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「クリエイティブで勝負する」
その熱さを持ち続け、次々と新サービスを生み出し続けるサイバーエージェント。それらサービスを手がけるデザイナーは、どんなキャリアを歩んできたのでしょう。
入社6年目、サイバーエージェントの執行役員になった佐藤洋介。
入社1年半、約10年勤めた制作会社を辞めてサイバーエージェントに飛び込んで来た、漆原裕貴。
漆原の一次面接で、採用を即決したという佐藤は、同じデザイナーとして何を評価し、何を期待したのでしょうか。デザイナーとしてもタイプの違う二人の会話からは、サイバーエージェントのデザイナーの未来とキャリアの可能性が見えてきました。
佐藤洋介 株式会社サイバーエージェント 執行役員、クリエイティブ統括室室長。 制作会社に新卒入社し、2012年に株式会社サイバーエージェントに中途入社。現在はクリエイティブの執行役員として、各サービスのUIデザインを監修。
漆原裕貴 株式会社サイバーエージェント UI/UXデザイナー。 制作会社に新卒入社し、約10年間クライアントワークでWebサイト制作等を経験。2016年株式会社サイバーエージェントに中途入社。現在は株式会社マッチングエージェントに出向。
デザイナーとしての手応えを求め、自社サービスに関わることを決めた
――子どもの頃からデザイナーを目指していたんですか?
漆原:もともとは美術が好きだったんです。学級新聞や文化祭の巨大なアーチ制作を担当したり、自分のバンドのロゴやサイトをデザインしたりしていましたが、絵で食べていくのは難しいだろうなと漠然と思っていたんです。だったら当時没頭していたWebサイト制作を仕事にできたらと、デザイナーを目指すことにしました。自分の作りたい作品を作るというより、誰かのために制作する、いわゆるクライアントワークがしっくりきたので、制作会社に入社することに迷いはなかったです。
佐藤:10年近く勤めたんだよね?
漆原:そうです。最初は「この会社をデザインの力で大きくしたい」と愛社精神で約2年間下積みをして、徐々に担当するお客様も増え、指名の案件ももらえるようになっていきました。毎日があっと言う間に過ぎていき、気がついたら30歳目前。このまま忙しく働いているままでいいんだろうかと思い始め、転職に踏み切りました。
佐藤:彼の履歴書とポートフォリオを見た時から、魅力的な人材だなと思ったんですよ。制作会社はお客様ありきの仕事なので、どうしてもスケジュール管理が難しい。自分がやりたいようにアウトプットもできないし、歯がゆさを感じている人も多いんです。そのなかで10年もキャリアを積んできただけで根性があるし、作るデザインも面白かった。
漆原:精神的にはかなり鍛えられましたね。大きな会社ではなかったので、デザインだけでなくプログラミングやお客様との打ち合わせなどもしなければいけませんでした。最初のうちはプログラマーの友人に電話したりして、なんとか締切までに実装していました。その時にデザイン以外のことも任せてもらえた経験は、今も役に立っています。
――佐藤さんも前職は制作会社のデザイナーですよね。なぜ転職されたんですか?
佐藤:自分が作ったものがリリースされ、どんな人に届いていて、どんなふうに感じたかという手応えが欲しかった。だから転職先はクライアントワークでなく自社サービス系の会社を中心に探していました。
漆原:経験を積むほどデザインを取り囲む環境が気になりますよね。どう作られているか、どう動いているか、どういう企画が元になっているのか……それを気にしないとデザインできなくなってきます。見た目だけでなく、デザインを取り巻く環境がどう構築されているのかをもっと突き詰めたかったので、僕も自社サービスを成長させていく会社に転職しようと思っていました。
制作会社での経験を活かし、世の中を変える
――サイバーエージェントを選んだのはなぜですか?
