常に挑戦し続ける製造現場!食事と社員に込めた強い想い|製造本部 副本部長 × コーポレート本部 本部長対談
「"ALL for ONE SPOON" 食の可能性をデジタルで広げ、『一さじの喜び』を届け続ける」
食事を通して人々に生きる喜びを届けるべく、高齢者福祉施設や医療機関向けに食事サービスを提供する、株式会社ナリコマホールディングス(以下、ナリコマ)。大阪府大阪市に本社を構え、関西を中心に成長を続けてきた当社では、全国約2,900施設、毎日53万食のお食事をお届けしています。
今回は、商品開発・献立作成・食事の調理や包装・品質保証など食事の製造に関する業務全般を行う製造本部の副本部長 兼 中部セントラルキッチン長 兼 西日本統括管理室 吉井 彰男と、デジタルマーケティングを推進するコーポレート本部の本部長 北窓 佐和子の対談をお届け。
お客様にお食事をお届けする使命感、共に働くメンバーに対する感謝など、普段なかなか聞けない製造本部の熱い想いに迫りました。
なお記事の執筆には、株式会社ストーリーテラーズさんにご協力いただきました。
参加者紹介
吉井 彰男さん(2005年入社 製造本部 副本部長・中部セントラルキッチン長・西日本統括管理室)
北窓 佐和子さん(2020年入社 コーポレート本部 本部長、デジタルマーケティング室)
最初はナリコマを1週間で辞めようと思った![]()
吉井さん: 私は最初、大阪・茨木のセントラルキッチンで働きはじめ、その後広島、関東、名古屋のセントラルキッチンで勤務してきました。
入社のきっかけは、約21年前、茨木のセントラルキッチンが設立された時に、調理師のアルバイトが募集されていたこと。私は当座の生活費のため、「日当〇〇円」という募集を見て応募したんです。
ですが、私はそれまで一般的な飲食店で働いてきたので、大量調理は経験したことがありませんでした。そして、ナリコマのセントラルキッチンは飲食店と違って、お客様の顔が見えないですし、お客様からお声が届くとすれば、喜びの声ではなくお叱りの声。そんな仕事が正直自分には合わず、最初は1週間で辞めようと思っていました。
北窓さん:今では21年間も製造本部で活躍されている吉井さんが、まさか1週間で会社を辞めようと思っていたなんて驚きです。それなのに、どうして続けようと思われたんですか?
吉井さん: 上司と先輩に「ナリコマがめざす志」を教えてもらったことがきっかけです。
「うちはたしかに大量調理しているけど、お客様一人ひとりにとっては一人前。ひじきの小鉢一つとっても、吉井くんは『大量に調理したうちのたかだか40g』と思うかもしれないけれど、お客様にとっては大切な一人前なんだよ。だから、1人前のひじきの小鉢を10人前で作っているくらいのレベルに仕上げたいんだ」と。
さらに、今でも信念として大事にし続けているのが、今の会長(当時は社長)がおっしゃったこの言葉です。
「我々のお客様の多くはご高齢者。さっきナリコマの夕食を食べた方が、次の朝突然亡くなっているということもある。その方の人生最後の食事がナリコマやぞ。だからこそ、『ちょっと失敗したけど、今日はこれでいいか』という料理は、絶対に出してほしくないんや」と。
この表現はあまり良くないかもしれませんが、すごく心に残っています。
こういった熱い想いを聞き、「ナリコマは大量調理で薄利多売をしているわけじゃないんだ」と実感しました。そして「ナリコマで食事を作っていきたい」と思うようになったんです。
だからこそ今、会長の想いをセントラルキッチンの従業員たちにしっかり伝えながら、品質を守っていくことが私の重要な役目。自分が今まで受けてきた助けや教えを、次の代のメンバーに返していくという、会社と現場との橋渡し役を担っていると思っています。
機械だけでなく、人の手をかけるこだわり![]()
北窓さん:セントラルキッチンでは、毎日約53万食と膨大な量のお食事を調理しています。そんな中でも、心のこもった料理を作るために、どのような点を意識されていますか。
吉井さん: 一般的にはセントラルキッチンで大量調理すると、あまり気持ちのこもっていない機械的な味、尖った味になりがちです。
だからこそ、当社では人の手で行う調理作業もあります。たとえば具材が固まっていたらしっかり混ぜるなど、お客様がどの部分を食べても味の差がないよう気を付けて調理しているんです。
もちろん機械化は進めていますが、心のこもったおいしさのためには、全部機械で行うわけにはいきません。新しく入社したメンバーからは、「ほとんど全て機械やロボットが作業してると思ってました。最後は人の手をかけて、大事にお食事作りをしているんですね」とよく驚かれます。
ただ、これは昔ながらの職人技。当社はDX化を進める意欲の強い会社なので、人の手を介在する価値がない作業については、AIなどのデジタル技術を取り入れる意義があると思っています。当社は積極的にチャレンジできる社風ですから、興味を持った方が挑戦してくださるといいですね。
メンバーが仕事を選択できるのが理想![]()
北窓さん:今、吉井さんが「当社は積極的にチャレンジできる社風」とおっしゃった通り、当社は業界の一歩先をゆくべく、常に挑戦し、変化を続ける会社です。それは私たちデジマチームでも日々意識するところなのですが、セントラルキッチンではこの社風をどのように捉えていらっしゃいますか。
