近年、リモートワークや在宅でできるお仕事がとても人気で、そのような求人には多くの応募者が集まります。
コロナ禍を機にリモートワークが新しい働き方として導入され、生活との両立が取りやすいとして多くの企業で定着してきました。
その反面、最近ではアメリカを始めとした海外の企業では、生産性が低下するという理由でリモートワークの制度を取りやめるという動きもあるようです。
IT業界といえば、パソコン一台あればできる仕事で、「リモートワークOK!」というイメージを持たれている方もいるかもしれません。
しかし、実はそれは必ずしも正解ではありません。リモートワークができないITのお仕事も数多くあるのです。
今回は就職活動や転職活動をされている方向けに、ITエンジニアのリモートワークの実態や必要なスキルについてお話します。
IT業界のリモートワークの実態
2020年におきた新型コロナウイルス感染症をきっかけに、多くの企業がリモートワークを導入し、世の中に普及しました。
感染症は人が密集すると感染拡大する可能性があるため、物理的に距離を取り、なるべく家からでないことが一つの対策となります。
そのため、仕事に関しても極力在宅勤務やリモートワークで進めることで、感染拡大を防ごうとしてきました。
それができた背景には、ITツールの発展による、オンラインでの業務効率化があります。
Zoomに代表されるようなリモート会議システムや、クラウド環境を使った業務の進め方、遠隔で社員のパソコンを覗けるような機器管理のシステムなど、ITの発展がリモートワークができる環境を支えています。
働く側としても、家事に時間を割くことができたり、通勤する必要がなくなり時間的にも精神的にも余裕を作れるなど、ワークライフバランスを考えるうえでもメリットは多くあります。
企業としても土地や地域に縛られず人を採用できるので、他県や海外に住む人材を活用することができるなど、新しい事業経営の形に繋がっています。
IT業界も大きな流れとしては他の業界と変わらず、コロナ禍ではリモートワークや在宅勤務が取り入れられていましたが、収束に向かっている現在は企業や職種によって様々になってきました。
業種や業務内容によって、リモートの適用可能性が異なるため、必ずしもIT企業に入社すればリモートワークができるというわけではありません。
ITエンジニアの種類ごとのリモートワーク事情
リモートワークに向いているか、向いていないかをITエンジニアの職種ごとに大まかに分けてみましょう。
もちろんどんな仕事をするのかは企業によって異なるため、絶対にリモートワークができるということではありませんが、一般的な傾向として理解頂ければ、自分のキャリアを考えるきっかけになるかもしれません。
リモートワークに向いているITエンジニア職
1. ソフトウェアエンジニア
主な業務内容: アプリケーションやシステムの設計・開発・テスト
リモートに向いている理由: コーディングや設計業務は基本的にPC1台とネット環境があれば可能。Gitやクラウドサービスを活用して、チームでの開発もリモートで完結しやすい。
2. Webエンジニア・フロントエンドエンジニア
主な業務内容: WebサイトやWebアプリケーションの開発
リモートに向いている理由: 開発やデザイン作業はオンラインで完結可能。デプロイもリモートアクセスで対応できる。
3. データエンジニア・データサイエンティスト
主な業務内容: データ分析基盤の構築、機械学習モデルの開発
リモートに向いている理由: クラウド環境(AWS、GCPなど)を活用することで、データ処理やモデル開発をどこでも行える。
4. Webデザイナー
主な業務内容: UI/UXデザインやWebサイトのビジュアル制作
リモートに向いている理由: Adobe XDやFigmaといったツールを使うことで、リモートでもスムーズに作業が可能。
リモートワークが難しいITエンジニア職
1. ネットワークエンジニア
主な業務内容: ネットワークの設計・構築・保守
リモートが難しい理由: サーバールームやデータセンターでのハードウェア設置や保守作業が必要なことが多い。
2. ハードウェアエンジニア
主な業務内容: 製品の設計・試作・テスト
リモートが難しい理由: 実際の機器を操作したり、テストしたりする業務が中心で、現場での作業が必須。
3. セキュリティエンジニア(インフラ寄り)
主な業務内容: セキュリティの監査や対策、侵入テスト
リモートが難しい理由: 高いセキュリティが求められる環境(例: 官公庁、金融機関)では、物理的な現場での作業が必要になることがある。
4. ITサポート・ヘルプデスク
主な業務内容: システムトラブルの対応、ユーザーサポート
リモートが難しい理由: ユーザーの手元のデバイスやネットワークトラブルへの対応で、現地サポートが求められることがある。
あくまで私の一意見ですが、プログラミングスキルとパソコン1台あればできるような開発やデザイン系の仕事については、リモートワークで勤務している人が多いイメージです。
チームで仕事をしている場合でも、上司に自分の成果をオンラインで確認してもらいやすいという要素もあるかもしれません。
ただし、週に何日かは出社日を設けるなど、対面でのコミュニケーションを取ることでメンバー間のすれ違いがないようにしている企業も多いようです。
反対に、物理的なIT機器を触る機会があるようなITインフラ系のお仕事や、機械を扱うハードウェアの開発の仕事は、リモートで仕事をすることは難しいため、自社に出社したり現場に足を運ぶ必要があります。
しかしクラウド上でネットワークを構築したり、リモート接続でサーバーを運用監視することもあるため、基本的に在宅勤務で仕事をし、必要なときだけ出社するITインフラ系のエンジニアもいます。
なお、営業職や事務職に関しては企業の方針やセキュリティの都合にもよるので、一概にリモートワークができるとは言えません。
例えば当社の場合、営業職の者は基本的に在宅勤務で必要な時のみ出社していますし、事務職も基本は出社としながら、都合に応じて在宅勤務の日を設けるという働き方をしています。
企業活動が円滑に進むということを優先しながらも、働きやすさも得られるよう、柔軟な考え方で対応しているといった形です。
ただし、冒頭でも述べたように、生産性や効率の低下を理由に米国の企業を中心に在宅勤務やリモートワークを廃止や縮小する企業も増えてきました。
日本でも同じような動きが見られるため、今後もリモートワークの文化が続くかどうかは誰にもわかりません。
中には出社の必要がなくなったため、田舎に家を買って引っ越したのに、再び出社を求められるようになってしまい、移住せざるを得なくなったという話も聞きます。
リモートワークができる仕事に就くには?
