こんにちは!アヴァント株式会社 採用担当の旭谷です。今回は、アヴァントグループで毎月開催している社内勉強会「AI CAMPUS #15」のレポートをお届けします。
今回のテーマは、「『誰も正解を知らない』から始める、組織へのAI導入
——『AIをどう使うか』より『どう向き合うか』」
登壇したのは、グループ会社TIEROでプリセールス兼PMとして活躍する、新卒入社3年目のH.Kさん。今回の発表では、AIツールの具体的な活用方法だけでなく、「AIを組織に導入するとは、一体どういうことなのか?」という問いから、SI事業の業務変革、顧客理解、ナレッジの蓄積、人材育成まで幅広く語られました。
「これからのSI人材」とAI
発表の前半では、AIによってSI人材の仕事がどう変化していくのかについて、現在のシステム導入の流れを整理しながら説明がありました。システム化企画から提案、要件定義、設計・開発・テスト、そして運用・保守へ。特に設計・開発・テストといった下流工程は、AIによって工数を圧縮できる領域です。では、AIによって生まれた時間を何に使うのか。H.Kさんが注目しているのが、「お客様と向き合う時間」です。AIによって「作る」時間を短縮できれば、
- お客様のビジネスを理解する
- 課題を深掘りする
- 提案を考える
- 将来の構想を描く
- 長期的な関係性をつくる
といった、より上流の仕事に時間を使えるようになります。つまり、AIによる効率化の目的は、単純に「より多くの仕事をこなすこと」ではなく、SI人材がより付加価値の高い仕事に時間を使える状態をつくること。H.Kさん自身も、プリセールスとPMの両方に関わる立場だからこそ、AIによってSI人材の役割そのものを変えていくことを考えています。
AI導入には「正解」がない
今回の発表で特に印象的だったのが、「AI導入には正解がない」という考え方です。たとえば、システム部門では「AIを導入したけれど、どこから始めればいいかわからない」という状況がある一方、営業部門では「もっとAIを使って効率化し、お客様と向き合う時間を増やしたい」という声が出てくる。AIを積極的に使いたい人がいても、組織として効果が見えなければ追加投資を判断できない。つまり、「使いたい人」と「組織として導入する側」の間にギャップがある。そこで重要になるのが、「個人としてAIを使う」から「組織としてAIを使う」への転換です。
個人のExcelから、組織のCRMへ
この変化を「CRM」の考え方になぞらえて説明しました。以前は、営業担当者がそれぞれExcelなどで顧客情報を管理し、自分のお客様を自分で理解していました。しかし現在では、CRMによって顧客情報を集約し、営業だけではなく、サポートや経営など、組織全体で共有できます。CRMの価値は、単にツールを導入することではありません。担当者が変わっても顧客との関係性を継続し、組織全体で同じ情報をもとに判断できる仕組みをつくること。AI活用も同じです。個人が持っているAI活用のノウハウを、その人だけのスキルで終わらせず、組織全体で共有・蓄積し、新しい価値につなげていく。今回の発表では、この「CRM思想をAI活用にも取り入れる」という考え方が示されました。
AI導入の3つのコア原則
では、実際にAIを組織へ導入する際には、何を大切にすればいいのでしょうか。3つのポイントが紹介されました。
01|「プロジェクト」ではなく「プロダクト」として捉える
AI導入を一時的なプロジェクトとして終わらせない。導入して終わりではなく、使いながら改善し続ける。継続的に進化する「プロダクト」として捉えます。
02|AX(AIトランスフォーメーション)は「企業デザイン」
AIを導入すること自体が目的ではありません。「何を実現したいのか」という目的から逆算し、既存の業務プロセスそのものを見直していく。だからこそ、AXを「企業デザイン」と表現しました。
03|AIを使って「いい仕組み」をつくる
AIそのものを目的にせず、AIを使って「より良い仕組みをどうつくるか」を考える。AIはあくまで手段です。
TIEROが進める「AIドリブンSI」
ここからは、TIEROで実際に取り組んでいる「AIドリブンSI」について紹介します。AIドリブンSIでは、下流工程の効率化だけではなく、お客様と接点を持ってから、提案、受注、導入、追加提案まで、顧客ライフサイクル全体にAIを活用することを目指しています。大きな考え方は、「作る時間を圧縮し、浮いた時間を生み出す。そして、その時間をより価値の高い仕事へ再配分する」というものです。
