こんにちは!広報の篠原です。
今回はイングリウッド社員に向けて半期に一度開催する、各業界や領域の第一線で活躍するスペシャリストを招いた学びの場、「IGカレッジ」についてご紹介します。
2020年からスタートし、第9回となる今回は「生成AI×ビジネス」をテーマに、LINEヤフー株式会社 上級執行役員 生成AI統括本部長 宮澤 弦氏と、株式会社GROWTH VERSE 代表取締役兼CTO・日本ディープラーニング協会理事 南野 充則氏をお招きし、AI領域の最前線にいるお二人に、生成AIによって未来がどう変わるのか、事業や組織作りをどう変えていくのかを伺いました。
<イベント概要>
イベント名 :IGカレッジ
テーマ :テックカンパニー役員が描く未来図~生成AIは事業と組織をどう変えるか~
開催日時 :2025年5月20日(火)17:00~
登壇者 :LINEヤフー株式会社 上級執行役員 生成AI統括本部長 宮澤 弦氏
株式会社GROWTH VERSE 代表取締役兼CTO・日本ディープラーニング協会理事 南野 充則氏
株式会社イングリウッド 取締役副社長兼CGO 三好 悠介
モデレーター :株式会社イングリウッド 取締役兼CTO 大森 崇弘
IGカレッジとは?
IGカレッジとは、各業界や領域の第一線で活躍するスペシャリストを招いいて開催する、社員のための講演会です。半期に一度、一流の思考を吸収し、視野を広げ、視座を高めることで、自らの市場価値を高めるための質の高い学びの機会として開催しています。
社員よりもAIエージェントの数が多い環境で付加価値を何倍にも拡大する
今回のテーマである「生成AI」。新卒社員から経験豊富な中途社員、マネージャーや役員まで約240名が聴講しました。事前に社内でとったアンケートをもとに2つのテーマに沿って、AI領域のトップリーダーである宮澤氏と南野氏に直接お話を伺いました。
![]()
テーマ①「生成AIは事業の『ゲームルール』をどう変えるか? - 未来から見た競争戦略 & 投資判断」
1つ目のテーマは生成AIの普及による事業環境の変化について。AIの活用により、市場に大きな変化がもたらされると言われている中、成長する企業に必要な戦略について伺いました。
宮澤氏:AI活用によって、コスト削減や業務効率化はもちろん、複数の事業がシームレスにつながることも可能になります。これらを実現するには社員一人ひとりが複数のAIエージェントを使いこなし、今の何十倍ものスピードと付加価値を生み出せることが重要です。例えば3年以内に1,000のAIエージェントが、2030年までには10,000のAIエージェントが業務を回しながら、社員はそれを上回る付加価値を生み出す会社になると、現在提供している何十倍もの生産性と付加価値を提供することができるようになります。
例えば退勤ボタンを押す前にAIエージェントに仕事を依頼し、翌朝出社したらその結果をチェックする、という働き方が全社員に定着したとします。すると人間の業務時間を短縮しながら、AIエージェントが従来の何倍もの業務をこなしてくれるので、事実上労働時間による制約を取り払うことができます。
![]()
LINEヤフー株式会社 上級執行役員 生成AI統括本部長 宮澤 弦氏
一人が複数のAIエージェントを活用することで生産性が向上すること、人間が自由に使える時間が増えることに会場内も納得の声が。一方でAIエージェントの開発にはエンジニアリングの視点だけでなく、ビジネス視点が重要になると南野氏は言います。
南野氏:AIエージェントを作れる人とビジネスの視点を持った人がチームになって作るのが良いと思います。AIに関するスキルや知識があるエンジニアと事業や業務を深く理解しているメンバーが組むことで、早く精度の高いAIエージェントの開発が実現するはずです。
![]()
株式会社GROWTH VERSE 代表取締役兼CTO・日本ディープラーニング協会理事 南野 充則氏
AI時代で活躍するのは自分にしかない情報を持っているか
事前のアンケートではAI時代に人間にしかできないことは何か、という質問も多く上がりました。他社との差別化を図るために求められるものについて、宮澤氏・南野氏ともに「その人にしか知りえない情報が持つ価値」を挙げました。
宮澤氏:以前ロジカルシンキングが普及した際にも、「皆がロジカルだと結論が同じ結論になる」という点が指摘されていました。AIも同様で、全員がAIを使ってリサーチをすれば、会議で出てくる内容は同じになります。その際に「君はどう思う?」と問われた時に、面白い発想や意外な考えを言える人が注目される時代になると思います。
南野氏:おっしゃる通りで、データを全て集めることができるAIがある意味一番賢くなるからこそ、AIが知り得ない情報を持っていることが価値になると思います。例えば「実はこんなことがついさっき起こったんです。これ多分誰も知らない情報です」というように、自分しか持っていない情報をいかに早くアウトプットにつなげられるかが、優位性になると思いますね。
テーマ②『AIネイティブ組織』への道筋 - 経営者が描く人材・組織の未来像
