"金融のプロ"が物流テックスタートアップに飛び込んだ理由─CFOが語るハコベルの可能性 | ハコベル株式会社
25年間にわたり投資銀行業務に携わり、国内外の多くの企業を支援してきた経験を持つ、ハコベル CFO 兼 コーポレート部 部長の末藤。IPOや資金調達、M&Aの最前線で実績を重ねてきた"金融のプロ...
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本記事はハコベル CFO 兼 コーポレート部 部長 末藤のインタビュー記事後編となっております。前編は以下のリンクからどうぞ!
CFO 兼 コーポレート部 部長
末藤 英彦 Hidehiko Suefuji
一橋大学経済学部卒業後、大和証券SMBC(現:大和証券)にてキャリアをスタート。2005年よりモルガン・スタンレー(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に在籍し、一貫して投資銀行部門に従事。マネージング・ディレクターとしてテレコム・メディア・テクノロジー領域企業の顧客カバレッジ業務に携わる。インターネット、メディア、ハードウェア、人材、FinTechなど多様な業種の企業を担当し、IPO、公募・売出し、社債調達、M&Aなどの案件獲得および執行を担う。2025年よりハコベルに参加し、CFO 兼 コーポレート部 部長として本社部門の基盤強化から財務・IRまで幅広く担当。
ー入社されて半年が経ちましたが、現在はどのような業務をされているのでしょうか?
大きな括りで言うと、「資金を確保し、会社を財務的に安定させること。それを通じてCEOや事業部のみんなが事業成長に集中できるようにする」というテーマに継続して取り組んでいます。具体的には、直近では今年1月に資金調達を行いましたが、株式や銀行からの借入による外部資金調達、それから自社の事業から生まれるキャッシュを、成長のためにどう配分するかを考えるのも、大きなミッションの一つです。コーポレート部長としては、社内規程の整備や運用、必要な承認手続きを取るなど、企業として必要な内部統制を司っています。ここでも「事業の成長をサポートする」という基本的なスタンスは変わりません。内部統制などは、会社が持続的に成長するためのシステムであり、全員が遵守する必要があります。一方で、そういった対応に多くの時間を取られるのは望ましい状況ではないと思うので、会社のみんなが必要性を理解できることと、可能な限り工数や手間をかけずに対応できるような仕組みとするよう心がけています。
ーCFO、そしてコーポレート部長として幅広くご活躍されていますが、立場上、外部の関係者や金融機関とお話しされる機会も多いかと思います。ハコベルは外部の方々からどのような印象を持たれていると感じますか?
外部の方々からはすごく期待を寄せてもらっているなと感じます。やはりハコベルのVISIONである「物流を持続的に発展させるプラットフォームを作る」を具現化していくことや、背負っている社会的意義を評価頂いているという実感があります。また、出資してくださっている方々にとっては、将来的に会社の価値が上がると見込んで経済的なリターンを得るための投資ですし、そういった意味でも我々が背負っている期待は大きいと感じます。
また銀行との関係でも、スタートアップ企業への融資というのは簡単ではない中で、ハコベルはしっかりと評価してもらい、実際に資金調達ができています。一定のスケールや収益性が見えてきているという部分を踏まえて、信頼を寄せてもらえている実感がありますね。
ー入社して感じたギャップや、今後取り組むべきだと考えている課題や可能性についても教えてください。
入社して感じたのは、「思った以上に人の力で支えられているビジネスだな」という点です。マッチング型のビジネスはもっとオートマティックに動いているものだと思っていたのですが、実際には人が介在するケースもあります。軽貨物の領域に関しては、特別な条件を別途定めた案件を除けば9割以上が自動でマッチしているので、ハコベルのVISIONである「物流を持続的に発展させるプラットフォームを作る」という構想に近い形で動いているとは思います。他方、一般貨物の領域は、軽貨物の領域に比べると自動マッチ率は低く、人が介在している部分が多かったり、お客様向け・運送会社様向けの営業も人の力に頼る部分が大きかったりします。それだけ現場の細やかな対応力や関係構築力がビジネスを支えているということでもあります。そうした現場の力に頼りながらも、テクノロジーを活用して、どのようにビジネスを変えていけるか。その余白が大きいからこそ、私たちが果たせる役割も大きいと感じていますし、まさに今取り組むべきフェーズなのだと思っています。
ー今後のハコベルの成長に向けて、ご自身の役割をどのように捉えていらっしゃいますか?
