それは、見知らぬ誰かにも自然と手を差し伸べる、日本の懐の深さや、人と人との間にあるやさしい余白のようなもの。私たちは、そんな風土の中で、来日する仲間たちが安心して暮らし、成長していける関係性を、企業や地域の方々と共につくっていきたいと考えています。
今回のクリケット大会は、その第一歩です。
次は、他の地域で働く卒業生たちとも開催したい。いずれは、日本全国の卒業生たちと、彼らの所属企業や地域の皆さまが集う「oyakataクリケット全国大会」の開催も、夢ではありません。
最後に
朝早く、現場ではラジオ体操から一日が始まります。国籍も文化も、見た目も違う仲間たちが、同じ空の下で同じ目標に向かって仕事に励みます。
私たちが心から願うのは、彼ら一人ひとりの「がんばり」が、きちんと報われる社会です。それは、「国籍」ではなく、「想い」でつながる社会。互いを認め合い、支え合える環境があってこそ実現します。
共に汗を流し、互いを尊重し合う。この日の笑顔と歓声こそ、私たちが目指す社会の、小さくも確かな姿でした。そして、そうして生まれた絆は、いつしか日本だけでなく世界の現場を支える力にもなっていく。私たちはそう信じています。そして、そんな未来を、皆さまと一緒につくっていけたらと願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。