佐藤:僕が転職活動をしていた時期は、自社サービスを運営している事業会社が注目されていました。これから成長していく領域の会社なら、クライアントワークで培ってきた事が活かせるかなと思ったんです。自分の作ったサービスで流行をつくるなど、世の中を動かしていくことにデザイナーとして挑戦してみたかった。作ることはもちろん、先の運用まで自分が責任を持って「これが自分の作ったのサービスなんだ!」と言いたかったんですよね。
漆原:自社サービスを運営している会社は、サイバーエージェントもそうですが、自分達でオーナーシップをもってビジネスやリソースに投資できますよね。そうして自分たちの力で誰も知らなかったサービスが有名になり世の中を変えていく……その過程に僕も携わってみたいと思いました。また、サイバーエージェントはジャンルにとらわれない多様なサービスがたくさんあることも魅力的でした。それまでいろんな業界の仕事をしてきたので、サービスが一つしかない企業だと物足りないかもしれない。実際に入社してみると、サービスや社員数が多いだけでなく、横軸のコミュニケーションも多いので、いろんなデザインに触れられてすごく刺激的です。
佐藤:社内の風通しがいいよね。それは僕も入社前から感じましたね。面接をしてくださった人事の方に連れられてフロアを歩いていると、いろんな部署の人が挨拶してくるんですよ。社員ひとりひとりが何をしているかがお互いに分かっていて、みんなが笑って仕事しているなというのがサイバーエージェントの第一印象でした。
漆原:僕は、それをシュガー(佐藤)さんに感じましたよ。入社面接ではデザイナーらしくラフに接してくれて、すごく居心地が良かったです。エレベーターで一緒になる人たちも明るくて、風通しの良い印象を受けました。
クライアントワークでは見えなかった世界が見える
――佐藤さんは漆原さんに何を期待して、採用したんですか?
佐藤:根性もあるし、やる気もあるし、こだわりもあるし、なにより10年間制作会社で培ってきたデザイン力の高さが、組織の刺激になるなと感じました。その予想通り、入社直後の社内コンペで周囲を驚かせましたね。漆原の作ったロゴを見て、若手社員が爪を噛むんですよ。見た瞬間にクオリティがとても高いことがわかるし、それまで別の文化でやってきたからこそ、中にいるデザイナーにはできないことができた。デザイナーは自分の作品をアウトプットして周囲に存在を示せるので、一気に名前が知られますね。最初はみんな「どんなヤツがきたんだ?」と遠巻きに見ていたけれど、そのうち興味津々に近寄っていく。まるで転校初日の学生みたいです。
――入社後、漆原さんはマッチングアプリ『タップル誕生』の担当になります。その配属意図は?
佐藤:制作会社での経験が豊富でスキルの幅が広いので、まさに成長過程にある『タップル誕生』の戦力になると考えました。デザインの基礎がしっかりしているので、サービスの根幹を任せられます。彼なら21世紀を代表する会社のサービスとして成長させてくれる期待がありました。サービスを良くしていく原動力の起爆剤になって欲しかったので、僕の判断で配属したんです。本人はおそらくマッチングサービスがやりたかったわけではないでしょうけど。
漆原:まあ、そうですね(笑)でもシュガーさんが僕の実績や人となりをみて決めたのなら、そこが適している場所なんだろうな、と思ってすぐに受け入れました。
――クライアントワークと自社サービスの違いは感じましたか?
漆原:クライアントワークは基本的にすでに計算された中で何を作るかという考え方なんですが、今は「そもそもここが足りないよね」という根本のディスカッションから始められるので、すごく刺激的です。あと、その場ですぐにプランナーやマーケッターが数字分析やでの市場調査などもしているので、どういうふうにサービスが成長していくかを間近で見られて、勉強になりました。
佐藤:売上やユーザー数が目標に届くかどうかで、チーム全員が一喜一憂したりするよね。デザイナーにとっても、本気でサービスの成功のために奮闘している人達の想いを間近で見るのは、おそらく制作会社ではなかなか味わえない経験でしょう。一緒にサービスを作っていく感覚があるよね。タップルは50人近くいるけど、すごく仲良いでしょ?