すごく語弊があるかもしれませんが、最終的には「今の自分が居なくても回る会社」にしていきたい、というところでしょうか。もちろんCFOとして資金調達をすることや、株主・銀行・投資家の皆様とのコミュニケーションなど果たすべき役割はたくさんありますし、実際それを担っているわけですが、本当に事業が強く、健全な成長を遂げていれば、周囲からの信頼も自然と高まり、資金が集まり、支援を受けやすくなるものです。私のようなCFOが一番価値を発揮できるのは、何らかの財務的な目標や課題を会社が抱えている時だと思っています。「今こういう状況だけど、こう考えれば、解決できる」と可能性を提示し、壁を越えていく──そうした存在が必要ないくらいに、事業として安定して成長し続ける状態をつくること。それが、今私が目指しているゴールのひとつです。
ー「自分が居なくても回る会社」という視点には、驚きです。そうした長期的な視点をお持ちの中で、今後新たに挑戦していきたいテーマや、変えていきたいと考えていることはありますか?
大きく二つあります。
一つは、先ほど申し上げた「今の自分が居なくても回る会社」「課題を乗り越えて安定的に成長していく会社」という目標の、そのさらに先についてです。先ほどのコメントは、今の自分と今のハコベルを前提にしていたものでしたが、その先には、まだ見ぬ新たなチャレンジに取り組む自分とハコベルが居ること想定をしています。健全に組織が回っていれば、チャレンジをしない限り課題は減っていく一方だと思いますが、今後もハコベルとして色々なチャレンジを行い、向き合うべき課題が多様に広がっていくことが理想です。このような、今まで想定していなかった課題に取り組み、成長していくという循環をつくることで、会社も個人も成長を続けられる組織にできたらな、と考えています。
もう一つは、自らが「会社の価値を高める」という意識を、もっと多くのメンバーが自然に持てるような状態にしたいということです。必ずしも全員が同じ熱量である必要はないですが、自分の行動が会社にどう繋がっているかを理解して働く人が増えると、より強い組織になると思っています。私自身、投資銀行で株価や企業価値についてずっと向き合ってきたこともあり、経営者たるもの企業価値を高めるべし、という考えが根付いているからかもしれません。英語で言うオーナーシップという意識ですかね。スタートアップ企業として成長を追い求めるべきですし、そのためにも、みんなが会社への愛着だけではなく「この会社の価値を自分も一緒につくっている」という意識を持てると、働く目的の一つが“自分のため”だけではなく“会社のため”にもなってくる。そこが曖昧なままだと少しもったいないなと思うので、明確にしていけるような取り組みもしていきたいですね。
ー末藤さんがこれまでのご経験を通じて培ってきた理想の組織のあり方が伝わってきました。そういった背景も踏まえて、仕事をする上で大切にしている価値観や、これまでのキャリアで意識が変化したポイントがあれば教えてください。
仕事をする上で大切にしている価値観は、自分の成長・他者への価値提供・仕事を楽しむという3つです。
社会人になったばかりの頃は、「どれだけ自分が成長できるか」が一番大事な指標でした。人より2割増しで努力を続ければ、いずれ複利で返ってくるはず、という思いで残業も厭わず働いていました。その結果、努力が評価され、転職を経てキャリアが進んでいくのですが、徐々に意識は変わっていきました。
30歳を過ぎたあたりからは「自分がどんな価値を人に提供できるのか」という視点をより重視するようになっていったのです。お客様の課題にどう向き合うか、どうすれば喜んでもらえるかを考え、そのために成長し続ける。そんなフェーズに入った感覚です。そしてハコベルに入社してからは、さらにその「顧客」の定義が広がりました。銀行や株主といったステークホルダーもそうですが、狭間さんのように私の専門知識を信じて任せてくれる経営パートナーも“顧客”の一人かもしれない。さらに言えば一緒に働くメンバー全員が、私の価値を届けたい相手=顧客になり得ると思うのです。そう考えるようになってからは、メンバー一人ひとりがより良い働き方や成長を実感できるようにサポートしていくことも、自分の役割の一つだと感じるようになりました。
もう一つ大切にしているのが「楽しむこと」です。ルーティン化してしまうことに物足りなさを感じ、転職を決めたという背景もあり、いまは経験したことのない事象に直面すること=楽しいという考え方になっています。たとえトラブルであっても、「こんなことが起きるんだ」という新鮮な驚きがあるなら、それもまた仕事の面白さのひとつだと思っています。
ー業界や会社の規模が変わると、日々の仕事の中でも新しい発見がたくさんあるかと思います。実際に働いてみて、ハコベルならではの面白さやユニークだなと感じたことはありますか?
