北海道フレッシュキヨスク様は、新幹線延伸を見据え、JR札幌駅のエキナカ商業施設での出店強化を進めています。ただ、コロナ禍やエスタ・パセオの閉館といった環境変化により、札幌駅周辺の来訪者動向は大きく変わっていました。出店戦略を描くうえでまず必要だったのは、「環境変化を踏まえて、今の札幌駅を正確に把握する」ことでした。
人流データを使えば、「誰が」「どこから」「どれくらい」来ているかは把握できます。しかし、店舗開発で本当に問われるのは、その先の「その人たちは駅で何を買いたいのか」という需要です。GEOTRAは、お客様との要件のすり合わせの段階からこの問いに向き合い、人流データにWebアンケートを掛け合わせるアプローチを設計しました。担当したのは、営業戦略部の樋田英能です。
担当者紹介
樋田 英能
2018年早稲田大学商学部卒。2019年同大学院商学研究科修了。大学ではマーケティングコミュニケーションを専攻。KDDIに新卒入社後、キャリアデータを活用した新規ビジネスの企画部門に所属し、位置情報ソリューションの企画・プロモーション・アライアンス推進を担当。2022年12月にGEOTRAに参画し、主にマーケティングの企画・推進に従事。現在はプロダクト企画やアライアンスを担当。主な著書に『まちづくりのための人流ビッグデータ活用入門』
「今の札幌駅」を正しく把握する
北海道フレッシュキヨスク様の事業開発チームでは、新幹線延伸を見据えた札幌駅構内での出店強化を検討していました。出店戦略を立てるには、どこにどのような属性の来訪者がいるのかを正確に把握することが欠かせません。ところが、コロナ禍やエスタ・パセオの閉館など、駅を取り巻く環境は大きく変化していました。
社内には乗降者数の集計やカメラを用いたカウント調査などのデータもありましたが、更新時期にばらつきがあり、手集計による効率や正確さの面でも課題がありました。そこで、外部の人流データを掛け合わせて多角的に現状を捉えたい——GEOTRAへの相談は、この課題から始まりました。
要件を詰める中で見えた、人流データの「その先」
今回のプロジェクトは、いきなり分析から入ったわけではありません。まずはお客様と「この調査で何を明らかにしたいのか」を丁寧にすり合わせるところから始まりました。その過程で見えてきたのが、店舗開発という目的の“芯”です。
樋田:「お客様が本当に知りたいのは、『どれだけ人が来ているか』ではなく、『札幌駅を使う人が、駅で何を買って帰りたいのか』でした。人流データは人の“動き”は綺麗に描けます。でも、その一歩踏み込んだ需要や気持ちまでは読み取れない。要件を詰めるほど、そこが片手落ちになると感じていました。」
性年代や居住地、時間帯別の来訪人口といった“量”は人流データで見える。けれど、店舗開発の意思決定に効くのは“質”——嗜好や需要の情報でした。このギャップをどう埋めるかが、提案・要件定義の段階での最大の論点になりました。
「だったら直接聞いてみよう」
これまでもGEOTRAは、興味関心スコアを付けた人流データ分析を手掛けてきました。しかし「駅で買って帰りたいものは何か」という問いには、それだけでは届かない。そこで樋田が相談したのが、担当エンジニアの森山です。
森山 拓洋
九州大学大学院理学府化学修了。大学では量子化学を学ぶ。人と人をつなげるITに興味を持ち、KDDIに2014年に新卒入社。入社後は法人向けの事業本部に所属し、DX関連のフロントSEとしてIoTを活用した法人向けソリューションや5Gネットワークと4K映像の画像認識を組み合わせたシステムの設計・構築に従事。 現在は技術責任者としてGEOTRAのプロダクト開発をリードし、自らも実装に従事する傍ら、データサイエンティストとしてGEOTRA Activity Dataを活用したデータ分析を推進。日夜お客様の新しいインサイトを模索している。
樋田:「森山さんと話す中で、『だったら、いっそお客様に直接聞いて、その回答を人流データとクロスで見よう』と。答えはとてもシンプルでした。」
こうして、人流データで“量(人の動き)”を、Webアンケートで“質(嗜好性)”を捉えるという方針が固まりました。アンケート調査のパートナー会社とも連携し、人流×アンケートを一体で設計する座組みへ。分析に入る前の要件定義の段階で「何を測れば答えにたどり着けるか」を描けたことが、このプロジェクトの土台になりました。
仮説の裏づけと、新たな発見
分析からは、いくつもの発見がありました。従来「西側の利用者が相対的に多い」と見立てられていた点は、東西比率およそ6:4という数字で客観的に確認できました。また、エスタ・パセオ閉館前後を比較することで、これまで見えにくかった人流や滞留の変化もデータで捉えられました。
さらに、アンケートからは購買嗜好が可視化され、需要の再確認につながりました。テイクアウトスイーツのような「すぐ買える商品」への支持が数値で裏づけられ、日々の売上感覚とも整合。実際に札幌駅で好評のサンドイッチ自動販売機など、無人販売・自動販売機施策の有用性も改めて確認できました。
これらは、男女・世代・時間帯といった多面的な仮説検証を可能にし、無人店舗の展開や新規施策の検討に資する情報として、社内で共有されていきました。
樋田:「西:東がおよそ6:4という数字で従来の見立てを客観的に確認できたり、すぐ買える商品への需要が数値で裏づけられたり。『これで自信を持って前に進められます』という前向きなご反応をいただけたのは、大きかったですね。」
「ここまで寄り添っていただいて」
樋田:「『ここまで寄り添っていただいてありがとうございます』という言葉もいただきました。単なるデータ納品ではなく、一緒に走れていた——そう実感できて、素直に嬉しかったです。」
「人流データの会社だから」で終わらない
今回の案件で樋田が“ジオトラらしい”と感じたのは、手段にとらわれない進め方でした。
樋田:「人流データ分析という当初の枠にとらわれず、お客様の要望に合わせてアンケートを足すなど、手段を柔軟に組み替えながら最後まで伴走できました。特に森山さんは『どうすれば実現できるか』を営業任せにせず、一緒に頭をひねってくれる。この営業とエンジニアの距離の近さ、垣根のなさは、うちらしい文化だと思います。」
おわりに:エキソト、地域全域、インバウンドへ
今後の展望について、樋田はお客様との対話を通じて感じていることを話してくれました。
樋田:「お客様とお話ししていると、これからのターミナル駅では『地域の方に、いかに長く親しんで使っていただけるか』を大切にされている方が多いと感じます。ナショナルチェーンのテナントだけでなく、その土地ならではの特色をどう出していくか。そのためには、消費者動向や地域の嗜好性を定性×定量で丁寧に捉えることが力になるはずです。今回のような人流×アンケートの取り組みを通じて、駅ナカにとどまらずエキソト(駅の外)や北海道全域、さらにはインバウンドの動線把握まで、お客様の検討に少しでもお役に立てるよう、一緒に取り組んでいけたらと考えています。」
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