二つ目のテーマは、AI活用が浸透した際に活躍する人材とは何かについて。若手とマネジメントそれぞれの視点について伺いました。
南野:私がよく伝えているのは「国語力」です。生成AIが作ったものを読む機会が増えるので、AIがアウトプットしたものを読んで理解したり、追加の作業を論理構成から指示する力が非常に重要になります。
また、他の人が気づかないところに視点を当てたり、好奇心を持ったりすることが今まで以上に大事になります。先ほどもお話した「AIが知らない一次情報」を取りに行くには、会話を通して情報を引き出すコミュニケーション能力や質問力が必要です。
三好:AIは今まさに活用することで、従来とは比べ物にならないくらいのスピードでできることの幅が広がり、若手もベテランも関係なく差別化できるチャンスがあります。一方で変わらないこともたくさんあります。
宮澤さんや南野さんのようなプロフェッショナルかつ、高いコミュニケーション力と行動力がある人がビジネスを牽引するように、AI時代はロジカルに考える部分はAIがやってくれるので、その人にしか知らない情報を持っている人が個人としても会社としても強くなります。
例えばマーケティングでは、各店舗の棚の売れ行きや実際にお客様が棚から商品を選ぶ際に少し悩む瞬間など、AIにはない一次情報を収集する行動が重要です。HR領域では面談や電話を通じて、最新の大学生の就活事情やキャリアに対する個々の考えなど、AIにはない貴重な一次情報を誰よりも持っています。もちろんデータを分析することも非常に重要ですが、それに加えてその人しか知らない一次情報を収集し続けられる人は、ビジネスパーソンとして高いレベルに行けると思います。この差別化がより明確になるのがこれからの時代ですよね。
![]()
株式会社イングリウッド 取締役副社長兼CGO 三好 悠介
「また会いたい人」と思われる、経験に厚みがある人間に
宮澤氏:私は「また会いたい人になる」というのがAI時代のキーワードだと思っています。これからの経営者は、会って話をする際にAIに置き換えられるか、それとも「また会いたい」と思えるかを常に考えるようになります。この「また会いたい」と思わせるための要素として大切なのが、各個人の体験です。AIは恋愛相談に何時間でも付き合ってくれますし、恋愛について雄弁に語りますが、AIは恋愛したことがありません。つまりAIは雄弁に語るが体験がなく、人間は雄弁に語れないけれど実際に体験をしているのです。だからこそ、圧倒的な体験の厚みを持った人がAIを使って仕事をすると、その先のユーザーに感動を届けられると思います。この体験を積み重ねることで、「また会いたい人」と思われ、AIに置き換えられない存在になるでしょう。
話はマネージャー目線でのAI活用について。チームにどのようにAIを導入しているのか、メンバーへの声掛けについて伺いました。
南野:素晴らしいマネージャーはAIを使うのが上手だと思います。今まで人に指示し、仕事を割り振っていたように、AIのスペックを理解して割り振ることができるからです。また、マネージャーは部下のアウトプットの前に、自分でもAIでアウトプットを作成してみて、部下のアウトプットがAIレベルなのか、それ以上なのかを見極めたり、それ以上に引き上げるためのフィードバック力が求められるようになります。
宮澤:逆にマネージャーは、部下から見て「AIに相談するよりもまともな上司」でなければなりません(笑)。AIは相談に何時間でも付き合ってくれますから、それを超えるような人間的包容力や、過去の経験を踏まえた問いかけの力、あるいは「僕の時はこうだったよ」といった体験談が重要になります。もちろん、AIも使いこなし、AI以上の成果を出していると部下から見られているかどうかも重要です。
最後にAIを使いこなすことで描ける未来と期待についてお二人からメッセージをいただきました。
南野:イングリッドの皆さんが行っている仕事は、AIを使いこなすことで今まで以上に差別化できる領域です。今でも圧倒的なPDCAと成果を出していると思いますが、そこにAIを使い、さらなる付加価値をつけることで事業成長のスピードも各段に上がると思います。
宮澤:今、私たちは大チャンスの時代にいます。インターネットやスマートフォンが登場した時に、その可能性に賭けた人々が成功者になりました。今、AIが世界同時で「よーいどん」で走り始めた状況であり、AIのない時代には戻りません。私たちはそのスタートラインに立っています。2050年になった時、「あの時もっと賭けていれば違う人生を歩めたかもしれない」と後悔しないためにも、今、迷わずAIにオールインしてください。
![]()
いかがでしたか?
これからの時代、AIを使いこなせるかどうかで、ビジネスパーソンとしての市場価値が大きく変わるということ。AIができることはAIに任せて、「自分にしかできない経験」や「人との深いコミュニケーション」にどれだけ力を注げるかが、将来のキャリアを大きく左右するんだと実感しました。
AIの進化は止められないからこそ、イングリウッドではこの大きなチャンスを最大限に活かしてまいります。