こんにちは、unname代表取締役の宮脇啓輔です。(※この記事は2025年9月に書いたものです)
生成AIが飛躍的な進化を遂げ、ビジネスシーンでも活用の余地が大きく広がっています。生成AIを使いこなし仕事の生産性を高めることは、経営者の目線では非常にありがたいことばかりです。
しかし、個人の目線に立った時、
- AIに代替されないポジションや能力をどのように身につけていくのか、というキャリア安全性に対する悩み
- 若手社員が修行としてやっていた業務が奪われ、成長する機会を知らないところで奪われるという機会損失
など、これまでとは別次元のデメリットやリスクが潜んでいると思います。そこで今回は、生成AIそのものの活用方法ではなく、若手社員がうまく成長していくための生成AIとの関わり方(生成AIリテラシー)について解説していきます。
目次
生成AIの登場は、誰にとってポジティブなのか
ChatGPTをはじめとする生成AIが誕生し、日常の検索行動は大きく変化しました。今までGoogleで調べていたものも、AIに聞いてしまえば、なんでも自分の欲しい情報量と質に調整して教えてもらえる時代になりました。
ビジネスシーンでは、文字起こし、議事録、資料化、リサーチ、ファクトチェック、アイディア出し、画像の生成にとどまらず、相談や壁打ちまでもできるようになりました。明らかに仕事の生産性は向上し、会社やもっとマクロな国単位で考えるととんでもない恩恵を享受しています。労働生産人口が加速度的に減少していく日本において、救世主のようなイノベーションであると言えるでしょう。
生産性が向上した一方で、固定給で働く社員の給料も向上するのでしょうか。答えはNOです。今まで10しかできなかった人が、20できるようになるということですが、給料は2倍にはならないですよね。更に、そんな加速度的な進化を続けていくAI時代に、必死で取り残されない人材にならなければいけなくなりました。
生成AIの登場で、新卒社員の採用数を絞り込んだり、人員削減を行う会社が、アメリカを中心に広がっています。やがてその波は、日本にも訪れるでしょう。
ますます我々ビジネスパーソンは、AIとの関係性を見直さなければいけなくなっているのです。
AIのリスク・デメリットを知っておく
オフィスワーカーなら、生成AIを仕事に取り入れることはマストだと思っています。しかし用法・用量をしっかり守った上で活用する必要があると思っています。
生成AIが誰でも簡単にアウトプットすることを可能にしてくれた一方で、その品質は均質化する方向に向かっています。それに加え、ちょっと血の通っていない如何にもAIらしい言葉遣いをしてしまいます。生産スピードが飛躍的に上がった一方で、それは駄作を大量生産してしまう危険性もあるのです。部下が対して考えもせずに、AIに任せてアウトプットを大量に行うと、それを確認する上司の工数がとんでもなく消費されてしまいます。作成工数が減った代わりに、確認工数は反比例して増えてしまうのです。
そして、もっとも若手ビジネスパーソンに気をつけてもらいたいのが、成長機会を奪われるというものです。AIは非常に有能な一方で、思考を預けすぎると思考力が低下する(伸びない)可能性もあります。今まで、自分の頭で考え、仮説を出し、判断してきたはずの一切のプロセスを、まだ未熟なタイミングで代替してしまうことで、「自分の頭で考えられない人材」になってしまう危険性もあるのです。
これまで新卒が下積み時代にやるべきだった、記事録、データ入力、リサーチ、企画出し、などの修行タスクがAIに代替されることで、キャリア出発点での成長機会が失われることになります。議事録を何回も書き直し、構造化や抽象化を行うことで思考力を鍛えたり、簡易的な資料作成を通して、暗黙のルールを学んだり、1000本ノックのごとく企画を出した先に見えてくる景色を知る経験など、一年目にやりたい業務ができなくなってしまうのです。

修行タスクをやり切った先にある成長を得ることが難しくなってきている
先輩社員からしても、修行タスクがあったおかげでそれを部下に任せるところから始められましたが、そこがAIに代替されていくと、修行タスクより1段階レベルの高い業務を任せるしかなくなってしまうのです。より本番環境に近いタスクで修行しなければならず、任せる側も任せられる側も難易度が高まっていくことが予想されます。
できることをAIに任せよう
AIは使えた方がいいに決まっているのに、リスクやデメリットがある。そう言われると、どういう距離感を保てばいいかわからない。そんな人はかなり多いのではないでしょうか。
個人的におすすめなのは「できることをAI任せる」というポリシーに準拠することです。
理由としては、大きく2点あります。
①品質を自分で高められない
できない業務を生成AIに任せていると、プロンプトでも具体的な指示ができません。やったことない業務を外注先にオリエン・ディレクションするのと同じような感覚です。また、プロンプトの指示だけでなく、自分でそれを完成に持っていくことができなくなるので、品質の低いアウトプットを、迅速かつ大量に出し続ける人材になってしまう可能性があります。
②品質チェック側に回れない
こちらは少し先の話なのでしっかり念頭に置いてください。というのも、生成AIで出てきたアウトプットには、その品質をチェックする側の人間がいるということ。それは、AIに頼らずにアウトプットを出せる人にしかできないのです。なので、できないことをAIに任せようとしておくと、短期的になんとかなっても、自分が昇格・昇進したり、品質を担保する側に回ることが難しくなるのです。
以上の観点から、自分にできないことを生成AIに任せるのではなく、自分がすでにできる業務を部下にお願いする代わりに、生成AIにお願いしてみようというイメージです。

