山下さんの「おはようございます!」は、ただの声ではない。
フロアにいる一人ひとりの目を見て、まるで「あなたに」と手渡すように、彼は挨拶を届ける。
その爽やかで誠実な姿勢は、セールスサポートチームの、そして会社のムードメーカーとして、仲間たちにポジティブなエネルギーを伝播させている。
そのルーツは、昭和の厳しさも経験した野球少年時代。
そして、その強さに「しなやかさ」が加わったのは、ごく最近。
彼が「育休」という、人生の大きな転機を経験したことによるものだった。
ー山下さんの『おはようございます!』は、いつも明るくて爽やかで、こちらまで元気になります。社内でも評判ですが、その気持ちのいい挨拶は、昔からの習慣ですか? それとも、何か意識されていることがあるのでしょうか? そのポジティブなエネルギーの源泉を教えてください。
それは『習慣』と『意識』、両方ですね。原点は、小学生時代の野球部。今でこそ問題になりますが、当時は“ケツバット”が当たり前の昭和的な指導でした(笑)。でも、それは私たちにとって暴力ではなく『愛』であり、そこで『挨拶は礼儀だ』と、身体に染み込むまで教え込まれました。
社会人になってからは、その習慣に“意識”を加えています。ただ挨拶するだけでなく、必ず一言添えたり、一人ひとりの目を見たり 。フロアで2、3回『おはようございます』と言っているのは、全体にではなく、『あなたに挨拶していますよ』というメッセージを伝えたいからです。自分がそうされたら気持ちがいいだろうな、と思うことを実践しているだけなんです。
最近、日比野さんから『山下さんの挨拶は、自分に言ってくれているようで嬉しい』と言っていただけて。自分の意識がちゃんと伝わっていたんだなと、本当に嬉しかったですね。
ーセールスサポートという『仲間を支える』仕事の、一番のやりがいは何ですか?
まず念頭にあるのは、『いかにフロント(営業)の負担を減らせるか』です。その結果、『ありがとう』『楽になった』と言われることが、私の何よりのやりがいになっています。彼らがお客様と向き合う時間が増えたと実感できたら、最高ですね。
逆に大変なのは、社内の仕組みが“あるようでない”こと。私自身、入社4年目でまだ社歴が浅い方なので、過去の積み重ねで出来上がった『今までの決まり』を尊重しつつ、新しいやり方を加えていかないと、軋轢(あつれき)を生んでしまう。そこのバランスには、とても気を使います。
今の営業メンバーの声を聞きながら、皆が楽になる新しい仕組みを作っていく。そこが、この仕事の難しさであり、一番の面白さだと感じています。
ー最近、育児休業から復帰されています。男性の育休取得は、会社にとっても素晴らしい前例だと思いますが、取得を決意された背景には、どのような想いがあったのでしょうか? また、育児を経験されたことで、仕事への向き合い方や時間の使い方に何か変化はありましたか?
取得のきっかけは、妻が高齢での出産だったことです。当初は全く取るつもりがなかったのですが、色々調べるうちに『これは、片手間で両立できるレベルではない』と痛感しました。残業ありきの生活では、家庭が破綻すると。
もちろん、分社化した直後で、みんなに負担をかけることへの葛藤はありました。『言葉では“いいよ”と言ってくれても、内心どう思われるか』という古い考えが、自分の中にもまだ残っていたんです。でも、そこは妻の『サポートがないと無理!』という言葉で腹を括り、早めに上司に相談し、引き継ぎ準備を進めました。
復帰して、まず世界が変わりましたね。『世の中のお父さん、お母さん、すごすぎる…』と。育児と仕事を両立させることの大変さに、なぜ今まで気づかなかったんだろうと、心から尊敬の念を抱きました。
仕事への向き合い方も、180度変わりました。今は『8時間以内で、絶対に仕事を終わらせる』という使命があります。妻をワンオペで疲れさせるわけにはいきませんから。その結果、『調整する』というスキルを覚えました 。今までは、無理な依頼でも『やります!』と自分が無理をして受けていた。でも、今は自分のキャパシティを正直に伝えた上で、『来週のいつまでで良いですか?』と調整する。その勇気を持つことで、生活を維持できるようになったんです。
ー育児(父)とサポート(仕事)の共通点(喜びと難しさ)はありますか?
