かつて、彼は血反吐を吐くほどの練習に耐える、一人の野球少年だった。
そして今、彼は感情の起伏を嫌い、「違う自分を演じる」ことで成果を出す、冷静なプロフェッショナルになった。
HRソリューションズ事業部のプロデューサー・小貫泰一。
淡々と、しかし確実に結果を出す彼の力の源泉は、過酷な競争を“生き抜く術”を学んだ、少年時代にあった。
なぜ彼は、熱狂を捨て、静けさを選んだのか。
そして、尊敬する上司を「踏み台にしたい」と語る、そのクールな野心の先に見据えるものとは。
これは、一人の男の過去と現在が交錯する、刺激的な物語である。
ー小貫さんは、日本を代表するトップ企業の営業をメインで担当されています。最高峰のビジネスの現場で、クライアントと対峙する際に最も大切にしていることは何ですか?
組織を良くしたい、といった“ふわっとしたゴール”ではなく、『定量的なアウトプット』にこだわること。それは常に意識しています。だからこそ、自然と「企画力」と「巻き込み力」が求められていると感じています。
そのうえで特に、事務局や担当者の方々が、何をモチベーションに、どんな動機で動く人なのか。その一人ひとりの“行動原理”を分析し、理解することを大切にしています。
もともと、人の想いを情緒的に汲み取るのは苦手な方なのですが、どういう原理で動くのかを分析するのは得意なんです。提案書を作成する時も、その人の心を動かす言葉は何かを考え、相手を思い浮かべながら言葉を選んでいます。
ー小学校から大学までずっと野球一筋だったそうですね。その厳しい競争環境の中で培われた経験や教えで、現在のビジネスの考え方やスタイルに活きているものはありますか?
そうですね…表現は悪いかもしれませんが、血反吐を吐くぐらいの練習を経験してきたので、『あれ以上に苦しいことはないだろう』というマインドセットが、今の自分の土台になっています。成果を出すことは、決して楽なことではない、と。
特に印象に残っているのが、高校野球時代の集団走、通称「終わラン(おわらん)」です。選手間で名付けた呼び名ですが、その名の通り「終わらないランニング」です。夏場は朝7時くらいから午前中がそれだけで終わることもありました。ちなみに終了のタイミングは、コーチが「みんなの足が揃った」と主観で感じた瞬間です(笑)。
この経験から、ただ全力でやるのではなく、力の入れどころを見極める“強弱”の付け方や、自分のパフォーマンスを調整する術を学びました。ビジネスも同じで、がむしゃらなだけでは勝てない。どう注力し、どう効率的に考えるか。あの経験は、まさに“生き抜く術”を教えてくれましたね。
ー小貫さんは、同じチームの佐藤課長とご一緒されることが多いと思います。ご自身のスタイルを確立する上で、佐藤課長という存在をどのように捉え、どのような相乗効果を生み出そうとされていますか?
達朗さん(佐藤課長)は、他人への情報伝達にインセンティブを感じる、コミュニケーションの達人です。一方、僕は物事の“本質”や“根源”を大事にしたいタイプ。お互い、全く違う特徴を持っています。
だからこそ、良い意味で、『達朗さんを踏み台にしたい』と常に思っています。達朗さんの知見や技術は最大限に活用させていただきながら、達朗さんとは違う視点や視座を提供する。彼の意見を尊重しつつ、それを超える提案をしたい、という欲望があります。
上司であろうと、遠慮なく超えていこうとする。その“図太さ”や“生意気さ”が、僕のスタイルだと思います。その先に、いずれはグローバルに活躍したい、という想いもあります。
ートップ企業を担当している営業として完璧なイメージがありますが、実は周りには見せていない“おちゃめ”な一面や、意外な弱点があれば教えてください(笑)。
弱点…犬が好き、とか?(笑) うーん、弱点と言えるか分かりませんが、金遣いが荒い、というのはありますね。
ーもし、ご自身の人生を一本のDJ MIXで表現するとしたら、どんな構成にしますか?
DJ MIXですか。多分激しいEDMのようなものを期待されていると思うのですが、僕の人生はずっと『Lo-fi(ローファイ)』ですね。音が少し粗めの、作業用BGMのような。激しいアップダウンはなくていい。感情の起伏があまり好きではないので、腹をくくってやると決めたことを、淡々とやり続けたい。ずっと一定のテンションでいたいんです。
野球をやっていた時も、感情を出して良い結果が出たためしがないので、昔から変わらず僕はそういうタイプだと思います。
ー小貫さんにとっての“仕事観”を一言で表すと、何になりますか?
「違う自分を演じること」ですかね。ほぼ俳優かもしれません(笑)。商談の1時間だけは別の自分になって、終わったら戻ってくる。
だからこそ、たとえ仕事で失敗したとしても、それは自分という人格を否定されたわけではないので、常に俯瞰して要因の分析ができていると思います。実際、仕事中にイラっとすることもほとんどなく、その原因を探るプロセス自体が面白いです。
もちろん失敗すれば考え込みますが、内側は意外とポジティブだと思います。
ー最後に、未来の仲間へメッセージをお願いします。ご自身のように「冷静沈着」で、あまり感情を表に出すのが得意ではない、という候補者もいると思います。そんな彼らに向けて、この会社で輝くためのヒントをいただけますか?
まさに、そういう方こそ、うちの会社はやりやすいかもしれません。 大企業を相手にする上では、感情的な側面よりも、オープンになっている情報やロジックを突き詰めていく戦略思考が重要になります。感情を汲み取るのが苦手なタイプでも、ロジックを綺麗に組み立てられれば、むしろ信頼を得やすい。淡々としている方が、フィットすることもあると思っています。
もちろん、最後の一押しで『やりましょうよ!』という熱意が必要な時もありますが、それは一つの側面に過ぎません。
うちの会社の管理職は、個々の強みを活かそうとしてくれるので、どんなタイプでも受け入れる土壌はあります。私たちは、企業の“マインドセット変革”という、非常に稀有な領域に携われる会社です。その本質に興味がある人なら、きっと楽しめるはずです。