「やりたいこと」が見つからない。
就職活動を控えた大学生や、社会に出て数年が経った20代の多くの人が、この言葉にできない焦りや不安を抱えているのではないでしょうか。
ぼくらのところに、大学を休学してインターン生でやってくる大学生や20代社会人からもよく相談を受けます。
でも、安心してください。
長年、地方のまちづくりや人事・キャリア教育を実践してきたぼく自身の経験から言えるのは、はじめから明確な「やりたいこと」を持っている人なんて、実はそれほど多くないということです。
むしろ、目の前の「やるべきこと」に必死で取り組むうちに「できること」が増え、その先に思いがけない形で「やりたいこと」と出会う。
そんなケースが圧倒的に多いのです。
今回は、そんな「やりたいこと」に出会うまでの6つの成長パターンを、ぼく自身の実体験も交えてご紹介します。
① 堅実派モデル
これは、最も多くの人が通る堅実派モデル。
まずは与えられた役割や目の前の課題(やるべきこと)に向き合います。
入社した会社で上司や先輩から指示されたこと。
あるいはクライアントから言われた仕事。
「やるべきこと」を続けていくうちに、
スキルや知識が身につき、
「できること」が増えていく。
「できること」が自分の強み・得意になっていき、
本当に情熱を注げるテーマ(やりたいこと)が見つかるのです。
【実例:キャンディー営業から新規事業開発の目覚め】
ぼくが新卒で入社したのはポーラの新規事業開発部。
なんとなく新しいことがいいな程度のふわっとした配属希望
「やるべきこと」は、新しく商品開発したキャンディーを売ること。
キャンディーにほぼほぼ興味のなかったんですが、やっていくうちに、売れるようになり、マーケティングや広告、経理に関わってるうちに「できること」が増えて仕事が楽しくなっていきました。
最終的に新規事業をつくることが「やりたいこと」のひとつに。
いまにも通じています。
② 使命発見モデル
目の前の「やるべきこと」に取り組む中で、社会の課題や誰かの困りごとに触れ、なんとかしたいという強い問題意識(やりたいこと)=使命発見モデル。
その「なんとかしたい」を実現するためのスキル(できること)を後から一生懸命身につけていく流れ。
【実例:採用から人事、人からはじまるまちづくりへ】
前職UDSで、コーポラティブハウスの企画・コーディネイターをしながら、兼務で採用が「やるべきこと」に。
成長するベンチャーにとって、稼ぐこと以上に人の採用が最重要任務。
やったことも、興味もなかった採用をしていくうちに、評価や給与、人材育成全般へと興味の対象が広がり、経営で人事こそがやりたいことに。
素人のぼくに人事責任者は荷が重すぎて。必死で本屋さんにある人事の本を片っ端から読み漁り、人事向けビジネススクールに通ったり。
でも一番は、一気に100人、200人の規模へ増えていった日々の人事マメネジントの悪戦苦闘が「できること」を増やすことにつながっていきました。
③ 才能開花モデル
自分がもともと持っている才能や得意なこと(できること)が認められ、それを活かした役割(やるべきこと)を与えられることから始まります。
役割を全うする中で、自分の才能が社会にどう貢献できるかを知り、自己実現の喜び(やりたいこと)につながる、才能開花モデル。
【実例:デジタル・フレンドリー】
都農町に移住してすぐ新型コロナでまちづくり業務停止!
生産者の販路確保や高齢者の引きこもり回避のためデジタル化を提案したのですが、素人のぼくが「できること」は、人と話したり場を進行すること。
高齢者の人がデジタルと友達になれる政策「デジタル・フレンドリー」を提案、全世帯にタブレット配布、年4回、44ある自治会を講習会でまわったりしていくうちに、めちゃくちゃ意義がある、これ「やるべきこと」!と使命感をもて、最終的には町のホームページのリニューアルや公式You Tubeなど町のメディアをつくる=「やりたいこと」も実現しました。
④ 情熱探求モデル
自分のスキル(できること)を使って、興味のあること(やりたいこと)をとことん追求してみる。そんな趣味や探求活動が、いつしか本物の情熱に変わり、それを継続させるための責任(やるべきこと)が後から生まれてくる情熱探求モデル。
【実例:記事を書いてるうちに発信の使命感を】
前述の新型コロナの時期に、もうひとつやったのが記事を書くこと。
もともとインタビューしたり文章はかけた(できること)ので、ビジネスWEBメディアの編集長から移住先でまちづくりや事業者の記事を書いてくれと頼まれてました。
来て早々、知り合いも少なかったので、自分として知り合いを増やしたい(やりたいこと)、取材だというと結構会ってくれたり、めちゃくちゃ詳しく話してくれるのでこれはWin-Winだと思って記事を書いていました。
書くうちに、実は同じ町内にいても知られてないことや、はじめてメディアに出たと喜ばれることもあり、これって過疎地でやるべきことなんじゃないかと思い、5年以上続けているこのnoteをはじめるきっかけになりました。
⑤ 理想実現モデル
「こんな世界を実現したい」という強い理想やビジョン(やりたいこと)からスタート。大きな目標を達成するために、今何をすべきか(やるべきこと)を逆算し、一つひとつタスクをこなしていく中で、必要なスキル(できること)が身についていく理想実現モデル。
【実例:小中学校の総合学習】
都農町に移住して起業して「やりたいこと」の一つが、こどもが参画するまちづくりの実践。高校が廃校になったばかりだったので、まずやるべきこととして町内一校の中学校の強化を提案しました。
自分ができることとして、各学年の総合学習の枠をいただき、キャリア教育とまちづくり教育を掛け合わせた「つの未来学」をはじめ、今年で5年目となりました。
⑥ 夢追求モデル
⑤と同じく、やりたいことからスタート。まず、その分野で自分ができることを徹底的に磨き上げることに集中します。
自分なりのユニークな関わり方ができるようになった時、それを仕事として成立させるための大義や意味づけ(やるべきこと)を見つけていく夢追求モデル。
【実例:高鍋高校生まちづくりチーム結成】
高鍋町のまちづくりで一番やりたいことは「高校生主体のまちづくり」。
まず、できることとして、ぼくらが関わりはじめていた高鍋駅改修後の居場所づくりを高校生チームと一緒に実践。町の人たちから喜んでもらえたり、高校生の目の色が変わって楽しんでいく姿を見て、これは町にとっても高校生にとってもやるべきことになってると思っていまに至ってます。
一番大切なのは「面白がり力」
ここまで6つのモデルを見てきて、どう感じたでしょう?。
「やりたいこと」は、必ずしもスタート地点にある必要はありません。
むしろ、目の前の「やるべきこと」や、自分のちょっとした「できること」の中に、未来の「やりたいこと」の種が隠れていることの方が多いのです。
もし今、やりたいことが見つからなくて焦っているなら、今、目の前にある課題や仕事を振り返り
「どうすればよくなりそうか?」
「どうやったら楽しくなりそうか?」
と問いを立て、アクションを起こしてみることをおすすめします!
一番大切なことは、「やりたいこと」そのものを探すのではなく、目の前にあることから「やりたいこと」につながりそうな面白みを見つようとする「面白がり力」なのだと思ってます。