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今回は、現在デザイナーとして活躍している森田 珠奈子さんのインタビュー記事です。「現場の近く」にいるデザイナーとして、具体的に取り組んできたことについて語ってくれました。
森田 珠奈子(もりた みなこ) プロフィール
Web制作会社にデザイナー・アートディレクターとして勤務。企業のブランディングデザインやオウンドメディアの企画・立ち上げなどに携わった後、HR Tech系企業の1人目デザイナーとして転職。社内外に対するコミュニケーションデザインに従事。
UI/UXに携われる環境を求め、2023年7月にファストドクターに入社。主にオペレーターや医師向けのプロダクトにおけるUI/UXを担当。
まずは、森田さんがファストドクターに入社を決めた理由について教えていただけますか?
ーー森田:転職する時に一番重視していた要素があって、それは「お互いの仕事を尊重・尊敬しあっているか」という点です。デザイナーは周りの方に協力や連携のお願いをすることが多いので、「協力するのは時間を取られて損だ」とか「会社全体ではなく個人で成績を上げたい」という社風が強い会社はできるだけ避けたいなと考えていました。
ファストドクターでは「Go,GEMBA」と呼ばれるバリューに表されているんですが、「サービスが提供されている現場や、サービスを提供するプロセスに介入し、一次情報から課題解決することが大事」という考え方があることを知りました。それで「ここなら大丈夫だ。お互いの仕事を尊重し合える環境だ」と思ったのが入社を決めた理由の一つです。
あと私は「大量の情報を扱う画面作り」をするのが好きなんです。採用選考の際に「コールセンターのオペレーターさんが使用するシステムの画面を作ってもらうかも」と言われ「情報量が多いデザインに関われそう」と思えたのも、意思決定した大きな理由でした。
現在、具体的にはどの事業に携わっているんでしょうか?
ーー森田:医療機関向けの「在宅医療事業」に携わっています。ファストドクターは生活者向けサービスという印象が強いかもしれませんが、実は医療機関を支えるサービスも多く展開しています。
私が担当しているのは、主に終末期の患者さんの「在宅医療」を担う医療機関に向けて、たとえば勤務時間外でも医師が呼び出しに対応できるようにする「オンコール」や、患者さんのお看取りを含む「往診」の代行、DXを活用した主治医とのカルテ共有などで、ハードな在宅医療機関の24時間体制を支える事業です。( https://oncall.fastdoctor.jp/ )
他にも、こちらは生活者向けのサービスですが、オンラインで受診できる心療内科・精神科( https://fastdoctor.jp/mental/ )と、ファストドクターのサービスをご案内するWebサイトを管理するチームにも参加しています。
いろんな事業に関わっているんですね。その中ではどのようなミッションを担当されているんですか?
ーー森田:「在宅医療事業」では主に、「オンコール代行」を行うオペレーターが患者さんやご家族からの相談内容を入力するシステム画面や、「往診代行」を行った医師が記入するカルテの画面のデザインを担当しています。このような「診察を支える人たち」のUXを向上させることが、私のミッションです。いわゆる “裏側の画面” は患者さんが目にすることはありませんが、必要な情報をきちんと患者さんから主治医へ、そして代行する往診医に引き継ぐのは、適切な診察を行うためにはとても重要で、最終的に患者さんの安心感や満足度に関わってきます。また、現場を支えてくれるオペレーターや医師が、なるべくストレスなく、気持ちよく働いてもらうためにも欠かせない仕事だと思っています。
森田さんが携わる前のサービスやデザインには、どのような課題があったのでしょうか?
ーー森田:ファストドクターでは多数の事業やサービスがありますが、特に黎明期はデザインに十分な投資ができなかったり、そもそも医療的な需要に応えることを最優先に、デザイナーの介入よりもスピード重視でリリースされたものも多くあるんです。当時は事業の立ち上げフェーズで、事業成長のためにスピードを出してサービスをリリースするために必要な取捨選択だったと思います。
具体的には、私が最初に携わった「在宅医療事業」のオペレーターが使用するシステム画面では、文字の大きさやレイアウトが最適化されておらず、視認性に課題がありました。例えば、患者さんの名前や年齢、救急搬送時に注意しなければいけないことなど、重要な情報がどこに書かれているのかをじっくりと読まないと見つけづらい画面になっている、という課題がありました。医療の現場において、このようなUX上の課題は、対応の遅れや情報の見落としといったリスクにもつながりかねません。だからこそ、現場の業務フローや認知の流れに沿った画面設計が必要だと強く感じました。
ファストドクターには、祖業である生活者向けの往診サービス「救急往診事業」があって、その後に医療機関向け「在宅医療事業」を開始しました。この2つの事業では同じシステムを使用しつつも、現場が取り扱う患者情報の内容や粒度も、オペレーションも異なっていたんです。そのため双方の事業がより正しく効率的に運用できるようにするには、「在宅医療事業」に最適化した画面へのリニューアルが必要でした。
その課題にはどのように取り組んでいきましたか?
