「大手だから」「ベンチャーだから」ー会社の規模だけで、成長できる環境かどうかは決まらない。そう語るのは、住友商事の泉翔太さんと、2020年に新卒でフェズへ入社した石川健翔さんです。
一人は大手商社でスーパーマーケットの現場からバイヤーまでを経験し、フェズへの出向も経て、現在は流通データ活用の最前線に立つ。もう一人は新卒でベンチャーに飛び込み、営業からビジネス開発まで裁量を持って走り続けてきた。まったく違う環境でキャリアを積んできた二人だからこそ見えてくる、「挑戦できる環境」の共通点と違いとは。
新卒でどんな軸で会社を選び、20代でどんな挑戦をしてきたのか。そして、これから社会に出る学生に伝えたいこととは。二人にじっくりお聞きしました。
― PROFILE ―
泉 翔太(写真左:住友商事株式会社)
2015年、住友商事に新卒入社。スーパーマーケット・ドラッグストア関連部署でグループ会社サミットの主管業務を担当後、海外流通投資案件に携わり、その後はサミットへ出向し店舗勤務、バイヤー、DX推進を経験。2023〜2025年にフェズへ出向し、現在は住友商事で流通データを活用した事業に携わる。
石川 健翔(写真右:株式会社フェズ)
2020年、フェズに新卒入社。新規事業領域の営業からキャリアをスタートし、2年目から主力事業「Urumo Ads」の営業を担当。営業マネージャー昇進を経て、2026年からビジネス開発部で新規事業の立ち上げに携わる。
ー学生時代、どんな軸で会社を選んでいましたか?
泉さん:「付加価値を作る人になりたい、それを伝える仕事がしたい」という思いがあって、その実感を得られる場所が身近であればあるほどいいなと考えていました。そのため食品メーカーや広告代理店も受けていたのですが、流通分野に力を入れている住友商事にも興味を持ち、商社という選択肢も考えるようになりました。お客さまとの接点やスピード感が自分に向いていそうだと感じて志望しました。
もう一つ大きかったのは、大きな会社だからこそ自分が今まで出会ったことのないタイプの人たちに会えるという期待です。学生時代、海外の大学出身者や帰国子女などバックグラウンドの違う人たちと接する中で、「自分にないものを持っている人がたくさんいる環境の方が、自分の幅を広げられる」と感じていました。実際に入ってみても、誠実で優しい人が多いというのが会社の特徴だと感じています。
石川さん: 就活の軸は、正直最初から明確にあったわけではなく、「何者かになりたい」「今の自分のままではいたくない」という漠然とした成長意欲からスタートしました。目の前のことに120%で取り組める環境であれば結果はついてくるだろう、という考え方をしていたと思います。
その中で最終的に大事にしていたのは「環境」、そして突き詰めると「人」でした。
何をしている会社で、今後事業が伸びるかはあまり分からない。一方でその組織にいる人が、人間として尊敬できるかどうか、本気で事業に向き合っているかは自分の目で判断できる自信があった。「この人たちが魂を込めて向き合っている会社なら、自分も同じ仲間として120%で働ける」そう思えるかどうかを軸に、就活を進めていきました。
実は大企業の内定もいただいたのですが、それを辞退してフェズに決めました。学生時代にアメリカに留学しており、日本の一般的な就活のフローを経由せず、ボストンキャリアフォーラムなどを通じて就活をしていたこともあって、「大企業だから」「ベンチャーだから」という先入観自体があまりなく、フラットな選択肢の中から自分の納得できる会社を選べたのは、今思うとラッキーだったかもしれません。
ー入社前に期待していたことはありますか?
