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"オーガニック"は本当に広めるべきなのか。それが救う未来は、本当に意味があるのか?考えてみた
たとえば、こんな未来を想像してみてほしい。
すべての農業がオーガニックに切り替わる。
すべての電力が自然エネルギーでまかなわれる。
すべての食糧生産がサステナブルに設計されている世界。
素晴らしい。まさに理想郷。
だが、同じ未来のなかで、別の場所では別の“暴走”が始まっている。
AIは100億人分の脳みそを超える速度で稼働し、 その裏では、かつてないエネルギーが消費されているとしたら…?
果たして、私たちは一体何を守っているのか。
本当に、意味があるのか。
虫の目ではなく、鳥の目を持って考えてみた。
自然農法で作られたねぎの収穫に行ってきました!
息子は慣れた手つきでブカブカ手袋をはめて畑に乗り出してました。
オーガニックが削減する環境負荷と、AIが生み出すコストを比較してみる
地球環境を守るため──。 農薬を使わず、自然と、天候と、土壌と対話しながら育てる“オーガニック農業”。
たとえば、ある研究によれば、オーガニック農法は化学肥料の使用を90%以上削減し、
土壌の炭素固定能力を最大1.5倍に高めるとされている。
確かに、希望の光のように見える。
だが、その一方で、AIという巨大なテクノロジーの“裏側”では、爆発的なエネルギー消費が始まっている。
2027年には生成AIや機械学習の電力消費だけで、年間CO₂換算1.5億トンを超えるという(IEA, 2023)。
一方、日本の農地がすべてオーガニックに切り替わったとしても、
年間で削減できるCO₂は最大でも約1,000万トン(環境省試算, 2022)。
その差、15倍以上。
つまり──
日本中が完璧なオーガニック農業を達成したとしても、世界のAI化によって一瞬で“帳消し”になる。
しかも、AIの進化はまだ「はじまり」に過ぎない。
この努力に、意味はあるのか?
やったほうがいい──それは間違いなくそうだ。
ただ、「CO₂削減」という観点で声高に推進することが、本当に正しいのだろうか?
その問いを突きつけられているように思う。
ちなみに、「オーガニック=健康によい」というエビデンスは現時点で確定的ではない。
だから、ここでは論外としておく。
やっと歩き始めた頃くらいの娘。
キューリのドームの中でピース!✌️
食の未来は「ぶっきらぼうで、味も…な街の定食屋」にかかっている
大戸屋ややよい軒のほうが、よっぽど美味しい。(大好きです!)
そう思う人は多いと思います。
実際、味の安定性、サービスの均質性、価格の納得感、どれをとっても街の定食屋より優れている。
でも──
それでも私は、いつも味が同じわけではない。時にしょっぱく、時に薄い。
そんな街の定食屋が、これからの「食の未来」の鍵を握っていると思っています。
なぜか?
「便利で均質」な社会で、人は満足できない
人間は、本質的に生活には便利を求める生き物です。
料理の待ち時間が短いほうがいいし、
メニューの選択肢は多い方がいい。
衛生的で、居心地がよく、会計はキャッシュレスで、味のブレがない。
いわゆるチェーン店や大手の飲食は、まさにこの合理性の積み重ねでできている。
でも一方で──
人は簡単に慣れて、飽きてしまう。
コロナになっても人が旅を辞められなかったのは、見たこともない、食べたこともない、嗅いだこともない何かを体験したいという本能なのではないかと思います。
インド・ガンジス川でバックパッカーが「住まない」理由
バックパッカーたちがこぞって訪れるインドのガンジス川。
圧倒的な熱気、混沌、におい、祈り──
多くの旅人がここで「人生観が変わった」と語る。
でも、その後そこに“住む”人は、ほとんどいません。
なぜか?