吉井さん:うーん、難しいところですね。セントラルキッチンのメンバーからは「明確な目標を立てさせてほしい」と言われますが、社内外の環境変化により、短期目標が急に変更となる時もあります。なので、私はそれを前提とし、複数のパターンを用意して、現場に落とし込むようにしています。でも、その点をメンバーに理解してもらうことには、正直今も苦労しています。
ただ、当社はこういった柔軟性があるからこそ、フットワーク軽くお客様のさまざまなニーズに応えられるのだと思います。
そこを理解してくれるメンバーもいれば、ルーティーンが決まった状態で動きたいメンバーもいるし、もっとアグレッシブに挑戦したいメンバーもいる。今まで当社では、「この業務にはこの人」という形で人員を配置してきましたが、こういった様々な志向のメンバーが、自分で業務内容を選べるような形にできたらいいかもしれませんね。
でもその場合、自分で業務を選んだのだから、相応の責任感を持ってもらわないといけません。もちろんフォローはしますが、自分が言ったことには最後まで責任を持ってもらう必要があります。
常に「今」が一番チャレンジしている![]()
北窓さん: 吉井さんが長くナリコマで働かれている中で、危機的状況や様々な壁があったと思います。特に印象に残っている出来事はありますか。
吉井さん:そうですね、常に「『今』が一番チャレンジしている」という感覚かもしれません。北窓さんも感じていると思いますが、最初から完璧に用意されるわけではなく、走りながら形にしていくから大変なんです。
ただ、会社も現場の意見を反映し、設備投資や人員の採用を行ってくれ、今では全部用意された状態になりました。
ですから今度は、セントラルキッチンで食事を製造する側が応える番です。製造工程での流れや方法を変えていけば、少なくともさらに3割ほどは無駄を削減できると私は見ています。
会社が投資してくれることと、我々が動くことがしっかり噛み合った瞬間に、「心配は何やったんだろう。よく踏ん張ったね」と昔話になるはず。今はそれをめざしています。
北窓さん: なるほど。そういったことの繰り返しで、常に「今」が一番のチャレンジなんですね。でも、それがナリコマらしいですよね。
悩みはすぐに相談してほしい、助け合うための仲間だから![]()
北窓さん:数々のセントラルキッチンで勤務をご経験されてきた吉井さんは、社員一人ひとりと向き合う面談を行う機会も多いですよね。
吉井さん:はい。入社してすぐに「自分はこの会社に合わないかもな」と不安になる人もいます。でも、私自身、最初は入社して1週間で「辞めたい」と思っていたので、その気持ちもわかるんです。ですから、悩んだ時は遠慮なくどんどん相談してほしいです。
今は働き方が変わり、このような状態になることはありませんが、私も関東勤務の時代、あまりの仕事の多さに疲れの限界が来てしまったことがあります。その時、他のセントラルキッチンの課長クラスの社員が駆けつけてきてくれて、現場作業をどんどん終わらせて、軌道に乗るまで助けてくれたことがあったんです。
その経験から「困った時は、声を出して協力し合おう」と心に決めました。メンバーにも、「仕事で辛くなったり、不安になったりする出来事があれば、遠慮せず言ってほしい」と思っています。それに対して応えようと思うし、頑張ろう、動こうと思えます。その人にできないことがあるのであれば、他の誰かがフォローに入ればいい。そのための仲間なんですから。
そうしないと、ナリコマの成長速度に製造本部はついていけなくなってしまいます。
また、「違う職種に挑戦してみたい」と言われることもあります。その場合、セントラルキッチンでその仕事ができなくても、ナリコマグループ全体を見れば、その仕事ができる部署があることも多い。たとえば、「お客様の顔を実際に見ることができる仕事がしたい」と言われた場合、セントラルキッチンではできませんが、施設ではできますからね。
こんな風に、セントラルキッチン勤務に縛られず、従業員には選択肢をたくさん作ってあげたいです。
北窓さん:そうですね。吉井さんのお話をお伺いしていると、お客様にもメンバーにも、本当に強い愛と情熱を感じます。
安心安全で、気持ちを込めたお食事を
北窓さん:最後に、セントラルキッチンを代表して、吉井さんからお客様にお伝えしたい想いを教えてください。
吉井さん:製造本部全体としての揺るぎない軸は「間違いなく安心安全な食事を提供する」ということ。その食事が医療施設や福祉施設の喫食者様の生きる喜びになるからです。
私ももともと飲食店で調理をしていたので、いくらレシピがあっても、毎日同じクオリティで、同じ味を作ることが難しいという現実も十二分に理解しています。
しかし、当社にとっては2000食、3000食という大きな単位で一気に作っていたとしても、喫食者様にとっては1分の1の食事。毎日100点を取ることは難しいですが、何より気持ちを大事にしています。これからもお客様に対する思いやりや愛を大切に、お客様に喜んでいただける食事を作り続けてまいります。
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[執筆・校正・取材]株式会社ストーリーテラーズ 平澤 歩
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