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京都のコーヒースタートアップ Kurasuでは、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが活躍しています。ドイツ出身で、ヨーロッパと日本において、バリスタ、マネージャー、バリスタトレーナー、プロダクションロースターといったさまざまな役職を経験した後、Kurasuに入社したKaiもその一人です。
「同じ情熱を持った人たちと、インターナショナルなチームで働けるのがKurasuの魅力」と目を輝かせる彼に、来日やKurasu入社のきっかけ、現在取り組んでいる仕事、今後のビジョンについて聞きました。
会社と個人、どちらも成長していける仕組みづくりを
——Kaiさんは2024年5月にKurasuに入社したそうですが、現在どのような業務を担当しているのでしょうか。
僕はこれまで10年以上コーヒー業界で働いてきて、さまざまな役職を経験してきました。Kurasuにはバリスタトレーナーとして入りましたが、新しいポジションなので、定型業務にあたるというより、0から仕事を作っています。大きく分けると携わっているのは以下の3つです。
1つ目は、お店で提供するコーヒーのクオリティを保つこと。僕ひとりがコントロールするのではなく、チーム全員でコントロールできるよう、全体に目を配っています。
2つ目は、新しいスタッフにコーヒーに関する知識をレクチャーしたり、Kurasuが何を大切にしているかを教えたりといったトレーニングです。新しいスタッフがどんなふうに成長しているかを日々記録し、フィードバックしています。
3つ目は、会社が大きくなってもきめ細やかなトレーニングが行われ、チームが育っていくための型を作ること。Kurasuは海外展開しているので、その型は日本国内に限らず海外にも持っていけて、それぞれの店舗で使われるものでなくてはなりません。
Kurasuに入るバリスタたちは、もっとコーヒーに関する知識を増やしたい、成長したいと強く思っています。会社を大きくしながら、そうした一人ひとりのニーズにも応えていくには、再現性のある仕組みが必要です。
その仕組みづくりのために、バリスタたちとコミュニケーションを取り、経営メンバーと相談して京都のKurasuにフィットさせ、Yozoさんたちグローバルチームのビジョンにも合っているかを確認しています。
——Kurasuのチームやカルチャーについてどのように感じていますか。
Kurasuには、いい意味で「変わっている人」が集まっていると思います。情熱のある人や少しイレギュラーなアイデアを持っている人……みんな個性的だけど、仕事はすごくできるんです。
未来志向の会社だから、言われたことをやるタイプの人よりも、変わっていて、面白いことを考えてそれを形にしていける人や、自分の好きなものに対する情熱を持っている人のほうが活躍しているように感じます。
コーヒーはもちろんですが、ほかにも情熱を注ぐ対象がある多趣味な人が多いですね。僕は音楽(hiphop〜lofi〜jazz)や美術が好きで、休みの日にはレコードショップやレコードが流れているカフェをめぐったり、美術展や博物館の展示を見にいったりしています。
コーヒーキャリアのスタートは日本のコーヒーショップ
——Kaiさんのご出身はどちらですか。どのような経緯で日本に来たのですか。
生まれ育ったのはドイツ北部のハンブルクです。北海のエルベ川河口から100 kmほどにある港湾都市で、ヨーロッパ最大級の港、ハンブルク港があります。古くから貿易拠点として栄えた都市で、南米などからコーヒー豆が輸入されてくるため、コーヒー倉庫が立ち並び、コーヒーの歴史に触れられる博物館もあるほどです。
とはいえ、ハンブルクに住んでいた当時は、コーヒーにそれほど興味がありませんでした。高校生のときに海外留学するチャンスがあり、知らない世界や文化に興味があったので、行ったことのない遠い国に留学したいと考えて、日本を選んだんです。
埼玉県の高校に一年間留学し、さまざまな経験をして、日本の文化が大好きになりました。留学を終えてハンブルクに戻りましたが、大学進学時に日本人の多いところで暮らしたいと考え、デュッセルドルフに引っ越しました。
大学時代はレストランでアルバイトをしていて、それが僕にとっての飲食の世界との出会いでした。そのお店では、お酒やコーヒーなどいろいろな飲み物を提供していましたが、その中で自分はコーヒーに一番興味があるかもと感じました。
僕は2つの大学に通っていたので学生時代が長いんです。最初の大学ではデザインを学び、2つ目の大学では、日本語と東アジア学、経済学を学びました。2つ目の大学3年生のとき、再び一年間の留学の機会を得て、今度は東京の大学に留学しました。2016年のことです。
——日本でのスペシャルティコーヒーとの出合いについて教えてください。
東京では、「飲食の経験を活かせる仕事、中でもコーヒーに関する仕事をしたい」と考えて、「Café Kitsuné(カフェキツネ)」というコーヒーショップでアルバイトをしました。僕がスペシャルティコーヒーと出合ったのは、このお店です。
Café Kitsunéはフランス・パリを拠点とする高級ブランドが手掛けるカフェで、とくに接客を大切にしています。お客さんとのコミュニケーションはもちろん、オペレーションのワークフローに無駄がなく、チーム内の連携もレベルが高くて、洗練されていました。
コーヒー業界で働く人たちも多く訪れるカフェで、当時の店長が、東京へ来たばかりの僕にたくさんのバリスタたちを紹介してくれ、いい人たちと知りあえました。僕も彼らのお店に行くようになり、そこから新たなつながりもできて、気づけば日本のコーヒーコミュニティに身を置くようになっていたんです。だから、僕がコーヒー業界でキャリアを始めたきっかけは「人」だったのかもしれません。
そして、Café Kitsunéにあった、SLAYER(スレイヤー)という高級エスプレッソマシンに惹かれたのも一つの理由でした。SLAYERはバリスタが抽出温度、水量、タイミングを操作してエスプレッソを淹れる、いわばマニュアル車のようなマシンです。このマシンがすごく素敵で、触るのが楽しくて仕方ありませんでしたね。
Café Kitsunéでバリスタとして働くうちに、もっとコーヒーの味について深く学びたいと思うようになり、掛け持ちで「GLITCH COFFEE & ROASTERS」というコーヒーロースターでも働くようになりました。コーヒーに対するこだわりが強く、トレーニングは厳しかったですが、焙煎所併設のカフェでバリスタとしての技術を磨けたのは非常によい経験でした。
コーヒー店の店長を経て、フリーのバリスタ、そしてKurasuへ
——日本でKaiさんのコーヒーキャリアが始まったのですね。留学後はドイツに戻られたのですか?