「不便の中で得られる感動」と、「生活としての快適さ」は、完全に別の軸にあるからなのではないかと思います。
毎年お邪魔している北海道余市町のワインイベント
余市町の素晴らしい生産者が自分で注いでくれる、貴重な体験。
もちろんドメーヌタカヒコのタカヒコさんも。
ここで生産者さんから聞く気候変動のリアルな話はめちゃくちゃ刺さりました。
これからの未来に必要なのは2つのイノベーション
1つは、生活を便利にするイノベーション。
もう1つは、不便がゆえに、資本主義では消えてしまう“何か”を保全するイノベーション
この2つのバランスが、これからの社会には本質的に必要になると思っています。
たとえば、私が好きな静岡沼津におじいさんとおばあさんがやってる町寿司屋がある。
レジはアナログ、メニューも限られていて、接客もマイペース。おばあちゃんがちょっと高圧的。笑
でも、店主が震える手で包丁を握ると、見入ってしまうほどの美しさがそこにはある。
「この人が現役のうちに、もう一度、この人の握る寿司を食べたいな。」
そんな時に、ふと涙がこぼれそうになる。
これは、便利の文脈では絶対に語れない感動です。
誰かの“暮らしの歴史”がむき出しになっている場所。
こうした場は、数値で価値を語ることが難しい。
合理性だけでは語れない価値がそこにはある。
でも、ここにこそ、「その土地らしさ」「その人らしさ」「その社会らしさ」が染み込んでいる。
そんな風景こそが、これからより便利になっていく未来に人が価値を感じるものになるのではないかと思う。
たまたま出会った食べログにない寿司屋
大将は60年以上寿司を握り続けてきたそう。あと、何回いけるかな。
私が「オーガニックを広めたい」その本当の理由
オーガニックはCO₂だけではない。 汚染されない水、失われない土、生き続ける虫や鳥、そして自然の回復力。 “人のため”ではなく、“環境が本来の姿に戻るため”のアプローチでもある。
でも、それ以上に守るべきなのは、
人の生きてきた歴史、私たちを育ててきた自然、便利の先の世界を生きる人に必要な”感受性”
これらに関心を寄せる心を残せるか。
それを忘れてしまったら、 きっと街から定食屋が消えていくように、 田畑も、地域も、一次生産者や彼らが作る文化は静かに姿を消していくと思う。
AIが社会の大部分を代替し、 あらゆるものが効率化され、均質化されていく世界。
そんな未来において、いったい人は何を求めるのだろうか?
おそらくその一つに、効率が悪く、不揃いで、人の手で作ってしまったものこれらがよりリッチになっていく未来があると私は思う。
誰かが手間をかけて、工夫をして、季節と向き合って作ったもの。
そうした暮らしの積み重ねに「価値がある」と思える感性。
人がこれを大事だと気づいた少し先の未来に、もう田畑も、地域も、一次生産者や彼らが作る文化も静かに姿を消しているかもしれない。
未来の子供達のポケットには親よりも友達よりも長い間連れ添ってきたAIがある。
そんな便利な存在がいろんな答えを教えてくれる。
だから身体を通した体験。その先にある感動。これを感じる感受性。
・・・
この辺りはまた別で書こうかな。
堆肥を作っている途中を見にいく。
ぷーんと立ちこめるニオイ、じわっと感じる熱。
その場所にいかないと体験できないものがそこに。興味津々でした。
the kindestが守りたいのは、“感動”
オーガニックなどをthe kindestが応援したいのはSDGsだからでも、海外で評価されているからでもない。
それよりも、
子どもたちや親が不便な旅を通して出会う、体験、それを感じる”感受性”。
そしてそれらを作る自然、資本主義に飲み込まれる非合理的な人の営み。
私を突き動かし、the kindestが守ろうとしているものは、そういうものだと伝えたい。
繰り返すが、オーガニックという選択肢は、汚染されない水、失われない土、生き続ける虫や鳥、そして自然の回復力。
“人のため”ではなく、“環境が本来の姿に戻るため”のアプローチである。
その先には多くのエネルギーの削減もあるかもしれない。
ただ私はそれらではなく、この体験を支えてくれる社会作り、子どもたちの感性を育み、人生を豊かにするために。
現役世代の私たちが生きるこの時代に、まだその選択肢が残っているから──
私はオーガニックを手に取り、その選択が広がる未来に、行動し、責任ある一歩を残したい。
the kindestで育った息子はお野菜が大好き。
手作りでピッツァを作り石窯で焼く。
炭焼きの香りを楽しみ、一つ一つのお野菜の名前を呼びながら完食してました。
あとがき
*the kindestでは自然農法で作られた野菜、一本釣りの漁師が水揚げする天然の魚、手仕事で生み出される自然の恵みを活用させていただき、ベビーフードなど子供の食べ物を作っています。
そんな仕事に興味がある方、ぜひ一緒に活動してみませんか。
とっても、楽しいですよ。