石川さん: 正直、業務の中身についてはあまり具体的にイメージできていませんでした。それよりも「この人たちみたいになれたらすごいだろうな」という、当時は少し雲の上の存在に見えていた社員の方々への憧れが大きかったです。
ー入社後、印象に残っている仕事や成長のきっかけになった経験を教えてください。
泉さん: 入社から3〜4年は住友商事でサミットの予算管理や業務支援といった主管業務を担当し、会社の意思決定がなされる経営会議にも傍聴として出席させてもらい、議事録を書いたり、わからないことはとにかく現場の方にヒアリングしたり、実際に店舗を見に行ったりする毎日でした。
その後サミットへ出向し、まずは店舗勤務からスタート。現場のリアルを2年ほど経験しました。その後バイヤーを2年半ほど担当し、ここが一番の自信がついた経験だったと思います。
スーパーは商品の入れ替えや価格変更の効果が翌日の売上にすぐ跳ね返ってくる、PDCAサイクルがとても早い世界です。数字がついてくる面白さと同時に、失敗も数多く経験しました。仕入れ条件をどれだけ良くしても、店舗の現場の皆さんに気持ちよく動いてもらえなければ売上にはつながらない。「会社としての正義」と「現場それぞれの事情」の両方を理解した上で動いてもらうアクションができないと成果は出ない、ということを痛感しました。実績を作ることができたという自信と、人の思いを考えながら動くことの大切さ、この二つを現場から教えてもらったことが、今の自分の強みになっていると感じています。
石川さん: 僕が印象に残っているのは、営業として1〜2年目に与えられた「裁量の大きさ」です。結果から逆算してプロセスは自分で組み立てるという任され方をしていて、実際には上司にうまくコントロールしてもらっていましたが、当時はある程度自分でやっていると思えていた。そのちょうどいいバランスがあったからこそ、受注できた・お客さまに喜んでもらえたという一つひとつの経験が、心からの成功体験になっていきました。
入社当初、当時の先輩が手がけていた案件をきっかけに、新しい事業部が立ち上がっていくのを間近で見られたことも、1年目で強く印象に残っています。
その部署で最初の1年半程仕事をし「自分たちが市場を創っている側なんだ」という感覚を持てた大きな経験でした。
一方で、2年目にUrumo Adsの営業に異動した後は8ヶ月ほど成果がまったく出なかった時期もありました。
後から振り返ると、多くの人に支えてもらって乗り越えたこの期間もとても貴重だったと感じています。
ーそれぞれの環境だからこそ経験できた「挑戦」は何だったと思いますか?
泉さん: 商社の場合、若手のうちから大きな会社の意思決定の場に同席できるチャンスがあることだと思います。社長も出席するような会議に、右も左もわからないまま末席で同席させてもらえる機会は、なかなかないと思っています。商売の部分だけではなく、出店戦略・人事労務・予算管理・総務など、会社経営に必要なあらゆる領域の議論を、何もわからないなりに間近で見て学ぶことができたと思います。営業の最前線に立つスピードはベンチャーには敵わないかもしれませんが、社会人としての土台となる「標準装備」を幅広く身につけられたのは、大企業ならではの環境だったと思います。
石川さん: ベンチャーの場合は、良くも悪くも型がない中で、進め方も裁量もすべて自分に委ねられることだと思います。ただフェズは、事業を引っ張ってきた個々のメンバーの経験値がとても高く、身近に目標にできるロールモデルが何人もいる環境でした。先輩たちの働き方を間近で見て学ぶ、電話や雑談まで盗み聞きしてメモを取る、そんな泥臭い学び方ができたのも、この環境だからこそだったと思います。
現在「事業開発」として仕事が出来ているのもまさに、この会社だったからこそ経験出来たことだと思います。
ーこれまでを振り返って、一番自分を成長させたと感じる経験は何ですか?
泉さん: 先ほどお話ししたサミットへの出向・バイヤー時代の経験が、やはり一番大きかったと思っています。メーカーさんや問屋さんなど、自分より何歳も年上で経験豊富な方々に育てていただき、たくさんのことを学ばせてもらいました。一方で、バイヤーとしては対等な立場で向き合い、時には厳しい交渉もしなければなりませんでした。そうした商談や交渉に加え、店舗のオペレーションまで、商売の一連の流れに幅広く関わらせてもらえたことは、なかなか得られない経験でした。数字が動く現場でたくさんの打席に立たせてもらえたからこそ、成功も失敗も人一倍積み重ねられたと思っています。
石川さん:先ほどお話ししたUrumo Adsの営業に異動してから成果が出なかった時期が、一番の成長機会だったと思っています。この期間を通じて、うまくいかない理由を他人のせいにせず自分ごととして振り返り、次に活かす「内省」の重要性を身に染みて感じました。社会人としての「壁にぶつかっても、あの時を乗り越えたから大丈夫」と思える経験があるかどうかで、次の挑戦への向き合い方がまったく変わってきます。
ー泉さんはフェズとの関わりを通じて、共通していると感じた点はありますか?
