Fracta Leap発足から3年が経とうとする2023年4月、2人のメンバーからなるコーポレートコミュニケーション室が立ち上がりました。約30人ほどのスタートアップに必要? そもそも何をする部署? 当初は社内でもよくわからない謎の存在だったコーポレートコミュニケーション室(以降、CC室と表記します)。どんな想いや経緯があってできたのか。振り返ってみたいと思います。
プロフィール
北林 康弘
Chief Executive Officer
経営戦略コンサル、事業再生支援、ディープテック系スタートアップのCFOなどを経て、Fractaに参画。Fracta米国本社でCFO 兼 日本事業の責任者を務めた後、2020年にFracta Leapを設立し、同社CEOに就任。
田代 友大
EPC Div.
Director of Product / Head of CC Team
印刷、物流、金融など、複数領域のスタートアップでプロダクトマネージャーに従事後、Fracta Leapに参画。EPC Div.にて設計自動化アプリケーションチームをリードするとともに、コーポレートコミュニケーション室を兼務。
毛利 亮平
コーポレートコミュニケーション室
Creative Director
デザイン会社にてデザイナーとして広告制作やブランディングを経験。その後、独立し主にBtoB企業のコーポレートコミュニケーションに従事。2023年にFracta Leapに参画し、コーポレートコミュニケーション室にて、社内外のコミュニケーションのデザインに取り組んでいる。
目次
組織としての“自我”を持つとき
変革の道筋を伝えるむずかしさ
「やっておきましたんで」レベルで動けるように
アートディレクターの入社をきっかけにCC室誕生
組織としての“自我”を持つとき
CC室立ち上げは、どのような必要を感じてのことだったのか。社内には突如として誕生したようにも見えていたCC室ですが、その経緯をCEOの北林さんに聞いてみました。
北林:
「設立当初の2020年、2021年はどういう組織であろうなんて考える余裕もなかったわけですが、2022年くらいから社員やパートナーも増えて、事業や組織の輪郭が見えてくる中で、ふと会社全体を考える瞬間が生まれてきたんです」。
北林さんが抱いていたのは、組織としての“自我”をそろそろ持つ頃なのではないかという感覚でした。
北林:
「とにかく個人プレーでやってきて、個人のこだわりやカラーで成り立っていた1、2年目でした。でも、それが混ざってきて、だんだんと個人の輪郭から集団の輪郭に変わっていくタイミングが組織にはあると思うんです。バラバラでアイデンティティのない組織になってしまうのではなく、創造的な共同体になっていくために、“自我”を持つべきタイミングなのではと感じていました」。
変革の道筋を伝えるむずかしさ
もう一つの必要性は、水資源の課題に間接的・中長期的にアプローチするFracta Leapの立ち位置の伝えづらさでした。
「水課題の解決、世界の水資源の持続という大テーマ」
↓
「水処理技術からアプローチし、デジタルで再構築した技術を世界展開するという解決の道筋」
↓
「まずは水処理プラントの設計自動化と運転最適化に取り組む」
大きなテーマに取り組むからこそ必要な段階的・中長期的アプローチの意味は、模索してたどり着いた創業期のメンバーにはわかっていても、後から合流するメンバーにはわかりにくいもの。人材採用の場面で応募者に伝えるときにも、説明が難しいことを北林さんは感じていました。
北林:
「目的や価値観、ストーリーを言語化してみようと創業メンバーと時々話し合っても、じっくりと取り組む余裕はなく、まとめ上げるまでには至らずに終わる。でも、自分たちがぐにゅぐにゅと考えている状態では、外部のコンサルタントやデザイナーにはまだ依頼もできない。きっと混乱するだけ。そんな状況でした」。
「やっておきましたんで」レベルで動けるように
北林さんが組織の輪郭づくりの必要を感じ始めていたその頃、Director of Productを務める田代さんもまた、開発チームをマネジメントする観点から近いことを感じていました。
田代:
「つくるプロダクトやサービスの品質が高くて、世の中にインパクトを与えている会社は、自分たちが何者かが見えている会社だと思うんです。そういう組織では、社員一人ひとりが、会社がやりたいことをわかっていて、そこに自分のやりたいことと合致するものを感じて働いている。仕事への向き合い方が自発的になって、働くことが遊ぶことに近づいていく。Fracta Leapはそうありたいという想いがありました」。
例えば、エンジニアがプロダクトマネージャー(PdM)の指示に従っているだけでは、開発のスピードも上がらず、PdMが考える以上のものもできないと田代さんは言います。要件を決めるヒアリングからエンジニアが参加したり、PdMの指示にエンジニアたちから改善案が出てきたりするのが、田代さんの理想とするチーム。
田代
「本気のメンバーがいるチームでは、『これ、やっておきましたんで』くらいのことが起こる。そのくらいのスピードじゃないとスタートアップじゃないと思うんです」。
増えつつあった社員が自律的に動き続けるためには、自分たちが何者か、何を目指すのかの共有がもっと必要。北林さんとは違う観点ながら、田代さんも会社のアイデンティティを確かめる必要を感じていたのでした。
アートディレクターの入社をきっかけにCC室誕生
背景にあった想いをここまで紹介してきた流れからは、「CEOとDirectorが、それぞれの問題意識から議論の末、CC室を開設」「組織としてのアイデンティティを見定める強い期待を受けてスタート」といった流れが想起されると思います。しかし、実際はそんなにきれいではなかったようです。
北林:
「組織の輪郭づくりの課題は感じていたとはいえ、どうやって解決するとまでは考えていませんでした。田代さんにCC室をつくりましょうと提案してもらったときも、何か良さそうだと感じて賛成したのは確かですが、それで組織の課題が解決するような期待はあまりしていなかったのが正直なところです」。
田代:
「私も北林さんに相談されたわけでもないし、最初からCC室をつくろうとか、そのための人材を募集しようと思ったわけでもないんです。きっかけは、プロダクトのUIデザインを担うアートディレクター募集をしたら、ちょっと想定とは違うタイプの毛利さんが応募してきたことでした」。
応募してきた毛利さんは、UIというよりも企業のブランディングを主に手掛けてきたデザイナー。クライアントワークだけでなく事業会社の中に入って中からデザインをしてみたいと語る彼と話しながら、「こういうメンバーがいてもいいのかも」と思い付いたと田代さんは言います。
田代:
「彼は表面のお化粧だけをするようなデザインではなく、めちゃくちゃヒアリングして課題を理解し、物事を設計するタイプでした。それならば、彼のやりたいこと、能力を活かして、ゆくゆくはやりたいと思っていたFracta Leapのコーポレートまでのデザインをやれないかと。まずはミッション、ビジョンを整えに行こうかと話して、私と彼の2人でのCC室をぬるっと立ち上げたんです」。
応募者との出会いから思いついた田代さんのアイデアを、経営陣が承認して生まれたCC室。それぞれの問題意識から「何か良さそう」という直観があったことは確かですが、戦略的どころか、とても偶発的に思える立ち上がりでした。そんなふうに立ち上がったCC室は何から始めたのか。次回の記事でご紹介します。
※ 記載内容は2024年12月時点のものです