長年にわたり、1on1のミーティングをすべきなのか悩んでいるお客様をたくさん見てきました。実施したくない理由として、マネージャーが「忙しすぎる」、「メリットを感じない」、「時間がかかりすぎる」、「いつどのように実施したらよいかわからない」などといった声を聞きます。
確かに1on1ミーティングは実施だけでなく準備やフォローアップなど、他の仕事の合間や空いた時間に行うべきものではありません。
しかし、私たちの経験からすると、1on1のミーティングのために費やす時間は投資であり、無意味なものではないのです。
正直に向き合ってみよう:
私達が1on1ミーティングをおすすめする大きな理由として、社員の抱える問題が大きくなる前に未然に対処することができるからです。事が大きくなってからでは遅く、あの時もっと早く当該社員に向き合っていればよかったと後悔するお客様の姿を、私たちは何度も見てきました。
社員が直面する問題として、基本的には3つのタイプがあります:
1.ポリシー勤務態度の問題(例:遅刻が多い、社内情報を悪用をする、二日酔いなどでしょっちゅう休むなど)
2.パフォーマンスの問題(例:目標を達成できない、不品行な行動をとるなど)
3.個人では対処がむずかしい非常に大きな問題(例:ハラスメントや仕事上のストレス、同僚との人間関係の悪化、プロフェッショナルでない雰囲気の醸成など)
1on1のミーティングを効率的かつ有意義に行うには時間と労力がかかりますが、長い目で見れば、それ以上に時間とリソースを節約できます。
特に今の世の中のように、社員が自宅やコワーキングスペース、オフィス、さらには国をまたいで働くような時代には、適応性と柔軟性が非常に重要です。
1on1ミーティングは、社員を支え、育てるための基盤や仕組みを提供してくれます。(ほかのメリットは前回のコラム「1on1ミーティングを怖がらないで~成功させる方法~」で説明しました)
しかし、これらのミーティングの重要性はいくら強調しても足りません。なぜなら自分の仕事に対して幸せを感じ熱心に取り組む社員は会社に長く留まる傾向があり、 a) 離職率の低下に役立つ(Gallup社によると、新入社員の平均雇用コストは年間給与の1.5倍)からです。
そしてある調査によると、b)企業の利益を最大で21%増加させることができるからです。おまけに、パフォーマンスの問題が早期に発見されるため、チームのパフォーマンスも向上します。
1on1のミーティングを行うことがあなたの利益になることをお伝えしました。
次は、これからあなたが何をすべきかについて、もっと詳しく見てみましょう。
1on1のミーティングの前
1on1ミーティングの効果を最大限に引き出すためには、事前の準備が重要です。
ここでのキーワードは、「パフォーマンスを記録する」ことです。
これは、マネージャーが部下の日々のパフォーマンスについて定期的にメモを取ることができる貴重なツール「パフォーマンス・ジャーナル」を利用すると便利です。
このメモには、スタッフのパフォーマンスに関するポジティブな情報だけでなく、問題や懸念など、ネガティブな情報も含まれていなければなりません。
もう一つの重要なポイントは、SMART KPIを設定することです。SMART KPIは、従業員のパフォーマンスに関わる非常に重要な指標です。
SMART KPIとは
・Specific:具体的であること。具体的な目標、数値、望ましい結果を持つべきである。
・Measurable:測定可能であること。目標が達成された場合、結果はどうなるか(例:XXの増加率)
・Achievable:達成可能であること。実現不可能なものではなく、社員の努力を必要とするものであること。
・Related:関連性。会社全体の目的に沿った目標であること。
・Time-bound:中間結果と最終結果の両方に具体的な日付が含まれていること。
目標設定されることで目標に集中、社員のパフォーマンス測定を可能にします。
また、自分に何が期待されているのか、何に向かって努力すべきなのかがわかるので、社員のモチベーションが上がる指針となります。
これらの目標を設定したうえで、実際の1on1ミーティングの計画を進めることができます(1on1ミーティングの理想的なフレームや設定については、前回のコラムをご覧ください)。
また、マネジメントに関するYouTubeプレイリストはこちらからご覧いただけます。
会議の進め方、社員へのフィードバックの仕方、生産性を高めるための会議の進め方など、多くの情報を提供しています。
実際の1on1のミーティング
この部分は以前のコラムでも紹介してきましたので、ここではあまり詳しく触れず、実際のミーティングでの重要ポイントだけ改めてお伝えします。
1.事前準備を怠らない :ミーティングは事前準備ですべてが決まります。 事前に準備した情報を用いてよい質問で会話をリードし、上司と部下が安全かつ自由にコミュニケーションできるように、ミーティングの場所も注意を払う。
2.傾聴する:上司の独演会ではなく、上司と部下が相互に対話をして、双方のフィードバックを受けるべきものと念頭に置く。
3.急かさない:社員が急かされている、迷惑をかけていると感じないように、必要な時間を取ること。2時間である必要はなく、15分である必要もありません。必要な時間は個々の社員によって異なりますので、平均1時間を目安にするといいでしょう。
1on1のミーティングの後
また、1on1のミーティングが終わっても、その後のフォローアップは欠かせません。
1on1ミーティングはちょっとしたイベントのようなものであり、それが終われば自分の仕事に専念できるという誤解が広く見受けられます。
年に1~2度会って話をするだけで終わりではなく、これはあくまでもプロセスにすぎないのです。
何がうまくいっているのか、何を改善すべきなのか、必要な変更は何かについて、継続的な対話が必要なのです。
このミーティングは、経営者と社員の日々の仕事や関係を反映したものなので、正しい理解のうえで行われていれば、驚くようなことは何もありません。
最終的には、定期的にミーティングを行い、ミーティングで出てきたトピックや問題について連絡を取り合うことで、次のミーティングの準備にかかる時間を短縮し、その間の時間を最も効率的に使うことができるのです。
1on1ミーティングは“ゴールではなく、正しい道を歩むための旅であること”と理解するのが成功の秘訣です。
いかがでしたか?