泉さん: 流通データを活用したビジネスの世界には多様なプレイヤーがいますが、その中でもフェズは、流通・小売側の解像度がとても高い人が多い会社だという印象を持っています。小売の現場を実際に経験した立場からすると、デジタルやマーケティングに強く、かつ流通への理解も深いプレイヤーは非常に貴重です。だからこそ一緒に仕事がしたいと思いましたし、あくまで個人の感覚ですが、人柄として居心地が良いと感じる人が多いとも感じています。
ーお二人が思う、会社選びで大切にしてほしいことを教えてください。
石川さん: 何がやりたいか、どんな会社に入りたいかを考える前に、「自分がどういう人間なのか」を突き詰めて考える時間を持ってほしいです。「なんとなく好き」「なんとなく嫌い」で終わらせず、なぜそう感じるのかを掘り下げていくと、自分の価値観の輪郭が見えてきます。それが言語化できれば、面接でも着飾らずに自分を伝えられるし、結果的にお互いにとって納得感のある選択ができると思います。
僕自身、就活で「納得できるまでやる」ことを大事にしていました。納得できないなら、その理由を深掘りする。そのために、いろんな社会人に会いに行って、自分を映してくれる鏡のような存在をたくさん見つけてほしいです。面接で聞かれたことにきれいに答えられなくても構いません。自分の言葉で、自分なりに考えたことを話せるかどうかの方がずっと大事だと思います。
泉さん: やりたいことがまだ見つからないという学生も当然いると思います。その場合は、逆に「一番嫌だと感じる瞬間」「心がざわつく瞬間」がどんな時かを探ってみるのもいいと思います。そこから少しずつ自分の大事にしている判断軸が見えてくるはずです。いろいろな人に会い、いろいろな会社を受ける中で、自分自身への理解も深まりますし、自分を理解してくれる人や会社にもきっと出会えます。焦らずに、そうした出会いを楽しみながら就職活動を進めてほしいですね。
ー最後に、お二人にとって「挑戦」とは何だと思いますか?
泉さん: 自分がやったことのない領域に、自ら踏み出していくことだと思います。フェズへの出向もそうですが、普段だったら踏み出さないような環境に飛び込むことで、初めて広がる知見がある。そういう機会があるなら、迷わず飛び込んだ方がいいと思っています。
石川さん: 僕にとっての挑戦は、自分の意志を持って進み続けることだと思っています。コンフォートゾーンに居続けることは楽ですが、それはもったいない。理想に対して前に進むために、できないことをできるようにする過程で自然と発生するのが挑戦なのだと思います。
もう一つ、学生時代から海外に住んでみたり、いろんな環境に飛び込んできたのは、完全なる好奇心からでした。振り返るとこの好奇心に従って動き続けてきたことで、結果的に色んな挑戦の機会を得ていたのだと思います。
うまくいかないことがあっても、他人のせいにせず自分ごととして受け止めた上で、それでも理想の状態に向かって進む方法を考え続けること。それが自分にとっての成長であり、そのプロセスに挑戦があるのだと感じています。
その結果として、責任の範囲、影響を与えられる範囲が広がっていくことはシンプルにかっこいいと思うからこそ、前に進もうと思えるんだと思います。
商社という大きな組織の中で意思決定の現場や現場実務を幅広く経験してきた泉さんと、ベンチャーで裁量を持ちながら挑戦を積み重ねてきた石川さん。環境はまったく違えど、二人に共通していたのは「与えられた環境の中で、自分から一歩踏み出し続けてきた」ということでした。
会社の規模や知名度ではなく、自分がどれだけ本気で挑戦できる環境かどうか。会社選びに迷ったときは、そんな視点を一つ加えてみてはいかがでしょうか。