商談前から、AIで「お客様を知る」
まずはリードが発生した段階。お客様とのファーストコンタクト前にAIを活用して、
- IRなどの公開情報
- 業界トレンド
- 競合情報
- 相手企業のビジネス構造
- 担当者の情報
などを調査します。目指すのは、「お客様より、お客様のことを知っている状態」。さらに初回商談では、お客様のビジネス構造や想定される課題を整理した資料をあらかじめ用意します。「自分たちの会社を、ここまで理解してくれているんだ」と感じてもらうことで、会話のきっかけをつくる。想定課題を提示することで、
「いや、実はうちはそこではなくて……」
と、お客様からさらに深い情報を引き出すこともできます。AIによる事前調査は、単なる情報収集ではなく、より深い顧客理解につなげるための入口になっています。
「今」だけではなく、「未来」まで提案する
お客様から課題を聞いたら、現在の課題を解決するだけではなく、「この先、お客様はどんな未来を目指すのか」まで考えます。過去の提案履歴や導入結果なども活用しながら、「今回の課題を解決するなら、まずこれをやりましょう」だけではなく、「その先には、こんな未来があります」という構想まで提案していきます。さらに、お客様の責任者とも会話を重ねながら、会社として抱えている課題や将来の方向性を深掘り。そこで得られた情報も、お客様を軸に蓄積していきます。一つひとつの商談を点で終わらせず、長期的な顧客理解につなげることがポイントです。
プロジェクトで得た「知識」を、組織の資産へ
受注後もAI活用は続きます。お客様から共有いただいた、
- 現行業務のフロー
- システムの仕様書
- 業務マニュアル
- その他の関連ドキュメント
などをAIに取り込みます。さらに、過去の案件や設計、業界ごとの特徴、過去のリスクや失敗なども参照しながら、要件定義書や業務フローなどの成果物につなげていきます。ここで目指しているのは、単に「AIに仕事をしてもらう」ことではありません。人の頭の中や個別の資料にあった知識を、組織の資産として蓄積していくこと。これがAIドリブンSIの大きなポイントです。
「作って終わり」から、「生きた資産」へ
これまでの設計書や業務資料は、一度作成すると、その後のメンテナンスが難しいという課題がありました。そこでAIエージェントが変更をキャッチし、成果物まで更新できるようになれば、常に最新の情報を持った「生きた成果物」として活用できます。さらに、そのドキュメントをもとに、お客様自身がAIチャットボットを通してシステムについて質問したり、情報を更新したりすることも目指しています。プロジェクトで生まれた成果物を一度きりの納品物ではなく、次の提案や改善につながる資産へ変えていく。これが、CRM的なAI活用にもつながっています。
AIで生まれた「余力」を、何に使うのか?
ここまでの話で重要なのが、「AIによって生まれた余力をどう使うのか」ということです。工数が削減されても、その時間を「さらに多くの案件をこなすため」だけに使うのでは、AI導入の価値を十分に活かせません。お客様の業務やビジネスを理解し、それをシステムとして適切に設計できる人材を育てるために、
- 勉強会
- メンバーからフィードバックをもらう時間
- 顧客理解の研修
などに時間を使っていく。AIで「作業」を圧縮し、その余力を「理解」と「成長」に投資する。そして、育った人材と蓄積されたナレッジが、さらに高品質な提案やプロジェクトにつながる。AIによる効率化を、人と組織の成長へつなげる。これが今回の発表の大きなテーマの一つでした。
AI導入のゴールは「AI導入」ではない
ここまでの話をまとめると、AI導入で重要なのは「どのAIを使うか」ではありません。
- どの数字を上げたいのか
- 何の工数を減らしたいのか
- 生まれた余力を何に使うのか
- どんな人材を育てたいのか
- どんな組織をつくりたいのか
AIによって生まれた余白を、何のために使うのか。
ここまで設計して、初めてAI導入の意味が生まれます。だからこそ、AXは単なるAI導入ではなく、「企業デザイン」なのです。
測定できるものはAIへ。測定できないものは人へ。
AIは、数字で測定できるもの、ルール化できるもの、繰り返し発生するものを得意とします。一方で、
- 教育への投資
- ブランド
- 企業文化
- モチベーション
- 心理的安全性
といったものは、簡単には数字だけで測れません。だからこそ、AIが得意な領域はAIに任せ、人は「人にしかできないこと」に時間を使う。H.Kさん自身、社内で心理的安全性についての研修を行うなど、人がより良く働くための環境づくりにも取り組んでいます。
