※ブリスベンで出会った動物たち。全員同じ個体ではなくそれぞれが違う個体
第3回(最終回)テーマ
「自律してください」だけでは自律できない。ブリスベンで考えた、自律型組織と「場」のつくり方
前回、ブリスベンの街を見ながら、採用と組織について考えました。
新しい人が組織に新しいものを持ち込む。
組織も、その力を受け止められるように進化する。
そこで次に浮かんだのが、"「自律」"でした。
自律できる人を採用すれば、自律的な組織になるのか。
私は、それだけではないと思っています。
「自分で考えて」は簡単だけど
「自律してください」
「挑戦してください」
「自分の強みを発揮してください」
言うのは簡単です。
でも、何の情報もない。判断基準も分からない。必要な知識もまだない。
そんな状態で、「自分で考えて」と言われても、結構困ります。
自由に動くためには、最低限のルールが必要です。
判断するための情報も必要です。
私はそれを、ガードレールのようなものだと考えています。
どこへ向かっているのか。
何を大切にするのか。
ここを越えてはいけない、という最低限のラインはどこなのか。
それが分かるから、その中で自分なりの道を選べる。
何でも決めてあげるのでもない。でも、何も決めないのでもない。
人が自分で選び、動ける条件をつくる。
それが、自律を支える「場」なのだと思います。
そして、組織にはさまざまな経験や価値観を持つ人が集まります。
一人ひとりが違うからこそ、新しい発想や価値が生まれる。でも、その違いを生かすためには、誰もが安心して自分の力を発揮できる「場」が必要です。
※Lone Pine Koala Sanctuary で見つけた、世界各国の都市までの距離を示す標識。世界中からいろんな人が集まる場所ならではの、ちょっと楽しい演出
そういえば、約2週間休めたことも同じだった
今回、私が約2週間ブリスベンに滞在できたことも、考えてみると「場」の話でした。
うちの会社の夏季休暇は5営業日連続。
そこには、「自分がいなくても仕事やチームが回る状態をつくる」という意図があります。
情報を共有する。
一人しか分からない仕事を減らす。
誰かが休んでも、チームが止まらないようにする。
つまり、
休めるかどうかも、個人の問題だけではなく、「場」のつくり方に左右される。
私たちの会社のPurposeは、
「ひとがカラフルに輝く場をつくる」
です。
「輝いてください」と求めるのではない。
それぞれ違う人が、自分の持っているものを活かせる場をつくる。
都市開発が「そこで人がどう暮らすか」を考えることなら、組織開発は「そこで人がどう働くか」を考えることなのかもしれません。
※Lone Pine Koala Sanctuary で共同生活を送るカンガルーのたち
帰りの飛行機でも、やっぱり組織の話になった
ブリスベンから日本へ帰る飛行機。
隣に座ったのは、チリから来た男性でした。
チリからブリスベンを経由して、日本へ出張に向かう途中。
日本は初めてで、京都にも行く予定だと楽しそうに話していました。
私はそのとき、組織開発の本を読んでいました。
そこから自然と仕事の話に。
彼はマネジメントに携わる立場で、これまで何度も「組織の壁」にぶつかってきたそうです。
自律的な組織について話していると、彼が言いました。
「そこまで一人ひとりに自律を求めるなら、個人にもかなり高い能力が必要になるよね」
実は、これは私自身も以前から考えていたことでした。
自律という言葉はポジティブです。
でも、自分で考え、判断し、行動することを求めるほど、一人ひとりに求められるものも大きくなります。
ただ、それだけなら、
「じゃあ能力の高い人を集めればいい」
という話になってしまう。
私は、そうではないと思っています。
個人の力は必要です。
でも同時に、その力をどこに向けるのかを共有していることも必要です。
何を大切にする組織なのか。何を目指していて、迷ったとき、何を基準に判断するのか。
それが共有されていれば、一人ひとりの考え方や行動は違っていても、向かう方向までバラバラにはなりにくい。
一人ひとりは違っていい。でも、向かう方向は共有する。
個人の力と、その力を活かせる場。
自律には、たぶん両方が必要です。
※後ろ髪を引かれながら乗った帰国便
最後に出てきた日本語が「Kaizen」だった
話の最後に、彼の口から出てきた日本語が、
「Kaizen 改善」
でした。
トヨタなど日本企業のものづくりを通じて、世界でも知られるようになった言葉です。
南米のチリから来た人と、オーストラリアから日本へ向かう飛行機の中で、自律や組織について話していたら、最後に日本語の「Kaizen」が出てくる。
なんだか面白い旅の終わりでした。
そして、この言葉が今回の旅に妙にしっくりきました。
ブリスベンも、完成した街ではありません。
あちこちで工事が続き、今も変化している。
組織も同じです。
一度いい制度をつくれば完成、ではない。
人が増えれば、それまで機能していた方法が機能しなくなることもある。
環境が変われば、必要なルールも変わる。
壁にぶつかったら、また考える。
少し変えてみる。
そして、また考える。
人も、組織も、街も、一度つくったら完成ではない。
もともとそこにあるものを理解しながら、その時々に合った形をつくり続けていく。
そう考えると、私がブリスベンという「これから変わっていく街」に惹かれた理由も、少し分かった気がします。
約2週間前。
寝不足のままブリスベンに到着したときには、まさか街を歩きながらここまで組織のことを考えるとは思っていませんでした。
ジャグジーでエンジニア採用の話をして。
島で偶然出会った人たちとクジラを見て。
街を流れる川を眺めて。
帰りの飛行機では、チリから来た人と自律やKaizenについて話している。
振り返ると、ずいぶんHRっぽい旅になりました(笑)。
「ひとがカラフルに輝く場をつくる」とは、どんな場なのだろう。
その答えが一つに決まることは、たぶんありません。
街を造る。
組織や仕組みを作る。
新しい「場」を創る。
同じ「つくる」でも、こうして並べてみると少しずつ意味が違います。
でも今回、ブリスベンを歩きながら考えてきたのは、たぶんその全部でした。
だからこそ、
つくって、見て、考えて、また少し改善する。
いい都市と、いい組織は、案外似ているのかもしれません。
※滞在先から眺めたブリスベンの夜景。一つひとつの光が集まって、街の景色をつくっている。組織もまた、一人ひとりの個性が輝く「場」でありたい
※この連載ブログの写真は、私が撮影したものをAIによって少しだけ綺麗に加工したものを使用しています(時代ですね)