共通する難しさは、『何一つ、思い通りにいかない』ことです。6ヶ月の子どもは、こっちが寝てほしい時に泣き、こちらの都合などお構いなしです。仕事も同じで、自分の意思を押し通そうとすると、イライラが募るだけ。子育てを通じて、その当たり前の事実に直面しました。
今まで、自分はメンタルが安定している方だと思っていたんです。でも、妻から『今、イライラしてるよ』と指摘され、自分では抑えているつもりでも、態度に出ていたことに気づかされました。そこから、自分の感情を客観的に見るようになり、『思い通りにいかないのは当たり前。大切なのは、妥協点を探る“調整”だ』と。この学びは、仕事にもそのまま活きています。
共通する喜びは、『データを取って、傾向を掴む』ことですね(笑)。 子育てで言えば、『このリズムで抱っこしたら寝たな』というパターンを引き出しとして増やしていく。仕事でも、『こういうメールを送ったら、こんな返信が来たな』と、今までは“やりっぱなし”だったことをデータとしてストックし、型化・仕組み化していく。この『傾向を掴んで型化する』作業は、子育ても仕事も、同じように面白いんです 。
ー自分の役割を「冒険のパーティの道具」に例えるなら?
願望も込めて、『松明(たいまつ)』でありたいです。 パーティが暗いトンネルに入った時、火が灯るだけで人は安心し、温かみを感じますよね。仕事のやり取りだけじゃなく、挨拶や雑談を通して、その人の温かみに触れるようなコミュニケーションを大切にしたい。僕の存在が、チームにとってそんな“安心感”や“明るさ”に繋がれば、最高ですね。
ー山下さんの“今の人生”のテーマソングは?
ディズニーの『Sea of Dreams』という曲です。 ディズニーの曲って、必ず“起承転結”があって、ドヨンと落ち込む低音のパートがある。でも、必ず最後はクライマックスに向かって盛り上がって、ハッピーエンドになる。
人生も同じで、苦しい時があったからこそ、楽しいことが幸福だと感じられる。楽しいことばかりだったら、きっとその価値に気づけない。僕の人生も、そうありたいなと思います。
ー育休から復帰され、今後の目標や挑戦したいことは何ですか?
まずは、チーム内の“混とんとしている仕組み”を統一していくことです 。セールスフォースの使い方一つでも、その小さな積み重ねが、必ず営業のため、会社のためになるはずです。
将来的には、代表の森川さんの信頼を得て、経営に関わる仕組み化にも挑戦したい。そして、自分の市場価値を高めたい、という想いも強いです。バックオフィスの人間でも、『あなたと一緒に働きたい』と社外から声をかけられるような存在になりたい。
私自身、営業とバックオフィスの両方を経験しているからこそ、両方の視点(『なぜ、こんな細かい作業を…』『なぜ、決まりを守ってくれないんだ…』)が分かります。その視点こそが、両者を“うまくジョイントさせる”ための、自分だけの強みだと思っています。
ー最後に、未来の仲間へメッセージをお願いします。
まず伝えたいのは、『今までの経験は、必ず次の場所でも生きる』ということです 。一見、無駄に見える失敗や悩みでさえ、いつか『あの時の経験は、このことだったのか』と腑に落ちる瞬間が必ず来ます。
そして、この会社はとにかく『話しやすい』 。コーチングカンパニー特有の、否定しない、心理的安全性の高い土台があります。
もちろん、話しやすい環境に甘えて、表面上の会話で終わらせてしまうこともできる。でも、もしあなたが『やりたいこと』を発信し続ければ、上司は必ずその熱意を受け取ってくれるし、『じゃあ、そのために、この能力をつけよう』と、自分を奮い立たせる環境にもなる。
キャリアチェンジも、キャリアアップも、自分次第で実現できる。そんな会社です。お待ちしています。