人が成長できる組織をつくるためにAIを使う。
ここに、「AIをどう使うかより、どう向き合うか」という今回のテーマがつながっています。
実際にAI導入を進めてみて
もちろん、すべてが順調に進んでいるわけではありません。一つは、「ツールが分散していて、ナレッジが育ちきらない」という課題。それぞれが使いやすいツールを選ぶことでAI活用は進んでも、情報やナレッジが一箇所に集まりづらい。「どのツールを、どう組み合わせるのか」という課題は残っています。もう一つは、「スピードは上がったが、まだ質や成果に完全にはつながっていない」こと。提案書や見積もりを短時間で作れるようになっても、お客様との関係構築や受注につながるまでには、人が時間をかける必要があります。
「何度もお客様と話す」
「ふとしたタイミングで考える」
「人と話しながらアイデアを深める」
こうした、人間が時間をかけて生み出していた価値もあります。だからこそ、「どこに時間をかけるのか」にメリハリをつけることが重要です。
「正解を持っている人」がいないからこそ、みんなでつくる
では、組織にAIを導入するとき、どうすればいいのか。H.Kさんが実際に取り組んだのは、まず「みんなで現状を理解すること」でした。主要なメンバーを集め、
「人間は何をすべきなのか?」
「どんな価値を提供したいのか?」
「どの業務をシステム化・自動化できるのか?」
「生まれた時間を何に使うのか?」
を整理。提案業務も一つずつ分解し、As-Is(現状)とTo-Be(あるべき姿)を整理しました。そのうえでNotionなどを活用して業務フローを形にし、顧客分析エージェントなどの仕組みを実際につくっていきました。さらに、毎週30分の業務改善ミーティングも実施。役員を含めたメンバーがアイデアを持ち寄り、実際の業務を少しずつ変えていきます。こうした活動を続けることで、以前はAIを使っていなかったメンバーも、現在では「AIがないと困る」と感じるほど活用するようになってきたそうです。
「若手が先導する」という選択
今回、個人的にも印象的だったのが、「若手が先導して取り組むことが大切」という話でした。組織の上位になるほど、立場や役職が増え、言いづらいことも増えていく。一方で若手は、
「これはどういう意味ですか?」
「なぜこうなっているんですか?」
「もっとこうしたほうがいいんじゃないですか?」
と、素直に聞くことができます。また、自分たちがこれから長く働いていくからこそ、「自分たちが働きやすい環境を、自分たちでつくっていく」という意味でも、若手が主体的に動くことには価値があります。AI活用という新しいテーマだからこそ、年齢や役職に関係なく、アイデアを出し、試して、改善する。そんな動きが組織を変えていきます。
AI導入は「学習していくプロセス」
今回の発表を通して、H.Kさんが繰り返し伝えていたのは、「最初から正解があるわけではない」ということでした。まず組織として目指すゴールを決め、現状の業務を理解する。そのうえで、何をAIに任せるのかを考え、導入し、効果を測定し、さらに改善する。このサイクルを繰り返していく。だからこそ、AI導入は「プロジェクト」ではなく「プロダクト」。そして、外部の誰かに任せきるのではなく、組織の中にいる人たち自身が考え、学び、改善し続けることが重要なのです。
最後に。AI時代に、私たちは何をするのか?
今回のAI CAMPUS #15では、AIの具体的な活用方法だけではなく、
「AIによって、人の仕事はどう変わるのか」
「組織はどう変わるのか」
「その先に、どんな会社をつくりたいのか」
というところまで考える機会になりました。AIは、これからますます身近なものになっていきます。だからこそ、
「AIを使える人」になるだけではなく、
「AIを使って、仕事や組織の仕組みそのものを変えられる人」になる。
そして、AIによって生まれた時間を、人材育成や顧客との関係づくり、企業文化、心理的安全性など、より人間らしい価値に投資していく。それが、今回のAI CAMPUSでH.Kさんが描いていた未来でした。
AIやテクノロジーを使って、単に仕事を効率化するだけではなく、「もっと良い仕事の仕組みをつくりたい」「自分のアイデアで組織を変えてみたい」「AI時代だからこそ、人にしかできない価値を追求したい」そんな方には、当社での仕事を知っていただけたら嬉しいです。正解がないからこそ、面白い。私たちと一緒に、これからの働き方や組織のあり方をつくっていきませんか?ぜひお気軽にご連絡ください!