2025年4月、Fracta Leapは新宿御苑界隈でオフィスを移転し、設立5年の節目に新しいスタートを切りました。このタイミングで移転を決めた背景や、新しいオフィスの考え方について、北林CEOに聞いてみました。
プロフィール
北林 康弘
Chief Executive Officer
経営戦略コンサル、事業再生支援、ディープテック系スタートアップのCFOなどを経て、Fractaに参画。Fracta米国本社でCFO 兼 日本事業の責任者を務めた後、2020年にFracta Leapを設立し、同社CEOに就任。
目次
アプリケーション開発に加え新規事業が本格稼働
生み出したいのは個人の接点
ブレークスルーの助けになるもの
普通じゃない「ヘンな生態系」として
アプリケーション開発に加え新規事業が本格稼働
オフィスの移転は会社の状況やフェーズが表れるものですよね。今回のオフィスの移転を通して、私たちFracta Leapの今と思い描いているこれからの姿を伝えられたらと思っています。まず移転を決めた理由について聞かせてください。
北林:
「いちばんシンプルな理由はメンバーが増えてきたことです。以前のオフィスに移転したときは10名ちょっとだった社員が30名近くなって、キャパオーバーを解消する必要がありました。それに以前のオフィスは構造上大きく2つの空間に分かれてしまっていたので、みんなが壁で隔てられないようにしたいと思ったことも理由の一つです。一方で、だだっ広い空間で距離が離れすぎるのも良くないので、1.5倍くらいの広さにしました。家具を入れると、『あれ? もうちょっと広くてもよかった?』みたいな“引っ越しあるある”が出てきていますけど(笑)」。
ミーティングの数も多くなっていましたよね。以前のオフィスでは社員がミーティングのために空いている場所を探している姿も見かけました。
北林:
「ミーティングの数は確かに増えましたね。これは事業の進捗によるところも大きいです。パートナーである栗田工業とともに進めてきた各種開発に加えて、自社で超純水製造装置の提供を行う『次世代EPC事業』や、一般産業の中堅企業向けにサブスクリプションを提供する『NX(Next Transfomation)事業』といった新規事業も本格的に動き出すなど、会社が新しいフェーズに入ってきたためです。あとは、今後、メーカーや商社といった新しいパートナーとの接点も多くなっていくので、迎えられる応接室も必要です。そういったスペースを確保することも移転を決めた理由です」。
生み出したいのは個人の接点
デスクや会議スペースのレイアウトについては全社員でのワークショップやリーダーシップメンバーでの話し合いを経て、この形になってきました。
北林:
「そうですね。数年に1回、こうやってみんなで自分たちのオフィスのあり方を話し合って、できることを拡充したり、働きやすいように制度をアップデートしたりする機会は大事だと感じました。話し合いながら自分たちで脱皮していくような機会は、これからも意図的につくったほうがいいと思っています。結果的に新オフィスは気軽にディスカッションできる場所をだいぶ増やしました。お客様とのミーティングに使える2つのクローズドな会議室だけでなく、気軽に話し合えるファミレス席と呼んでいるブースもあります。執務スペースと会議スペースは完全に壁で分かれておらず、どこかで誰かが話している声が聞こえるくらいのオフィス構造です」。
壁で隔てないことや、話し合える場所を大事にしたレイアウトには、北林さんとしてはどんなことを期待していますか?
北林:
「業務の情報共有だけでなく、非業務的なコミュニケーションで、個人同士の接点が生まれてくれたらと思っているんです。いろいろな経験を経て入社しているFracta Leapのメンバーは、個々に芯があって奥行きがある。少し話すと『え、そんなことを過去にやっていたの?』ということがどんどん出てきたりする。スキルやキャリアの相談でも、音楽や映画の話でもいい。いろいろな個人単位での接点ができて、そこから創発的な盛り上がりが生まれればと思っています」。
ブレークスルーの助けになるもの
個人と個人の関係をそこまで大切に考えているのはどうしてでしょうか?
北林:
「販売するものや量が決まっていて、その達成を目指して直線的に頑張るような組織だったら、『今日はこれだけ売れました!』と達成感を分かち合うようなコミュニケーションでよいかもしれません。でも私たちがやっている仕事は、一回つくったものをつくり直さないといけないとか、考え直さないといけないとか、事業によっては何をやっていくかから考えるようなタイプの仕事。非線形的にいろんなことを考えてブレースクルーをめざす業務が多い。
そのときに助けになるのは、仲間だと思っているんです。自分だけで考えていてもクリエイティブな解が出てこないことは多くて、誰かの知見や誰かの支援、あるいは誰かに壁打ちをしてもらうことで、自分の本当の悩みがわかることがある。『そういうことだったんだ』とか『こうなんじゃないか』とか、崖を少しずつ登ることができる。今日明日ではなく中長期で見たときに、この関係性や連帯性みたいなものが事業に効いてくると思っています」。
「スタープレーヤーがゴールを決めれば勝てるけど、そうじゃなければ負けて、その人が出ていったら終わるような組織は私たちが目指しているものじゃない。水処理産業を変革するという長い時間軸で取り組む仕事に必要なレジリエンスを備えたいということです」。
普通じゃない「ヘンな生態系」として
北林さんがFracta Leapのことを「ヘンな生態系」と言い表すことがありますが、それも今回のオフィスづくりの背景にありますか?
北林:
「そうですね。Fracta Leapはまだ設立5年目のスタートアップですが、水処理の課題に対して、水処理プラントを造る観点、運転する観点、研究する観点といった複数のアプローチに同時に挑戦しているのが特徴です。それは、我々が相手にしているのが、巨大で堅牢な水インフラだからです。小さいスタートアップが一矢報いたところで短期的にはほとんど変えられるものではありません。長い目線で、複数のアプローチで楔を入れて、それぞれがブレークスルーを起こし、ようやく5年、10年という単位で産業に変化が起こってくる。そんなスコープで仕事をしているから、スタートアップにも関わらず、複数の専門分化した取り組みを展開しています」。
「これが普通のスタートアップなら、一つに集中して成果を出すように出資者から言われてしまうわけです。一方で、私たちは栗田工業という水処理の大手企業と組みながらも、独立性を維持することを最初から決めていて、複線的アプローチを伸び伸びとやることができている。そういうヘンなスタートアップです。5年目で早くも専門分化しながらも、人と人でつながっている『ヘンな生態系』。そうあり続けるために、このオフィスが求心力になってくれたらと思っています」。
オフィス移転の話がいつのまにか水処理産業の課題に挑む事業観、組織観の話になっていました。新しいオフィスを土壌に、この「ヘンな生態系」を持続し、発展させる取り組みをいろいろ企画していきます。興味をもたれた方はぜひ新オフィスを気軽に覗きにきてください。
※ 記載内容は2025年4月時点のものです