部下に自分にできないことを依頼しないのと同じです。
例えば、文字起こしはタイピングさえできれば誰でもできるので、そういうものからどんどんAIに任せて効率化していくと良いです。
しかし議事録はどうでしょうか?
意外に会社や組織によって議事録のお作法や暗黙のルールも異なりますし、議事録は情報が多ければ良いというわけでもありません。重要な箇所をしっかり抽出し、サマライズするなど、それを見やすく加工する必要があります。そのプロセスを通して要約力や語彙力も習得できるので、その組織から認められるまでは、自分で書くべきだと思っています。
もちろん議事録のサマリを生成AIに頼って要約しても良いのですが、それはチャットなどの非同期コミュニケーションで通用しても、ミーティングや商談のような同期コミュニケーションでは通用しないので注意が必要です。というのも、会話の中で相手の主張を要約したり構造化するスキルを持っていないのと、円滑なコミュニケーションを行うことはできません。会話の最中に「ちょっと今の会話をAIに要約してもらいますね」と止めるわけにはいかないからです。これはかなり重要なので念頭に置いてください。
なので、まずは時間に余裕がある非同期コミュニケーションで要約力、構造化力、抽象化思考力など、基礎的なスキルを伸ばしておく必要があるのです。
生成AIのキャッチアップは「早く知って、遅く動く」
突然ですがみなさんは、イギリスの外交戦略に「早く見つけて、遅く動く」というものがあるをご存知でしょうか?
世界で一番外交がうまいのはおそらくイギリスだと思っているのですが、イギリスの外交戦略は明快で「早く見つけて、遅く動く」ということなんですよ。世界中に情報網を持っていて、今何が起きているのかをいち早くつかむ。でも、すぐには動きません。集めた情報にもとづいて、「こうなったらこれをする」というものを持っておきます。そしてちょうどいいタイミングが来た瞬間に動きます。
職場にいる「学歴はいいのにパッとしない人」が見逃しているたった1つのこととは?
この考え方は、今の生成AIとの距離感にピッタリだと思っています。というのも、生成AIの領域はまだ未成熟で覇権の取り合いが起きています。LLMそのものの争いもあれば、それらを活用してサービスを提供しているAIエージェントまで、いろんなプロダクトが群雄割拠のようにひしめき合っています。
このタイミングで変に何かに肩入れして、キャッチアップしに行ってもプロダクト自体が消滅したり、もっと楽な方法が出現したりします。第一次世界大戦でヨーロッパ諸国が戦火に燃える時に、遠く離れた地で淡々と力を蓄えていたアメリカのように、戦況は知りつつも動きすぎないことが重要だと思っています。
要するに、会社や身の周りの人が使っている程度にとどめて、AIを極めようとする必要はないということです。AIを極めるよりも今やっておくべきことがあるのです。
それは、AIスタンダードとなった社会で代替されない人材になっておくことです。そのためにやっておくべきこと、身につけるべきスキルを3つご紹介します。
①人を動かすスキル

AIがビジョンを示したり、人気を得ることはない
1つ目は人を動かすスキルです。人を動かせるとチームを組成したり、チームで成果を上げることができます。このスキルを細分化すると、共感するような熱量の高い言葉を出したり、人に好かれたり・尊敬されたりというところでしょうか。「いろんな立場の人の気持ちがわかる」というのも非常に重要な要素になってくると思います。また、良い人間関係を作っておけば、困った時に助けてくれたり、新しいビジネスの機会を手にすることができるので、今後も重要なスキルとして生き残っていくでしょう。
②判断と決断をするスキル

意思決定の責任は、人間にしか負うことができない
2つ目は、判断と決断を行うスキルです。正解のない問いに対して「どれを選ぶか・なぜ選ぶか」といった曖昧さや葛藤・矛盾を含んだ判断や決断は、これからも人間が担当する領域なのです。なので「今日の晩御飯」などの些細な日常レベルのことでも自分で決める癖をつけましょう。AIに任せて自分で決めることを怠り、思考力や判断力を落とすことはNG。徐々に判断・決断するテーマやリスクのサイズを上げていきましょう。判断・決断の経験があなたを成長させます。
③原液を作れるスキル

0⇒1の創作の領域は人間が担っていく
3つ目は、生成AIには作れない濃度の高い原液を作れるスキルです。生成AIは70〜80点のアウトプットを出すには便利ですが、90〜100点の完成度を目指すには使いづらさを感じる場面も多いのが現状です。生成AIは、インターネットを中心に世の中に出回っている情報から学習しているだけなので、一次情報を持ち合わせていません。だからこそ今はAIを使いこなすことよりも「AIに選んでもらうための原液=オリジナルな考え方や素材」を自らの手で作っておくことが重要になります。そのための思考力、言語化力、など基礎スキルを鍛錬し続け、さまざまな体験や経験を積んでおきましょう。一見仕事とは無関係に見える教養を身につけておくべき利用がどんどん増していくでしょう。