面白さの中では少し堅い話かもしれませんが、「専門職のプロフェッショナルが多い職場」である点はとてもユニークだと感じています。もちろんエンジニアやプロダクト開発のメンバーは専門性の高い職種ですが、ハコベルには自動マッチで対応しきれない案件を、顧客とのやり取りを通じて一つひとつ手配している「配車」という業務領域があったり、コーポレート部門もそれぞれ明確なミッションを持って動いていたりすることが印象的です。いわゆる総合職的な働き方をしている人がほとんどおらず、それぞれが特定の専門分野のプロとして活躍している前提で組織が成り立っています。そのため、人事異動のようなジョブローテーションはごく一部に限られていますが、一方で、自分の専門領域を軸にしつつも、関心のある分野や挑戦したいテーマがあれば手を挙げて取り組める柔軟さもあります。
スタートアップ企業に共通する特徴かもしれませんが、ここまで専門性に特化した人たちが集まり、それぞれのスキルを前提に協働している組織というのは、やはりハコベルならではだなと感じます。
ー確かに、各々がプロフェッショナルな領域を持ってスキル発揮をしている印象はあります。そうした環境の中で、末藤さんはどのような方と一緒に働きたいと感じていますか?
ハコベルは20代から30代半ばくらいのメンバーが多く在籍しているので、やはり知識や経験を積極的に吸収しようという考えの方と一緒に働きたいなと思います。そういう方と一緒に仕事をするのは気持ちが良いですし、こちらとしても教えたり共有したりしようという気持ちになりますよね。「こういうことをしたい」と自分の意思を持ちながら、学ぶ姿勢がはっきりしている方のほうが、チームの中でもうまく力を発揮できると思うので、そういう方にぜひチームに加わっていただきたいなと感じています。
ー実際に、そういった「吸収意欲の高い人」はハコベルに多いと感じますか?
そこはすごく難しいところで、先ほどお話しした“プロ意識の高い人が多い”という話と、実は両立が難しい部分でもあると思います。ハコベルには、各領域におけるプロフェッショナルが多く在籍していて、自分の専門領域を深く掘り下げて価値を発揮している人が多い。一方で会社全体の価値や、他の領域にも興味を持って知識を吸収するという姿勢については、正直まだ余地があると感じています。縦にはすごく強いのですが、横の繋がりはもっと強化できると思っているので、もっと会社全体の価値に目を向けたり、他の領域への関心を持つ人が増えたら良いなと思っています。専門性と学ぶ意欲、その両方を持てると会社としてもさらに強くなるはずだと感じています。
ー最後に、末藤さんご自身の今後の展望や目標について教えていただけますか?
会社の価値を高めることが、当面の目標です。単に業績を伸ばすだけでなく、社内外からの正しい理解や信頼を得ること、そしてそれに基づいて継続的に期待を寄せてもらえる状態をつくっていくことが重要だと考えています。そうした積み重ねが、最終的に企業価値の向上につながるはずです。また、企業の成長には、ハコベルで働くみんなの成長が必要不可欠だと思っています。コーポレート部門として個人の成長を支援できる制度やカルチャーの醸成などにも取り組んで行きたいです。こういった取り組みが、ひいてはハコベルのMISSIONである『物流の「次」を発明する』に繋がっていくと信じています。
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