1年間の留学を終えてドイツに戻りましたが、コーヒー業界で働きたいという想いはずっとありました。大学卒業後、デンマークのコペンハーゲンに拠点を置く焙煎所系列のコーヒーショップがドイツに進出していたので、その会社に就職し、店長として3年間働きました。
会社が大きくなって店舗数も増えているフェーズだったので、自分のチームを作る機会にも恵まれました。情熱のある素晴らしいチームができたので、そのチームビルディングの手腕を買ってもらえて、デュッセルドルフ周辺エリアにある他店舗のクオリティを上げるためのトレーニングを任されるようになりました。
しかし、3年後にコロナ禍が起こり、飲食業界全体が壊滅的な状況に陥りました。そこで、飲食業から離れて、大学で学んだ経済学を活かすべく、日系企業のサラリーマンに。自動車パーツのメーカーでプロジェクトマネジメントをし、業務効率化やスケジューリングなどを学べたものの、最終的には「この仕事は自分には向いていない」とわかりました。そして、「本当に自分がやりたいのは、やはりコーヒーに携わる仕事だ」と納得できたんです。
——コーヒーの世界に戻ることを決めて、どのような行動を起こしたのですか。
自分が成長できそうな場所がデュッセルドルフにはないと感じ、チャレンジしたいと考えてフリーのバリスタとして独立しました。コーヒー会社とつながりがあったので、さまざまなイベントにバリスタとして呼んでもらい、コーヒーを作りました。イベントによって毎回セットアップが変わるので、その経験を通してスタイルが柔軟になったと感じています。
フリーのバリスタとして働きながらも、ずっと日本に戻りたい気持ちはありました。でも、ドイツにいると話がなかなか進まなくて……。それで、思い切って日本に行って面接を受けようと決め、日本のコーヒー業界の人たちと連絡を取ってみたんです。その縁でつながったのが、Kurasuでした。
実は、僕は東京の大学に留学した2016年に一度京都に来て、オープンしたばかりのKurasuに立ち寄ったことがあるんです。そのとき、現在Kurasuの店舗統括マネージャーであるAyakaさんと出会いました。さらに、ドイツでコーヒーショップの店長をしていたときに、現在Kurasu EbisugawaでバリスタをしているRisaさんと同じお店で働いていたんです。
そんなつながりがあり、間接的にKurasuの取り組みやビジョンをキャッチアップしていて、すごく面白そうな会社だなと感じていました。そして、パズルのピースがはまるように、Kurasuにバリスタトレーナーとしてジョインすることになったのです。
「Kurasuのスタンダード」を世界中の人に届けたい
——これからKurasuで達成したい目標や、成し遂げたいことはありますか。
Kurasuをもっともっと大きくしていきたいですね。日本のいいところと、Yozoさんらしいグローバルな考え方がミックスされたKurasuのカルチャーはとても素敵なので、世界中の方に知ってほしいと思っています。
会社が大きくなって、どんどん海外展開していっても、コーヒーの味や接客のクオリティといった「Kurasuのスタンダード」がきちんと守られるシステムを構築したいです。
そして、バリスタたちの成長を後押しできる存在にもなりたいです。コーヒーのコンペティションを見にいったり、つながりを作ったりという経験を重ねて、将来そうしたものに出場したい人をサポートできる力をつけていきたいと思っています。
——Kaiさん、ありがとうございました。最後に、今お気に入りのコーヒーを教えてください!
僕が一番好きなのは、シングルオリジンの「ルワンダ ルリ ハニー」です。コーヒーチェリーの果肉だけを取り除き、粘液質を残したまま乾燥させる「ハニープロセス」を採用しており、すごくジューシーで、さっぱりした甘さと、酸味という言葉で一括りにするのがもったいないほどのフルーティーさを楽しめます。
香りもすごくいいし、冷めていくときの味わいの変化も含めて最初から最後まで堪能できるコーヒーです。ぜひ、実際に味わってみてください!