漆原:仲良いですね。最初はマッチングサービスにまったく興味がなかったんですが、その日一日の売上にみんなで一喜一憂できて今では面白くてやりがいを感じています。
佐藤:サイバーエージェントのクオリティをしっかり牽引できるようなサービスになってきたよね。まだまだやり足りないところもあるけれど、新しいことも手がけられている。それは漆原がチームに入って、これまで整っていなかった根幹の部分がしっかり整備されてきたからだと思うよ。
グループ内のデザイナーは、仲間であり同じ市場のライバルでもある
――デザイナーにとって、サイバーエージェントと他社の違いは?
佐藤:各々に決裁権があって、個人の裁量がとにかく大きい。基本的に『やってから持ってこい文化』なので、「これやっていいですか?」とは聞かない。各自で考えて動いた結果、良ければすごく評価されるし、ダメでも「一緒に取り返そうぜ」となります。スケジュールも自分で調整できるし、心も時間にも余裕が生まれます。この会社規模でフットワークが軽くいられるのは珍しい。デザイナーのストレスも非常に少ないですね。
漆原:それは僕も実感しています。みんな前向きで情熱的。あと驚いたのは、サービスを越えてデザイナーの横のつながりが強いことですね。
佐藤:マッチングアプリだけでも社内に複数ありますからね。それらを集めてユニオン化しています。デザイナーの定例会議では、各自が作ったものを持って来て「これで売上げがこれくらい伸びたよ」「これで女子からの返信率が上がったんだ」と情報や意見を交換する。競合のサービスが横並びで自分の案を見せ合うなんて、一般的には考えられないですよ。誰もが同じグループ企業の仲間であり、ライバルです。僕もマネジメントはするけれど、社内コンペにはみんなと同じように参加するようにしています。デザイナーとしてはみんな対等で、いいものを作る人が尊敬されるのが健全です。
漆原:デザイナーとしての刺激は強いですね。社内コンペもあるし、他サービスとのコラボレーションができるのも楽しい。たとえばAbemaTVと一緒にプロモーションの仕掛けを考えることもよくあります。これは大きな強みですね。
制作会社での経験を評価したい
――どんな人材を求めていますか?
佐藤:「絶対にこれがやりたい」という心意気ある方もいいですが、「どんな仕事でも任せてください」とか「僕を採用しなくていいんですか?」と、自信のある方がいいですね。こちらもこの人を活かすためにどうしよう、と腕が鳴ります。特に制作会社出身の方は、クライアントワークでいろんな業種のデザインを成立させてきたという経験を評価したいです。デザインを成立させるスキルは一長一短では身に付きません。たとえば漆原に「動画のディレクションしてみて」と頼んだら、やったことがなくてもそれなりのものを作ってくるんですよ。それは漆原がこれまで培ってきた技術や経験値の複合がアウトプットとして成立させているんです。
漆原:確かに、目の前のことには「できません」とは言わずになんとかしようとはします。でも当然その道のプロには敵わない。僕個人としては、ベースの技術はもちろん、特定の技術に秀でた人に入社してほしいです。色々な角度で技術やセンスを高め合い、同じサイバーエージェントのチームとして総合力で他社より圧倒的に前を走りたいですね。
佐藤:なるほどね。結局、目指しているのは、デザイナー達がサイバーエージェントのブランディングを背負っていることをすごく誇らしく思えること。「サイバーエージェントのデザイナーなんだ、すごいだろ」と胸を張れるような企業になりたい。そのためには漆原のように、中途入社の方にたくさん来ていただいて、今まで培った技術でその先のクオリティを作ってほしい。僕らの目指すべきクオリティは、アップデートし続けていかなければいけないので、常に先を見て一緒にサービスを作っていける方と働きたいです。