「利用者さん一人ひとりに本当に必要な支援を、より丁寧に、より深く届けるための時間が確保できる」
AI導入について、そう語るのは森田さん。
インクルードでは、福祉分野における業務効率化と支援の質向上を目的に、AI・ICT導入を推進しています。今回はこの取り組みを主導する森田さんに、導入の背景や現場の変化、スタッフの反応、今後の展望について伺いました。
森田友里愛 / ニューロリワーク 梅田センター マネージャー
幼少期より福祉に興味を持ち、18歳のときにフロリダ州にある、余命宣告を受けた難病の子どもとその家族のための施設でボランティア活動に参加。その後、重度身体障害者施設・老人保健施設等での経験を経て、就労移行支援事業所の立ち上げにサービス管理責任者として携わる。2021年インクルード株式会社に入社。就労支援員やサービス管理責任者として現場での就労・復職支援に従事。現在は梅田センターのマネージャーとして業務にあたる傍ら、ICTの活用による業務効率化にも取り組んでいる。
──インクルードでは、事業所運営における一部業務にAIを導入しています。導入のきっかけについてお聞かせください。
正直なところ…一番のきっかけは「残業したくない!」という気持ちから始まりました(笑)
昨年から会社全体で「人的資本経営」への取り組みが進められる中、自分の業務を見つめ直す機会がありました。その中で、改めて紙ベースでの作業が非常に多いことに気づかされました。
たとえば、カウンセリングの記録を手書きのメモから改めて入力し直したり、紙でご記入いただいたアンケートをデータ化したりといった作業が日常的に発生していました。その際、自分の言葉で要点をまとめる中で、微妙なニュアンスが変わってしまい、長時間悩むことも少なくありませんでした。事業所の閉所後にこうした事務作業を進める中で、気づけば定時を迎えていることもしばしばありました。
「今聞いたことを、なぜ書き直してるんだろう?」
そんな疑問がふと湧いたことが、AI導入を真剣に考え始めたきっかけです。
そこから、少しでも業務を効率化できる方法を探し始めました。
──具体的にはどのようにAIを活用していますか?
たとえば、利用者さんとの面談内容をAIで要約・整理することで、記録業務の効率化を図っています。
また、急なお休み連絡や通所予定の変更についても、以前は電話でのやり取りが主でしたが、現在はチャットツールや専用フォームを通じてスムーズにやり取りできるようにしています。
体調確認や面談の予約についてもフォームを活用することで、簡単にご入力いただけるような仕組みをつくりました。さらに、見学希望者の情報も、紙での記入ではなくQRコードを通じてWebアンケートに入力いただく形に変更しました。
まだ導入の初期段階で、一部センターには導入されていない仕組みもありますが、インクルード全体では着実に業務のデジタル化が進んでいます。
──導入後、どのような変化がありましたか?
まず大きな変化として、残業時間が大幅に減少しました。私の所属する梅田センターでのスタッフの平均残業時間は10数時間程度となり、定時に帰ることも珍しくありません。
さらに、業務の効率化が進んだことで、本来の支援業務により多くの時間を割けるようになりました。たとえば、以前は記録業務に多くの時間を取られていたため、1日に1名の利用者さんとの面談で手一杯という日もありました。しかし今ではそうした負担が軽減され、面談の回数を増やしたり、より丁寧に面談できるようになったと実感しています。
──スタッフの皆さんからは、どのような反応がありましたか?
実は当初、スタッフからは慎重な意見や反対の声も多くありました。
たとえば、面談の記録を残すことについては、「面談中に話すセンシティブな内容まで記録されるのはどうなのか」といった懸念や、「支援の本質を考えると、業務効率化のために録音するのは本当に適切なのか?」という声もあがりました。
そうした声を受けて、「まずは実際にやってみないとわからない」という思いから、私がマネージャーを務めるニューロリワーク梅田センターで、試験的に導入を開始しました。「話しづらさ」が出てこないかといった懸念も含めて、実際の運用を通して可否を判断していく形をとりました。
結果として、梅田センターでの導入はスムーズに進み、予想以上に良い反応が得られました。その経験や、得られた知見を他のセンターにも共有しながら、全体での活用へとつなげていきました。
導入後は「すごく楽になった」「支援にかけられる時間を確実に増やせている」と聞きますし、今ではスタッフの方からも「この作業もっと簡単にできませんか?」とか「紙ではなく、デジタルでできませんか?」といった声も多くあがっています。
──導入時に気を付けたことはありますか。
そうですね、導入当初、スタッフから「使い方が分からない」といった声も上がりましたので、丁寧なサポートを心がけました。
梅田センターで試験的に導入したときは、個別に操作方法を説明し、疑問点や懸念点をしっかりと聞き取るようにしました。これにより、スタッフがつまずきやすいポイントや不安に感じる部分が見えてきたため、その情報を上長が作成する説明資料に反映してもらいました。その過程を経て、全社導入へと段階的に移行したので、大きな混乱を招くことなく円滑な導入が実現できたと考えています。
ちなみに補足ですがAIの導入については、上長も非常に協力的な姿勢を示してくれました。もともと上長自身が、スタッフの記録作業にかかる負担を懸念しており、こうした上長の理解と協力があったからこそ、AIの導入もスムーズに進めることができたと、改めて実感しています。
──今後チャレンジしてみたいことや、AI活用に関する構想などがあれば、教えてください。
個人的に今後チャレンジしてみたいと考えているのは、ニューロリワークで提供している支援の一部をアプリとして開発することです。最近では手軽にアプリやWebサイトを作れるツールも増えてきているので、まずはそういった仕組みを活用して、小さくても一歩を踏み出してみたいと考えています。この取り組みが実現すれば、インクルードの事業所がない地域の方々にも、インクルードの支援を広く届けることができると思っています。
理想としてはアプリという形にしたいのですが、もしハードルが高ければ、まずはWebサイトの立ち上げからスタートしてもいいかな、と考えています。まだ構想段階ではありますが、いつか必ず形にしたいという強い想いがあります。
──では最後に、福祉の現場においてAIやICTを取り入れていくことについて、どのような可能性を感じていますか?
福祉の現場において、ICTの活用は今後ますます欠かせないものになっていくと感じています。こうしたツールを取り入れることで、「利用者さん一人ひとりにとって本当に必要な支援」に、より丁寧に、そして深く関わるための時間を確保できるのではないかと思っています。
また、スタッフにとっても業務負担が軽減されることで、心身の健康を保ちながら、無理なく働ける職場づくりにつながっていくと感じています。AIやICTをうまく取り入れることで、「今日も定時で帰ろう!」と言えるような、ポジティブで健やかな働き方が実現できたら理想ですね(笑)
森田さん、貴重なお話をありがとうございました!
インクルード株式会社では、「ソーシャルインクルージョンを実現し、全ての人が活躍する社会を創る」というミッションの実現に向けて、ともに歩んでくれる仲間を募集しています。
今回の記事を通じて、インクルードでの働き方や事業について、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
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