ーー森田:まず最初にオペレーターの皆さんからの要望や課題を聞き取り、事業部側とPMにまとめてもらいました。例えば「この項目は必要ない」、「こういう機能を追加して欲しい」など、具体的な要望も上げてもらった上で、それらの課題をどういう手段で解決すべきかを、私も含めたプロジェクトメンバーで検討を重ねるという流れです。要件が明確になったら、私が実際に現場に入ってオペレーターの動きを把握してから画面に落とし込み、提案していくという手順で進めていきました。
具体的にどのような狙いで、どのようなアクションを打たれたのですか?重視した指標や、ステークホルダーとの協働について伺いたいです。
ーー森田:現場に介入した当時、改善すべき指標として考えられていたのは、以下の3つでした。
・オペレーションのミス率
・オペレーション全体にかかる時間
・新しいオペレーターさんが入った時のオンボーディング(研修)にかかる時間
とはいえ、これらをデザイン改善の中で厳密に数値的に計測するわけではなく、あくまで「初めて見る画面でも、今の業務を同じように行えるか」を軸に進めました。
そのためにはまず、私自身がオペレーターとして働けるくらい業務への理解度を上げようと考え、研修用のマニュアルを読み込み、現行画面の操作を把握したうえで、実際のオペレーションの様子を見学させてもらいました。
画面デザインのフェーズでは、Figmaを使って実業務をなるべく再現したプロトタイプを作り、ワイヤーフレームの段階で1回、デザイン反映段階で2回ほど、ユーザビリティテストを実施しました。オペレーターの方が使用する画面は患者さんやご家族、あるいは医療機関の方々と電話をしながら操作するので、「じっくり見れば気づけること」を業務中では見落としがちなんです。そういった実業務でミスが起きそうな“穴”をユーザビリティテストを通してひとつひとつ丁寧に潰していきました。
実際のリニューアル後の画面デザインイメージ(文字の大きさ、レイアウトが最適化されている)
このような取り組みの結果、どのような変化がありましたか?定量的な成果や、ユーザーからの反応などを教えていただけますか?
ーー森田:特に、指標にしていた「オペレーション全体にかかる時間」は確実に改善しました。数ヶ月にわたって、1案件あたりのオペレーション時間を計測していましたが、画面リニューアル後、患者さんやご家族からの着電から往診代行が確定するまでの時間が2分ほど短くなったと教えてもらいました。オペレーターの皆さんからも「画面操作が楽になったと実感する」「細かいミスが減った」など、直接お礼の言葉もいただきました。
副産物としては、新規機能を開発する際に「テストがしやすくなった」と言われたことは意外でした。でもそれだけ「誰がどう使ってもわかりやすいUIになった」ということかもしれません。
この改善の過程で、森田さん自身が感じたことを教えてください。
ーー森田:画面上の情報は、直接患者さんの身体や生命に関わる可能性がある重要なものなので、「この情報は優先度を落とそう」という意思決定も安易にはできません。現場のオペレーションに関わる人たちがPCで見られるだけの狭い画面を、どのように使うべきかは頭を悩ませました。同時に、自分の仕事が、直接的に医師や患者さんと繋がっているという実感がありました。
また現場のオペレーターの皆さんからも「今まで起きていた問題が起きなくなった」という話を聞くとすごく嬉しいです。電話対応をしながら操作するという状況の中では、どうしても見落としてしまう項目があることは頭では理解していたつもりですが、実際に作った画面をテストしてみると想像していた以上にオペレーターさんの視線が狭い範囲に集中していることに気づきました。実際に使う状況を踏まえたUI設計の難しさとその面白さを感じました。
最後に、これから森田さんが向き合っていきたいことについて教えてください。
ーー森田:ファストドクターにはまだ、デザイナーが入っていない“裏側”の画面がいくつかあるので、これをもっと使いやすくしていきたいです。そうした画面を使うオペレーターの皆さんや医師もファストドクターを形作る大事な方たちですから、使うツールの側面からも「働きやすい会社だ」と感じてもらえるようにしたいですね。
森田さんありがとうございました。具体的なBefore/Afterとその過程をお聞きし、デザイナーが介在することでのサービスUXの向上や、それによる効果を手触り感を持って感じられることがわかりました。
少しでもご興味をお持ちいただけた方はぜひ以下よりファストドクターの扉を叩いてみてください!