リモートワークで働くためには、当然リモートワークを制度として取り入れている業界や企業に就職することが必要ですが、本当に自分にその働き方が向いているかを考える必要もあります。
自由度が高そうなリモートワークに憧れていたけど、いざやってみると一人で仕事をしている状況に孤独を感じてメンタルにストレスを抱えてしまったり、仕事に集中できなかったりと、自分には向いていないと感じることもあるでしょう。
IT業界においてもリモートワークを円滑に行うためには、プログラミングスキルやパソコンスキルのような技術的なハードスキルだけでなく、以下のようなソフトスキルも求められます。
1. 自己管理能力
リモートワークでは上司や同僚が近くにいないため、タスクの優先順位を付け、自律的に作業を進める能力が求められます。
毎日のタスクリストを作成したり、Todoリスト、タイムマネジメントツール(例:Trello、Notion)などを活用するなど、自分で仕事の管理ができる力を身に着けましょう。
適切なタイミングで上司や同僚と進捗をすり合わせることも必要となってきます。
2. コミュニケーション能力
リモートでは対面での意思疎通が難しくなるため、明確かつ簡潔に自分の意見や進捗を伝える力が必要です。
それができないと「言った・言ってない」や認識のズレなどの問題が起きてしまいます。
相手が身近にいない分、曖昧な表現を避け、要点を簡潔に伝える意識が必要です。チャットツール(例:Slack、Microsoft Teams)やビデオ会議(例:Zoom)のエチケットを学ぶことや、相手の話を丁寧に聞く傾聴の姿勢が求められます。
3. 問題解決能力
リモート環境では、困った時にすぐ他人に頼れないため、問題を自分で分析・解決する能力が必要になります。
問題が起きた際に、まず自分でリサーチや試行錯誤を行う習慣を持ち、どのように解決すべきかを自分で考える力を身に着けましょう。
ロジカルシンキングのトレーニング(例:「Why思考」や「原因と結果の分析」)をしたり、過去に解決した課題を振り返り、成功パターンを記録することで、鍛えることができます。
ただし、新人のうちは自分の判断だけで行動するのはミスの元です。ちゃんと上司に実行していいかの確認を取って進めるようにしましょう。
それにより、責任の分散を行うことにもなります。
4. デジタルリテラシー
リモートワークでは様々なオンラインツール(ビデオ会議、コラボレーションツールなど)を使いこなす必要があります。これには、基本的なIT知識だけでなく、新しいツールへの適応力も含まれます。
また、ツールの使い方を学ぶだけでなく、セキュリティリスクに対する知識も高めておかないと、企業の機密情報や個人情報の流出といった、大きなセキュリティ事故に繋がりかねません。
自宅やカフェなどリラックスできる場所で仕事をするときこそ、情報の取り扱いにはいつも以上に気をつけなければなりません。
5. 自己モチベーション維持力
リモート環境では孤独を感じやすかったり、気の緩みが発生しやすくなってしまいます。
そもそも人から見られていないと真面目に仕事ができないという人は、リモートワークよりも、社内に出勤して働くほうが向いているかもしれません。
リモートワークを取り入れている企業の中には、社員がどれだけ仕事をしているかを遠隔で覗き見ることができる端末管理システムを導入しているところもあります。
サボっていてもバレないと思っていても、実はバレていて後で怒られたなんていうことがあったり、求められる成果が達成できていないときに、上司から指摘されるということもあるでしょう。
定期的に休憩を取り、バランスの取れた働き方を心がけたり、チームメンバーや同僚と積極的にコミュニケーションを取ることも、モチベーション維持には必要です。
以上は一例ですが、IT業界に関わらずリモートワークを円滑におこなうにあたって必要となるソフトスキルです。
仕事をしながらでも身につけることができるものなので、自分に不足しているスキルを特定し、少しずつ取り組んでみるのもいいでしょう。
リモートワークはあくまで働き方の一つ
今回見てきたように、IT業界ではリモートワークが浸透しているとはいえ、全てのエンジニアが在宅勤務できるわけではありません。
まず、自分が目指す職種の特性や求められるスキルを理解し、適切なキャリア選択を行うことが重要です。
その上で、必要なソフトスキルを磨いていくことで、リモートワーク環境でも効率的かつ快適に働けるようになるでしょう。
しかし、あくまでリモートワークは働き方の一つでしかありません。
「在宅のほうが楽そう」や「自分の時間を作りたいから」と働き方を前提として仕事を選ぶ前に、本当に自分が興味を持って続けられる仕事なのか、自分の将来にプラスになる仕事なのかを考えて仕事選びをしてほしいと思います。
どんな仕事でも成長して周りから認められると、自分で働き方を選ぶことができるようになってくるものですし、組織に拘らないフリーランスや事業主という選択もあります。
それに、いきなり「方針が変わったので来週から全員出社してください」といわれる可能性だってあるかも……?
ぜひそういったことも考えて仕事選びをしてほしいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。